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最新テクノロジーから教育用途まで。コロナ禍を捉え直すパネルディスカッション〜「コンテンツ東京 2021」レポート(2)

最新テクノロジーから教育用途まで。コロナ禍を捉え直すパネルディスカッション〜「コンテンツ東京 2021」レポート(2)

感染対策に留意しつつ、1年ぶりに4月14日(水)から16日(金)まで東京ビッグサイトで開催された「コンテンツ東京 2021」(主催:リード エグジビジョン ジャパン)。会場では、ブース展示に加えて18本のセミナーが行われた。本稿では「最新テクノロジーが実現する新たなコミュニケーションとは?」と「XRがもたらす可能性とは?」をレポートする。


TEXT&PHOTO_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE




テクノロジーがコミュニケーションを変える!

パネルディスカッション「最新テクノロジーが実現する新たなコミュニケーションとは?」では、クリエイター集団1→10 (以下、ワントゥーテン)の澤邊芳明氏と、アバターロボットnewmeで知られるavatarinの深掘 昴氏、そしてブロックチェーン事業などを営むgumi國光宏尚氏が登壇し、テクノロジーとコミュニケーションの関係について議論を交わした。

もっとも、昨今のNFT(非代替性トークン)アートの盛り上がりを受けて、國光氏がNFTの現状と可能性について解説を行うなど、ディスカッションはアドリブ感満載で展開。「コンテンツ東京 2021」を取り巻く現状が反映された内容となった。

パネルディスカッションは3社の紹介からスタートした。ワントゥーテンは、XRやAIなどの先端技術にエンターテインメントやストーリーをかけ合わせることで、新しい体験を創造・実現してきたクリエイター集団だ。その代表を務める澤邊芳明氏は、バイク事故による頸髄損傷のため手足が一切動かない、車椅子の経営者として知られている。

澤邊氏はまず、2月10日(水)に配信されたNPO法人「Earth & Human」by 1→10 設立記念講演の内容を紹介した。本法人は歌舞伎俳優の市川海老蔵氏が代表理事を務め、環境保護に取り組むことをミッションに掲げている。映像ではワントゥーテンの映像技術を駆使して、市川海老蔵の祈りの舞踊に呼応して木々が美しく生い茂ってゆくさまをCGで演出。川崎市にあるスタジオ、キヤノンが昨秋開設したVolumetric Video Studio - Kawasakiからリアルタイム配信されたものだ。

澤邊氏は「コロナ禍において、能や歌舞伎をはじめとした舞台芸術が大きな制約を受ける中、技術を用いてどのように内容をアップデートしていけるかに挑戦した」と解説。あえてリアルタイムCGを使用したのも、演劇の一回性を重視したためだという。もっとも、リハーサルはトラブル続きで、場の雰囲気が重苦しいものに。本番では奇跡的に上手くいったと舞台裏を明かした。なお、VRバージョンも別途作成しており、今後配信予定だという。

これに対して、アバターロボットを介したコミュニケーションという、フィジカルな要素を重視しているのがavatarinだ。航空会社大手ANAホールディングスのアバター準備室を経て、2020年4月に事業会社として設立した同社。アバターロボットを「全ての人の新しい能力」にすることで、人類のあらゆる可能性を広げていくことをミッションに掲げている。

「コロナ禍で弊社のオフィスはガラガラだが、変わりにアバターロボットのnewmeが走り回っている」と語る深掘氏。ミュージアム、ショッピング、教育、ビジネス、カンファレンスなど様々な場で実証実験を実施中だ。同社のアバターは、今や地上のみならず国際宇宙ステーション(ISS)でも活躍中。2020年11月には、ISS内のspace avator を一般人が地上から操作する技術実証を実施し、注目を集めた。

「意識だけを電送し、好きな体(ロボット)を選んで活動をすれば、人間は光の速度で移動できる。こうした社会参加のあり方は、Withコロナ時代でますます重要になる」と話す深掘氏。2021年2月には内閣府が主催する「ムーンショット型研究開発制度」に参加し、「アバターを活用するための次世代のクラウドサービスの研究開発」と「人のスキルを学習して能力を拡張する研究開発」を進めていると語った。

両社に対して、よりエンターテインメントの領域に近い分野で活動しているのがgumiだ。モバイルオンラインゲーム事業を皮切りに、XR事業、ブロックチェーン事業、そしてファンドの運用と様々な事業を進めている。代表の國光氏は「2020年11月にFacebookがOculus Quest 2を発売したことで、VR市場が急速に拡大した」とコメント。今後もPSVR2の発売などが控えており、さらに市場が広がるとした。

続いてグループ会社のThirdverseが開発・運営するVRマルチプレイ剣戟アクションゲーム『ソード・オブ・ガルガンチュア』を紹介。國光氏は本作で培ったVRゲームのノウハウと、同社のブロックチェーン技術を活かしてアニメ『ソードアート・オンライン』の世界を5年以内に実現したいという。VRでフルダイブでき、独自の経済圏をもつMMORPGを創り出すというわけだ。

