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2012年3月28日、米オートデスク社の 3DCG アニメーションソフトウェア、3ds Max、Maya、SoftImage、Motion Builder、Mudbox のバージョン 2013 並びにパッケージ製品に関する最新情報が解禁 された。今回のバージョンアップでは、個々のソフトの機能強化はもちろんのこと、近年オートデスクが力を入れている各ソフトウェア間の相互運用性の強化がさらに向上しているとのこと。まずは、個々のソフトにフォーカスしながらバージョン 2013 のトピックを紹介していこう。

Autodesk Entertainment Creation Suite Ultimate 2013パッケージ

Autodesk Entertainment Creation Suite Ultimate 2013

info.
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1.Autodesk 3ds Max 2013

まずは、Autodesk 3ds Max 2013(以下、3ds Max) だ。今回発表された3DCGアニメーション製品群の中で、1番機能強化が図られたのは 3ds Max だろう。今回のアップデートではレンダリング手法を中心とした機能強化と細かい部分での操作感の向上が図られている。

Autodesk 3ds Max 2013

Autodesk 3ds Max 2013

スレート合成エディタの搭載
大きな機能追加としては、まずレンダリング結果を、即座に 3ds Max 内で合成することができる スレートコンポジティングエディタ の搭載がある。この スレートコンポジティングエディタ を使った合成作業の結果は、Adobe After Effects と Adobe Photoshopへ、2Dと3Dデータを含む様々な情報を転送し、相互連携しながらコンポジット作業を行うことができるようになっている。

スレート合成エディタから、After Effectsへデータを転送する際のコンポジットリンクの設定画面。カメラやライトなど相互運用したい要素を選択することができるようになっている。


Autodesk 3ds Max and 3ds Max Design: Slate Compositing Editor

Adobe After Effects & Photoshop との相互運用性
そして、スレートコンポジティングエディタによる合成作業で使用するエレメントはステートセットとしてまとめられ、3ds Max 内で合成した結果を、カメラ、ライト、Null オブジェクト、平面オブジェクト、ソリッド、フッテージなどのキーフレーム付きのレイヤーとして After Effects に転送して、3Dレイヤーでの合成に利用できるようになっている。このような機能は、これまでサードパーティの MAX2AE などプラグインを利用することで似たようなことが可能であったが、新機能のAfter Effectsとの連携機能を使用すると、After Effects 側でカメラやフッテージなどのレイヤーのモーションパスを変更すると、3ds Max 側のオブジェクトのモーションパスも変更されるというように、After Effects と 3ds Maxの双方向への情報転送が可能となっている。双方向に転送できる情報は、ブレンドモードや不透明度、エフェクトなども含まれ、フィニッシングをAfter Effectsでおこなっているユーザーにとっては、作業の効率化を計れるうれしい機能だろう。

スレート合成エディタのステートセットの画面。アンビエントオクルージョンなどのエレメントをノード形式で合成し、調整することができる。合成結果はもちろん After Effects へレイヤーとして転送できる


Autodesk 3ds Max and 3ds Max Design 2013: Adobe After Effects Interoperability


Autodesk 3ds Max & 3ds Max Design 2013: Enhanced Interoperability with Adobe Photoshop


iray レンダリングの ActiveShade 化
レンダリング関連の機能アップとしては、前バージョンから搭載された NVIDIA の GPU レンダリングエンジン iray レンダリングに新しく ActiveShade 機能 が加わった。この機能によって、iray によるレンダリングにおいて、リアルタイムでのレンダリング確認を行うことができるようになっている。カメラ、ライト、マテリアル、ジオメトリに変更をかける度に iray のレンダリングビューのレンダリング結果が更新され、最終レンダリングに近いレンダリング結果を即座に確認することができる。また、リアルタイムプレビューの強化としては、Nitrous も改良 されているとのこと。デモを見た限りでは、とても高速に更新されていたので、これまで以上にレンダリング結果の試行錯誤を行えるだろう。さらなるイメージのクオリティアップが望める機能だ。

NVIDIA iray Active Shadeによるインタラクティブレンダリング NVIDIA iray使用時に、使用する GPU の選択など、ハードウェアリソースを効率的に管理することができるようになっている

(左)NVIDIA iray Active Shadeによるインタラクティブレンダリング。使用している GPU にもよるが、とても高速に表示の更新を行うことができる
(右)NVIDIA iray使用時に、使用する GPU の選択など、ハードウェアリソースを効率的に管理することができるようになっている

