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2016年3月26日(土)18時、東京ビッグサイトにおいて日本最大級のプロジェクションマッピングのコンテスト『東京プロジェクションマッピングアワード vol.0』が開催される。

本コンテストには、全国の大学および専門学校から9チームが参加し、東京ビッグサイト会議棟の建物に各チームの作品が投影される。上映会後には各アワードを表彰する表彰式もおこなわれる。イベントの開催に先立ち、主催の株式会社イマジカデジタルスケープのゼネラルマネージャー・早川正祐氏、株式会社ピクスのプロデューサー・諏澤大助氏、広報・新井香苗氏に本コンテストの開催目的や今後の展開などについて話を伺った。

--まず『東京プロジェクションマッピングアワード』とはどのようなコンテストなのかを教えていただけますか?

早川正祐氏(以下早川):わたしたちは、この『東京プロジェクションマッピングアワード』を若手クリエイターの登竜門として位置づけています。このアワードから多くのクリエイターが育っていって欲しいという願いから企画されたプロジェクトです。

プロジェクションマッピングのアワードとしても、作品が投影されるスクリーン面積としても国内最大級の規模だと思います。若手クリエイターの登竜門と銘打っていますが、今回は大学生及び院生、専門学校生を対象に参加チームを募集しました。現在は9チームがエントリーしており、作品の制作が進んでいるところです。イベントの主催はイマジカデジタルスケープとピクスの2社となっており、イベント運営を弊社が担当し、クリエイティブ面でのサポートをピクスが担当しています。

諏澤大助氏(以下諏澤):東京ビッグサイトでは過去2本、弊社がプロジェクションマッピングのコンテンツ制作を担当しました。機材の選定や設営から上映に関わってきているなかで、今回のイベントに繋がっていきました。

ピクスは映像制作を専門とするプロダクションですし、あまりイベント運営のノウハウがないので、運営に関しては関連会社のイマジカデジタルスケープにお任せしています。イマジカデジタルスケープはクリ博などの学生を対象にしたイベントの主催実績もある為、一緒に実施することになりました。

--今回のコンテストは学生対象の公募という形をとっていますが、どのような手順で学生の方たちが参加されているのですか?

  • 早川:チームエントリーという形態をとっていますので、エントリーするチームは必ず学校に許可をもらい、学校の担当職員もしくは教員が付くということを条件としてもらっています。今回は個人でのエントリーは想定していません。エントリーしていただいたチームには、昨年の年末にどのような作品を制作するのか企画書を作成してもらい、企画の内容とチームのメンバー構成、制作スケジュールなどをプレゼンしていただきました。

諏澤:学校を主体としたチームエントリーとしたのは、途中リタイアを少なくしたいというところと、学生たちの作品レベルがわからないので、日頃学校で指導している先生に担当してもらってチームを組んだほうが、クオリティアップに繋がるだろうという判断からです。

企画内容に関しては、公共の場での上映に際して不適切な表現がないかといった、技術的な内容評価というよりは作品の内容に関するチェックがおこなわれています。あとは、映像の内容がプロジェクションマッピングに向いているかなどを確認しました。同時にプロジェクションマッピングの作品としてのどのようにしたらより良い作品になるかを少しアドバイスさせてもらっていますが、あくまでもクリエイティブな部分に深入りすることはせず、質問に対するアドバイス程度の助言に留めています。

--ピクスでは過去に2本、東京ビッグサイトでプロジェクションマッピングのイベントを行なっていますよね。そのような経験を基に学生の企画に対してアドバイスなどもしているのでしょうか。

諏澤:これまで様々な場所でプロジェクションマッピングを上映させてもらっているのですが、実際のところ東京ビッグサイトの会議棟の壁面は、凹凸などが少ないので他の場所に比べると容易ではあります。逆三角形という特徴のある輪郭でグリッドが表面にあるのですが、それほど複雑なものではありません。単純なスクリーンとしても扱えますし、場所柄的にも環境が凄く良いのでマッピングに適した建物です。そういう意味では初めてプロジェクションマッピングの作品を作る学生にも適した建物だと思います。

