マーベル・コミックを原作とし、実写映画でも根強い人気を誇る『スパイダーマン』シリーズ。同シリーズでは初となる3DCGアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース(以下、スパイダーバース)』が第91回アカデミー賞の長編アニメーション賞を受賞した。その他にもゴールデングローブ賞、アニー賞最多7部門受賞、第24回放送映画批評家協会賞アニメ映画賞などなど、あらゆる賞を総なめするという快挙を達成。

そんな同作には、Sony Pictures Imageworks(以下、SPI)に所属する日本人アニメーターが8名参加しており、アメコミらしい表現と最新テクニックで魅せるフルCGに加えて日本アニメの手法がふんだんに盛り込まれ、作品をより一層奥深いものに磨き上げている。CGWORLD.jpでは、そんな彼らのインタビューを2回に分けてお届けする。まずは、藤原淳雄氏、島田竜幸氏、園田大也氏に加え、日本でCG制作に携わった経験をもつアール・ブラウリー氏に、制作をふり返ってもらった。

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EDIT_UNIKO、小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』予告3(3月8日公開)

Information
『スパイダーマン:スパイダーバース』
大ヒット公開中!
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
www.spider-verse.jp/site
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<1>様々な自社ツールを駆使したSPI流のアニメーション制作

CGWORLD(以下、CGW):アカデミー賞長編アニメーション賞の受賞おめでとうございます。ビジュアルもストーリーも大変見応えのある素晴らしい作品でした。エンドクレジットには非常に多くのアニメーターの名前が並んでいましたが、総勢何名くらいで制作されたのでしょうか?

写真左から 藤原淳雄氏、園田大也氏、島田竜幸氏、アール・ブラウリー氏(Sony Pictures Imageworks)

園田大也氏(以下、園田):僕が制作に参加したのは、プロジェクトがスタートして間もない2017年7月だったのですが、当時はまだ6人くらいしかいませんでした。その後、最終的には180人くらいの大所帯になっていました。

島田竜幸氏(以下、島田):僕が参加した2017年11月前後から徐々に増えていったのかな。そのときにはもう30人くらいいましたね。

藤原淳雄氏(以下、藤原):どんどん増えていきましたね。僕は2018年1月から参加したんですが、その当時で5~60人くらいいたかな。実は、制作の途中で僕の子どもが生まれたので1ヶ月ほどお休みをいただいて。その時期が一番忙しかったかも(笑)。復帰したころにはもう100人くらいに増えていました。最終的にはアニメーションチームは7チームほどに分かれて、各チームにリードアニメーター1人、アニメーター20人ほどで制作していました。それぞれのチームは、アクションが上手い、アクティングが上手いなどリードアニメーターの得意とするものによって特色があり、各リードアニメーターが自分のチームに迎えるアニメーターを選んでいくというかたちでした。

CGW:アニメーション制作で主に担当されたシーンについておしえてください。

園田:僕は主人公のマイルス、グウェン、ゴブリンのアクション系を主に担当しました。初めの方からプロジェクトに入っていたので、一番最初のティザートレイラーのショットなどアクション系が多かったです。


  • 園田大也/Hiroya Sonoda
    熊本県出身。2011年サイバーコネクトツーに入社し、主にインゲームアニメーションを担当。その後バンクーバーのNitrogen Studios(現Cinesite)を経て、2016年に現在のSony Pictures Imageworks に入社。主な参加作品は 『コウノトリ大作戦!』(2016)、『絵文字の国のジーン』(2017)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年公開予定)など

島田:僕も園田さんと同じチームだったので、アクションが多めのシークエンスを担当することが多かったです。主にドクター・オクトパスのタコの触手をガンガン動かして襲いかかってくるシーンとか、そればっかりやってました(笑)。ドクター・オクトパスはトレイラーに出てこない「隠しキャラ」みたいな存在で、出てきたときのインパクトが強いキャラクターだったのでなかなかチャレンジングな経験でした。

藤原:制作中も「このキャラだけは絶対に秘密にしておけ」と言われてたよね。僕のチームは比較的、アクティングでもアクションでもない、ちょっとコメディ寄りのショットが多かったですね。特に蜘蛛のアニメーションやマイルス、あとスパイダーマンになった後のピーターも担当しました。それからゴブリンのトレーラーショットをいくつか。かなり幅広く手がけましたね。