Nitrousによるビューポートレンダリングでの被写界深度効果の実現 Nitrousのビューポートレンダリングでは、被写界深度の他にIBLもレンダリング可能だ

(左)Nitrousによるビューポートレンダリングでの被写界深度効果の実現
(右)Nitrousのビューポートレンダリングでは、被写界深度の他にIBLもレンダリング可能だ


Sneak Peek: Nitrous - Solomon Jagwe


MassFX の機能強化
シミュレーション関連の機能では、前バージョンで搭載された、物理シミュレーション MassFX システム の機能強化や新機能追加がなされている。2012バージョンでは、リジッドボディのみのシミュレーションであったが、今回から布を扱う mCloth が搭載され、布を部分的に強度を設定して、力の加え方によって、部分的にちぎれていくようなシミュレーションも可能になっている。また、モータなどの外力も追加や破壊シミュレーションもできるようになり、より表現力の高い物理シミュレーションを行うことができるようになった。


Autodesk 3ds Max & 3ds Max Design 2013: MassFX Enhancements


Sneak Peek: MassFX - mCloth

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2.Autodesk Maya 2013

次に Autodesk Maya 2013(以下、Maya) を紹介したい。Maya 2013では、ダイナミクス・シミュレーションやアニメーション、レンダリングといった部分に新たな機能が追加されたほか、新たに導入された Open Data イニシアティブ により 3DCG 制作の最新ワークフローに容易に対処できるようなアップデートとなっている。今回のアップデートでは、ソフトウェアのコア部分からの見直しが図られているとのこと。

Autodesk Maya 2013パッケージ

Autodesk Maya 2013

リアルな毛髪シミュレーション nHair
前バージョンにも Hair のシミュレーションシステムが搭載されていたが、今回から Maya Nucleus のソルバとして、nHair が搭載されたことにより、リアルな毛髪の動きとカーブベースの物理シミュレーションを行うことができるようになっている。毛髪のカットや、毛髪同士の絡み合う動作なども非常にリアル動作を簡単に表現することが可能だ。nHair は Nucleus に統合されているため、他の nClothnParticle といったモジュールとも双方向で操作可能になっており、複雑なシミュレーションも可能になっている。この他にも、物理シミュレーションの機能として AMD Bullet Physics エンジン も搭載され、ソフトボディ、リジットボディの双方を単一システムでシミュレーションすることができるようになっている。

nHairを使った作例

nHairを使った作例。巻き髪などの複雑なヘアスタイリングも可能。リアルな毛髪表現とカーブベースのダイナミクスを実現した

Bullet Physics エンジン

Bullet Physics エンジンを使用して、建物の鉄骨が崩れる様子をシミュレートしている作例。リジットからソフトボディまでシミュレートすることができる

Atom によるアニメーション転送
一見地味であるが、ユーザーとしては非常に便利であろう機能に ATOM(Animation Transfer Object Model) によるアニメーション転送の機能がある。簡単に言ってしまうと、キャラクターモデルに付けたアニメーションをもう一方のキャラクターモデルに転送する機能だが、キーフレームの他に、コンストレイントの情報やエクスプレッションなどのデータも転送することができる。これらの情報は ATOM オフラインファイル形式として転送される。

ATOMファイル形式によるアニメーション転送の設定画面

ATOM ファイル形式によるアニメーション転送の設定画面。設定をファイルとして保存することができるので、ライブラリの構築なども楽になるだろう。


Autodesk Maya 2013: ATOM Animation Transfer

Alembic キャッシュによる大規模データセットの受け渡し
Sony Pictures Imageworks Inc. と ILM を傘下に置く Lucasfilm Ltd.が共同開発した中間ファイルフォーマット、Alembic に対応したことで、大規模なデータであっても、より快適にデータの受け渡しができるようになった。例えば 16GB 程度あるような街並みのシーンデータなどは、そのまま扱うと、リアルタイムでのビューポート操作はほぼ不可能であるが、GPUのキャッシング機能を使用してAlembicのキャッシュデータを生成して、そのキャッシュデータを利用してリアルタイムに近い操作をビューポート上で可能にしている。

Alembicファイル形式で、大規模な都市の景観モデルを読み込んだ画面

Alembicファイル形式で、大規模な都市の景観モデルを読み込んだ画面。


Autodesk Maya 2013: Dynamics:Maya nHair/Bullet Physics/Alembic Caching デモ

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3.Autodesk SoftImage 2013

Autodesk SoftImage 2013(以下、Softimage) では、ICEによる群衆シミュレーションやプレビュー環境の強化、リギングおよびアニメーション機能が強化された。

