2024年2月3日(土)、コナミデジタルエンタテインメントは自社のアニメ制作スタジオ「KONAMI animation」の設立を発表した。

ゲーム制作で培った技術・知見をアニメーション制作に活かす

設立発表の同日、本スタジオは東京ドームにて開催された遊戯王カードゲーム25周年記念イベント「遊戯王デュエルモンスターズ 決闘者伝説(The Legend of Duelist) QUARTER CENTURY」にて、オリジナルアニメーション『Yu-Gi-Oh! CARD GAME THE CHRONICLES』を上映。

遊戯王カードゲーム25周年特別映像「Yu-Gi-Oh! CARD GAME THE CHRONICLES」

同アニメーションは、長きに渡る遊戯王カードゲームのキャラクターや世界観を約6分の中に織り込んだものだ。東京ドームに集まった観客たちと、ステージ上の出演者はIPの歴史を踏まえたアニメーションを前に歓声を上げていた。

▲東京ドームのステージイベントでは、フィギュアスケート選手の田中刑事氏、ロックバンドNovelbrightの沖 聡次郎氏に加え、YouTuberのはじめしゃちょー氏、東海オンエアのメンバー虫眼鏡氏らが出演。25周年を記念するアニメ『Yu-Gi-Oh! CARD GAME THE CHRONICLES』を鑑賞した

こうしたクオリティは、KONAMI animationの公式サイトに書かれた「ゲーム制作で培った技術・知見・環境のすべてを、余すことなくアニメーション制作に注ぎこみ、ジャパニメーションをダイナミックに進化させる」という意気込みが元になっているようだ。

その言葉通り、同スタジオでは、コナミデジタルエンタテインメントならではのビデオゲーム開発経験を基にした制作環境を明らかにしている。

KONAMI animationは既存のアニメーション制作の業界に敬意を払うとともに「ゲーム制作を支える環境づくりを応用し、クリエイターによって理想的な環境を整える」ことや、「ゲーム制作の技術や知見との前衛的融合を図り、独創的かつ効率的な制作フローを構築する」ことを表明しており、これまでのゲーム開発経験をアニメ制作に活かすスタンスだという。

特に具体的なイメージが湧くのは「作画、演出、ゲームエンジンの活用など、あらゆる視点から比類なき表現を追求」すると語る点だ。現在、アニメ制作の現場でもUnityやUnreal Engineを活用する事例が増えている。そこで、ビデオゲーム開発の専門会社がアニメ制作においてどのようにゲームエンジンを活用していくのかも非常に興味深い。

昨年7月のTVアニメOP制作にも参加

さらにKONAMI animationの制作実績を確認すると、実は同スタジオが制作したアニメは『Yu-Gi-Oh! CARD GAME THE CHRONICLES』が初めてではない。

すでに昨年7月から放映されたTVアニメ『七つの魔剣が支配する』のOPアニメーションに、絵コンテ・CG・コンポジットとして関わっていたことが明かされている。今回の発表までにJ.C.STAFFなど大手アニメ制作スタジオに協力するかたちで実績を作っていたわけだ。

アニメ「七つの魔剣が支配する」ノンクレジットOP映像

近年のビデオゲーム業界では、任天堂やソニー・インタラクティブエンタテインメントなどが自社のIPの映像化に積極的でもある。その文脈から今回の発表を見ていくと、コナミデジタルエンタテインメントの場合、自社IPのメディアミックスを自社で完結できる体制になったともいえるだろう。

コナミデジタルエンタテインメントは他にも『実況パワフルプロ野球』シリーズや『桃太郎電鉄』シリーズの他、ファンが根強い『サイレントヒル』シリーズなどなど人気IPを多数、抱えている。今後はこれらIPのアニメ展開も、KONAMI animationによる制作が期待できるかもしれない。

当スタジオでは、「新たな環境でアニメーション制作に挑戦するスタッフや、ともに新たな作品づくりに取り組むパートナー企業も募集しています。詳細につきましては公式サイトよりお問合せください」とも語っている。ビデオゲーム業界がIPの映像展開に積極的な流れのなか、またひとつ興味深い事例が現れた。今後の展開に期待したい。


「KONAMI animation」公式サイト
animation.konami.net

TEXT_葛西 祝 / Hajime Kasai