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アカツキ ロジカルクリエイティブ<br />Logic06 3DCG制作におけるパートナーシップのあり方

アカツキ ロジカルクリエイティブ
Logic06 3DCG制作におけるパートナーシップのあり方

「心が動くワクワク体験を届ける」モバイルゲームの開発・運営を手がけるアカツキのロジカルなゲーム開発手法をお送りする本連載。最終回となる今回は、アカツキの3DCG分野における、パートナー企業・株式会社ぐるぐるとのユニークな協力体制について解説する。

なお、アカツキ クリエイティブチームでは共に働く仲間を募集中だ。詳しくは下記バナーより参照してもらいたい。

TEXT_神山大輝(NINE GATES STUDIO)

互いに良い影響をもたらす関係性の構築を目指して

アカツキのロジカルなゲーム開発事例を紹介する連載企画の第6回は「3DCG制作におけるパートナーシップのあり方」と題し、アカツキCDO 村上一帆氏、モバイルゲームギルド アートクリエイティブディレクター 柴田陽一氏、株式会社ぐるぐる 取締役/アートディレクター山下裕大氏に話を聞いた。

  • アカツキ CDO
    村上一帆氏

昨今のゲーム開発は規模の拡大、専門性の多様化が進んでおり、開発タイトルごとに外部パートナーの力を借りることも少なくない。これは幅広い専門分野をもつアカツキについても同様で、現在は3DCG制作において、外部の会社と協業しているという。ただし、アカツキにおける「協業」とは必ずしも受発注だけで終わる関係ではないと村上氏は説明する。「歴史の浅い弊社において、うちらしい組織文化をもち合わせた大規模な3DCGチームをスピーディに構築することは難しく、また時代のながれを見ても社内だけで賄う必然性は薄まっていると感じます。それ以上に"外部の文化を採り入れることによる多様性の獲得"を重視し、協力会社さんには特定のプロジェクトの足りないパーツになってもらうのではなく、有機的に繋がることでナレッジを共有し合い、互いに還元できる対等な関係性を目指しています」(村上氏)。

  • アカツキ モバイルゲームギルド アートディレクター
    柴田陽一氏

そんなアカツキの現在のパートナーが、福岡県に本拠地を置く株式会社ぐるぐるだ。2009年に設立されたぐるぐるはエンジニアからプランナー、アートまで幅広い人材が在籍する50名前後のゲーム開発会社。これまではソーシャルゲームよりもコンシューマゲームの開発に主軸を置いてきたが、近年ではハードを問わないゲーム開発を中心に、3DCG制作のみの受託等も行なっているという。ここからは、両社の具体的な関係性と、技術開発に関する取り組みを解説していく。

  • 株式会社ぐるぐる 取締役・アートディレクター
    山下裕大氏

<POINT1>お互いを信頼し合う強固な協力関係

一般的な外注ではなし得ない両社協業によるナレッジの共有

ぐるぐるがパートナーとして選ばれた理由は2つある。ひとつはぐるぐるのもつ未来に向けたビジョンとアーティストの育成論が、現在のアカツキのフェーズと合致していたこと。もうひとつはぐるぐるの社員が単一の専門性に特化しないジェネラリスト型の人材であり、技術的な親和性が高かったことだ。ゲームにおける3DCG技術は、現実世界を映像が、映像をコンシューマが、そしてコンシューマで培われた技術を追ってスマートフォンへ派生するというながれが一般的。大規模ではない、中規模かつフットワークの軽い組織で、さらにコンシューマ開発の経験が豊富なぐるぐるは、技術的にも組織的にもマッチしていたという。また、山下氏によれば、ぐるぐる社員はモデリング+アニメーション、エフェクト+アニメーションなど2つ以上の得意分野をもつように教育が行われている。ひとつの専門分野を軸としながら、周辺領域を広げていくという思想は村上氏の組織論とも合致しており、さらにスタートアップの初期開発という性質上新たなコンテンツを制作するために横断的な知識が必要だったことも手伝って、パートナーとして歩んでいく運びとなった。