Autodesk SoftImage 2013パッケージ

Autodesk SoftImage 2013

ハイクオリティビューポートの実現
3ds Max や Maya ではすでに搭載されている、ハイクオリティビューポート が、SoftImage でも実現された。mental ray シェーダを設定すると、ほぼ最終レンダリングと同じ結果をビューポートにレンダリング結果が表示されるようになっている。アンビエントオクルージョン(AO)や法線マップもサポートされている。

mental rayによるハイクオリティビューポート

mental ray によるハイクオリティビューポート。アンビエントオクルージョンや被写界深度など、様々な要素のプレビューが可能だ


Autodesk Softimage 2013: High Quality Viewport

Softimage 2013 - High Quality Viewport
改良されたハイクオリティビューポートのデモ(環境マップのリフレクションと半透明の描画)※デモデータ提供:中間耕平氏(WOW inc.)

ICEベースの群衆シミュレーション CrowdFX
今回のバージョンから、SoftImage にも群衆シミュレーション機能 CrowdFX が搭載された。従来、群衆シミュレーションは、AI 機能を使って組んでいくため非常にハードルが高いツールであったが、CrowdFX では、群衆の振るまい、障害物、行動範囲の設定などを、ICE ベースで簡単に設定することが可能となっている。CrowdFX は、SoftImage 内の様々な機能と連携を行うことができるため、コンストレイント機能と連携して、凹凸のある地形を歩かせるなど、通常の AI システムでは、非常に手間のかかる条件付けも簡単に設定が可能だ。CrowdFX で作成された群衆シミュレーションは、Maya2013 や 3ds Max 2013 にエキスポートして、読み込み先にて作成したシーン内で利用することが可能になっている。

CrowdFX

CrowdFXは、ICEベースの群衆シミュレーションであるため、容易にシミュレーションを実行でき、なおかつカスタマイズ性に優れている


Autodesk Softimage 2013: CrowdFX

アニメーション機能の向上
これまでのアニメーションミキサや、GATOR、ドープシート、シノプティックエディタ、プリミティブボーンが機能強化され、マニピュレータで簡単に F カーブをリタイムしたり、シノプティックエディタ内では Python がサポートされ、より高度なリギングが可能になっている。

GATOR を使用して、キャラクターモデルの属性転送を設定しているところ

図は、GATOR を使用して、キャラクターモデルの属性転送を設定しているところ。部分的な属性だけを転送することも可能

アニメーションのタイミング調整が可能なリタイムツールが搭載され、より動きの再調整が楽になっている

アニメーションのタイミング調整が可能なリタイムツールが搭載され、より動きの再調整が楽になっている

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4.Autodesk Motion Builder2013

Autodesk Motion Builder 2013(以下、MotionBuilder) では、編集したモーションを他の 3DCG ツールへ効率良く転送するための機能強化や、モーションデータを整理しやすくするための新機能など、モーションを作成するベースソフトとしての機能が大幅に強化されている。

Autodesk Motion Builder 2013パッケージ

Autodesk Motion Builder 2013

レコーディングデータをハードディスクに直接保存が可能に
これまで、Motion Builder を使用したモーショキャプチャ時やライブデータの入力時には、データをメモリ上に保存していたが、今回のバージョンでは、ハードディスク上に保存することができるようになった。このため、RAM 容量を気にせずテイクを重ねていくことができるようになり、アクションの流れを中断せずに収録が可能となっている。また、今回のバージョンからヘッズアップ(HUD)機能 を利用して、シーン名、テイク名、カメラ名、カメラの焦点距離などのメタデータをリアルタイムでビューアに表示することができるようになっている。

Story の録画の際に、メモリ空間でなくディスクへの書き出しに対応したことにより、長い尺のモーションも連続して収録が可能になった

Story の録画の際に、メモリ空間でなくディスクへの書き出しに対応したことにより、長い尺のモーションも連続して収録が可能になった

HUD を利用することができることで、モーションデータの管理が、よりわかりやすく、容易になった


Autodesk MotionBuilder 2013 Demo Video

5.Autodesk Mudbox 2013

スカルプトモデリングツール Autodesk Mudbox 2013 もアップデートされた。最新版では、サブディビジョン機能の強化や 16bit の Photoshop ファイルの対応、バンプと法線マップを組み合わせた単一の法線マップの作成、Gigatexel エンジンの採用により、より大量のディテールをモデルに表現することができるようになるなど、表現力の向上および他とツールとの連携が強化されている。

