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「HUGっと!プリキュア」などの大規模タイトルに携わるほか、自社IPとして展開中の「放課後ミッドナイターズ」がSNSで大きく拡散されるなど、独自性の高い取り組みで注目を集めるモンブラン・ピクチャーズ。昨今、新たな試みとして採用したのが、慣性式モーションキャプチャシステム「Xsens MVN」およびハンドトラッキンググローブ「Manus VR」だ。今回は、社内でモーションキャプチャ設備を所有する利点とその活用法について、同社のクリエイター陣に聞いた。

TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



モーションキャプチャシステムを自社導入するメリットと活用事例

福岡県中央区に拠点を構えるモンブラン・ピクチャーズは、総勢17名という規模ながら劇場映画やゲーム、CM、ステーションIDや企業CIなど映像制作にまつわる幅広い分野のコンテンツを手がける少数精鋭のスタジオだ。2012年の設立以来、クライアントワークをこなすかたわら自社IPの創出にも力を注いできた。

モンブラン・ピクチャーズが「Xsens MVN」を導入したのは2018年8月頃。MVNは慣性センサー式モーションキャプチャシステムで、小型のジャイロセンサーが搭載されたスーツ単体でモーションキャプチャ収録を可能とするプロダクトだ。

同社はこれまでも数多くのモーションキャプチャ案件を手がけていたが、従来は全て外部スタジオで撮影を行なっていた。「去年の春頃に『放課後ミッドナイターズ』の新しい作品を公開し、SNSで大きな反響をいただきました。その際、ファンの皆さんとのコミュニケーションや、流行の時事ネタを取り入れたいといった理由から、プロモーション用途のムービーをスピーディに量産したいという話になりまして。制作するスケジュール感やコスト計算のために外部スタジオを見学、相談させていただいたりしたのですが、なかなか折り合いがつかず、自社でのキャプチャシステム導入を検討しました。MVNは5年ほど前に見たときは期待していたキャプチャ精度が出ていなかったのですが、現行のバージョンはリプロセスの精度の高さに驚いて、これはいける!となってすぐに当社代表に連絡しました」と導入経緯を説明するのは、同社プロデューサーの江藤浩輝氏とテクニカルディレクターの吉田真也氏だ。





  • 吉田真也 氏(テクニカルディレクター)

    プログラマーからキャリアをスタートさせた後、ディレクターとして展示会や博物館などショールーム向けのデジタルコンテンツ制作を行なってきた。モンブラン・ピクチャーズに入社後は、プリレンダー映像のテクニカルサポートを行う一方で、インタラクティブ系のコンテンツ制作に携わる。

もちろん、検討段階では外部スタジオと連携を行う、別のモーションキャプチャシステムを利用するといったプランもあったそうだが、MVNの決め手となったのは "オペレーションのシンプルさ" と "キャプチャ精度" だった。精度面で言えば、肩周りなど上半身の細かな動きはMVNのような慣性センサー式が光学式に比べて優位性があり、オペレーション面では「スーツを着るだけで場所を選ばない」ため、会議室のような空間や、周りが鏡張りのダンススタジオなどでも問題なく収録できる点がポイントとなった。

同社は1ヶ月の試用期間を経て、MVNスーツとManus VRを3セットずつ導入。現在は実写の映像と3DCGキャラクターのアニメーションをVJソフトを用いて合成し、リアルタイムにプレビューを行いながら撮影を進めている。

活用事例

『放課後ミッドナイターズ』

◆劇場版予告編

After School Midnighters from MontBlanc Pictures on Vimeo.

◆ショートムービーズ「まとめ1 -真剣白刃取り篇∼ケツ花火」

◆三次もののけミュージアムコラボ「広島vs福岡∼ラップバトル篇」

©ASMS2

「放課後ミッドナイターズ」は人体模型のキュン様と骨格標本のゴスが放課後の小学校を舞台にドタバタコントをくり広げる作品で、若い世代を中心にSNSで話題を集めている。2012年には劇場版が全国公開されたほか、2019年には広島県三次市が運営する「三次もののけミュージアム」とのコラボPVが制作されるなど、行政との連携を含め幅広く展開されているIPだ。本作はBS日テレでも毎週金曜日にショートムービーが放送されており、1作にかける工数をいかに削減するかが焦点となっている。キャラクターのアニメーションは全てモーションキャプチャで、MVN導入以前は外部スタジオで収録していたが、現在は企画後すぐに収録に取りかかれるかたちとなっている。

「僕たち作り手としても、ファンの人たちが喜んでくれるのが一番のモチベーションです。もっとファンに喜んでもらえるよう、例えば時事ネタにリアルタイムで反応したいようなとき、外部スタジオを押さえて制作に取りかかって......というやり方ではスピード感が出せません。『放課後ミッドナイターズ』は僕たちのIPで、制作者も自分たち、運営も自分たちだからこそスピーディにできる作品でもある。MVNを導入後は全てのクリエイティブが社内で完結できるようになったので、このスピード感で作品をつくり続けられるんです」(江藤氏)。





