>   >  Unityの新ツール、デジタル環境を整えた新スタジオ......デジタルアニメ制作を進化させる各社の取り組み~ACTF2021 in TAAF(3)
Unityの新ツール、デジタル環境を整えた新スタジオ......デジタルアニメ制作を進化させる各社の取り組み~ACTF2021 in TAAF(3)

Unityの新ツール、デジタル環境を整えた新スタジオ......デジタルアニメ制作を進化させる各社の取り組み~ACTF2021 in TAAF(3)

一般社団法人日本アニメーター・演出協会による「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー」(ACTF)が3月13日(土)と14日(日)の2日間開催された。2021年は東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)実行委員会の主催の下「ACTF2021 in TAAF」と銘打ち、13日はメインセッションとして制作プロダクションによる事例紹介や有識者によるシンポジウム、14日はソフトベンダー・企業による技術プレゼン、運用事例の紹介などが行われた。本記事では3月14日(日)に行われたセミナー「リアルタイムエンジン Unityで作る近未来のアニメ・映像制作について」と「AnimatorSpace Tokyoとリトルビットが提案するアニメ制作フローについて」の模様をレポートする。

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TEXT_高橋克則 / Katsunori Takahashi
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

Unity:開発中の「Unity Anime Toolbox」を紹介

セミナー「リアルタイムエンジン Unityで作る近未来のアニメ・映像制作について」にはユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前広樹氏が登壇。現在開発中のUnity Anime Toolboxの中から、アニメに適したマテリアル管理ができるMaterial Switch Trackと、3Dを2Dのように扱える環境を構築するVisual Compositorのデモンストレーションを行なった。なおツールは最終版ではなく、名称や機能などはリリース時に変更される可能性があるため注意してほしい。

Material Switch Trackは複数のマテリアルを変更できるワークフローを提供し、カラーパレットを使った色指定管理によってアニメらしい色づくりをリアルタイムで実現するツールである。通常のUnityのワークフローでは、場所や時間などのシチュエーションに合わせて3Dモデルの色を変えると、マテリアル数が増えてしまい管理が煩雑になっていた。このツールでは3Dモデルの色を一元的に扱うことで問題を解消。シチュエーションによってどの色を用いるか、カラーパレットから直接指定して、背景に馴染んだ色合いを手軽に生み出せる。

これはカラーだけでなく、テクスチャやフロートなど、ほぼ全てのプロパティに対して設定可能。また作成したマテリアルのタイムラインはブレンディングもできるため、少しずつ色が変化していくような見せ方もできる。デモンストレーションでは大前氏が朝のシーンの色をベースに夜のシーンの色指定を作成。明度を落とすことで、背景に馴染んだ暗い色合いに変更してみせた。

▲Material Switch Trackのデモンストレーション。シチュエーションに合わせて3Dモデルの色合いが変化しているのがわかる

Visual Compositorは3Dと2Dを混在した環境を実現し、3Dでは難しかった画づくりの実現に貢献するツールだ。まず大前氏はVisual Compositorで制作したサンプルを公開。走る少女たちの姿をカメラが回り込んで映した映像だが、従来の3Dでは難易度の高いカットだとコメント。

普通にカメラを回り込ませただけでは、3人がきちんと画面に収まるような位置にはならず、顔の向きもバラバラになってしまう。このような画づくりは3Dだけではできないため、レンダリングしたものを合わせる必要があるのだ。

Visual Compositorではキャラクターや背景が別々にレンダリングされており、2DのTransformノードで動かすことで映像をつくっている。それらはレイヤーとして扱われるため、個別に2Dのエフェクトをかけることができる。3Dの手前や奥に2Dのオブジェクトを被せるBOOKのような表現も可能となる。

▲【上】がVisual Compositorを使用したカット。キャラクターの向きが揃っており、収まりも良い

▲Visual Compositorのデモンストレーション。3Dモデルの位置を変えたり、半透明にしたりできる

デモンストレーションを終えた大前氏は「これからも引き続き、アニメの画づくりを行いやすい環境をつくっていきます。Unityで一緒にアニメの未来を創りましょう」と語り、講演を締めくくった。