一般的な外注との大きなちがいは、それぞれの会社が窓口となる人物を立ててやり取りするのではなく、互いの社員が自発的に交流をもっている点。何か気づきがあった場合、相手方の窓口を通すのではなく現場に直接フィードバックをすることで、開発にスピード感をもたせている。必要に応じて山下氏がアカツキを訪問する際は、現場のエンジニアと直接対話をし、ときには取締役という役柄ながら自ら3Dデザインを行うこともある。また、両社の社員同士が独自にチャットベースで技術交換を行うなど、トップダウンではなくアメーバのような組織構造になっているという。これらはお互いに信頼し合ってこそできる体制であり、ぐるぐるからアカツキへ3DCG技術とコンシューマ開発のナレッジが共有されるのと同時に、アカツキからぐるぐるへはチームコミュニティの考えやサービスの概念、スマートフォン向けのデザインなどの知見が共有されるといったかたちで、互いの会社にも良い影響をもたらしている。「アカツキと組んで驚いたのは、アウトプットのみを求められるような受発注の関係ではなく、コミュニケーションを非常に重要視されること。弊社の規模では密なコミュニケーションにかかるコストはリスクと捉えがちで、これまではコミュニケーションより短期的な作業時間の確保を優先させてきました。しかし、今回アカツキと強固な協力体制を敷いたことで、多少リスクをとってでも未来を考えるようになり、弊社内でもコミュニケーションが2~3割増加した印象があります」(山下氏)。現在は互いのナレッジを融合させながら、プロトタイプの開発や既存の運用ラインの強化を行なっている。

コミュニケーションを重視したアメーバ状のパートナーシップ

一般的な受発注の関係では、両社の担当者のみがやり取りを行い、現場への実務的な指示は担当から行われる。一方、アメーバ状のパートナーシップは、発注者と受注者の関係性がフラットであり、両社の実務を担当するメンバーもコミュニケーションがとりやすいかたちとなっている点が特徴だ。実務上発生する認識の相違などに発注側がスピーディに気づけるだけでなく、フィードバックまでの時間を短くすることでクオリティの向上が見込める。さらに、お互いの組織に直に触れるコミュニケーションは両社のナレッジの共有にもつながっている

<POINT2>現在挑戦中のCG技術

VATによるエフェクト作成とプロシージャル背景生成

アカツキでは現在、3D技術の研究開発の一環としてコンシューマゲームの手法を積極的に採り入れている。そのひとつがVertex Animation Texture(以下、VAT)だ。VATは各ピクセルにフレームごとの頂点の位置や法線情報を含めたデータ構造で、ゲームエンジン内でHoudiniベースのエフェクトの再現を行うために用いられている。主に破壊や水面表現などシミュレーションの難しいエフェクトの再現に使われるが、キャラクターにも応用し新しい表現に活かせないか研究も行なっている。現時点でも実機上で軽量に動作しているため、比較的早い段階で同社のスマートフォン向けタイトルの表現向上につながる見込みだという。

また、同時にHoudiniによる背景のプロシージャル生成もVolca株式会社代表の加治佐興平氏、VFXテクニカルディレクター鳥居佑弥氏の協力を得ながら研究中だ。柴田氏によれば、単純にランダムな自動生成だけでは見映えが悪いため、自動生成ということがユーザーからわからない、いかにもアーティストが制作したかのような背景が出来上がるのが理想形とのことで、現在はHoudiniを用いたアセットの自動配置について検証を行なっている最中とのこと。コンシューマゲームの開発では良くも悪くも伝統的な手法を踏襲しがちだが、これを背景にもたないアカツキはフレキシブルにつくり方を組み替えやすい。そのためチームの適応力も高く、新規技術の浸透も早いという。

VATによるエフェクト制作

VATは、Houdiniで生成した流体アニメーションや破壊エフェクトなどをはじめとする動きをリアルタイムにゲームエンジン上で再現するためのデータ形式。すでにコンシューマの大型タイトルでは活用が進んでいるが、スマートフォン向けの事例はほとんどないため、スマートフォン向けのリアルタイム表現を向上させる鍵となることが期待されている