アール・ブラウリー氏(以下、アール):私は、最初は他の作品でリードアニメーターをしていたのですが、最後の3ヶ月くらいで途中参加して、いくつかの演技のショットを担当しました。作品終盤の世界の次元がバグっているシーンで、いろんなところからビルなどが湧くように出てくるところなど。結局作ったショットはガチャガチャしてあんまり良く見えなくなっちゃったんだけど(笑)。キャラクターの後ろでずっと動いているビルとか、役に立ったかな(笑)。


  • アール・ブラウリー/Earl Brawley
    アメリカ、コロラド州出身。2006年にバンクーバーフィルムスクール(VFS)を卒業。東京に移住後、ポリゴン・ピクチュアズ、OLMデジタル、マーザ・アニメーションプラネットにて、アメリカのTVシリーズやゲームシネマティクス、映画など複数のプロジェクトに参加。2015年、バンクーバーのSony Pictures imageworksに入社。プロジェクトに応じてリードアニメーターもしくはシニアアニメーターとして制作に参加している

    アールのアニメーションブログ
    earlsanimationblog.blogspot.com

CGW:担当ショットの中で自分のアイデアが活きたカットは?

園田:僕が担当した、マイルスが2Dになるティザー専用ショットは「格好良いポーズより、徐々に動きながら自分の能力に慣れていく絵が欲しい」とオーダーがあったので、最初の方はタクシーにぶつかったりなどアンバランスな動きにするためにパルクールの失敗動画をたくさん参考にしました。それから、作品の後半に脚を大きく開いて着地してまた走って2Dになる、というシーンがあるのですが、股を大きく開きすぎちゃったみたいで、「股間が気になるから股をあんまり大きく開かないでほしい」と言われて(笑)。目立たないようにちょっと横向きのジャンプにしました。

島田:僕は敵キャラクターであるドクター・オクトパスの触手をいかに気持ち悪く、かつ格好良く見せるかに注力しました。会社が用意したリファレンスにはアクションの格好良いポージングやテンポ、ポーズがたくさん入っていましたが、その中に触手の動きのヒントになるものがあり、その雰囲気から上手く自分がやりたいものを見つけて作っていきました。

メイおばさんの家で全員が戦うシークエンスでは、とにかく「カオスにしてくれ」とずっと言われて(笑)。フレームが短いのにカオスにしてめちゃくちゃにすると、わけがわからなくなってしまうので、いろんなことをさせつつも目線は飛んでいかないように。あいつも入れよう、こいつも入れようとむりやり全員画面の中に押し込みました(笑)。

藤原:僕が制作していて楽しかったのはゴブリンのショットですね。あと、最後のシークエンスの多次元空間でドクター・オクトパスが列車に跳ね飛ばされて、スパイダーマンたちが「oh...」となるコミカルなショットを担当したのですが、あのショットは7回くらいブロッキングしたんですよ。スケジュールが押して、エディットがどんどん変わったりと、変更に次ぐ変更で結構大変で、あの「oh...」の動きのリファレンスだけで100回くらい撮りました。「oh...」のアクションをいろんなパターンで作り、それを7回ブロッキングして見せて(笑)。そんな感じで作ったので1~2ヶ月ずっと同じショットを作っていました。

アール:ピーターの彼女・MJのショットは僕が担当したシーンなんですが、「MJの性格や表情が魅力的ですごく良い」と褒められたのは嬉しかったです。嬉しかったので「MJのショット、他にある?」って聞いたら「もうない」って(笑)。残念、もっとやりたかったのに(笑)。

CGW:制作にあたって開発したツールはありますか?

園田:プロジェクトが開始して間もないころに僕が担当したショットで、墓地で倒れているピーター・B・パーカーが蜘蛛の糸でマイルスを捕まえ、マイルスが驚いてふり返り、立ち上がって走り出して警備員から逃げるショットがあるのですが、これは何回もブロッキングして、新しいツールをいろいろと使いました。おかげでスーパーバイザーにかなり好評で、「このショットにキスしたい」とまで言ってもらえて、本当に嬉しかったです(笑)。

使用した新しいツールというのは、輪郭やシワを描き入れるための「インクライン」というラインを描くツールと、残像を描く際によく使った、複数の足や腕をプロップにしてくれる「ポーズスタンプツール」ですね。

