Houdini公式YouTubeは7月7日(火)、Skydance AnimationによるAnnecy HIVE 2026での講演動画「Swapped: Bringing the Four Elements to Life with Houdini | Skydance | Annecy HIVE 2026」を公開した。Netflix『プークーと魔法の植物(原題:Swapped)』における巨大なダムの崩壊や津波、キャラクターに追従する炎、広大な森の火災など、Houdiniによるエフェクト制作のブレイクダウンを解説している。

ダム崩壊における長尺シミュレーションとカスタムソルバの構築

講演ではまず、巨大なダムが崩壊するシーケンスの制作手法を解説。ショットごとに個別のシミュレーションを行うのではなく、約1,000フレームにわたる長尺のFLIPシミュレーションを一度に計算するアプローチを採用している。その結果はプロキシとしてレイアウト部門に共有され、カメラワークを後から柔軟に調整できるパイプラインを構築。また、貯水池とダム崩壊による滝という2つの異なるシミュレーションを自然に馴染ませるため、Vorticity(渦度)やVelocity(速度)、飛沫のスケールに基づいたマスキング手法を活用している。

さらに、岩の質量やサイズに基づいて破壊の起点やタイミングを制御するマスクシステムを導入したほか、標準のソルバでは計算負荷が高すぎたため、2億5,000万以上のパーティクルを処理できる独自のホワイトウォーターソルバを開発して大規模な流体表現に対処しtたという。

津波の制御を支えるカスタム重力とPscaleの活用

押し寄せる巨大な津波のエフェクトでは、常に力強い水流を維持するために、コリジョンジオメトリに沿ったカスタムのVelocity Fieldを設定。Turbulent Noiseを適用した速度フィールドを注入し続けることで、波のディテールを絶えず生成している。

さらに、空高く舞い上がった飛沫が制御不能になるのを防ぐため、水面からの高さと距離に基づいて引力が変化するカスタム重力システムを構築。これにより、高い位置にあるパーティクルほど強い重力で素早く落下させることが可能になり、破綻のない巨大な水しぶきを実現している。

また、ホワイトウォーターのPscaleを制御し、水面に近い泡は小さく、空中に飛散した泡は大きくインスタンス化することで、視覚的なスケール感と説得力を高めている。

70ショットにわたる滝を効率化するクラスタシミュレーション

続いて、約70ショットに及ぶ滝のシーケンスにおける軽量化と効率化の手法について解説。アニメーションやレイアウトの作業リファレンスとして、まずはベースとなる低解像度のFLIPシミュレーションを提供した。その後、確定したアニメーションを入力として受け取ってから波紋や水しぶきといったディテールを重ね合わせている。

ここでは長大な滝を11のクラスターに分割してシミュレーションを行う手法が用いられており、カメラに映らない領域の計算を省くことで、処理速度の向上と効率的なレンダリングを実現。デフォルメされたスタイライズドな背景形状に合わせて水流を強制的に沿わせつつ、物理的に正しい挙動を両立させたという。

悪役ファイヤーウルフの表現

物語上重要な役どころとなる悪役・ファイヤーウルフの表現は、キャラクターの演技とエフェクトが直接連動する難易度の高い課題となった。キャラクターの顔を炎が覆い隠してしまわないように、LifespanやTemperature、Fuel値を細かく調整し、さらには炎の形状を誘導する速度フィールドを追加。基本的にはHoudini標準のPyroソルバを使用しているが、複数のシーケンスにまたがって一括展開できる堅牢なセットアップを構築しつつ、特定のショットでのみ個別の微調整を行えるシステムを採用することで、ディレクターの細かな要望に応えながらも量産に対応したという。

広大な森の火災とプロキシを用いた他部署との連携

広範囲に及ぶ森の火災シーンでは、燃え広がる速度やタイミングを検証した上で、環境内に配置された無数の樹木に対して炎のエフェクトを付与。計算コストを抑えるため、ベースとなる巨大な炎のシミュレーションに加えて、回転やTime Scaleをランダムに変更してバリエーションを持たせた樹木のインスタンスを配置している。

その際、ライティングなどの他部署がシミュレーションの再計算なしに炎の形状を微調整できるよう、煙のVDBから軽量なジオメトリを生成したり、ポイントをAdvect(移流)させたりしたプロキシを用意。これにより、他部署でもビューポート上で炎のシルエットを直感的に確認・調整可能になった。

■Swapped: Bringing the Four Elements to Life with Houdini | Skydance | Annecy HIVE 2026(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=2lQTAtOAS4I

CGWORLD関連情報

●SideFX、プロダクション向けAPEX活用アニメーションワークフロー解説動画公開 Paris HUG 2026でのマッテオ・マルティネス氏による講演

Houdini公式YouTubeが、Mattéo Martinez氏によるParis HUG 2026での講演動画「APEX in Houdini: Evolving Animation Workflows for Production | Mattéo Martinez | Paris HUG 2026」を公開。APEXを活用した、柔軟かつ高度なプロダクションワークフローについて解説している。Alembicキャッシュとの比較による劇的なデータ軽量化や、CFX(Character FX)向けカスタムリグの構築、VEXや機械学習環境との統合などを紹介。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202607-Houdini-APEX.html

●SideFX、Houdiniによる『トロール2』メイキング動画を公開 Vellumを用いた心臓表現、RBDによる建物の破壊、KineFX活用の樹木制御など

Houdini公式YouTubeが、映像制作スタジオOne of UsのFXテクニカルディレクター・Anthony Maalouf氏の講演動画「The Weight of a Giant: Orchestrating Large-Scale FX on Troll 2」を公開。Netflix『トロール2』のクライマックスにおける川での戦闘シーンを題材に、AIに頼らない伝統的で高度なエフェクト制作手法を解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202607-Houdini-Troll2.html

●SOP Cemetery、Houdiniによる3DGSデータのリギング&アニメーション作成チュートリアル動画公開 シーンデータ無償配布

Bogdan Lazar氏が動画「Animate Gaussian Splats with Houdini - Free Tutorial + Scene Files」を公開。3DGS(3D Gaussian Splatting)データをHoudini上でアニメーションさせるワークフローを解説し、シーンデータをGumroadで無償配布している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202607-Houdini-3DGS.html