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建築設計&デザインにITとカルチャーを取り入れる「松本技術設計」

建築設計&デザインにITとカルチャーを取り入れる「松本技術設計」

建築業界の設計・デザインにIT業界のカルチャーを呼び込もうというユニークな試みを紹介しよう。BIMを使った設計支援やコンサルティング、ツール開発を主業務とする松本技術設計は現在、"未来の現実空間"をデザインするイベント「仮想万博2020」を主催。出展するバーチャル空間を募集中だ。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 258(2020年2月号)からの転載となります。

TEXT_松本ちなつ(松本技術設計)
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada(CGWORLD)

IT業界の文化にインスピレーションを得た建築とxRのコミュニティ「xRArchi」

2018年夏、当時の私は建築業界から転職してIT業界で働いていた。業務内容は主にBIMやCADなどの建築系ソフトのプラグイン開発だったが、業務以外の部分で、IT業界の文化に良い意味でカルチャーショックを受けたことがある。会社によって程度の差はあると思うが、社外の勉強会への参加や登壇が推奨されていること、技術ブログを書いたり、OSS活動をすることも推奨されていて、建築業界よりもオープンイノベーションの空気が強いということだ。特に興味深かったのは「OSS(オープン・ソース・ソフトウェア)」である。GitHubなどのホスティングサービス等を通じてパブリックになっているソースコードに対して、所属や立場に囚われず、オンラインで世界中の人が自由に開発しあっていることをとても面白く魅力的に感じた。

  • 松本ちなつ 松本技術設計株式会社 代表取締役。BIM/ソフトウェアエンジニア、インテリアデザイナー。大学で都市計画学を学んだ後、設計事務所に約2年勤める。2015年より、ゼネコンや組織系設計事務所などでBIM業務に従事。2017年からはAutodesk ExpertElite。フリーランスとしても活動をはじめる。2018年にIT企業へ転職。ソフトウェアエンジニアとしてBIMなどプラグイン開発を行う。またプライベートの活動として「xRArchi」という、xRと建築のコミュニティを創設。第0回「VR建築」コンテストを主催。2019年10月、松本技術設計株式会社を設立。BIMを使った設計支援・コンサルタント・ツール開発などを主に行なっている。
    matsumototd.com

そんなIT業界のオープンな文化に影響されて、2018年7月につくったコミュニティが「xRArchi」(イクスラーキ)だ。「建築とxRの未来を考える」という名目の下、各々が好きなことをやって、気が向いたときに気の合う仲間とイベントやオフ会などを開催しているゆるいコミュニティである。普段は主にDiscordというゲーマー向けに開発されたオンラインチャットサービスで活動しており、現在の登録者数は約100名である。なぜxRと建築という組み合わせにしたのかと言うと、新しい空間共有の方法としてxRに個人的にとても可能性を感じていたことが大 きい。それに加えて、SNSを通じてVRやARですごいものをつくっていて、かつ建築のバックグラウンドをもった面白い人たちを見かけ、彼らと友達になれたら楽しいのではないかと思ったからだ。共通の技術の話ができる友達が現実世界にはいなかった私は、インターネットを通じてxRArchiの仲間が増えていくことを本当にうれしく感じた。

xRと建築のコミュニティ「xRArchi」(xrarchi.org)。Discordには技術の相談から雑談まで、幅広い話題のチャンネルがある

第0回「VR建築」コンテストを開催

xRArchiメンバーたちの協力を得て2018年の秋に主催したイベントが「第0回『VR建築』コンテスト」である。本イベントのテーマは「バーチャルな家」で、VRChatというVRソーシャルプラットフォームのワールドに参加者たちが家を建てて、ひとつの街をつくろう、というもの。

メンバーの協力のおかげでコンテストはおおいに盛り上がり、最終的に61もの作品が集まった。募集期間終了後は「バーチャルお宅訪問」と題した動画配信などを行い、VR内で作者に作品を説明してもらうなど、とても先進的で面白いイベントになった。運営は全てDiscordまたはVRChat上でのバーチャル打ち合わせで完結し、オンラインでこんなに大きなイベントができるのかという驚きと感動があった。

第0回「VR建築」コンテスト
xrarchiweb.wixsite.com/xrarchi/contest0

BIMにOSSを組み合わせる

本職の建築系ソフトウェア向けプラグイン開発においてもIT文化を採り入れることで革新をもたらせるのではないかと考えている。現在、BIMモデルは各社がローカル環境で管理するのが一般的だが、IT業界のようにインターネットを介してオープンな情報共有をすることで、より斬新でユニークな設計手法を見出すことができるのではないかかと考えるようになったのだ。

例えば企画段階の敷地情報が入ったBIMモデルをパブリックに公開して、世界中の人が自分のデザイン案を各ブランチに載せてプッシュする。そして、プッシュされたデザインの中から、管理者が良いと思ったデザインの良いと思った部分を本体にマージさせていくといったような、Git的な設計手法ができたら面白いだろう。

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未来の現実空間を描く場所をつくりたい

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