ショートショート フィルムフェスティバル & アジア(以下:SSFF & ASIA)は、今年で21周年を迎えるアジア最大級の国際短編映画祭だ。5月29日(水)〜6月16日(日)に開催されるSSFF & ASIA 2019の作品公募は2018年8月に始まり、部門によっては2019年3月まで実施され、130の国と地域から約10,000作品の応募があった。映画祭期間中は、審査で選ばれた約200作品が都内複数の会場で無料上映される(一部イベントは有料予定)。

本記事ではSSFF & ASIAのCGアニメーション部門にフォーカスし、CGアニメーションによるショートフィルムの魅力を複数回に分けてお伝えする。第1回では、本部門が設立された2012年から業務提携を続けているデジタルハリウッドの杉山知之学長と講師の古岩祥幸氏に、印象に残っているショートフィルム作品や、ショートフィルムとデモリールのちがい、両者の良い点と悪い点について語ってもらった。

TEXT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

ショートフィルムは、技術力が高くても面白くなければ評価されない

▲左から、杉山知之学長、講師の古岩祥幸氏


CGWORLD(以下、C):今年の第91回米国アカデミー賞短編アニメーション部門は、『インクレディブル・ファミリー』(2018)の直前に上映された『Bao』 (2018)が受賞しましたね。作品自体の素晴らしさに加え、本作を手がけたドミー・シー監督は、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以下、ピクサー)初の女性監督という点でも話題を集めました。

ショートフィルムは作品自体の価値に加え、表現と技術の実験場としての価値、若手が経験を積み頭角を現す場としての価値も内包しており、長編作品にはない意義があります。ただし就職活動の場では、良いショートフィルムをつくることが、必ずしも採用につながるわけではありません。そのため就職を重視する専門学校の中には、ショートフィルムではなく、デモリール制作を推奨するところもあります。そんな中で、デジタルハリウッドはどういった考えに基づきSSFF & ASIAとの業務提携を続けているのか、伺っていきたいと思います。そもそも、両者の提携はどういう経緯で始まったのでしょうか?

杉山知之学長(以下、杉山):2012年の提携以前からデジタルハリウッドの在校生や卒業生はSSFF & ASIAに応募しており、作品が上映されることもありました。ピクサーをはじめ、フルCGアニメーションのショートフィルムをつくるスタジオが増え、個人の作家も増え、CGを教える教育機関も増えていく世相を踏まえ、SSFF & ASIAにCGアニメーション部門を新設しようとなったとき「一緒にやりませんか?」とお声がけいただいたのです。本学としても、国際的な映画祭の運営に協力できることは光栄ですし、在校生たちの良い目標にもなるので、ぜひにとお応えして今にいたります。

  • 杉山知之
    1954年東京都生まれ。1987年よりMITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動。1990年より国際メディア研究財団・主任研究員、1993年より日本大学短期大学部専任講師を経て、1994年10月にデジタルコンテンツの人材育成スクールであるデジタルハリウッドを設立。2004年に日本初の株式会社立デジタルハリウッド大学院を開学。翌年、デジタルハリウッド大学を開学。現在は同大学・大学院・スクールの学長を務めている。


C:デジタルフロンティアグランプリ(以下、DF)(※1)の受賞作品の上映は、提携当初から行われてきたのでしょうか?

※1 デジタルハリウッド大学・大学院・スクールなど、デジタルハリウッドが運営する全ての教育機関の卒業制作作品を対象に、毎年の年度末に開催されるコンテスト。同コンテストにおけるCGアニメーションの最優秀作品が、その年のSSFF & ASIAで招待上映されることになっている。詳細は下記Webサイトを参照。
https://www.dhw.co.jp/df/

杉山:そうです。せっかく関わらせていただくなら、本校のその年のトップ作品もぜひ上映してほしいとお願いしました。とはいえ経験の浅い学生がつくった作品なので、一緒に上映される世界各国の作品にはかなわないと感じますね。例えばSSFF & ASIA 2018のCGアニメーション部門で優秀賞に選ばれた『コトリのさえずり(Tweet-Tweet)』は、ロシア最大規模のVFXスタジオのCGFが、1年以上をかけて約100人のアーティストチームで制作したと聞いています。CGならではの表現力を活かした素晴らしい作品で、同じことを実写でやっても興ざめするだろうなと思いました。

