YouTube公開約2ヵ月で1,600万回再生(2021年3月時点)と、斬新な一人称映像で話題沸騰のヨルシカの新作『春泥棒』のアニメーションミュージックビデオ。この作品を手がけたのは『映画ドラえもん のび太の新恐竜』のCGアニメーションスーパーバイザーで知られるCG映像作家・森江康太だ。ヨルシカのn-bunaが「森江さんしか頭に浮かびませんでした」と熱望して実現した本作。このたび、2人に経過と意図を語ってもらうと、お互いの相性の良さが浮き彫りに。クリエイティビティに迫るロング対談をお届けする。なお、MVの詳しいメイキングは本誌272号に掲載!
TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamda
ヨルシカ - 春泥棒(OFFICIAL VIDEO)
■ヨルシカが2度目のMV制作を依頼した理由
――まずは2人の創作上の出会いを教えてください。森江康太さんが初めてヨルシカの楽曲のミュージックビデオ(以下、MV)を手がけられたのは、2019年8月発表の『ノーチラス』の際でしたが、当時森江さんに依頼をされた経緯を教えてください。
ヨルシカ - ノーチラス (OFFICIAL VIDEO)
n-buna:『ノーチラス』は、ヨルシカを始めたばかり頃につくった楽曲でした。これは自信作でもあったのですぐには発表せず、最適なリリースのタイミングを窺っていたんです。そして、いざリリースすることになったときには、かねてからお願いしたかった森江さんに映像を頼もうということでオファーをさせていただきました。
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n-buna(ナブナ)/ヨルシカ
ヨルシカのギタリスト兼コンポーザー。2012年ボカロPとして活動開始。2017年ヨルシカを結成し、2019年ユニバーサル ミュージック ジャパンよりメジャーデビュー後、3枚のフルアルバムをリリース。3rdアルバム『盗作』は各種配信サイトで販売ランキング1位を獲得(18冠)。最新作は『春泥棒』を含む1st EP『創作』。公式YouTubeチャンネル「ヨルシカ/n-buna Official」登録者数203万人(2021年3月現在)
yorushika.com
――n-bunaさんは以前から森江さんの作品はご覧になっていたんですか?
n-buna:はい。僕が高校生の頃に強い衝撃を受けたHIDETAKE TAKAYAMAさんの『Express feat. Silla (múm)』という曲があって、そのMVを森江さんが手がけられていたんです。曲と映像の調和が素晴らしくて、観たときに衝撃を受けたことを今も覚えています。あのMVは「銀河鉄道の夜、その後」というテーマでつくられたそうなのですが、僕も宮沢賢治が大好きで『銀河鉄道の夜』は、それこそ子供の頃から何度もボロボロになるまで読み返したほどです。そんなわけですから、音楽と文学の融合というものが大の好物で、音楽を扱った文学作品も好きですし、文学を扱った音楽も大好きなんです。それはヨルシカとしての音楽づくりにもつながっているのではないかと思います。『Express feat. Silla (múm)』でも、そうした要素に惹かれたところがあったと思います。
HIDETAKE TAKAYAMA 「Express feat. Silla (múm) 」 Music Video
――そして新作の『春泥棒』のMVを再び森江さんが手がけられました。n-bunaさんは楽曲制作時から森江さんにお願いすることを念頭に置いていましたか?
n-buna:はい。曲が出来上がったときから考えていました。森江さんの映像はひとつひとつのアニメーションももちろん素晴らしいのですが、情景描写や映像全体の雰囲気から静謐さを感じさせてくれます。今回の『春泥棒』も、桜というものがメインにくる楽曲なので、そのアニメーションを美しく見せてくれるのは誰かと想像したときに、森江さんしか頭に浮かびませんでした。
森江康太(以下、森江):とてもありがたいですね。たぶん、n-bunaさんと僕は好みが近いのではないかと思います。僕も文学が好きで、つくる映像も物語性がある方が好きなんです。その点でも好みがリンクしているのかなと思います。
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森江康太(MORIE Inc.)