Autodesk Mudbox 2013パッケージ

Autodesk Mudbox 2013

Gigatexelエンジンによる高精細ディテール作成
今回のアップデートでは、新しい Gigatexel エンジン が搭載され、数十億テクセルの膨大な量の形状ディテールを作成することが可能になっている。巨大なスケールのモデルにおいても、カメラが寄っても使用可能なほどのディテールを保った、詳細なテクスチャを作成することができるので、キャラクターのようなモデルだけではなく、地形などのアセット作成などにも対応することができるだろう。

新しい Gigatexel エンジンを使った詳細なディテールの造り込みの例

新しい Gigatexel エンジンを使った詳細なディテールの造り込みの例。地表にかなり寄ってもディテールを保った表現が可能になっている。

ハードエッジや折り目、スムージンググループがサポートされた
Mudbox 2013 では、3ds Max や Maya、SoftImage など他のツール作成されたモデルに施されている、ハードエッジや折り目、スムージンググループを保持したまま、読み込んでスカルプトやペイントの作業を行うことができるようになっている。元のモデルデータの形状を変えずにペイントできることで、これまで以上に正確なテクスチャ作成が可能になっているとのこと。

サブディビジョンオプションにおいて、スムージンググループやハードエッジ保持の ON/OFF 設定が行える

サブディビジョンオプションにおいて、スムージンググループやハードエッジ保持の ON/OFF 設定が行える

タイリングが必要なスカルプトやペイントも簡単に
Mudbox 2013 では、繰り返しパターンを簡単にスカルプトしたりペイントしたりすることができるようになった。これらのタイリングのパターンはシームレスなテクスチャとして作成することが可能だ。屋根瓦のような、切れ込みや重なりがあるような形状のディテールもベクターディスプレイスメントマップとして、タイリングすることができるようになった。

タイリングのある形状をスカルプトした例

タイリングのある形状をスカルプトした例。タイリング平面を作成して、ペイントやスカルプトを簡単に行うことができる


Autodesk Mudbox 2013: New Features

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6.Autodesk Entertainment Creation Suites Ultimate 2013

ワンステップでツール間のデータ相互運用が可能になったことにより、より効率の良いワークフロー構築が可能になっている。

Autodesk Entertainment Creation Suite ultimate 2013パッケージ

Autodesk Entertainment Creation Suite ultimate 2013

よりデータ互換が改善され、
ワークフローが効率化されたツール群

これまで、主なツールのアップデート内容を紹介してきたが、最後に今回のアップデートのメインともなる、各ツール間のデータ互換性の強化をうたった、Autodesk Entertainment Creation Suites Ultimate 2013 の各ツールの新しい連携強化を紹介したい。Autodesk Entertainment Creation Suites Ultimate 2013は、Autodesk社からリリースされている、3DCG アニメーションツールを集めた、いわゆる "全部入り" のパッケージであるが、これまでよりも各ツールのデータ互換、相互運用が強化により、オートデスク社のツールを使った新しいワークフローを体験することができる。

Autodesk Entertainment Creation Suite 2013 製品構成比較

Autodesk Entertainment Creation Suite 2013 製品構成を比較したもの。新たに加えられた「Ultimate バージョン」では、まさに "全部入り" のパッケージとなっている

例えば、アニメーションデータ関連では、Motion Builder と Maya の間では、Maya で作成した Human IK を Motion Builder に転送して、ライブストリーミング接続を構築し、Motion Builder 上で作成したアニメーションを、即座に Maya のキャラクタに反映させ動きを確認するようなことができたり、3ds Max と Maya、Motion Builder 間では、CAT で作成した二足歩行キャラクターをHuman IKと互換のあるキャラクターデータにワンステップで変換して利用することができるなど、これまでツールの違いによる面倒なリグの再構築などの作業が簡易化されている。また、これまでなにかとノウハウが必要だった、Maya と 3ds Max 間でのデータ互換も、双方からワンステップで転送することができるようになり、Maya と 3ds Max が混在するようなワークフローにおいてもスムーズな作業の流れを作ることができるようになっている。
今回のアップデートに顕著な、ツール間でのデータを相互利用できる機能強化は、各ツールに特化した人員確保が難しくなった日本での制作環境では、非常に有効なアップデートなのではないだろうか。

3DCG アニメーションソフトウェア 2013 バージョンのコマーシャル新規スタンドアロンライセンス価格一覧

3DCG アニメーションソフトウェア 2013 バージョンのコマーシャル新規スタンドアロンライセンス価格一覧。2012年4月12日から製品出荷開始予定だ(各製品に関する詳細は、公式サイトならびに販売代理店へ問い合わせのこと

TEXT_大河原浩一(Bit Pranks