アートディレクションの段階から生身の役者を3Dスキャンしたデータを基に
キャラクターデザインが詰められていった本プロジェクト。アセット制作においては
表現としてはもちろんのこと、技術やロジックにおいても"究極のリアリティ"が追求された。
そして、背景セットやプロップにもキャラクターに匹敵するつくり込みが実践されたという。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 216(2016年8月号)からの転載となります
TEXT_村上 浩(夢幻PICTURES) / Hiroshi Murakami(MUGENPICTURES)
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
Topics 1 キャラクターモデル
生身の役者の造形的な魅力を
3DCGモデルに受け継がせるため
本作に登場するキャラクター数はメイン19、サブ60、モブ68で、さらに衣装ちがいなどを含めると170体を超える。ひときわディテールが求められるメインキャラについては第2BD内のキャラ班6名が担当し、その他のキャラクターについては外部パートナーの協力を得たという。
「キャラクター以外にモンスターや召喚獣などの13体も海外スタジオと共同で制作しています。スケジューリングやシェーダ開発なども6人で分担しつつ、実作業を行なっていく必要があったので、なにかと苦労しましたね」と、キャラクターモデルSVを務めた岩澤和明氏はふり返る。
本作では生身の役者がもつ魅力をキャラクターに継承することが大きなテーマとなったが、長年にわたってリアルなキャラクター造形を追求してきた経験則からリアルなフェイシャルを再現するために必要なメッシュのながれや分割数を割り出し、最適化したベースモデルを作成。このベースモデルをセットアップ時に重要な筋肉やシワなどの位置を確認しながら、WrapXやZBrushを用いてスキャンデータに内製したトポロジーをフィッティングさせることで、同一のトポロジーで構成されたリアルなキャラクターを生み出すというワークフローを確立させた。
メイン以外のキャラの口内や眼球については共通モデルだが、歯に関しては表情付きのスキャンデータに合わせて形状と色味を再現している。「Hairについては、FFシリーズは伝統として髪型へのこだわりが強く、微妙なニュアンスを外部の方々へ伝えるのが難しい面が多々ありました。特に金髪は透過具合の調整も難しくレンダリング負荷も重い上、頭部と一緒にレンダリングしなければ最終的な仕上がりがわからないので、非常に多くの時間を費やしました」と、糸山祐一キャラクター&モンスターSVが語るように、眉毛や睫毛に関してもスキャンデータの生え際に合わせて1本ずつ植毛するというこだわりを見せている。
余談だが、第2BDムービーチームには「2ndスキルを身に付ける」という方針があり、アセット班の場合は本プロジェクト終盤にはライティング作業も担当していたそうだ。
生身のアクターを忠実に再現

本作で導入したキャラクターモデルのワークフロー。「イギリスのTen24スタジオで3Dスキャンを行い、そのデータから、ZBrushやMudboxなど複数のソフトを併用してノーマルマップやベクターディスプレイスメントマップなどを取得し、約10素材でシェーダを構築しています。スキャン時に撮影されるテクスチャや凹凸情報は肌の密度感やディテールなどリアリティを引き出すために重要な素材なので8Kで出力し、クオリティに大きく影響しない素材は4Kに落とし込むなどしてデータ容量の軽減も図りました」(田中良太キャラクターモデルSV)
完成したキャラクターモデル

ニックスの完成モデル。左から、レンダリングイメージ、シェーディング表示、メッシュ表示

モブキャラ「移民」の完成モデル。サブ&モブキャラもワークフローはメインキャラと共通だが、ベースとなる3Dスキャンデータはある程度共有化しているとのこと
Marvelous DesignerによるCloth表現


衣装はリアルなシワを生成するために実際の服飾と同じように型紙が作成され、MarvelousDesignerによって忠実に再現。形状が複雑な衣装も多いことから、型紙の作成には試行錯誤がくり返された
手堅いツールで徹底的につくり込む

クロウのヘアスタイルガイド。髪型については、メイクアップアーティストにマネキンを使って実際に再現可能か検証してもらい、その手順通りにMaya Hairで作成された

クロウのMaya Hair設定。Hairカーブは1体あたり2,000本を目安とされたが、クロウやヒロインのルナフレーナについては、巻き髪などが複雑なため3,000本を超えたという
ルックデヴ

完成したキャラクターモデルは複数の異なるIBL環境下で肌の色味やリフレクションに違和感がないかルックのチェックが行われた。肌よりも髪の毛(の色味)の方が環境の変化に対してシビアだったという

今回開発された汗を表現するためのシェーダ設定。マスクでON/OFFを切り替えることができるが、ほとばしる汗などはエフェクト班が別途作成している
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