アニメーション監督・演出家。MORIE Inc.代表。OVAシリーズ『FREEDOM』でキャリアをスタートし、NHKスペシャル「恐竜」シリーズをはじめ、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』タイトルバック、日清食品 カップヌードルCM「HUNGRY DAYS」シリーズ、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』など、多くの著名作品に参加。ヨルシカのMVを手がけるのは『ノーチラス』に続き『春泥棒』で2作目。長年にわたり蓄積してきたアニメーション技術を徹底図解した書籍「ポーズ・モーション・アニメーション!」が3月30日(火)リリース
twitter.com/kohta0130
――『春泥棒』の映像づくりはどのように進められていきましたか?
森江:楽曲は2020年4月にいただきました。9月の頭に映像制作の打ち合わせをして、その際に、先ほどの桜をアニメーションで綺麗に見せたいというお話と、『盗作』(2020年7月にリリースされたヨルシカの3rdアルバム)の初回特典の小説をモチーフにしてはどうかという話題が出ましたね。
n-buna:僕は情景から曲をつくるタイプでして、この曲は何もない広大な空間に1本の巨大な桜が立っているイメージです。モデルとなったのは立川市の昭和記念公園にある欅の樹で、それを桜に見立てて書きました。『春泥棒』とは、桜を散らしていく春風のこと。また『盗作』の物語の中において、桜とは妻の生命のメタファーでもあるので、「泥棒」はその生命を散らそうとする時間のことも表しています。という、今お話した内容を森江さんにお伝えして、その後の映像づくりについてはいっさいをおまかせしました。
森江:今回の作品は悩みましたね。当初は9月にシナリオ、10月にコンテを仕上げる予定だったのですが、1ヵ月くらい遅れてしまいました。特に、命のメタファーである桜をどのように表現すればよいか、という部分に頭をひねりました。テクニカル的に桜を綺麗に表現するのはさほど難しいことではないのですが、「なぜ桜を見せるのか」という、音楽に対する映像的な解釈の部分を考え込んでしまいました。
――そうして考えを重ねていった結果、主観映像というアイデアを思いつかれたんですね。
森江:はい。『盗作』の小説の妻の主観に立ったらどういう風に見えるのだろう、目線だけで映像を語るとどう見えるのだろうと考え、この映像表現を思いつきました。当事者になって2人の関係性を描き出すという表現はMVでは見たことがないし、主観映像だからこそわかる面白さがあるだろうと思ったんです。第三者視点ではなく、相手が自分をどう見ているのかという視点であれば、よりその愛情や距離感というものがわかる。このアイデアを思いついてからは、どんどん演出が浮かんできました。絵コンテを描いてテストムービーをつくったときには、これは良いものができそうだという手応えを感じました。僕だけでなくスタッフもそう感じてくれたようで、これを良いかたちに仕上げようという思いが皆の中で高まり、そこから実制作に臨むことができました。
n-buna:僕も初めてこの絵コンテを見たときから良い作品になる予感を感じていました。森江さんはどのように絵コンテを描いていくんですか?
森江:MVの場合、最初にタイムとその横に歌詞を書いて、そこに「ベンチに座る女性 上を見上げる」みたいなアクションを書いてシナリオをつくっていきます。見せられる動きや演出の数はカット尺で決まってくるので、それを前提とした映像表現を考える必要があります。その後、一度荒い状態で絵コンテを全編描いて、映像の構成を決めてその後に清書をしていきます。この作業をしているときが一番大変ですね。
n-buna:ということは、最初の絵コンテ段階でどんな映像にするかをほとんど決めていないといけないわけですね。
森江:そうなんです。例えば、「男がベンチに座っている」というカットの場合、ベンチの位置はどこにあるか、その前の道幅はどのくらいか、対岸はどんな景色になっているかといった、細かな状況設定も絵コンテに描いておく必要があります。つくり方はクリエイター人それぞれのところはありますが、僕は基本的に絵コンテで決め込んでいきます。その前のシナリオの段階では、犬がいるとしたら距離感はこのくらいで......といったことを想像しながら描いていきます。なので、絵コンテが仕上がった段階で、ほとんど映像の形は見えていると言っても過言ではありません。
n-buna:その細かい状況設定をつくった絵コンテを基に、3DCGでいろいろと配置していくんですね。
森江:はい。今回で言うと、桜の樹のある綺麗な道は立川市の根川緑道をモデルにしているのですが、スタッフ皆でロケハンし桜の樹やベンチ、縁石といった場所の雰囲気をつかんでいきます。もちろん写真も撮ります。そして絵コンテに合うように3Dで背景をつくっていきます。
――その他のキャラクターたちはどのようにして思いつかれたんですか?