SPIDER-MAN: INTO THE SPIDER-VERSE - Animating Miles
Sony Pictures Imageworksによるメイキング動画。インクラインツールやポーズスタンプツール、WEBツールが紹介されている。1:42頃に登場するのが、園田氏が担当した墓地のシークエンスだ

藤原:『スパイダーバース』ではモーションブラーを一切使っていないんですよ。その代わりにアニメーターが全部自分でモーションブラーの表現を作っているんです。それを作るためのツールが何種類かあったのですが、簡単にペンでドローイングするだけでラインに変わったりするんですよ。ライン自体はMayaのオブジェクトなので、1フレームずつ「ほぼモデル」なんです(笑)。つまり、簡易的にドローイングしてアタリのモデルとして作って、最終的な調整では1フレームずつモデリングする、という。それを助けるツールが社内でいくつか開発されていました。

園田:スパイダーマンが放つ蜘蛛の糸もアニメーターが全部手で動かしていたりします。「WEBツール」というツールを使って、糸が揺れる感じやハケていく感じも全てリグを入れて表現しましたね。最初はシミュレーションかと思っていたんですが(笑)。

藤原:その辺は、全~部アニメーターがやったよね(笑)。メインツールはMayaなのですが、Mayaに入っている様々なツールを、使いやすいように開発チームがUIを作ってくれました。他の作品でも、アニメーターがリグに頼らずモデルを作るというカルチャーがSPIの文化としてあるんですよね。

園田:そうですね。リグがこうだからアニメーションができない、ということはないですね。ディレクターが「こういう画が欲しい」と言ったら「わかりました、やりましょう」といってアニメーターが作る、という感じ。

藤原:そういうノリで昔から作っているので、『スパイダーバース』はSPIのやり方にハマる作品でしたね。

園田:モーションブラーがないからこそのやりがいもありましたよ。先ほど話した「ポーズスタンプツール」で腕をふたつ入れたりとかするんですが、そこに既存のモーションブラーをかけると見えづらくなるんですよね。そういうのが今回なかったので、Mayaで僕たちが作ったものがやったぶんだけちゃんと見えてとてもやりやすかったです。

島田:モーションブラーのような手の動きや効果線はライティングの段階でエフェクトとして入れるのではなく、全てアニメーターが付けているわけです。アニメーションの段階で画を作り込んでいるので、アニメーターにとっては自分たちで画づくりができて楽しかったです。

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<2>アニメーターが必要に応じて背景モデルにリグを入れる!?「アニメーターファースト」な現場

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<2>アニメーターが必要に応じて背景モデルにリグを入れる!?「アニメーターファースト」な現場

CGW:アニメーターの判断でリグを入れることはよくあったんでしょうか?

藤原:そうですね、シーンの中でどうしても動かさないとダメだなというときがあるので。リガーにリクエストを出せるんですけど、作業優先度の関係でなかなか対応してもらえないので自分たちで判断して作った方が早くて(笑)。で、同じようなショットを作る人は他にもいるので、「こういうの作ったから使ってね」と他のアニメーターにシェアしていました。ちなみに、マイルスがラボの蛍光灯に捕まって揺らすショットでは、僕が蛍光灯にリグを入れました(笑)。

島田:スパイダーマンが集合してメイおばさんの家の中で戦うシーンでは、小さな家の中にたくさんのキャラクターが勢ぞろいして戦っている中、「ツボや電話といった家の中の生活用品も全てめちゃくちゃにしてほしい」と指示されて、アニメーターが動かしたり傾けたり吹き飛ばしたり。そういうのもSPIっぽいのかな。


  • 島田竜幸/Tatsuyuki Shimada 埼玉県出身。 2008年にポリゴン・ピクチュアズでキャリアをスタート。その後、2013年に台湾のCGCG inc、2017年1月にMPC Vancouverへの移籍を経て、現在はSony Pictures Imageworks所属。これまでに参加した作品は 『スター・ウォーズ / クローン・ウォーズ』(2013)、『ヒックとドラゴン: 新たな世界へ!』(2015)、『トロールハンターズ』(2016)、『ジャスティス・リーグ』(2017)、『スパイダーマン:スパイダーバース』(2018)、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』、(2019年公開予定)など