古岩祥幸氏(以下、古岩):同じ年にCGアニメーション部門で特別招待作品として上映された平松達也さんの『レター(LETTER)』の場合、ほぼ3DCG未経験の状態で1年制の本科CG/VFX専攻に通学し、在学期間の後半の約半年を使って1人で制作しています。そういう背景も踏まえて見ていただくと、それぞれの味わいや面白さがあると思います。

  • 古岩祥幸
    デジタルハリウッド東京本校 総合ProCGコースを卒業後、ポリゴン・ピクチュアズでレイアウト、キャラクターアニメーションを担当。現在はフリーランスのアニメーターとしてティフォンに常駐してつつ、デジタルハリウッド東京本校(スクール)の本科CG/VFX専攻にて主幹講師、デジタルハリウッド大学にて講師を務める。DF2018では、スクール担当クラスの平松達也氏の作品『レター(LETTER)』がCGアニメーション賞を受賞。DF2016では、大学担当ゼミの太田杏奈氏の作品『初心(Initial Enthusiasm)』がグランプリを受賞。いずれもSSFF & ASIAのCGアニメーション部門で特別招待作品として上映されている。


▲DF2018にてCGアニメーション賞を受賞し、SSFF & ASIA 2018のCGアニメーション部門で上映された平松達也氏の『レター(LETTER)』。自動車部品メーカーの技術職を経て、本科CG/VFX専攻(1年制)に通学し、1人で制作した約6分のショートフィルム。スマホで想いを伝える「現代版おばあちゃんのラブストーリー」となっている


C:そんな両極端の2作品が、同じプログラムの中で連続して上映されるというのはSSFF & ASIAならではの面白さですね。

杉山:『レター(LETTER)』は、CGを覚えたばかりの個人が、初めてつくった人に見てもらえるレベルの作品という点では面白いし、価値があると思います。ちなみに『コトリのさえずり(Tweet-Tweet)』を監督したZhanna Bekmambetovaさんは、本作が初監督作品だそうです。どの作品も、背景にはつくり手のいろんな挑戦があり、思いが込められています。

古岩:『レター(LETTER)』は約6分、『コトリのさえずり(Tweet-Tweet)』は約11分の作品です。そういう短い尺の中で、すごく密度の濃い物語が展開されるのがショートフィルムの魅力だと思います。昨年末、SIGGRAPH Asia 2018で久々にComputer Animation FestivalのElectronic Theaterを観て、やっぱりショートフィルムは良いなと思いました。SSFF & ASIAやSIGGRAPH Asiaでは、ひとつのプログラムの中で複数のショートフィルムが上映されるので、わかりやすく面白い作品から、心にズシンとくる重たい作品、トリッキーな作品まで、いろんな物語を楽しめるのが良いですね。

CSIGGRAPH Asia 2017でBest Student Filmに選ばれた『ガーデンパーティー(Garden Party)』(※2)は、第90回米国アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされ、SSFF & ASIA 2018でも招待上映されましたね。本作も学生作品ではありますが、表現力も技術力も学生とは思えないレベルでした。

※2 MoPA(フランスのCGアニメーションスクール)の6人の学生が、約9ヶ月をかけて制作したCGアニメーション作品。詳細は下記Webサイトを参照。
https://www.gardenparty-movie.com

杉山:フランスやドイツのスクールは基本的に大人数のチームで作品をつくりますし、在学期間が長いので総じてハイレベルですね。『ガーデンパーティー(Garden Party)』は、最近見たショートフィルムの中だと『コトリのさえずり(Tweet-Tweet)』と並んで印象に残っている作品です。SSFF & ASIAには、アジア、ヨーロッパ、アメリカなど、いろんな地域の作品が集まってくるので、多様な文化や価値観に触れられる点が刺激的だと思います。日本で暮らし、日本やハリウッドの映画を楽しむだけでは味わえない多様性があります。例えば人の生き死にの扱いが日本人の感覚とは全然ちがったりするので、すごく新鮮な気持ちになります。

C:確かに『ガーデンパーティー(Garden Party)』のブラックユーモアなオチには意表を突かれました。多様性に触れることで、日本人の固定観念や常識を再認識する機会にもなりますね。ほかに、印象に残っているショートフィルムはありますか?