ただ逆にシンプルな形であるが故に、プロジェクションマッピングの作品として表現の幅が限定されてくるので、どう表現していくかは難しいところでもあります。テクスチャを替えたり、逆三角形の立体物を凹ませたり、飛び出させたりといったシンプルな表現になりがちです。それなので、この形状をどうプロジェクションマッピングの投影面として消化して表現していくことが大事になってきます。すでに様々な表現が行われている場所でいかに新しい表現ができるかがポイントになってきますね。東京ビッグサイトは、逆三角形が2つ並んでいて一番表現としては使いたい真ん中が抜けている。この形状を逆手にとって面白いものをつくってもらえればと思っています。

▼ピクスが過去に実施した東京ビッグサイトでのプロジェクションマッピング

東京ビッグサイトプロジェクションマッピング "Sporting Spirit"

東京ビッグサイト プロジェクションマッピング "MUSICAL CLOCK"

--今回はアワードなので審査結果も発表されるのですよね?

早川:上映会の後、会議棟の6階に場所を移して審査発表と表彰式をおこなうことになっています。審査員は阿部秀司氏(プロデューサー)、森山朋絵氏(キュレーター)、スプツニ子!氏(現代美術家)、森内大輔氏(クリエイティブ・ディレクター)、橋本大祐氏(映像作家)の5名の方を予定しています。審査方法は上映後に審査シートによる採点と全審査員の協議によっておこないます。

大人も子供も楽しめるエンターテインメント性があるコンテンツになっているかどうか、3DCG、アニメーションの技術をうまく活用できているかどうか、プロジェクションマッピングとして、投影面の特徴を活かした迫力ある3D表現になっているか、高精細、広色域の特徴を活かした映像表現かどうかを基準に審査されます。

--エントリーしている学生からはどういったやりとりが多いのですか?

  • 諏澤:現在、制作が進んでいますがエントリーされているチームには途中経過と最終的な作品の最低2回は内容を確認させてもらうことになっています。制作過程での学生たちとのやりとりは弊社の新井を窓口にして、メールなどで行われています。

新井香苗氏(以下新井氏):学生からの質問で一番多いのは、プロジェクションマッピングの制作経験がない方が多いので、チェックムービーの作り方や、制作の技術的な疑問といった質問が多いですね。あと、映像の中にこういうものを登場させたいのですが、著作権的に上映して大丈夫なのかといった確認もあります。やはり初めて制作するプロジェクションマッピング作品なので、本当に東京ビッグサイトの形状に合わせてマッピングできるデータなのかどうか不安になる学生が多いようです。

こちらからは、東京ビッグサイトの壁面に投影する映像データを、どのような規格で制作すればいいのかを記した制作チャートを作成して各チームにお渡ししていますが、そのデータに合わせてベストビューポイントをどこにもっていったらいいのかとか、東京ビッグサイトの3Dモデルをモデリングするにはどのようにしていったらいいのかなどの質問も多いです。制作の大きな部分での質問にはアドバイスをしていますが、技術的な細かい質問に関しては、なるべく学生が自ら解決してもらうようにしています。

諏澤:学生たちとのやりとりでは、各チームとの公平性を保つということを前提にしています。過去に我々が作った東京ビッグサイトの3Dモデルデータもあるのですが、使用しているツールによって不公平が出てしまう可能性があるので、そのようなデータも提供していません。我々が提供した制作チャートを基に、どのように制作していけばいいのかという工夫も評価のうちに入るのではないかと考えています。

--各チームからはどのような作品が制作されているのでしょうか

諏澤:結構バラエティに富んだ企画が提出されています。東京ビッグサイト側にも各チームから上がってきた企画書をご覧いただいているのですが、「フレッシュだね」という感想をいただいています。企画書を見ていると、自分達では考えつかないようなことが書かれているものもあり逆に勉強になりますね(笑)。

--企画する際には、レギュレーションのようなものはあるのですか

諏澤:作品のテーマを「未来」としています。とてもアバウトなテーマですが様々なとらえ方があると思うので、チームごとに考える「未来とはなにか?」を自分たちなりの手法で表現してもらっています。マッピングされる映像の長さも3分を目安に制作をしてもらっています。

