中学生・高校生のためのIT関連講座を運営するライフイズテックがオートデスク、CGWORLDと共同でMayaの1日体験会「Maya 3DCG Special 1day」を2017年4月23日(日)に開催する。この体験会では同社が開発したブラウザベースのMayaのインタラクティブ教材が使用される予定だ。開催のねらいや教材の内容などについて、同社取締役CTOの橋本善久氏に聞いた。
TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
トップ写真提供_ライフイズテック
<1>「3DCGをつくりたい」という声から、Mayaのオンライン学習教材を開発
CGWORLD(以下CGW):知人に以前、ライフイズテックで学生メンターをしていた女性がいるんですよ。今はゲーム業界でモバイルゲームの運営プランナーをしています。メンター経験が就職活動で活きたと話していました。
橋本善久(以下、橋本):そうなんですか! それはうれしいですね。
CGW:中学生・高校生向けにプログラミングやITキャンプなどを学べる場を提供するライフイズテックも、すっかり定着してきましたね。
橋本:会社の創業は2011年で、私が参加したのは2014年からです。オンライン学習サービスや教材制作の開発責任者として主に技術面から経営に関わっています。私のゲーム業界での経験や培ったネットワークなどをライフイズテックに還元できればと思っていて、今回の「Maya 3DCG Special 1day」も、その一環でスタートしました。
CGW:どういうことでしょうか?
橋本:弊社ではUnityを使ったアプリ開発や、PhotoshopとIllustratorを使った名刺デザインなど、16種類のコースを開発、運用しているのですが、Unityのコースなどで「オリジナルの3DCGの素材を使いたい」という要望があったんです。ゲーム業界にいた私にとって3DCGは身近な存在ですし、他のコースとも親和性が高いので、3DCGのコースをライフイズテックでぜひやりたいと思っていました。オートデスク様にもこの思いに共感いただき、Maya向けのオンライン学習教材を開発する上で、さまざまな支援をいただいていたんです。それがようやく形になりはじめまして、オートデスク様にお見せしたところ、ぜひ体験会を共催しようというながれになりました。
CGW:次世代の3DCGクリエイターを育成するという点では、CGWORLDも大いに共感しています。そのため今回の「Maya 3DCG Special 1day」でも協力させていただくことになりました。「Maya 3DCG Special 1day」は、ライフイズテックで普段から開催されているようなワークショップ形式で開催されるわけですよね。
橋本:そうですね。3DCG制作に興味のある中学生・高校生が対象で、今回の定員は40人です。ワークショップは午前10時から午後6時まで、昼食を挟んで実質7時間程度を予定しています。もちろん、参加する学生は3DCGに対する基礎知識や制作経験は、まったくないことを想定しています。
CGW:プログラムはどういったものを想定されていますか?
橋本:大きく分けて2部構成で、1部では弊社が開発したオンライン学習教材を使い、2時間程度でMayaの基礎的な操作を習得してもらいます。2部では1部で学んだ内容をもとに、自由に作品づくりをしてもらいます。最後に作品を発表して終了です。これ以外にもオートデスク様から3DCGの楽しさや、3DCGを用いた仕事などの講演をしていただく予定です。
「以前から3DCGのコースをライフイズテックでやりたかった」と語る橋本氏
CGW:Mayaを選ばれた理由は何だったのでしょうか?
橋本: Unity、Photoshop、Illustratorといった具合に、弊社のコースは中学生・高校生を対象としていますが、全てプロ向けのツールを使っています。そのため3DCGのコースをつくるなら、プロの現場で一番メジャーなMayaを使用したかったんです。
CGW:Mayaのたくさんある機能の中で、「Maya 3DCG Special 1day」ではどの部分に焦点を当てられますか?