古岩:CGアニメーションではなくパラパラ漫画、しかも少し前の作品ですが、鉄拳さんの『振り子』(2012)は大号泣しましたね。短い尺の中で、こんな表現ができるのかと驚きました。本校の卒業生の作品だと、伊東佳佑さんの『Old Umbrella』(2013)も印象に残っています。技術的には拙い部分もありましたが、ロボット同士の淡い恋物語の描き方がすごく良かったです。

▲DF2013にて学長賞、ベストアートディレクション賞を受賞した伊東佳佑氏の『Old Umbrella』。グラフィックデザイナーを経て、デジタルハリウッドの3DCGデザイナー専攻(1年制)に入学後、1人で制作した約4分のショートフィルムで、ロボット同士の淡い恋愛を描いている。本作は伊東氏の下記Webサイトにて視聴できる。
http://keisukeitoh.com/


杉山:表現手段や技術力に関わらず「面白いものは評価される」という点は、昔も今も変わらないですね。そこが、ショートフィルムとデモリールの大きなちがいでもあります。SSFF & ASIAやDFの審査でも、面白いかどうかが常に重視されてきました。DFのCGアニメーション部門の審査は、デジタルハリウッドの卒業生で、なおかつCGプロダクションで働いている人たちに依頼していますが、トップの技術力を有する学生の作品が選ばれるわけではありません。どんなにCGの技術力が高くても面白くなければ評価されない一方で、多少技術力が低くても、面白ければ最後まで観たいと思います。審査員の心が動くかどうか、感動があるかないかは、今後も変わることなく重視されるんじゃないでしょうか。

C:確かに。ピクサー初のショートフィルムの『ルクソーJr.』(1986)は、今観てもやっぱり面白いですからね。

杉山:『ルクソーJr.』をこれから初めて見る人も、われわれが初めて見たときと同じ感動を味わえると思います。ときを経ても感動が色褪せないのは、すごいことですね。

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面白い作品をつくってほしいが
採用では作品性より技術力が問われる

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面白い作品をつくってほしいが、採用では作品性より技術力が問われる

C:古岩先生はデジタルハリウッドの卒業生でもあるそうですが、卒業なさったのはいつですか?

古岩:2005年頃だったと思います。半年間のコースでMayaを勉強しました。その後、スクールのTA(Teaching Assistant)をやりつつデモリールを充実させ、ポリゴン・ピクチュアズで働き始めました。その少し前の2008年頃からスクールの講師をやり始め、途中から大学のゼミも担当するようになり、今にいたります。

C:例えば1年制のスクールの場合、1年間でCG制作のイロハを習得し、CG映像業界に就職することが大多数の学生の目標だと思います。そんな中で観る人の心を動かすショートフィルムまでつくるのは、かなりハードルが高いのではないでしょうか?

杉山:その通りです。だからスクール生の約半数は、ショートフィルムをつくらず、デモリール制作だけに集中しています。その方が就職につながりやすいとは思いますが、指導する先生たちにはいろんなジレンマがありますよね。実際のところ、古岩先生はどちらを推奨していますか?


古岩:学生の意向を最優先にしています。私が指導している本科CG/VFX専攻は1年間でMayaの基本を勉強しつつ、After Effects、ZBrush、Houdiniなどにも触れるので、学ぶことは大量にあります。加えてゼネラリスト志望の人もいれば、スペシャリスト志望の人もいますから、卒業制作をつくり始める前に、ショートフィルムとしてつくる場合の良い点と悪い点、デモリールとしてつくる場合の良い点と悪い点を、必ず伝えるようにしています。それを踏まえて学生に考えてもらった上で、各々の企画をヒアリングし、卒業制作の内容やボリュームを決めていきます。

学生の中には働きながら通学している人や、他校と本校のダブルスクールで学んでいる人もいるので、卒業制作に使える時間は人によって様々です。各々の状況に応じて「1人でショートフィルムをつくるなら、このくらいのボリュームに抑えた方が良いんじゃないか」「アニメーター志望で使える時間も限られているなら、デモリールの方が良いんじゃないか」といった提案をするようにしています。

C:それぞれの良い点と悪い点というのを、具体的に教えていただけますか?