    『スター・ウォーズ』を追い海を渡ったラガーマン 第30回:島田竜幸/Shimada Tatsuyuki(Sony Pictures Imageworks / Animator)
    cgworld.jp/regular/030-tatsuyuki-shimada.html

藤原アニメーターを優先するというカルチャーは特徴的かもしれませんね。アニメーターが作ったものをとてもリスペクトしてくれていて、アニメーターのわがままを結構通してくれるんですよね。背景のオブジェクトなどは、リグが入っていなくて動かせないものが多いのですが、僕たちアニメーターが勝手に背景からモデルをもってきてリグを入れられるツールがあるんです。そのツールが結構使えるんですよね。

園田:ドクター・オクトパスがピーターの首を掴んでラボの机の上に投げ飛ばすシーンでは、机の上にある試験管や研究材料といった小道具も全部リグ化して動かせるようにして、そのアニメーションを基に、エフェクトで割るということをしていました。

藤原:エフェクトに関しても、最終のイメージをアニメーターがアタリで付けていますね。

アール:逆にめんどくさいことになることもあるんだけどね。「これ動いたら良いのにな」と言われちゃうと動かさなきゃいけなくなるから(笑)。

島田:そう!できちゃうからね。「それはリグがないから動かせないんです」と言えないんですよね(笑)。

CGW:日本のアニメCGの手法はどういったところで使われましたか?

島田:先ほどお話ししたように、アニメーターがモデリングみたいなことをやっていたんですが、カメラから見たときの普通のポーズを作っても、でこぼこしちゃってあんまり格好良い形にならないんですね。でも制作中によく言われていた「格好良いラインを強調する」とか「強いポーズ」を作る場合は、3Dモデルを自分で修正しないといけないんですよ。で、その修正したモデルをカメラの位置からではなく横から見ると、すごく引き伸ばされていたり、遠くに行くにつれて尖っていくので足がすごく小さくなっていたりするんです。日本のアニメCGで言う「嘘パース」というやつですね。そういう日本アニメのパース表現はかなり意識しました。

園田:ペニー・パーカーにも日本のアニメCG的な制作手法を使っています。これは大変でした(笑)。ペニーの顔を横から見たときの口は、ただの板が置いてあるだけなんですが、板の中に歯と舌が仕込まれていて、その形を変えることで口パクさせているんです。顎もつけて輪郭の外にあまり出ないように。あと、髪にはものすごい数のコントローラが入っていて、カメラのアングルによって調整しないといけなくて。専用のセレクタがあるんですが髪専用のタブができるほどで、どこのコントローラを触っているのか判らないくらいでした(笑)。その他の日本アニメっぽいものでは、SP//drのUIが日本語だったのでUI担当のマットペインターに日本語を教えたり、SP//drのルックにはガンダムが資料として上がっていたので、少しだけガンダムの要素を採り入れていたのかもしれません。

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』本編映像<ペニー・パーカー編>(3/8全国公開)

アール:日本のアニメっぽいといえば、モーメントですね。日本のアニメーションはポーズを大げさに付けますが、アメリカのアニメーションは小さい動きで見せるので。アクションっぽいタメ・ツメは参考にしました。

藤原:日本のアニメーションのリファレンスはだいたいアクションもので、2コマ打ちのものもあったしフルコマで作っているものもたくさんありました。ただ、口パクだけは厳密に付けないといけないんですよね。日本のアニメだと声優さんがアフレコで上手く合わせてくれたりしますけど、海外のアニメの場合はプレスコが多く、リップシンクがとても厳しいので、口の形もタイミングもアニメーターが細かく付けるんですよ。


  • 藤原淳雄/Atsuo Fujiwara
    大阪府出身。東京でCGデザイナーとしてキャリアを開始。4年後の2006年よりカナダに移住し、CM・TVシリーズ・ゲーム・映画など様々なジャンル、複数の会社で経験を積む。オンラインスクールAnimationAidの発起人であり、2016年初頭の開校後は同校の講師、運営にも携わっている

    AnimationAid
    animation-aid.com

園田:僕のショットだけだったのかもしれないですけど、ペニーのアニメーションでは「あんまりリップシンクに合わせすぎないで」ってリードアニメーターから言われて(笑)。それが逆に難しかったです(笑)。

CGW:パルクールの失敗動画以外に、アニメーションで参考にしたものは?