Houdini上で作成した流体エフェクト



  • Unity上で出力した流体アニメーション



  • スマートフォン上の実機画像

プロシージャル背景生成


  • 協力:Volca/鳥居祐弥

背景の自動生成は①マップの作成、②簡易モデルを配置したレイアウトの作成、③レイアウト上の簡易モデルをローモデルのアセットと差し替えるという3つのフェーズからなる。マップはボロノイ図【A】を利用し、街の区画を擬似的に再現【B】。配置する簡易モデルはランダムさを加えつつ、見た目が美しくなるよう区画の中心から離れた位置に高いビルを配置するよう調整【C】。その後配置されたビルの種類を解析してアセットの種類を決定し【D】、アーティストが制作したローモデルと差し替える【E】。【F】完成イメージ

<POINT3>3DCGで実現したい未来

映像表現だけではない"面白さ"に直結する技術

ビジョンを実現するのが技術の役目。未来を見据えたとき、解決すべきなのは2DCGと3DCGの分離だと村上氏は説明する。「2DCGの多種多様な空気感を3DCGで再現しきるのは現状では難しいものもあります。コンセプトアートがもっと3DCG側に寄っていけば乖離は起こりづらいですが、それよりは両者がどう融合するかが次に考えるべきことだと感じています」(村上氏)。"フォトリアルとセルルック"という二者択一ではなく、そのどちらでもない新たな表現を目指す。

また、近年のトレンドでもあるリアルタイムレイトレーシングについては、レンダリングや描画のために使うだけでなく、立体音響での活用も考えているという。さらに、布を引っ張っていくとちぎれる、といった、別オブジェクトにリアルタイムに変形するようなシミュレーションを研究し、オブジェクトの変形そのものをゲーム性に採り入れられないかという試みも行いたいとのこと。映像表現だけでなく、ゲーム体験全体につながることを考えるのがアカツキらしさ。海外的なリアル志向を追い求めるのではなく、"面白さ"を強みとして基軸に置き、これからも研究を続けていく姿勢だ。

リアルタイムレイトレーシング技術の音響への応用


NVIDIA GeForce RTX 2070、2080、2080Tiに搭載された専用プロセッサRT Coreによって徐々に現実味を帯びてきたリアルタイムレイトレーシング。すでに描画まわりのレンダリング手法として活用され始めているが、山下氏はNVIDIAの事例にもあるようにこれらを音の分野に転用するのを例に様々な用途での研究を行うべきと語る。音は光と同様、物体に反射する性質をもち、放射線状に飛ばしたレイによって吸収や透過、回折といった挙動をシミュレーションすることで理論上リアルな音環境を構築することが可能。ゲームの体験をさらに向上させるために、描画以外にも目を向けるべきと指摘した。左:音源から発生した音が伝播する際のレイの軌道イメージ、右:キャラクターから発生した音が周囲のオブジェクトに吸収・反射するイメージ

連載を終えて

「アカツキ ロジカルクリエイティブ」全6回の連載を終え、改めてこれまでの担当者にインタビューを行なった。各分野のスペシャリストが自分たちの仕事内容や考え方を言語化あるいは図式化し、多くの人に伝えていく。こうした試みを経て何を思ったのか、そして採用に関してはアカツキで一緒に働きたい人物像を、それぞれ伺った。

Q1:連載をふり返って
Q2:今後挑戦したいことは?
Q3:こんな仲間を探しています




  • 柴田陽一氏
    モバイルゲームギルド アートディレクター

    A1:周りからの反響ももちろんですが、会社の仲間にも自分の考え方を明文化して共有できたという意味でも良い機会になったと思っています。
    A2:私たちは体験をつくることを目的としています。「イラストレーターだからイラストを描いて終わり」ではなく、物語を体験としてつくっていくことを大切にしています。その意味では、体験設計ができるアーティストを今後も育成していきたい。アートの考え方を、どんどん拡張していきたい。だからこそ、2DCGだけでなく3DCGにも挑戦していきたいです。
    A3:今までのイラスト制作という文脈ではなく、体験ベースでものづくりをやってみたいという方にぜひ来ていただきたいです。




  • 申 政淳(SHIN JEONGSOON)氏
    モバイルゲームギルドアニメーションクリエイティブディレクター

    A1:率直に言うと、大変だったなという印象です(笑)。ただ、何度も考え直した結果、自分の中で考えていたことが理論化できたのではないかと感じています。今回をきっかけとして、自分の