古岩:ショートフィルムとしてつくる場合の良い点は、作品づくりを楽しめることと、作品全体の制作に携われることですね。いったん就職してしまうと、作品全体の制作に携われる機会はそうそうありません。特に分業体制のCGプロダクションだと「このエピソードの、このカットの、このアニメーション」というように、ひとつの作品の限られた部分に接することしかできません。自主制作をするための時間の確保も難しくなります。ただし中途半端な出来映えのショートフィルムになってしまうと、就職はもちろんコンテストでも評価されないという、散々な結果になります。

杉山:話が面白くない上に、モデルも動きも大したことがなければ、どれもできない人に見えてしまいますからね。

古岩:デモリールとしてつくる場合の良い点は、自分が得意な分野の技術力を磨き、それをプレゼンテーションすることに集中できる点ですね。採用する側は、往々にして作品性よりも技術力を見ているので「ストーリーは表現せず、技術力だけを見せる」というように割り切っても良いといった話もしています。

C:以前、とあるCGプロダクションの取締役にインタビューした際に「コンテストで作品を審査するときと、採用担当者としてデモリールを審査するときとでは、評価基準を完全に変えている」という話をなさっていましたね。「人を採用するときには、職人としての腕の良し悪しを見ている」と語っていました。

古岩:はい。「技術力しか見ていないと言っても過言ではない」という話もしています。そのせいもあって最近はデモリールだけをつくる学生が増えてきたのですが、スクールとはいえ、それで良いのかな......という思いもあります。個人的には、面白い作品をつくってほしいという思いを常にもっています。私が学生だった時代は、全員が卒業制作としてショートフィルムをつくっていましたしね。

杉山:だんだんと、業界全体がショートフィルムではなくデモリールを見たがるようになってきたので、教育機関もそのニーズに応えるようになったという背景がありますね。採用する側としては、デモリールを見せてもらった方がわかりやすいですから。

C:加えて、特にスペシャリスト志望の人は、モデラーにしろ、アニメーターにしろ、エフェクトにしろ、1人でショートフィルムをつくるのは無理がありますよね。

杉山:ところがたまに奇跡を起こす人がいるから面白いんですよ。去年の平松さんは1人で良いショートフィルムをつくり、SSFF & ASIA 2018のレッドカーペットの上を歩き、作品が上映されましたが、ゼネラリストではなくアニメーター志望でした。彼のショートフィルムは複数のCGプロダクションの採用担当者に評価され、卒業後はアニメーターとしてオムニバス・ジャパンに採用されました。

▲【左】SSFF & ASIA 2018にてCGアニメーション部門のアワードセレモニーに参加した監督やプロデューサーたち/【右】写真中央が、前述の『レター(LETTER)』を制作した平松氏。「アワードセレモニーに招待されると、有名監督や俳優さんと同じレッドカーペットの上を歩き、フォトセッションに応じ、アフターパーティでは世界各国の受賞者やフィルムメーカーの人たちと交流できます。良い思い出になりますし、親御さんは喜ぶし、以降の制作にも何らかの影響を与えると思います」(杉山学長)
写真提供:ショートショート実行委員会


C:すごいですね。そんなレアキャラもいらっしゃるんですね。

古岩:そうなんです。一概には言えないから、複数の選択肢を提示して、挑戦できる余地をつくっておきたいと思います。スクール生は総じて年齢が高く、いろんな経験を積み、様々な引き出しをもっているので、大学生よりもストーリーをつくる能力が高いように思います。私自身「なるほど」と勉強になることもあって、スクールならではの予測できない可能性があると感じます。一方で、大学で担当しているゼミの方は「卒業制作はショートフィルムしか認めません」という縛りを設けてあるので、学生たちは腰を据えて作品制作に取り組んでいます。

杉山:大学の場合は在学期間が4年間もあるし、ゼミに所属する前の1、2年次にCGの基礎を学習しますからね。とはいえ、ストーリーテリングを教えるのは大変だと思います。