プロジェクションマッピングで3分というのは、見る側としてはかなり短い時間ですが、作る側の学生たちにとっては、かなりボリュームのある制作になるのではないかと思います。でも途中経過のオフラインを見てみると、今回はチーム制作になっているので5人ぐらいで分担して制作しているケースでは、密度のあるカットが詰め込まれていることが多くテンポの速い作品も多い。巨大なスクリーンで見ると体感速度が速くなるのでもうちょっとゆっくり見せた方がいいよとかアドバイスさせてもらったりしています。やりたいことが詰まっていても、それだけではいい作品にはならないので、映像作品としてどうなのかということが大切になってきます。

--このコンテストを通してどのようなことを学生に期待していますか

早川:このようなイベントをすることで、学生のみなさんから映像の仕事を目指す人が増えていくといいなと思っています。映像の仕事は、制作過程ではつらく苦しいことが日常茶飯事です。
でも、今映像クリエイターとして活躍している方々が、そんな大変な仕事を何でしているかというと、観客の反応が忘れられないからではないでしょうか。自分がつくったもので、誰かが感動する姿を見ると、今までの苦労が全部吹き飛んでしまうんですよね。これが映像クリエイターの仕事の醍醐味ですし、この仕事を続けている理由やはじめたきっかけになっている人も本当に多いと思います。

この点から考えると、プロジェクションマッピングは、屋外で大勢の人に見てもらえる映像表現なので、これ以上の機会はないんじゃないかと思います。こういうコンテストをきっかけに優秀なクリエイターが育って欲しいですね。

諏澤:我々からすると、このようなコンテストで優秀な若手クリエイターを発掘したいですし、映像を作っている会社の人間としては、映像をもっと身近に制作出来る環境を提供することで、映像制作の面白さを発見して欲しいと思っています。

また、東京ビッグサイトでイベントをおこなうということには、有明地域の賑わい創出の意味もあり、有明のみならず東京が映像の街として世界的に認知されればと思っています。東京ビッグサイトをプロジェクションマッピングの聖地にしたいですね。

クリエイターにとって直接オーディエンスの反応が目の前で見られるのがプロジェクションマッピングの醍醐味です。東京ビッグサイトではパナソニック製の2万ルーメン8台のプロジェクターで投影します。学生にとってこのような環境で作品を上映できる機会はおそらくないのではと考えています。是非これを機会に映像制作の醍醐味を体感して欲しいですね。

  • 新井:東京ビッグサイトは国際展示場なので、世界各国から人が集まってきます。東京の映像クリエイティブが盛り上がっているなという雰囲気創出のためのいいお手本になればいいなと思っています。学生の方にとっては、アワードを通して、プロの作り手との関わりや、エンターテインメントとして老若男女様々な人が見るという前提での作品作りなど、社会との接点を持ちながら制作を行い発表するという機会は、とても貴重な経験になるのではと思っています。また、このアワードが同世代のクリエイター同士の交流のきっかけになればと思っています。

--今後はどのような展開を考えているのでしょうか

諏澤:今回の開催実績をアーカイブして、今後に繋げていけたらと思っています。今回は募集した学校も限られていますので、次回はもっと間口をひろげて様々な学校にエントリーしてもらえるといいなと思っています。そのためにも成功させたいですね。

早川:今年の12月から毎年の開催を予定しています。今回募集してみて、とにかくやりたいという学校が多かったので、今後はエントリーの募集も完全に公募の形にしたいと思っています。グローバルな展開を含め日本のみならず全世界から学生クリエイターが集まるようなイベントに育てていきたい。海外の学生が参加することで、日本の学生にも良い刺激になると思います。今後の展開にも期待してください。

--興味深いお話をありがとうございました。3月26日(土)当日にどのような作品が上映されるか楽しみにしています。

TEXT_大河原浩一(ビットプランクス
PHOTO_弘田充

▶︎次ページ:参加チームの紹介︎ [[SplitPage]]

