今週末から大型連休となるゴールデンウィークが始まりますね。
4月に入学、入社したばかりで、この連休を活用してスキルアップしたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

今週は『GW直前スキルアップ応援特別企画』としてスキルアップに役立つ書籍から一部抜粋して掲載をしていきます。
本日は「グレン・ビルプのドローイングマニュアル」より"ジェスチャー"を掲載します。

  • グレン・ビルプのドローイングマニュアル
    著者:グレン・ビルプ Glenn Vilppu
    発行・発売:株式会社 ボーンデジタル
    ISBN:978-4-86246-378-4
    サイズ:A4変形(22.9 × 26.7 mm)
    総ページ数:208 ページ
    価格:3,456 円(税込)
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ジェスチャー

人間のアクションを「ジェスチャー」と呼びます。ジェスチャーは人の動きや姿勢といったものを意味します。人間であろうと動物であろうと、ボディランゲージとそこに表れる微妙な差異が個々を特徴付けます。この点からは、私が「モデル」と言ったときには、30 秒〜3 分という決まった時間に、決まったポーズをとってくれるモデルだけでなく、(わざわざポーズをとることなく)日常生活を送っている人々も含まれることになります。ジェスチャードローイングは、基本的には、「クイックスケッチ」と呼ばれる手法と同じ手順で学んでいきます。

ドローイングのレッスンが、通常のクイックスケッチと異なるのは主に、学習過程の最初の数段階のみを使用することです。本コースの後半では、ジェスチャードローイングにそのほかのビジュアル学習ツールを組み合わせ、長時間かけてドローイングを仕上げていきます。したがって、目指す結果も異なります。クイックスケッチでも同じツールをいくつか使用しますが、目指す方向性がまったく異なります。

"ドローイングにおいて最も重要な要素は、ジェスチャーただ1 つです "

ジェスチャーは、「アティチュード」「姿勢」あるいは「ボディランゲージ」と呼ばれることもあります。ドローイングにおいて最も重要な要素は、ジェスチャーただ1 つです。どれほど仕上げに凝っても、私たちが実物を見たときに経験した個性が感じられなければ、そのドローイングは訓練のための訓練にすぎません。私たちは実際に相手の顔を見るよりも前に、全体的な身のこなしや体の比率(プロポーション)、服装、歩き方、頭の傾き具合といった個性を作りあげる要素すべてによって、その人物を遠くからでも見分けることができます。

ここからは、ジェスチャードローイングについて一連の手順を追い、重要なポイントを明らかにしていきます。もちろん、現実にはそれほど秩序立ってもいませんし、単純でもありません。

手順の多くは、実際には同時に行っていきます。体の各部のアクションを組み上げたものが「全体像(トータル)」となるわけですが、本レッスンの核となるテーマはこの「トータル」です。前ページのイラストは「トータル」の例です。実際に描き始める前に、このジェスチャーの全体像を頭でイメージし、理解している必要があります。

"描き方だけではなく、観察の方法も学んでいるのです "

対象を観察し、その記憶を頼りに描く練習をしましょう。ジェスチャースケッチをするときには、ドローイングを描きあげるまでモデルがじっとしていてくれることは望めません。バスに乗っているとき、テレビを見ているとき、ショッピングモールにいるときなど、このスキルを磨く機会はいくらでもあります。

アクション、つまりジェスチャーの観察においては、紙の上にラインを引く前に、トータルをとらえることが大切です。対象を見る練習をし、それから記憶を頼りに描きます。この練習が特に役に立つのは、スケッチブックを携帯していない場合(あってはいけないことです)や、何らかの理由でドローイングしづらい状況にいるときです。頭の中でドローイングするときにも、紙に描くときと同じ手順をたどり、同じラインを(頭の中で)引きます。手の代わりに、頭で描くだけのことです。その後、可能であれば紙の上に描き直しましょう。