もっとも、同社はその先の未来も見据えている。あるVR世界をベースに、参加者が自由にハードフォーク(システムの永久的な分裂)できるようにすることだ。これにより、仮想世界でも民主的な政権交代が可能になるとした。ある世界に不満をもつ人がいたら、別の世界をハードフォークすれば良いからだ。新たな世界の賛同者が多ければ、自然に移住者が増えて栄えていく。これを10年以内に実現したいという。



MR、ロボット、ゲーム......、三者三様の関わり方

続いて、議論は互いの製品やサービスに関する質疑応答に移った。その1つが、avatarinのアバターロボットとワントゥーテンのXR技術の融合だ。深掘氏はアバターロボットには「足」が必要で、「水族館で実証実験を行なったとき、動き回ることでマナティが反応した」とコメント。同じように制止したままでは子供がなつかなかった。こうした実験から、アバターロボットには動き回れる点が重要だという。

これに対して澤邊氏は、XRグラスを装着したまま戸外で活動する世界が一般化すれば、アバターロボットとXR技術を組み合わせることで、さらに面白いことが可能になると回答した。國光氏はVR HMDの基礎技術にスマートフォンと共通する部分が多く、スマートフォンのスケールメリットを上手く引き継ぐことができていると分析。米軍がHoloLens 2を10万台導入したニュースなどにも触れつつ、常にXRデバイスを装着し、画面越しに世界を見る時代が到来する日も近いとした。

▲ワントゥーテン 澤邊芳明氏

▲avatarin 深掘 昴氏

とはいえ課題も残されている。「バーチャルとリアル」のバランスの取り方だ。深堀氏は「画面越しでは声をかけにくくても、オフィスでブラブラしていると話しかけやすかったりする。何か共同作業を始めるときは、実際にその場にいなくても存在が感じられるようにするのが良い」とコメント。澤邊氏も「コロナ禍で人と会えなくなり、雑談の重要性に気付いた営業マンが多かった」という事例を紹介。「構えないコミュニケーション」を、どのようにデジタルで実現するかが重要だとした。

また、澤邊氏はオンライン会議が増えたことで、地方や郊外に移住するエグゼクティブが増加していると指摘し、自身も校外に土地を買ったと明かした。ここから「バーチャルでビジネスは効率化されたが、Zoomでの飲み会はつまらない。ここはまだバーチャルで補えないところ。Zoomだと映像が遅延するため、相づちがしにくかったり会話が被ったりもする。ノンバーバルなコミュニケーションの重要性を再確認した」(國光氏)。「アバターロボットでも所作や間合いの重要性について指摘を受けている。どのように実装するか研究中だ」(深掘氏)と議論が盛りあがった。

続いて話題はコロナ禍での働き方に移った。澤邊氏はPCやツールの価格低下で、フリーランスや副業でデジタルアートを制作するクリエイターが増加したと説明。コロナ禍で自分の働き方を見つめ直す人が増えたのも、こうした傾向を後押ししているという。また、NFTのようにアーティストが収益を得られるしくみが整ってきたことも大きいのではないかとした。

▲gumi 國光宏尚氏

これを受けて國光氏は、NFTの現状やしくみについて解説した。NFTはブロックチェーンを用いたコンテンツフォーマットの1つで、この技術を使うことで「デジタルデータで限定商品をつくることが可能になった」、「限定商品にWeb上で誰でもアクセスできるようになった」、「限定商品が転売されるごとに、クリエイターが手数料を得ることが可能になった」と指摘。ピカソの絵と複製画のちがいを例に出しつつ、デジタルデータ自体はコピー可能だが、オリジナルであることが担保できるのがNFTの特徴だとした。

「もっとも、これまで人々はリアルの限定商品には価値を感じてきました。これが純粋なデジタルデータでも、限定品であることに価値を感じられるか否かについてはまだ答えが出ていません。今後議論が必要なところだと思います」(國光氏)。他にもNFT上の経済活動が活性化すると、基軸通貨の問題が出てくる。Facebookが仮想通貨「Libra(リブラ)」を発行したがっているのも、これをねらってのことだろうと話した。

こうした議論に対して深堀氏も、「海外在住の人がアバターロボットを使って日本で経済活動を行うと、税金をどのように払うのかなど新たな問題が出てくる。今、まさに議論を進めているところ」だと明かした。また、今後は人の動きを深層学習し「その人らしい所作」をロボットができるようになる。つまり、個人のモーションデータにNFTを紐付けて販売できる時代が来ると指摘。技術の進化によって、新たな商材が生まれる可能性を示唆した。

最後に登壇者から10年後の未来に向けての抱負が語られた。澤邊氏はバイク事故で頸椎を損傷し、車椅子生活を送っている現状に触れつつ「再生医療に期待する一方で、どこまで自分をデジタルデータとして拡張させられるか、自分自身で実験したい」と語った。深堀氏はロボットがフィジカルな身体をもつことで、実際に人を助けたり商店でモノを買ったりできるとコメント。自宅にいながらアバターロボットを脳波でコントロールできる時代も遠い未来ではないとした。最後に國光氏は、VR世界をハードフォークできる未来をつくりたいとして、ディスカッションを締めくくった。



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パネルディスカッション「XRがもたらす可能性とは?」