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スクウェア(現スクウェア・エニックス)の映像制作チーム「ヴィジュアルワークス」で背景モデラーとして腕を磨き、Animal LogicやDouble Negative Visual Effectsでオーストラリア・シンガポールと5年間の海外生活を体験。CGクリエイターとして国内外にわたる活躍を続けてきた北田栄二氏が帰国後、今春に設立したのがModelingCafe福岡オフィスだ。出身地の大阪でも、クリエイティブが集まる東京でもなく、なぜ福岡を選んだのか、その理由について聞いた。

CGWORLD(以下、CGW):ModelingCafe福岡オフィスについて簡単に教えてください。

北田栄二氏(以下、北田):ModelingCafeはモデリングやコンセプトアートに特化したCG制作スタジオで、2012年に東京で創業しました。代表の岸本浩一を中心に数名でスタートしたのですが、「なにか尖った、おもしろいCGスタジオがある」ということで評価をいただき、現在は約30名にまで成長しています。

CGW:北田さんが帰国後に合流されたのは、どういういきさつがあったのでしょうか?

北田:これには「なぜ海外で働き始めたのか」という点から説明した方がよさそうですね。もともと旧スクウェアで6年ほど背景モデラーとして仕事をしていたのですが、結婚や子育てを経験して、次第にワークライフバランスについて関心が向くようになりました。まわりに外国人のクリエイターも多かったので、彼らと海外スタジオでの働き方について聞くうちに、興味がわいてきたんです。それで思い切って退職し、海外に移住することにしました。

CGW:それが帰国して福岡に移住されることに。

北田:帰国の理由はいろいろありますが、「地方都市で子供たちをのびのびと育てたい」「これまで自分を育ててくれた業界に対して恩返しをしたい」という思いがありました。そんなころ、たまたま岸本と話す機会があり、「帰国するなら一緒にやらないか。福岡に背景専門のオフィスを立ち上げるなら、会社で支援する」と言ってもらえました。まさに渡りに船でしたね。自分としても会社の中で働くことで、若い人の成長に貢献したかったんです。

CGW:これまで福岡で暮らした経験などはあったのですか?

北田:それが数回しか訪れたことがなかったんです。ただ一目惚れに近い感覚で、ここで生活して、仕事をしたいと強烈に感じました。都市がコンパクトにまとまっていて、ちょっと郊外に足を伸ばせば豊かな自然が広がり、物価も安く、シドニーやバンクーバーのような印象を受けました。大学や専門学校が多く、優秀な人材も抱負に排出しています。それに、妻の実家である小倉にも近いですからね。あらゆる意味で最適だったんです。

CGW:実際に福岡で働き始めて、どのような印象を受けましたか?

北田:以前から福岡にはゲーム系・映像系に限らず、ユニークな会社が多いと感じていました。特にゲームと違って、映像系では数名から十数名程度の、小規模だけどおもしろい作品を作っている企業が多いんですよ。通勤や通学のストレスが少なく、プライベートが充実しているからでしょうか・・・。東京と比べて人々が元気な印象も受けますね。弊社の若手社員も、ほとんどがオフィスから徒歩10分程度に住居を構えています。

▶︎次ページ:福岡で仕事をするメリットとは?

INFORMATION

  • 福岡クリエイティブキャンプ 2015

    主に首都圏で活躍しているIT・デジタルコンテンツ等の開発経験者(クリエイティブ人材)の福岡市内企業へのU/Iターン転職を応援するために,福岡市が実施するプロジェクトです。

    ●詳細はこちら●
    fcc.city.fukuoka.lg.jp/

EVENT INFORMATION


JOB INFORMATION

ModelingCafeでは『福岡クリエイティブキャンプ』を通じて以下の職種を現在募集しています。

【募集職種】
1.モデラー
2.コーディネーター
3.プロデューサー

【求人内容/応募はこちら】
http://fcc.city.fukuoka.lg.jp/work/303/

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CGW:実際に仕事をするうえで、どのようなメリットを感じますか?

北田:オフィスの賃料をはじめ、固定費が安い点は大きいですね。渋谷にある東京本社より1/3の賃料でおさえられています。CG関連の企業が市の中心部にぎゅっと集積していて、10分程度で行き来できるので、打ち合わせも効率的です。横の繋がりも強くて、長屋の寄り合い状態というアットホームな感じも受けますね。また、自分は映像系の専門学校で講師もしているのですが、若くて優秀な人材が多いのも強みですね。弊社でも地元採用を進めています。

CGW:一方で東京との距離の差を感じることはありませんか?

北田:距離の差がないといえば嘘になりますが、それを縮めるための環境作りは進めています。東京本社の背景チームと福岡オフィスとで分業して作業を進め、ある程度できあがったところで東京本社や福岡オフィスで仕上げを行うのが主な作業フローです。 日々のコミュニケーションはSkypeやチャットツールで行い、アセットは東京と福岡をVPNで結び、共通のファイルサーバを立てて管理運用しています。今後は海外の最新事例を参考に、パイプラインの整備も進めていきたいですね。

CGW:北田さん自身もディレクションを行うのですか?

北田:そうですね。背景モデリングは福岡で自分がディレクションし、キャラクターモデリングは東京で岸本が行っています。もっとも、自分もモデラーとして手を動かしていますよ。進行管理なども今のところは自分の仕事です。スタッフのモチベーション管理も重要な仕事の一つです。プロであれば仕事がモチベーションによって左右されてはいけませんが、まだまだ日本ではそうしたケアも重要ですからね。マネジメント業務もあるので、一人4役をこなしています(笑)

CGW:福岡オフィスの人員構成などについて教えてください。

北田:いまは自分も含めて7名で、うち4名が今春から入社した新卒です。そのうち3名は福岡出身で、1人は東京採用です。他に2年目の若手が1人、東京から移住しています。これ以外に1人、半常駐で働いてくれている外部クリエイターがいます。みな若いので、彼らを実務を通して育てながら仕事を進めています。自分の目が届く範囲でスタジオの密度を濃くしていきたいので、毎年若干名ずつ採用を続けて、12人で留めるつもりです。

▲福岡オフィスの社員

CGW:ちなみにお給料は・・・

北田:東京規準であわせていますので福岡勤務だからといって安くなったりはしていません。そのため物価も安く通勤時間も短い福岡での生活は、かなり魅力的ではないでしょうか。自分のように結婚や子育てでワークライフバランスを改善させたいという人にとっても、魅力的な選択肢の一つだと思います。一方で「となりの芝生は青い」という理由で採用をすることはありません。人数も少ないので、オペレーターをそろえるのではなく、クリエイター集団でありたいですね。


東京で研鑽を積み、海外に飛び出して技術や知見を深め、今また福岡でスタジオを構えた北田氏の生き方は、CGクリエイターの新たなロールモデルだろう。今後4ー5年かけて海外に通用するスタジオに育てていきたいという北田氏の挑戦に期待したい。

TEXT_小野憲史
PHOTO_弘田 充、BUZZHOOK

U/Iターン経験者に聞く!福岡のここが魅力!

  • 上の子が6歳、下の子が5歳で、東京よりものびのびと子育てができる点が良いですね。東京では電車で1時間かけて通っていましたが、今では車で2-30分程度に縮まりました。それでも「遠すぎる」と驚かれるくらいで、弊社のスタッフもみな徒歩5ー10分程度の場所に4ー6万円くらいの物件を借りて生活しています。クリエイターのコミュニティが小さく、つながりが密接なのも「ご近所づきあい」といった感じでいいですね。

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