ノーヴォ&リトルビット:最新デジタル環境を備えた新スタジオAnimatorSpaceTokyo

セミナー「AnimatorSpaceTokyoとリトルビットが提案するアニメ制作フローについて」にはノーヴォ代表取締役の宇田英男氏とリトルビットの小町 直氏が登壇。最新のデジタル環境が使えるスタジオ・AnimatorSpaceTokyoの設立理由や、ノーヴォが制作する短編アニメ『青い羽みつけた!』を紹介した。

AnimatorSpaceTokyoは中野にオープンしたデジタルスタジオである。「これから10年のデジタルアニメ制作のスタンダードを作る」という目標を掲げており、クリエイターに向けたトレーニングを行なったり、制作会社にデジタル環境の導入支援をしたりと、幅広いサービスを提供する方針だ。

▲AnimatorSpaceTokyo 事業企画意図

▲AnimatorSpaceTokyo 提供サービス

宇田氏は2011年にスタジオコロリドを起業し、2020年1月には新会社のNoovo.Inc.(ノーヴォ)を設立。プロ・アマを問わずアニメーション制作の輪を広げることで、優れたクリエイターを生まれるインフラづくりに取り組んでいる。

AnimatorSpaceTokyoを企画した意図について、アニメの市場規模は拡大を続けているが、需要に対して制作現場が追いついていないという問題を指摘する。アニメ制作を通じて、市場の継続的な成長には強い現場を生み出す実験的な場所が必要だと感じたことが、最新の機材や設備を活用できるデジタルスタジオの起ち上げに繋がったのだ。

▲デジタル機材を体験できるスペースやシアタールーム(編集室)を提供。右下の部屋には壁にパース線が引かれており、クロッキー会などの開催も予定している

宇田氏は強い現場をつくるためのキーワードに「デジタル」を挙げた。しかし個人が自腹でデジタル環境を整えるのは難しく、どの機材を買えばいいのかわからないという人も多いだろう。AnimatorSpaceTokyoはクリエイターたちの問題を解決し、クリエイティビティを最大限に発揮できるようにするというねらいがある。

▲AnimatorSpaceTokyo デジタル協力企業一覧

また、AnimatorSpaceTokyoはアニメーション制作も行なっている。現在制作中の短編アニメ『青い羽みつけた!』ではUnreal Engineを利用。Epic Gamesの開発資金プログラム「Epic MegaGrants」に採択され、資金提供を受けながら技術検証を進めている。

▲短編アニメ『青い羽みつけた!』

映像編集ソフトにDaVinci Resolveを活用したことも、日本のアニメ業界としては珍しい取り組みである。DaVinci Resolveはコンポジットやカラー、編集など、多くの作業を単一ソフトで行えるという利点をもつ。

▲短編アニメ『青い羽みつけた!』の制作意図

今回はDaVinci Resolveのコンポジットアプリ・Fusionの活用法を、小町氏がリモートで解説した。アニメ制作でFusionを使うためにはタイムシートの取り込みが必須となる。そのためCLIP STUDIO PAINTと連携する「東映アニメーション デジタルタイムシート」と、Stylosから書き出したCSV形式のタイムシートをFusionに取り込めるスクリプトを制作した。なお『青い羽みつけた!』では東映アニメーション デジタルタイムシートを利用している。

ワークフローとしてはCLIP STUDIO PAINTで作画をして、タイムシートはXDTS形式で書き出し、それらをFusionに取り込んでコンポジット。最後はDaVinci Resolveの編集機能を用いた。Fusionはノードベースのインターフェイスであり、レイヤーベースのAfter Effectsとの操作感のちがいなどにも触れながら作業を実演した。

▲DaVinci Resolveでの作業の様子

宇田氏はAnimatorSpaceTokyoの今後について、デジタル制作の知見を共有化し、次の10年に向けて技術的な検証ができる場所にしたいと展望を語る。そして「我々は新しい場所で、新しい技術を使って、新しい作品をつくっていきたいと考えています。仲間も募集中ですので、新しいことに興味がある方は気兼ねなくご連絡ください」とメッセージを送った。

▲AnimatorSpaceTokyo 未来戦略

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