  • 江藤浩輝 氏(プロデューサー)

    DTPなど雑誌系のグラフィックデザイン会社の制作ディレクターを経て、モンブラン・ピクチャーズに入社。クライアントワークの制作管理や、自社IPのプロデュースを行っている。現在は、自社ブランディングの中心としても活躍中。

西元祐貴×猪口大樹のコラボ「龍のキセキ」

墨絵アーティスト・西元祐貴 × 映像作家・猪口大樹 スペシャルコラボ「龍のキセキ」 from MontBlanc Pictures on Vimeo.

プリレンダー系の案件を得意とするモンブラン・ピクチャーズだが、プロジェクションマッピングの需要の高まりなどを背景として、5年ほど前からインタラクティブコンテンツの制作事例も増えてきているという。こうした取り組みをリードするのは、自身も大学時代インタラクティブコンテンツの研究を続けていたというディレクターの猪口大樹氏。中でもユニークなのは、2017年に公開された墨絵アーティスト・西元祐貴氏とのコラボレーション「龍のキセキ」だ。

「本来、墨絵は完成品を観るものですが、描いていく過程や作家の息遣いを映像で表現したら面白いのでは、ということで制作した作品です。こちらはMVN導入前でしたので、特注の筆や筋電センサーなど様々なセンサーを組み合わせて作家の息遣いを表現しています。スタジオがなくても気軽に使えるモーションキャプチャシステムは、こういったインタラクティブな作品にも活用できると思っています」(猪口氏)。





  • 猪口大樹 氏(ディレクター)

    モーショングラフィックを軸とした表現手法でCMやWeb、番組パッケージなどの映像をコンセプトワークから制作まで一貫して手がける。大学時代からインタラクションの研究を続けており、ディレクターという立場ながら自ら手を動かして開発をリードするクリエイターとしての一面も強い。

「LST/D」NEIGHBORS COMPLAIN

大阪発のセルフ・コンテインド・バンド「NEIGHBORS COMPLAIN(ネイバーズ コンプレイン)」のMVでは、MVNと合わせてManus VRが活用されている。一見手打ちのドット絵にも見えるが、動きに関しては全てモーションキャプチャで収録したもので、独自のフィルタ処理によって個性的なルックを表現しているという。また、Manus VRによって手の動きも同時に収録しており、アニメーションのガイドとして用いている。

こうした特殊な演出にあたっては事前の技術検証が重要となるが、従来は検証も外部スタジオで行なっていた。一方、現在はモーションキャプチャシステムが社内にあることで、やりたい演出に対する技術検証が即時的にできるようになっていることが制作スピード向上に大きくつながっている。また、収録自体は北九州のダンススタジオで行なっているが、場所を選ばないポータビリティ性と、大がかりなスタジオ設備ではなくダンサーにとって慣れ親しんだ環境で撮影できる点もプラスに働いたという。

「HUGっと!プリキュア」後期エンディング

©ABC-A・東映アニメーション

「HUGっと!プリキュア」後期エンディングのキャラクターアニメーションにもMVNが用いられている。制作は同社ディレクター/CGアニメーター・竹野智史氏がリード。「東映アニメーションさんが "新しい演出を取り入れたい" ということで、われわれが制作を担当させていただきました。正直、昨今のプリキュアは3DCGのレベルが上がりすぎていて、新しいことと言っても単なるクオリティアップではないと感じていたので、これまで当社が得意としていたモーショングラフィックスと、東映アニメーションさんが所有していたMVNによるモーションキャプチャとを組み合わせた演出を行いました」(竹野氏)。





  • 竹野智史 氏(ディレクター/CGアニメーター)

    劇場版「放課後ミッドナイターズ」では、リードアニメーターとして参加。主役2人の表情をほぼ1人で手掛ける。現在は、キャラクターやグラフィックのアニメーションを中心にCG制作のディレクションも行い、セットアップからコンポジットまで手広く対応する。

こうした案件を受託できたのは、モンブラン・ピクチャーズの従来の得意分野でもあるモーショングラフィックスが演出上の重要なファクターであったことに加え、"自社内でモーションキャプチャを扱えるレベルで、収録に長けたスタッフがいる" という新たな特徴があったからこそ。そういった意味では、MVNと既存の強みが上手く結びついた事例と言える。

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モンブラン・ピクチャーズ社内でのMVN活用法

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モンブラン・ピクチャーズ社内でのMVN活用法

取材中、実際にモーションキャプチャ収録を行なっている様子を見せていただいた。MVNは大型の設備を必要としないため、場所を問わず活用が可能。実際の撮影に際しては、MVN AnimateからMotionBuilderへダイレクトにモーションデータを取り込み、リアルタイムでキャラクターモーションのプレビューを行なっている。プレイバックも自在で、3DCGキャラクターの動きを確認した上で撮り直しなどもその場で可能となるため、完全に実写の撮影と同じ感覚で撮影ができている。

