2月5日(水)~7日(金)の3日間、幕張メッセにて開催された第7回ライブ・エンターテイメントEXPO。コンサート、ミュージカル、演劇、各種ショー、最近ではeスポーツなどの開催に必要な映像機器、照明機材、音響機器、特殊効果機材、ステージ機材、舞台美術、装置、VR機器、プロジェクションマッピング技術などが所狭しと展示された本イベント。同時開催のイベント総合EXPOと合わせて、注目の展示を紹介する。

TEXT&PHOTO_安藤幸央(エクサ)/ Yukio Ando(EXA CORPORATION)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

<1>モノが売れない時代の、リアルでライブな体験

約120社の展示は、ライブイベント向けの大規模な映像機器のレンタル企業から、舞台の造形、美術制作、機器や装置などといったハード面、ソリューション提供、コンサルティングなども含めたソフト面まで多岐に渡った展示が見られた。今回のEXPOで初めて展示された機器や、日本初上陸の海外企業の展示も見られ、屋内外のライブ、舞台や展示といったエンターテインメント業界におけるトレンドを知ることのできる展示会でもあった。数多くの展示から、CGWORLD読者の仕事や興味に関係するものをピックアップして紹介しよう。

レイヤードジャパン社のCLI2.6M2シリーズによる3面LEDウォール

●harevutai
harevutai.com

harevutaiは池袋にオープンしたばかりのVTuber向けCGライブや配信ライブを主な用途とする「未来型ライブ劇場」。機材紹介のために展示会場には小型ながらも仮設のステージが組まれていた。池袋駅徒歩4分の立地にある本劇場では映像、音響の最新機材を備え、スタンディングで500名、着席で200名のライブが可能。1.9mmピッチの高精細な344インチLEDスクリーンや、10,000ルーメン、レーザー光源のプロジェクタにより4K投影もできる。

harevutai 仮設ステージ

さらに特徴的なのは 300インチの「FUSION WALL」と呼ばれる(いわゆる)3Dホログラム演出が可能な網状のスクリーンが常設されていることだ。FUSION WALLに投影される映像はどのような映像でも良いわけではなく、向き不向き、特別なノウハウが必要とのこと。

演者と映像との共演、ステージ前面に設置されたFUSION WALLに投影されている

FUSION WALL に映像が投影されている様子

FUSION WALLの接写。粗めの網に特殊な塗装がなされている

●匠工芸
takumikougei6.co.jp

プラスチック加工、看板、コスプレ造形を手がける株式会社匠工芸は、制作事例のひとつとしてファンタジーゲームの中に出てくるような光る魔法陣を実際に作って展示。実物が光を発していると思わせるよう黒いペイント部分から光が漏れない工夫や、上に乗ってもたわむことがないような構造強化など様々な工夫がなされているそうだ。

光る魔法陣(全景)

光る魔法陣(左)、RPGゲームに出てくるような数々の武器(右)

●Pixie Dust Technologies
pixiedusttech.com

落合陽一氏が代表を務めるPixie Dust Technologiesの「SOUND HUG」は、抱きかかえると光の色と振動で音楽を楽しむことのできる装置だ。音楽ライブでの音を取り込み、音の成分に応じて微細に振動したり色合いが変わったりと変化する。装置そのものからも音が出るようになっている。現在販売は行なっておらず、イベント等への有償レンタルのみ。

音に応じて変化する様子

●星光技研
www.seiko-giken.jp

超音波で霧化した水を使ったミストスクリーンを提供するのが星光技研。映像の投影はごく普通のプロジェクタ、普通の水をタンクに入れておけば使えることと、霧が微細なため霧スクリーンを通っても全く濡れた感じがしないのが特徴だ。霧を重層的に噴霧すれば立体映像的な表現も可能になり、霧に触ることで映像に触った感覚にもなる。下から上に霧が出るブローアップタイプ、上から下に霧が出るブローダウンタイプのものがある。

上から霧が降りてくるタイプの霧スクリーン

何層かの霧を同時に噴霧することで、立体的な映像表現も行える

●フォトロン
www.photron-digix.jp

フォトロン映像システム事業本部のブースでは、放送用のリアルタイム合成3Dグラフィックスシステム「Vizrt」「VioTrack R」が紹介されていた。特徴的なのは、特殊なスタジオセットを必要とせず、画像解析によって3次元空間を把握し、3DCGと合成ができることだ。ブースのデモではカメラを少なくとも2箇所に移動することで床面や設置物の特徴点(物体の角や、背景との境目、色の違いなど)を自動解析し、映像の中にある床面がどこにあるのかをリアルタイムで解析し、遅延なくCG映像と合成していた。つまり特殊なマーカーやスタジオを必要とせず、どこでも利用できるというわけだ。

