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彫刻家出身のデジタルアーティスト、ルイジ・オノラが実践するiMac Proを活用した映像制作術

彫刻家出身のデジタルアーティスト、ルイジ・オノラが実践するiMac Proを活用した映像制作術

iMac Proのプロモーションとして、6人のプロフェッショナルたちがiMac Proで制作したショートムービーがAppleの特設サイトで公開されている。その中の1人として作品が紹介されたのが、フランス出身のアーティスト ルイジ・オノラ/Luigi Honorat氏だ(以下、ルイジ氏)。武蔵野美術大学で彫刻を学び、現在は母校である武蔵野美術大学で講師をしながら日本を拠点に活動しているルイジ氏に、iMac Proによる作品づくりについて、話をうかがった。

TEXT_安藤幸央(エクサ) / Yukio Ando(EXA)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_山田桃子 / Momoko

iMac Pro -- Artist Films Trailer -- Apple

iMac Pro -- Luigi Honorat Artist Film -- Apple

<1>3DCGを独自に勉強した後、日本で彫刻を学ぶ

――最初に、ご自身の経歴についてご紹介ください。

ルイジ・オノラ氏(以下、ルイジ):もともと3DCGを独学していたのですが、3DCGだけではもの足りなくなってきたため、武蔵野美術大学に入学し、彫刻の勉強をはじめました。当初の計画としては、少し彫刻を勉強して3DCGに戻るつもりだったのですが、けっきょく6年間も彫刻を学び、3DCGと彫刻の両方を続けています。また、現在は武蔵野美術大学で、彫刻を教える講師をしています。

――iMac Proのショートフィルムを制作することになったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?

ルイジ:米国Appleの担当者から「一緒に何かできないかと思ってるが、興味はあるか?」という連絡がありました。彼らは、私のInstagramに投稿されている3DCG作品を見て「何か新しい作品をつくりたくない?」とオファーしてきたようです。私は少し考えてから「OK」と返事をしました。


Luigi Honora氏のInstagramより
@luigihonorat

ルイジ:以前、Instagramに1日1作品、オリジナルの映像作品をアップロードし続けていたことがありました。そのときに制作していたシリーズをAppleのために、さらにスケールアップして大きな作品にできそうだと考えたのです。いつもはInstagramに投稿していた作品の環境を拡張して、iMac Proの新しい環境でつくってみようと考えました。音楽はイギリスのユニット マッシヴ・アタックのものを使用し、制作ツールはSide EffectsのHoudini、レンダリングはSolid AngleのArnoldを使っています。

――以前から、SNSでの作品発表を積極的に行なっていたのですか?

ルイジ:いえ、2017年より前はそれほど作品を公開していませんでした。アーティストのポートフォリオ作品紹介サイトとしてよく使われるBehanceも全然使っていなかったほどです。ところが、2017年の6月からInstagramを使い始め、毎日1つずつ、3DCGの作品動画を投稿し始めると、そこから様々な仕事のオファーが増えていきました。今回のAppleからのオファーも、Instagramのおかげだと思っています。

Behanceの場合、見ているのはほとんどプロフェッショナルな人達ばかりなのですが、Instagramなら、普段、3DCGに興味のない人にも見てもらうことができます。マーケッターから一般の人まで、多くの人がInstagramで興味の惹かれる作品を探しているのです。ちなみに自分自身は、3DCGを独自に学んでいるとき、CGTalkをよく見ていました。

<2>彫刻をつくる時の制限を、あえて3DCGにもち込む

――作品づくりの際に心がけているのはどんな点ですか?

ルイジ:Appleのサイトに「Behind the Scenes(メイキング)」の映像があるのですが、このメイキング映像のために長い時間、撮影した中で、一番多く時間を割いて説明したのが「作品づくりのリミテーション(制限・制約)」についてです。

彫刻をつくる場合、素材の制限や技法の制限、空間の制限や限界を考えなくてはいけませんが、3DCGはとても自由でなんでもできます。ところが、作品をつくるときに自由すぎると、逆に何もつくれないのです。ですから、3DCGで作品をつくる際もあえて私は自分でリミテーションを設定して、その点を考えながら制作します。彫刻のリミテーションには、人間のスケール、存在する空間の制限、一種類の素材だけでつくる、人の手でつくれる形しかつくれないといった具合に、無意識ながらも様々な制限があります。私はこうした彫刻のリミテーションを踏まえ、今回の作品でも「本物の彫刻だったら、どんな風になるだろうか」ということを意識しながら、作品をつくり上げました。

iMac Pro -- Luigi Honorat Behind the Scenes -- Apple

――3DCGツールは、どんなものを使っていますか?

ルイジ:最初はMODOで形をつくることを学びました。その後、ZBrushを勉強し、最近はHoudiniに移行しています。Houdiniのプロシージャルモデリングがとても面白く、現在は遺伝的アルゴリズムを活用してたまたま出会う形状など、幸運な偶然性にとても興味があります。

MODOやZBrushによるモデリングでは人間が考えてつくる形を、Houdiniでは自然が生み出す形をつくっているという感覚があります。また、Houdiniで設定する数式やアルゴリズムのおかげで、自分のクリエイティビティが高まっている感じもしています。つくる前から結果がわかっているわけではなく、何かを発見するために制作し続けているという感覚です。

■ルイジ氏の主な使用ツール
Canon EOS 5D Mark III、Adobe After Effects、Adobe Creative Cloud、Arnold、Houdini、MODO、PTGui Pro

<3>講師として、様々な学生たちと触れあう

――大学ではどのようなことを教えているのですか?

ルイジ:武蔵野美術大学では、主に彫刻学科で教えています。担当している授業は入門的な内容で、前期はMODOやZBrushを、後期はHoudiniを勉強します。彫刻や建築、ファッションなど、多種多様な学科から学生がやってくるので、彼らから様々なアイデアを聞くのがとてもおもしろいです。ひとつ残念なのは、自分の講義はレポートが中心なので学生たちが個別に制作している作品を見られない点ですね。

授業では、シミュレーション、プロシージャル、デジタルスカルプティングなど様々な手法を取り上げています。昨年はZBrushアーティストとして有名なScott Eaton氏を招いて、一週間のワークショップも開催しました。

次ページ:
<4>日本のゲーム、漫画、アニメ作品への興味

Profileプロフィール

ルイジ・オノラ/Luigi Honorat

ルイジ・オノラ/Luigi Honorat

1986年生まれ、フランスのパリ出身。フリーランスのデジタルアーティストとして活躍中。母校である武蔵野美術大学にて、彫刻クラスの講師も務めている。
luigihonorat.com

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