橋本:簡単なモデリングとアニメーションに絞る予定です。自動車のモデルをつくってライントレースをさせたり、ひよこのモデルをつくって、よちよち歩かせたり。中学生・高校生に一番伝えたいのは「3DCGって楽しい」、「3DCGって思ったより簡単」ということなんです。これは弊社の「教育×IT×エンターテイメント」というサービスの軸にもつながることで、やってみて「楽しかった」と思ってもらえなければ、意味がないと思っています。
[[SplitPage]]<2>ブラウザで動くインタラクティブな学習教材
CGW:そこで使われるのがオンライン学習教材ということですが、どういった内容でしょうか?
橋本:HTML5で作られたブラウザベースのインタラクティブ教材で、アドベンチャーゲーム仕立てになっています。自社開発の「MOZER」というシステムがベースで、現在はWebデザインについて学べる「デイジーと秘密のメッセージ」というサービスの体験版を無償公開しています。プレイヤーはパン屋のマーサのWebサイトづくりを手伝いながら、街で起きたハッキング事件の謎を解いていくというもので、一般のWebサイト制作向け教則本と比べても遜色ない内容をより簡単により楽しくスピーディに学べます。
CGW:アニメーションやサウンドなどの演出が満載で、一般的なアドベンチャーゲームと比べても遜色がないつくりですね。技術面でも一枚のWebページでヒントとコード画面とプレビュー画面が混在している点など、かなりハイエンドなことをされている印象を受けます。このあたりのデザインは、ゲーム業界の経験が長い橋本さんならではですね。
橋本:ありがとうございます。サービス設計から実装、教材の一言一句の調整まで色々みんなで試行錯誤して作りました。現在はWebデザインのみですが、今後は他のコースについてもコンテンツを追加していき、地方の子どもたちにも手軽に学べる環境を提供していく予定です。「Maya 3DCG Special 1day」で使用する教材も、最終的にはこのクオリティまで磨いていき、Web上で公開することをめざしています。
CGW:Mayaの教材は、具体的にはどんな内容が盛り込まれているのでしょうか?
橋本:Webデザインの教材と同じようにブラウザベースで、マウスでクリックしながら進めていき、Mayaの基本的な操作を動画で学べるというものです。これ以外にMayaや3DCGの基礎知識に関するクイズ問題なども盛り込まれます。当日はこの教材とMayaを交互に切り替えながら学んでいくことになります。
「Maya 3DCG Special 1day」で使うMayaのインタラクティブ教材。3DCGの知識のない参加者でもつまづくことがないよう丁寧に操作方法を説明している
CGW:現状では、基本的なMayaの操作の説明が中心ですが、これが将来的に「デイジーと秘密のメッセージ」のクオリティにまで高まれば、画期的な教材になりそうですね。気の早い話ですが、ローカライズなどはされるのでしょうか?
橋本:はい、すでに「デイジーと秘密のメッセージ」は英語版も公開されていて、海外からのアクセスもあります。今はテキサスの中学校での試験運用もしているんですよ。Mayaの教材でも英語版をつくって世界向けに公開したいですね。実際にゲームの良さを活かしたMayaのインタラクティブ教材って、世界にも存在しないんですよ。中学生・高校生だけでなく、大人でもしっかり学べる内容になっていますので、Mayaのユーザーが一人でも増えればうれしいですね。
<3>プロが刺激を受ける環境をつくりたい
CGW:それは楽しみですね。一方でこうした教材が普及すれば、ワークショップ形式ではなくても、一人で家で学べば良いという考え方も出てきますが。
橋本:MOZERは家で一人で学ぶことが出来るようにするためのサービスという側面もありますから、それはある意味では正しいです。ただ、弊社ではワークショップなどの対面形式で行うこともとても重要だと考えています。大学生のメンターと参加者、あるいは参加者同士の交流を通して、自然にモチベーションが高められますし、そうした交流が学ぶ楽しさにつながるからです。これはライフイズテックの経験則ですが、メンター1人に対して生徒が6人というのがバランスが良いようです。
CGW:マンツーマンで実施するよりも、グループの方が良いんですね。
橋本:それぞれに良さはあると思いますが、弊社ではそうしていますね。3~8日間を通して1つのコースを学ぶ弊社の「Life is Tech!CAMP」では、はじめに参加者の自己紹介から始まって、メンターと仲良くなってもらい、メンターを通して参加者間の交流を促進させ参加者同士のグループワークにつなげるといったように、学習内容だけでなく、コミュニケーションのながれもデザインされています。
昨年行われた「Life is Tech!CAMP」のワンシーン。グループワークをとおしたメンターと参加者の交流が、モチベーションアップや学ぶ楽しさをもたらしている(写真提供:ライフイズテック)
CGW:ちなみに「Maya 3DCG Special 1day」では、グループワークは行われるのでしょうか?