古岩:すごく大変ですね。CGの技術よりも、レウアウトや演出を教えることの方に力を入れています。私自身、それなりの知識を常に取り入れておく必要がありますし、学生の企画に対して意見を言う場合は、なるべく論理的に説明しないと納得してもらえません。「それを伝えたいなら、事前にこういう情報がほしいよね」とか、「それを伝えるのが目的なら、これは不要では?」といった話し合いを重ね、半年くらいかけてストーリーや絵コンテを練り上げてから、実制作に入るよう指導しています。

C:実制作に入る前の期間が長いですね。

古岩:しっかり企画を詰めてから実制作に入らないと、無駄な作業が大量に発生してしまいます。それで作品が完成しなければ、学生も私もつらいです。ただ、その後の実制作にも10ヶ月くらいの期間をかけるので、途中で息切れしてしまい、モチベーションが下がる学生もいます。仕事ではあたり前のことですが、20歳そこそこの学生が、1年以上同じことをやり続け、しかも毎週ダメ出しをされるのはつらいだろうと思います。それでもコツコツと続けられる学生はいるので、そういう人の姿を見て、また奮起してくれるケースもあって、そこは学校ならではの良さだなと思います。

C:同じゼミの学生に差をつけられている現実を見れば、やっぱりがんばろうと思いますよね。原則として、作品制作は1人で行うのでしょうか?

古岩:グループ制作も認めています。1人で質の高い作品をつくるのは難しい時代になってきましたし、「モデリングは得意だけど、アニメーションは苦手だから、得意な人と組みたい」というように、自分の向き不向きを把握している学生も多いです。だから4年生同士でチームを組む場合もありますし、作品制作の一部を3年生に手伝ってもらう場合もあります。4年生が最大限がんばって作業をすることが大前提ですが、その上で「背景のこの部分だけは3年生に手伝ってもらう」といった分担は認めています。そうすると3年生はその経験を踏まえて卒業制作に取り組めるので、面白いながれになってきたなと感じています。

C:在学期間が4年間あると、いろいろな経験を積めますし、自分の向き不向きを見極める機会も多いでしょうね。

杉山:そこは大学のメリットですね。スクールの場合は、必死でツールを覚えて、脇目も振らず卒業制作をつくって、気が付いたら在学期間が終わっているというケースも多々あるでしょう。

古岩:そんな中で、就職できるだけの力をつけることが求められるので、ショートフィルム制作を推奨しないケースもありますね。平松さんは早い時期からショートフィルムをつくりたいという強い意欲があったのですが、学生の中には高い技術力があるにも関わらず「何をつくって良いかわからない」という人もいます。そういう人には、デモリールをつくるよう勧めることが多いです。

C:創作意欲は、教えられるものではないでしょうからね。

杉山:そんな背景もあって、スクールでは2018年度から新たに本科CGヴィジュアルアーティスト専攻という1年制のコースを立ち上げました。「とにかく作品をつくりたい」と思っている人を集めようという心意気でやっており、美術系の教育機関の卒業生やクリエイティブ業界の経験者だけを受け入れるという制限を設けています。最初期の本科では選考時にデッサンの試験をやっていたので、それに近い位置づけだと思います。

C:創作意欲があり、何らかの表現をしてきた経験のある人を対象に、CGによる表現のやり方を教えるコースというわけですね。そのコースの学生も、DFでの受賞や、SSFF & ASIAでの上映をひとつの目標として、作品制作に取り組んでいるのでしょうか。

杉山:そうであってほしいと願っています。まだ立ち上げたばかりのコースなので、どんな作品が出てくるのか、楽しみでもありますし、ドキドキしてもいます。蓋を開けてみたら、クレイアニメをつくる人がいるかもしれません(笑)。

C:クレイアニメとCGアニメーションの融合作品が出てきたら、それはそれで面白そうですね。本日はお話いただき、ありがとうございました。

info.

  • ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019
    映画祭代表:別所 哲也
    フェスティバルアンバサダー:LiLiCo(映画コメンテーター)
    開催期間:5月29日(水)~6月16日(日)
    上映会場:都内複数の会場にて
    ※開催期間は各会場によって異なります
    料金:無料上映
    ※予約開始は4月24日(水)を予定。一部、有料イベントあり。
    お問い合わせ先:03‐5474‐8844  / look@shortshorts.org
    主催:ショートショート実行委員会 / ショートショート アジア実行委員会
    https://www.shortshorts.org