同社会議室でMVNを活用している様子。スーツを着用するだけのイージーセットアップで、アクターが同一人物であれば事前にセーブしておいたキャリブレーション結果をロードすることで即時にキャプチャに取りかかることが可能。なお、モニタリングはMotionBuilder上で行なっている。

小道具にマーカーを装着することで、模擬刀やバットなど3Dアセットのモーションにも対応する。素早い動きに対してもトラッキングエラーはなく、振り回すための物理的な空間さえあればその通りのモーションデータが完成する。

モンブラン・ピクチャーズでは主にアニメーター主導でモーションキャプチャを行なっているが、「パッと思いついたときにすぐアイデアをアウトプットできる手段」として全社員に使い方を覚えてもらう方針だという。企画自体も自社で行うような会社では、アイデア出しの時点で簡単に技術検証を行えることの恩恵は大きく、フットワークの軽さが大きなメリットとなる。

もちろんデメリットがまったくないわけではなく、安定稼働させるためにはWi-Fi環境を含めた環境構築が必要となる。同社の会議室など、普段から使い慣れたロケーションであれば問題はないが、外部スタジオに持ち出す場合はシステムの安定性が建物全体の混線具合などのロケーションに依存する点に注意したい。このため、初めて利用する場所では運用上問題がないかの事前チェックは必須と言える。

「ロケーション自体はMVNの問題というよりは運用上の問題なので、リアルタイムの現場では注意をする必要はあります。ただ、2017年のアップデートで磁場耐性が付いたことは、当社への導入の決め手にもなっています。MVNの良いところは、アップデートのスピードが早いこと。今できなくて困っていることが、数ヶ月後にはできるようになっているというようなことが多く、その点は凄いなと思っています」(竹野氏)。

ときには身体の動き以上に重要なのが手の演技だ。「映画を制作しているときに特に強く感じるのですが、アクターの方は手の演技だけで感情を伝えることができます。顔や身体が映っていなくても、手が映っていれば状況や心情がわかる。それだけ手の表現は重要なんです」と語るのは、Manus VRの導入を決めた代表取締役の竹清 仁氏だ。





  • 竹清 仁 氏(代表取締役/監督)

    劇場版「放課後ミッドナイターズ」の制作をきっかけに、2011年12月にモンブラン・ピクチャーズ株式会社を設立。同作で映画監督デビューをし、海外でも広く評価された。現在、竹清氏はクライアントワークのプランニングやディレクションだけでなく、絵本「チャドとクラーク」シリーズを手がけるなど活躍の場を広げ、自社IPの創出にも力を入れている。

フル・フィンガー・トラッキングシステムであるManus VRは、MVNと同期が行えるアップデートを受け、現在はフルボディとハンドの同時キャプチャも可能だ。同社では、手付けだと時間がかかってしまうアニメーションのガイドとして活用されている。Manus VRは手の動きを完全に捉えているわけではなく、あくまで指がどの程度曲がったかの回転軸を取得しているためアニメーターの手による修正は不可欠だが、それでもあるとなしでは作業効率と出来上がりの自然さに大きな差が出るという。

「Xsens MVN」および「Manus VR」を装着し、その場でキャプチャを行なっている様子。指の動きを含めたアニメーションデータが、ほぼ遅延なくMVN ソフトウェア 2019.0上で確認できる。

「Manus VR」は指の関節の回転軸のみの検知となるが、こうした複雑な指の動きも概ねキャプチャできており、MotionBuilder上でガイドとして活用されている。腕をクロスするような大きな動きも問題なく検知可能。

最新技術を使って新しいエンターテインメントを生み出したい

これまで同社が生んできたキャラクターやライブ、インタラクティブコンテンツなどと、先端的なセンシング技術が合わされば、これまでにない新しいエンタメが創り出せるはずと竹清氏は力説する。「サーカスをエンターテインメントとして昇華したシルク・ドゥ・ソレイユのように、われわれも技術・アイデア・表現をどう組み合わせるかによって、まったく新しいコンテンツが生み出せるはずです。そのための技術は今も検証中ですが、早く使ってみたいとウズウズしています」(竹清氏)。

なお、現在は高精度なフェイシャルキャプチャ・ソリューション「Dynamixyz Performer」も検証中とのこと。コンパクトかつ高精度なMVNやManus VRといったモーションキャプチャシステムを活用することで、イノベーティブなコンテンツが数多く生み出されることに期待したい。

■お問い合わせ先

ゼロシーセブン株式会社
システムソリューション事業本部 センシングプロダクツ営業部
〒107-0052
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