橋本:いえ、今回は1日だけの実施ということもあり、まずは参加者がメンターと仲良くなってもらって、Mayaを通して3DCGの楽しさに触れてもらうことを目的としています。ただ、近い将来にはグループワークにつなげていきたいですね。自動車をたくさんつくってレースシーンをつくったり、モンスターと冒険者が入り乱れて戦うファンタジー世界のバトルシーンをつくったり、などもできそうですね。
CGW:そうしたグループワークが、ゲームづくりまでつながればおもしろそうです。
橋本:そうですね。実際にUnityのアプリ制作やオーディオ制作と3DCGは相性が良いですから。Mayaのコースが触媒となって、さまざまな展開につながっていけば良いですね。
CGW:なるほど。
橋本:こんな風に中学生・高校生がMayaを普通に使うようになると、それこそ『Minecraft』のように、とんでもない作品がつくられるようになっていくと思うんですよ。弊社のMOZERも、近い将来SNS機能を搭載して、完成した作品をWeb上で公開できるようなしくみを予定しています。そうした作品をプロが見て刺激を受けたり、3DCGの学び直しやキャリアチェンジのきっかけにつながったりすると良いですね。
CGW:それはますます楽しみですね。
橋本:「Maya 3DCG Special 1day」の開催も、そんな未来の第一歩につなげたいと思っています。
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「Maya 3DCG Special 1day」
●日時:2017年4月23日(日)10:00~18:00
●場所:オートデスク 本社
〒104-6024 東京都中央区晴海 1-8-10
晴海アイランド トリトンスクエア オフィスタワーX 24F
●実施コース:Maya 3DCGコース
●参加対象者:全国の中学生・高校生(定員40名)
●参加費:無料
※PCやMayaでの開発に必要な機材やソフトは主催者側で用意
life-is-tech.com/maya-1day
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「Life is Tech ! Summer Camp 2017」開催決定!
●日時:2017年7月15日(土)~8月26日(土)(計24回実施)
※開催日程などは順次追加予定
●プログラムの日数:3日間・4日間・5日間・8日間
●参加申し込み期限:2017年7月3日(月)まで
※各会場・コースの定員に達し次第、受付終了
※2017年5月8日(月)まで早割(3,000円割引)あり
●実施コース:プログラミングやデザイン、ゲーム制作など「興味」にあわせて選べる17コース
コース一覧は以下のとおり
iPhoneアプリ開発コース、Androidアプリ開発コース、ゲームクリエイター入門コース(2D)、Unity®ゲームプログラミングコース(2D・3D)、Webデザインコース(HTML/CSS)、Webサービス開発コース(Ruby)、デザイナーコース、アニメーションコース、映像編集コース、メディアアートコース、デジタルミュージックコース、MINECRAFTプログラミングコース、初音ミク V3コース、LINEスタンプクリエーターコース、IoT入門 with MESHコース、カメラ&フォトグラフィーコース、Maya 3DCGコース(新)
※一部会場により実施されないコースがあります
●参加対象者:全国の中学生・高校生
●参加費:¥39,900(税別・3日間通いの場合)~
●キャンプの詳細・お申し込みはこちら
life-is-tech.com/camp