島田:グウェンの動きをつけるときはバレエの動画をよく観ていました。

藤原:ほかにも各キャラクターの声を付けてくれる俳優さんが出ている実写の映画をとにかく観てくださいと言われていましたね。

島田:その俳優さんがどういう演技をするのか、どんな話し方をするのかといった特徴を掴むために。

園田:スパイダーマンになって間もないマイルスがまだ自分の動きに慣れず空中でクルクル回っている、というアクションでは、ガラスのチューブの中でふわふわ浮く室内スカイダイビングの「インサイドスカイダイビング」の動画が良いリファレンスになったのでよく観ていました。

島田:最後のシークエンスでマイルスとドクター・オクトパスが戦うシーンでは、「パースを効かせてほしい。とにかくアニメをリファレンスしろ」と言われました。「こういうアクションが欲しい」といういうイメージが明確で、ピンポイントで『NARUTO』のアクションシーンを指定されることが多かったです。だから、テイストとかポーズ、タイミングとか、もちろんそのまま使うわけではないんですけど、『NARUTO』のアクションにあるエッセンスみたいなものを抽出していました。

CGW:ところで、制作当時のオフィスの雰囲気はどんな感じでしたか?

園田:途中でビルが変わって、スパイダーマンをやっているアニメーターはほぼ全員そこに入れられたんですよね(笑)。

一同:入れられた(笑)。

園田:真新しい何もないただのオフィスビルの一室でちょっと寂しい感じだったんですが、何もない壁にティザーで出たすごくアイコニックなショットを印刷したものやスパイダーマンのファンアートを貼ったりして。みんなが描いたものが日に日に増えてだんだん華やかになって、とてもモチベーションが上がりました。会社でやっているドローイングクラスのモデルさんにスパイダーマンっぽいポーズをリクエストしたこともありましたね。

新オフィスの壁に貼られたショット

藤原:「デスクのデコレーションコンテスト」というものもあって、デスク周りをスパイダーマンになぞらえたデコレーションで飾る、というコンテストだったんですが、そういうことをみんなでわいわいと楽しくやっていました。

園田:制作の後半、朝出社したらデスクにスパイダーマンのピンバッヂが置いてあった、ということもありました。アニメーターだけに配られた、マイルスの顔が描かれた非売品で、裏には「Thank you for your hardworking」って書いてあって。この頃は土曜出勤が当たり前になっていて大変な時期だったんですが、これは嬉しかったですね。

CGW:『スパイダーマン』シリーズは世界的に人気のある作品ですが、実際に制作に関わってみてどんな気持ちでしたか?

園田:僕は、制作初期にはスパイダーマンの格好をしていないピーターとマイルスを作ってばっかりだったので、そのときはスパイダーマンを作っているという感覚はなかったんですけど、実際のスパイダーマンにアクションを付けているときは「キター!」って気分でテンションが上がりました(笑)。

藤原:スパイダーマンを動かせるのは嬉しいよね。こっち(カナダ)ではスパイダーマンって圧倒的に子供に人気があるんですよ。僕も子どもがいるので将来「お父さんこれ作ってたんだよ」って自慢できるかなって(笑)。

アール:私は......、以前はとても嬉しかったけど、今はもうわからなくなったな(笑)。でも、今までとはちがう『スパイダーマン』を作っている感じがとても良かったです。ストーリーもビジュアルも良かったし。

アニメーター自身が演技をして収録したリファレンスを参考に作成されたショット

園田:そういえば、自分が作ったショットがコンポジットされたとき「すげえっ!」て感動しました。いつも自分のPCモニタでしか見ていないので、大きなスクリーンで観るとやっぱりちがいますよね。

島田:会社のスクリーンでも3Dグラスで観ることができるんですが、一足先に大きなスクリーンで体験できるというのもテンションが上がったし、作っている僕たちが「この作品、超格好良い!」と思っていたのでヒットする確信がありましたね。

藤原:うおお、かっこええ!ってね(笑)。作っているときから「絶対ヒットする!」って確信があったもんね。スタッフのモチベーションを上げるために月イチで出来上がったところをみんなで観ながらランチをするんですが、忙しくても毎回観に行って「よし、やるぞー!」とテンションを上げてやっていたよね。あれ、僕、会社に上手いこと乗せられてる?(笑)。

一同:(笑)。

CGW:ありがとうございました!

>>後篇は近日公開予定!