森江:男性は『盗作』のMVに出ていた方をモチーフとしています。また小説の文中に「犬に好かれる奥さん」とあったので、その描写を女性のパーソナリティに組み込んでいます。犬の種類は特に考えずにコーギーにしたのですが、動画に寄せられたコメントを見ると、「お尻がカワイイ」というコメントが多かったりと、思いのほか人気で驚いています(笑)。
n-buna:あれはカワイイですよ。僕も飼いたくなりました(笑)。すごくリアルな動き。どうやってつくっているんだろうって気になります。
森江:コーギーは小川光悦(編注:MORIE Inc.のアニメーター)の担当です。彼はNHKの番組で恐竜のCGを担当していたりと動物が得意なアーティストなんです。可愛らしく、かつリアルにとお願いしました。コーギーでなかったら映像のニュアンスも変わっていたかもしれません。
n-buna:そうですよね。コーギーって、存在としてちょっとコミカルな可愛らしさがあって、シリアスにならないですから。
森江:あとは今回、人間のキャラクターがあまり出てこなかったり、動きもそこまで多くなかったりするので、コーギーを生き生きと動かすことで生命のメタファーとして表現できればと思いました。
n-buna:確かに、言われてみるとそうなんですね。コーギー最初は女性に寄り添うような距離感から、だんだん遠くに行ってしまっている。
森江:要は生きている側の代表者みたいな存在なんです。最初のコンテではもっと出番は少なかったのですが、描いているうちに自分の中で犬の存在が大きくなって、生命感をもっと出すべきだと思って描き直し、結果コーギーが重要な役割を担うようになりました。皆さんに喜んでもらえて嬉しいです。
――n-bunaさんがこの映像をご覧になって、特に印象的だった部分を教えてください。
n-buna:それはもちろん「桜」です。冒頭から桜と光が合わさって、それをコーギーが一身に受けているという描写。桜と木漏れ日の融合がとても綺麗で、何度見てもライティングが素晴らしいなと思います。良い意味で現実感がない美しさみたいなものがありますよね。浮遊感というか、夢見心地みたいな。
森江:そうですね、温度感や匂いといった、映像で直接伝わらない表現をする際はライティングに依るところが大きいです。本作ではコンセプトアーティストの東みずたまりさんにカラースクリプトを描いていただき、ライティングや色彩演出の指針としています。映像表現は、見た人が自分のことのように感じられるかが大事だと思うんです。たとえこの場所でなくても、地元で温かい春の日に桜を見て気持ちよかったなといった記憶を思い出してもらえるよう、ライティングの調整はとても細かく行いました。
[[SplitPage]]■音楽・映像・文学 近い価値観をもつ2人
――ヨルシカは様々なMVを発表されており、その中にはアニメーションも実写もあります。アニメーションMVという表現手法を使う意味をn-bunaさんはどのように捉えていますか?
n-buna:僕にとってはアニメーションも3DCGも実写動画も、ただ表現手法が異なるだけのものだと捉えています。鉛筆か絵の具かスプレーかといったような、ツールのちがいですね。突き詰めたCGは実写と区別がつきませんし、今後の技術の発達によってはさらにそれが顕著になっていくことも考えられます。逆説的な言い方になりますが、だからこそそこに筆のちがいというものが生じて、3DCGというツールにしかつくれない映像というものが出てくると思うんです。今回で言えば、どの筆を使う人が美しく描けるかを考えたときに思い浮かんだのが森江さんでした。そして森江さんはCGのアーティストであった、という考えなんです。
――森江さんはご自身の創作活動の中で、アニメーションMVをつくることについてどのような考えをおもちですか?