<information>

■開催概要
名称:東京プロジェクションマッピングアワードvol.0
日時:2016年3月26日(土)18:00開場 18:30〜19:30上映
場所:東京ビッグサイト 会議棟前広場(上映会)/会議棟6階(表彰式)
主催:株式会社ピクス、株式会社イマジカデジタルスケープ
協賛:株式会社東京ビッグサイト、株式会社イマジカ・ロボット ホールディングス、オートデスク株式会社
メディア協賛:CGWORLD、CINRA.NET、登竜門、PARTNER、映像新聞、クリ博ナビ
後援:CG-ARTS協会(公益財団法人 画像情報教育振興協会)
協力:首都大学東京、芝浦工業大学、多摩美術大学、宝塚大学、デジタルハリウッド大学、日本電子専門学校、日本工学院八王子専門学校 (50音順)

入場料無料

公式サイト:http://pmaward.jp/

■審査員
阿部秀司氏(株式会社阿部秀司事務所 代表取締役・プロデューサー)
森山朋絵氏(キュレーター/東京現代美術館学芸員)
スプツニ子!(現代美術家/マサチューセッツ工科大学 メディアラボ助教/デザイン・フィクション・グループ研究室主宰)
森内大輔氏(クリエイティブ・ディレクター/プロデューサー/デザイナー)
橋本大祐氏(映像作家/アニメーション作家)

■参加チーム

●宝塚大学 東京メディア芸術学部
チーム名:デザイン工房 代表者:成瀬由唯
作品名:未来を描くステンドグラス
得意とするイラストでストーリーに合わせたステンドグラス風ムービーを制作。光の美しさと輝かしい未来を「おじいさんのおもひで」「バーチャル恋愛」「守りたい日本の風景」の3話で表現。可愛らしい絵柄にも注目。



●日本電子専門学校
チーム名:Hana Bee 代表者:篠原貴之
作品名:未来に繋ぎたいTOKYOの文化
東京に混在する多様な文化を「伝統的な建築様式」「現代建築」「ポップ&カワイイ」で順に紹介しながら、伝統と未来に共通する「鮮やかな彩り」で表現。東京の文化を再発見し、未来へ向かう時空を超えた旅へ誘う。



●日本工学院八王子専門学校
チーム名:伝承文化継承映像部 代表者:森田貴文
作品名:鳥獣たちの春夏秋冬
鳥獣戯画のキャラクターたちが、日本の春夏秋冬を生活する。日本の絵巻物である鳥獣戯画を3DCGを用いて立体的に動かし、動物たちが日本の四季の行事を楽しむさまを表現する。



●首都大学東京 インダストリアルアートコース
チーム名:SHIFT 代表者:村山雄太
作品名:PLUS ONE
コンセプトは「イマ+1=ミライ」。イマという瞬間に何かが足されてミライになる。どんなに小さな"1"でも、ミライで思いもよらない変化につながることがある。その"1"に着目したストーリー。



●芝浦工業大学
チーム名:PMLAB 代表者:高橋睦実
作品名:with future
私たちの10年後・20年後の未来はどんな世界になっているか,どんな世界であってほしいか...[with future]ではビックサイトを主軸として,PMLABメンバーの思い描くそれぞれの未来を表現している。



●デジタルハリウッド大学
チーム名:VISIONICA 代表者:ロペス・ルシア
作品名:CYBER-TRIP
『未来』宇宙船のサイバー旅をテーマにしてる作品です。クラブ音楽とシンクロを大事にしながら、地球の外から、色んなサイバー未来をみせる旅を表現しています。



●多摩美術大学
チーム名:テクノ家 代表者:でんすけ28号
作品名:Tamping Traveler
工事現場で働く何の変哲もない作業団の中で一人未来道具を手に時空を飛び交う作業員の姿を描いたCGアニメーション。



●デジタルハリウッド大学
チーム名:チームデジハリ 代表者:藤本優衣
作品名:時間旅行
現代の東京に住んでいる少年が、学校で出された「未来の絵」を描いてくるという宿題に頭を悩ませる。それを見た鳥が少年を助けるために、ゴンドラで未来の世界へ連れていき二人で世界を冒険する。



●多摩美術大学
チーム名:映写倶楽部 代表:齊藤公太郎
作品名:musical movement
その不思議なオルゴールは、時を刻みながら未来へといざなっていく。