練習すると、その成果に驚くはずです。もちろん、そうなるまでには練習が必要です。

基本手順

体が覚えてしまうまでの間は、同じ手順でドローイングしましょう。そう考えることなく、車の運転ができるようになるのと同じことです。人体のトータルアクションを表す、単純なラインを引くことからはじめます。シェイプ(形状)を気にする必要はありません。シンプルな手順ではじめましょう。いいですね、「ルールはありません。ツールです!」

Step 1

まずはシンプルな卵形で頭部を描きます。中心を通る軸を想像すると、対象の上下または左右方向への傾きをはっきり示すことができます。頭部が手前側に傾いている様子は、頭頂部に「点」を付けて示します。また、目の位置に楕円を描くことで、頭部のアクションを明確にすることもできます。

Step 2

頭部からラインを1 本引き出します。これが首です。このラインは、モデルの実際の輪郭線や目に見えるラインではありません。モデルの姿勢の大まかな雰囲気を表すようにしましょう。頭部から続いている首を表すラインに続き、上半身、そして腰を表すラインを順に引きます。ここで集中する必要があるのは、ラインがモデルのアクションを表しているかどうかです。モデルにそのようなラインが実際に見えているかどうかは関係ありません。このページの例を見てください。ラインはどのようにも描けます。ドローイングの導入向け教本によく見られる、いわゆる棒人間とは違います。これは、動きの流れと各部位の関係をシンプルに示したラインです。

Step 3

同じようにして、脚に進みます。ラインをつなげる必要はありません。「ルールはありません。ツールです!」を忘れずに。鑑賞者が見るのは、アーティストが紙の上に描いたラインだという単純な事実を忘れないことが重要です。ここで引くラインは、ライン自体が対象のアクションの雰囲気を伝えるものでなければなりません。動感と連続性を与えるためには、ラインから次のラインへと、自然な流れで引いていきます。

"ドローイングにおいて最も重要な要素は、ジェスチャーただ1 つです "

Step 4

次に、脚を描いたのと同じようにして、腕と手を加えます。先ほどと同様、各ラインをつなげる必要はありませんが、動きと大まかな位置を示すように引いていきます。

実際のところ、ここまでの手順にかかるのは長くても30 秒、平均ではせいぜい10〜15 秒といったところです。このシンプルな手順を可能な限り何度も練習します。通常の昼間のクラスなら、生徒たちに、6時間通しでこれをやってもらいます。

フォーム(立体形状)を感じながらこのシンプルな第一段階を描けるようになったら、もう一歩進めて、もう少し外側にラインを加えていきます。このときに、フォームの収縮と伸張(押しつぶされたり引き伸ばされたりしている様子)を「感じ」ましょう。以降のページに掲載した例が、これをどう表現しているかを見てください。

このレッスンの最も難しい部分は、モデルを「写し取りたい」という気持ちに打ち勝つことです。忘れないでください。私たちは「モデルをそのまま写し取るのではありません。モデルを分析するのです」

"写し取るのではなく、モデルを分析するのです "

人体の周りに描いた矢印を見てください。フォームの収縮と伸張(スクウォッシュとストレッチ)の方向を私が感じた通りに示したものです。

自分がそのポーズをとっていると考え、感じてみましょう。または、実際にポーズをとってください。引き伸ばされたり、収縮して盛り上がっている部分、どちらの脚に体重がかかっているかなど、アクションに意識を集中しましょう。

アコーディオンを想像してください。
片方の側が圧縮されると、もう一方の側は伸びます。

ここまで、ジェスチャードローイングにはまるで決まりきった公式があるかのように説明してきましたが、最終的なドローイングはまったく機械的には見えないことに注目してください。

"アクションに集中すると、見る人にもアクションが伝わるようになります "











書籍情報

  • グレン・ビルプのドローイングマニュアル
    著者:グレン・ビルプ Glenn Vilppu
    発行・発売:株式会社 ボーンデジタル
    ISBN:978-4-86246-378-4
    サイズ:A4変形(22.9 × 26.7 mm)
    総ページ数:208 ページ
    価格:3,456 円(税込)
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