森江:まず、このシーン界隈が今すごく盛り上がっているなという印象をもっています。昔はプロモーションビデオ(PV)と呼ばれていましたよね。つまり、音楽の販促ツールだったわけです。それが今は「ミュージックビデオ」と呼ばれ、音楽と映像がひとつになって主張する文化に変わっています。それはやはり動画サイトの存在感の大きさにあると思いますし、そこにおけるアニメーション表現の親和性の高さがこの状況に表れていると思います。2020年から2021年にかけて様々なアーティストのアニメーションMVが発表されましたし、皆さんこのシーンをウォッチしているのだなと、そこからも感じます。あと、僕を含めてみんなアニメーションが好きなんだなと思います。いわゆる日本のアニメーション表現が海外からもネットを通じて本当に多くの方がご覧になっていますし。
n-buna:アニメーションという筆の良さって、現実に描けないものも描けるところにあると思っていて、その非日常感の表現が現代の音楽とマッチしていて、アニメーションMVが増えているのかなと思うんです。
森江:現実・非現実の話で言うと、高畑 勲監督の映画『おもひでぽろぽろ』のなかで、紅花を摘むシーンがあって、それがものすごくリアルなんですよ。それに対して高畑さんは「実写で撮影してもそこまで感動しないけれども、それをアニメーションで表現することで人は見てしまうのです」といった趣旨のことをおっしゃっていました。何気ない景色もアニメーションの絵になることで、人を惹き付ける。最近アニメーションのMVが増えているのはこのあたりにも理由があるのかなと。今回の根川緑道の景色も、実際に綺麗でとても素敵な場所なんですけど、アニメーションにすることでより際立ったのだと思います。
――お互いの創作活動に対して伺ってみたいことはありますか?
森江:ヨルシカってリリースのスピードがメチャクチャ早いじゃないですか。僕は映像をつくっていると納期に追われて、てんてこ舞いになることがよくあるんですけど、n-bunaさんはどういうペースでつくっているんですか?
n-buna:リリースのペースというよりも、僕はずっと曲をつくっていて、いつの間にかアルバムの分量ができて、それをまとめて形にしているという感じなんです。この前、知り合いにその事を話したらワーカホリックと言われたんですけど(笑)。でも個人的にはそれぞれの曲はゆったりとつくれていると思っているし、決して無理矢理つくらされているということもないんですよ。急に入ってきた仕事で、これはどうしても請けたいというときには多少忙しくなることはありますが。そんなときでも、納得いくまで出来にこだわり続けるので、作業をずっとやり続けているということはあります。2〜3日遅れたけど、デモ曲も2〜3曲追加して提出しているとか(笑)。
森江:楽曲づくりは全部おひとりでされるんですか?
n-buna:はい。提出するときには編曲までバッチリ行なって、そのまま世に出しても納得できるレベルまでつくり込みます。レコーディングのときはそれを生音に変えるくらいです。
森江:レコーディングのときにスタジオミュージシャンにアレンジをしてもらうことはあります?
n-buna:楽曲の肝になるフレーズやリフは完璧になぞってもらいますが、そのプレイヤーさんの個性が出るようなところは部分的に入れてもらうようにしています。やっぱり、せっかく生音でレコーディングをするのですから、そうした要素は採り入れたいなと思って。ときにはあるパートを丸ごと空白部分にしておいて、ギターソロやピアノソロを自由に入れてもらうようにすることもあります。
森江:この前のオンラインライブでの『春泥棒』のストリングスアレンジが素晴らしかったです(編注:2021年1月9日(土)に行われた有料配信ライブ、ヨルシカ Live「前世」)。
n-buna:あれはストリングスのリーダーの方と相談してつくっていただいたんです。編曲にもその人の個性というものは必ず出ますし、本職の方ですから勉強になりましたね。極めた人だからこそできる楽曲編成というものがある一方で、勉強道半ばの人が生み出す良さというものもあると思います。日々勉強して、今の自分にしかできない作品を生み続けることが大事なんだと、最近は特に思います。
森江:僕は音楽家の人が大好きで、n-bunaさんのようにつくる人も好きですし、先ほどのスタジオミュージシャンの方も好きで、ブックレットでクレジットをよく確認しています(笑)。あとはオーケストラのように生本番をガツンとキメてくる技巧性にも憧れますね。映像制作ってライブがないものですから。
n-buna:僕もレコーディングのときはリハーサルが一番楽しいです(笑)。みんなで曲を合わせていて、音楽がパッケージングされる前のあの空気。そこに音楽をやっているときの気持ち良さを感じます。僕からは、森江さんはどういうきっかけで映像制作を始められたかを伺いたいです。
