SideFX社は9月29日(火)、日本語公式サイト上にFrame48のHoudini事例解説記事「小規模スタジオ環境における APEX、Solaris、USD の役割」を公開した。Frame48のCGスーパーバイザーEnrique de la Garza氏が、Lenovo「Yoga Pro 7a」の広告映像制作を題材に、HoudiniのAPEX、Solaris、USDを活用したパイプラインの構築手法を解説している。

▲Frame48が手がけたLenovoの広告映像「Introducing the Lenovo Yoga Pro 7a」

USDとSolarisを中心とした制作パイプラインの再構築

Frame48は2024年末、従来のHDA(Houdini Digital Asset)を中心としたワークフローから、USDとSolarisを基盤とするパイプラインへの移行を決断。従来はショットごとにHDAの更新を反映する必要があったが、新方式ではUSDの参照機能とレイヤー構造を利用し、アセットの修正を複数のショットに展開できるようになった。Lenovoの案件では、車のモデルを丸ごと差し替える際、シーングラフの構造、メッシュ名、リグのコントロール名を旧モデルと一致させることで、既存のアニメーションを維持したまま全ショットの更新に成功。火山アセットも制作期間中に36を超えるバージョンを作成したという。

APEXリギングの自動化とUSDSkelによる再生速度の改善

アセット制作では、モデルの読み込みから基本的なAPEXリグを備えたUSDアセットの生成までをワンクリックで実行するテンプレートを構築。未加工のモデルからアニメーション可能な初期バージョン作成までの最速記録は26秒とのことだ。また、APEXからSolarisのLOPへアニメーションを渡す方式としてUsdSkelを採用。メッシュを構成する膨大な頂点の位置情報ではなく、少数のジョイントの変換情報を保存することでデータ量を削減し、同社のテストではSolaris上の再生速度が約2〜3倍に向上したという。ただし、UsdSkelでスキン法線に不具合が発生する箇所では、HuskのプリレンダリングスクリプトでUsdSkel.BakeSkinning()を実行し、変形結果を頂点にベイクして対処した。

APEXからLOPへのアニメーション転送とRBD Car Rigの活用

車両やキャラクターのアニメーションには、SOP内のAPEX Scene Animateノードを使用し、比較的単純な移動にはLOPのTransformノードを利用。アニメーション完成後は、APEX Unpack Characterでスケルトンを取り出し、LOP内のSOP Import Characterノードへ渡す。その際、USDのプリミティブパスを一致させることで、静的なアセットにアニメーション済みスケルトンを重ね合わせる。この処理は「F48_Apply Anim」というHDAにまとめられ、軽量なデータ転送を実現。また、ハイパーカーのアニメーションの一部にはHoudini標準のRBD Car Rigを採用し、物理挙動に基づいた車両の動きを効率よく調整しているという。

火山環境のプロシージャル配置とF48_Instancerの開発

火山の環境制作では、Height Fieldによる地形生成、アセットの手動配置、Scatterによる分布生成、USDインスタンシングを組み合わせている。Frame48では、この作業を簡略化するカスタムLOPツール「F48_Instancer」を開発。任意のSOPポイントを入力し、アセットデータベース内のUSDアセットを接続するだけで配置でき、バリアントやLODの切り替え、回転やスケールのランダム化、アニメーション付きアセットのリタイムや時間オフセット制御にも対応する。

USDサブレイヤーによるFXの分業とキャッシュ・レンダリング管理

FX制作では、同一ショットを複数のアーティストが並行処理できるよう「F48 Shot Exporter HDA」を改良。ショット「VLC_0240」では、Pyro、Debris、Explosionを個別のUSDサブレイヤーに分割し、FX用のUSDファイルを経由してメインのショットに統合している。

また、独自ツール「F48 SOP USD Cache」では、シミュレーション結果を.bgeo.sc形式で一度だけ書き出し、GeoClip SequenceやVolume LOPからUSD経由で直接参照することで、キャッシュの二重保存を回避している。

最終レンダリングでは、F48 Shot HDAを「RENDER」モードに切り替えて各部署のレイヤーを読み込み、パブリッシュ済みアセットのバージョンを固定。さらに、Render Geometry SettingsとPruneノードでレンダーレイヤーを構成し、Huskを介してレンダーファームへ送信する。これにより、レンダリング中のデータ更新による不整合を防いだという。

■Frame48 // Lenovo(SideFX)
https://www.sidefx.com/ja/stories/frame-48-lenovo/

■The Role of APEX, Solaris and USD in a Small Studio Environment(Garza氏ブログ)
https://edelagarza.com/blog/sidefx-enrique

CGWORLD関連情報

●the point and prim、チュートリアル動画「Houdini Transform pieces but its LOPS」公開 定番RBDシミュレーションをLOPとUSDで効率化

the point and primが動画「Transform pieces but its LOPS (USD layers / point xform LOP tutorial)」を公開。HoudiniにおけるRBDシミュレーションの定番ワークフローであるTransform Piecesを、LOPとUSDレイヤーを用いて効率的に再現する手法について解説。なお、本チュートリアルで使用したHIPファイルはGumroadで無償配布している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202610-HoudiniLOPS.html

●Daniel Albarracin氏、Houdiniでの建物再構築エフェクトのチュートリアルを公開 点群や行列を利用したジオメトリックな破片のアニメーション

FramestoreのFX TD・Daniel Albarracín氏がHoudiniを用いた建物再構築エフェクトのチュートリアル動画「Procedural Building Reconstruction FX | Houdini Tutorial」を公開。TVドラマ『ワンダヴィジョン』(ディズニープラス)におけるILMのVFXから着想を得た、テトリスのブロックのように直角に切り出された建物の破片が、ジオメトリックな形状のまま空間に構築されるアニメーションの制作手法を解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202609-Houdini-Reconst.html

●SideFX、Houdiniユーザーグループの講演動画公開 SideFX Labsのアップデート情報、Copernicus、MLモデルの活用など

Houdini公式YouTubeが動画「Summertime HUG」を公開。本動画では4名のプレゼンターが登壇し、SideFX Labsの最新アップデートをはじめ、SDFを活用したモデリングから群衆制御に至るキャラクターワークフロー、刷新された画像処理フレームワークCopernicusによるプロシージャルなパターン生成、そしてMLモデルを直接読み込んで実行するライブリライティングなど、Houdini 22の新機能を中心とした技術情報を解説している。
https://cgworld.jp/flashnews/01-202609-Houdini-HUG.html