フォトロンブースの様子

その場の映像とリアルタイムCGが合成された様子

画像解析用には撮影用とは別のセンサーカメラを映像撮影用のカメラリグに取り付けて利用する。センサーカメラといっても単なる計測用カメラなので、SDI映像を無線で飛ばして利用することもできる。事前にレンズの歪み調整が必要なため指定の機材が使われているが、特に制限はないそうだ。また、リアルタイムでズーム・フォーカスが連動する合成 (VioTrack R)の他にもズーム・フォーカス固定で利用する場合(VioTrack R0 TTL)はセンサーカメラも必要ないとのこと。

左:トラッキング用のセンサーカメラ(Marshall社のCVシリーズ)、右:センサーカメラの映像から、特徴点を抽出し解析している様子

次ページ:
<2>イベント向け大規模VR装置やコンテンツが目白押しの「イベント総合EXPO」

[[SplitPage]]

<2>イベント向け大規模VR装置やコンテンツが目白押しの「イベント総合EXPO」

●HOLOGATE
hologate.com

ドイツのVR専門企業HOROGATEは、複数人で同時体験するVRシューティングゲームのソリューション「HOLOGATE」を展示。ロケーションベーストエンターテインメントと呼ばれるもので、個々人が家庭で楽しむゲームではなくいわゆるゲームセンター設置型のものだ。HOROGATEはネットワーク対戦にも対応しており、常設、仮設を合わせて世界35ヶ国で300ヶ所、のべ500万人のプレイヤーに楽しまれているという。機器の工夫としては、パソコンを含めて必要なものが頭上に集められていること、プレイヤーが移動してもHMDのケーブルさばきがスムーズになるよう天井にレールが設置されていることが特徴だ。

左:HOLOGATE体験中の4人のプレイヤー、右:ゲームで利用するショットガンにViveコントローラが載せられる

左:プレイヤー視点からのデモ映像。押し寄せるゾンビとの対戦ゲーム、右:映像送出用のPCと、HMD用のケーブルレール

●三和物流サービス&ASATEC
www.sanwa-l.jp
asatec.jp

VRゲーム機器のレンタル事業を手がける三和物流サービス株式会社では、ASATEC制作のVRお化け屋敷『呪いのVR』の展示とデモが行われていた。限られた空間での設置と、コンテンツそのものも限られた空間で楽しめるよう工夫が凝らされ、制限時間内でミッションをこなすという目的がはっきりとしており、体験時間が長くなりがちなVR体験においての工夫がなされていた。

『呪いのVR』設置ブース

また、VRゲームプレイヤーを手助けするオペレーション要員の役目や手順も確立されており、機器の説明や取り付けには1〜2分程度しかかからずとてもスムーズなVR体験ができた。4m x 4m ほどの空間で設置は早くて30分から1時間ほどで可能だという。機材レンタルは、2台から6台の台数単位、1日から、2〜3日、10日、1ヶ月という単位で借りることができる。オプションとして、待っている人がゲームの様子を見られるモニタやテント、運営要員の派遣、パネルやバナーなども追加することができる。三和物流サービスではこういったVRゲームの他に、企業向けの火災消化器訓練にもVRを活用している。

●コーエィ
www.koei-corp.jp

建機のレンタルやイベントの企画・特殊機材のレンタルなどを手がける群馬の会社コーエィによる、VR視聴専用イス「VR Dream Egg」の展示。VR視聴体験用に考えられたイスで、HMDをかぶったプレイヤーの無用の移動で怪我をしないよう、また360度ぐるぐる回るという体験を阻害しないよう工夫されている。サウンドスピーカーが内部に設置され、動画や音に連動した振動を感じることができる。重量は300kg、VR-HMDとセットで1日単位で貸し出しされ、購入も可能とのこと。

モダンなイスのような VR Dream Egg

VR Dream Egg 内部

●SisyFox
sisyfox.com

ドイツ発の「SisyFox」は巨大な玉を転がして楽しむ、リアルなゲーム体験デバイス。運動やフィットネス、リハビリに適しており、2台あれば競争や対戦型のゲームも可能だという。直径85cmのタイプと直径120cmのタイプがある。

巨大なトラックボールを備えるSisyFox 120cmタイプ

玉を転がすゲームをプレイしている様子

●ラディックス
pro-radix.co.jp

株式会社ラディックスのブースでは、床面と前面スクリーンへの投影、プロジェクションマッピングを活用した実際のボールなどを使い体を動かしながら楽しむことのできるゲーム『Cyber Studium』を展示。

ブロック崩し的なゲームをプレイ中