森江:もうCGが好きだからとしか言いようがないですね(笑)。母が映画好きで、よくビデオを借りてきていたんです。僕が小中学校の頃って、『ジュラシック・パーク』、『トイ・ストーリー』、『マトリックス』と、後のCGの教科書に載るような作品が次々に公開されていった時代で、その頃のCGの発展を目の当たりにしていました。見たことがないような映像の連続で「こんなのどうやって撮影したんだ?」と思っても、今ほどメディアが発達していないから情報がない状況。たまにTV番組でCG映画のメイキングを扱うとそれを食い入るように見ていました。まさにあれが僕にとってのセンス・オブ・ワンダーで、それを仕事にしたいと思いました。高校に入ったときには最初から先生に「卒業後はCGの専門学校に行きます」と宣言していました。
n-buna:決心の固さがすごいですね。
森江:その頃から考えると、CGで食べていくという意味では夢は叶いました。ただ、今度はもっとこんな映像がつくりたいという、さらに次の夢ができました。CG業界には各専門部署に職人的な人は大勢いるのですが、僕はもうひとつの夢として映画監督があったんです。よく小学校の頃に書かされる「将来の夢」のときも、そう書いていました。
n-buna:それ、わかります。僕も中学生くらいの頃に書いたことがありましたから。
森江:ただ、周りにそういうことを書いている人が誰もいなくて、その温度感のちがいで恥ずかしかった覚えもあります(笑)。でもなりたくて、CG業界でいろいろと仕事をしていったら、結果的に20代後半くらいから監督作品をつくらせてもらえるようになり、こうやって『春泥棒』も監督できるようになりました。ふり返ってみると、当時の思いが原点になっているのかなと思います。実家に帰ったときに母とそういう話をしたら、「あんたは昔からそういうのが好きなのよ」って言われました(笑)。
n-buna:いい話ですね~。同じようにふり返ってみると、僕は小説家だったり映画監督だったりに憧れて、だから今でも音楽をつくるときに情景からつくったり、コンセプトありきでつくったりするんだろうなと。原点はあそこにあったんだと思いました。そういう意味で森江さんと根っこが近いんだろうなと思いました。「朋あり遠方より来たる」というか、根が近いと創るものも気が合うんだろうなと思いました。
森江:『春泥棒』も、最初のコンセプトができたときに、n-bunaさんは絶対に気に入ってくれる自信がありましたから。
n-buna:まさにその通りです。サビの途中に『Express』のセルフオマージュが入っているのもメチャクチャ良かったです。
森江:あと、もうひとつ、今回の映像で一瞬ベッドシーンを入れています。僕がヨルシカの楽曲を聴いていて、人間のリビドーというか性的なニュアンスを感じることが多かったんです。直接的にそういう描写はないのですが、それを揶揄したりオマージュしたりする感覚があったので、今回盛り込んでみたところ、「ぜひこれでいきましょう」とおっしゃってくれたとき、やっぱり感覚が近いんだと嬉しかった覚えがあります。
n-buna:僕は美しいだけの映像ではなく、そこに挟まるある種の違和感も好きなんです。セクシャルな表現を綺麗か汚いかと思うのはそれぞれの感覚によりますが、僕は表現の仕方次第で綺麗なものになり得ると思うし、桜の映像ばかりながす中で逆に違和感としても作用する。そういう両面性をもち得ると思ったし、それが単に桜が綺麗だと思って観ている人の心を動かすものになると思いました。
――n-bunaさんは今後また森江さんにMVをお願いしそうな音楽をつくる予定はありますか?
n-buna:もちろんです。そういう曲ができたらもっていくと思います。森江さんが気に入ってくれることが前提ですが(笑)。先ほど森江さんがおっしゃった、PVからMVへというお話もとても共感できるもので、僕もMVは音楽の付属品であってはいけないと思うんです。やるからには音楽と融合して成立するように、MVには振る舞ってほしい。だからこそ、MVをつくるときは音楽側の意図を全て伝え、監督が表現したい映像を自由につくっていただく。そして音楽と合わせて成立させるものだと思っています。森江さんとは今後またそういう作品がつくれたらと思っています。
森江:そのときはぜひ、よろしくお願いします!
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ヨルシカ / 1st EP『創作』
2021年01月27日(水)リリース
配信一覧
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