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テレワーク移行へのステップは? 自宅の作業環境は? コロナ禍の渦中から送るヒストリア×アニマ緊急テレワーク対談

テレワーク移行へのステップは? 自宅の作業環境は? コロナ禍の渦中から送るヒストリア×アニマ緊急テレワーク対談

4月7日(火)に発令された国の緊急事態宣言を受け、一斉にテレワークに移行した3DCG制作の現場。過去に例のない状況だけに、各社とも手探りで進めているのが現状だ。そこでゲーム業界からヒストリアの佐々木 瞬氏、CGアニメーション業界からアニマの笹原晋也氏に協力いただき、2020年4月20日(月)に緊急オンライン対談を実施した。

INTERVIEW_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

なお、両社のテレワーク移行については、各々のブログに詳しいので、併せて参照してほしい。
●アニマ
http://www.studioanima.co.jp/Anigon-chat/2020/04/06/post-5096/
http://www.studioanima.co.jp/Anigon-chat/2020/04/06/post-5089/
http://www.studioanima.co.jp/Anigon-chat/2020/04/06/post-5084/
http://www.studioanima.co.jp/Anigon-chat/2020/04/21/post-5107/

●ヒストリア
https://historia.co.jp/archives/14815/

テレワークにあわせてZoomで対談

CGWORLD(以下、CGW):今日はテレワークをテーマとした緊急対談ということで、対談自体もリモートで行なっています。アニマさん、ヒストリアさんとも、フルリモートに移行されてちょうど2週間というところですが、調子はいかがでしょうか?

佐々木 瞬氏(以下、佐々木):ボチボチですかね......でも疲れ切ってますね。

笹原晋也氏(以下、笹原):疲れますよね。何か見えない感じがすごくて。

佐々木ZoomSlackでコミュニケーションを取りながら仕事を進める日々ですが、画面越しだと会話のタイミングがつかみにくくて、気を遣いますよね。

CGW:はいはい。

佐々木:自分自身で言えば、毎週火曜日に出社して、郵便物の整理や観葉植物の水やりをしているんです。サーバが落ちていたので、再起動したこともありました。それにあわせて、プロデューサーが書類を取りに来たりすると、そこでちょっと話したりするじゃないですか。すごく会話が楽で。リアルの会話って、やっぱり情報量が多いんだなって思います。

笹原:本当にそうですね。

CGW:すでに対談が始まっていますが(笑)、簡単に自己紹介などいただければ。

佐々木:ヒストリア代表の佐々木です。会社を設立して6年半になります。起業前からコンシューマの開発が長かったこともあり、独立後もUnreal Engine(以下、UE)4専門のゲームデベロッパというコンセプトで事業を進めています。主な事業領域はコンシューマ、アーケード、VR、そして建築・自動車関連を中心としたノンゲームですね。

CGW:モバイルはやられていないんですね。

佐々木:そうなんですよ。UE4がモバイルに向きにくい時期があったことと、弊社のスタッフにコンシューマ畑の人間が多かったことが理由です。ゲームデザインを行う機会を多くもちたいという考え方もあり、運営型よりも売り切り型のゲームに目がいってしまいますね。一時期、スマホのソーシャルゲームに手を出しましたが、社風に合わないということで、やめてしまいました。

CGW:ゲーム業界でもモバイルと家庭用やアーケードでは、テレワークのあり方もちがうと思いますので、そのあたりの話も後でできればと思います。ちなみに受託開発での売上は何割ぐらいですか?

佐々木:ほとんどですね。自社案件として「Solid Vision」という、バーチャルモデルルームの開発・展開を行なっていますが、売上的に見ればほとんどが受託開発です。

CGW:続いて笹原さんもお願いします。

笹原:アニマ代表の笹原です。4月末決算で、来期で24期目になりますね。だいぶ長いことやってます。ゲームのオープニングCGを制作するところから始まって、そこから遊技機向けの映像をつくったり、Netflixのような配信向けのアニメ作品をつくったり。『モンスターストライク』のアニメーションをつくらせていただいたり。3DCGの映像制作スタジオとして、幅広くやってますね。

映像系以外に、ゲームのアートアセットをつくったりするチームもあります。受託開発については、うちも100%に近いですね。

CGW:ありがとうございました。まずテレワークへの移行についてお伺いします。すでにお二方とも、ブログのほうで細かく書かれていらっしゃると思いますので、もう少し生っぽい部分について教えてください。ヒストリアさんはブログに書かれているとおり、4月に入ってからバタバタと移行された感じですか?

佐々木:めっちゃバタバタですね。もともと産休・育休でテレワークを2人だけ許可していたんですよ。それに伴い、ここ2年ぐらいでVPNを入れたり、セキュリティがしっかりしたルーターなどを入れたりと、最低限の環境は整えていました。ただ、アーケードの筐体ものや、VRコンテンツなどの開発も行なっているので、全社的にテレワークを推進していく考えはありませんでした。コンシューマをやっていると、開発機を社外にもち出すことも難しいですからね。

CGW:テレワークは4月7日(火)の緊急事態宣言がきっかけですか?

佐々木:その前から動いていました。新型コロナウイルスの感染拡大で、3月の後半に緊急事態宣言やロックダウンの噂が出始めたころです。自分も含めて、だんだん電車に乗るのが怖くなってきたのもありますし、いざロックダウンとなったら、なすすべがなくなりますからね。そうなる前に、テレワークについて本格的に考えないとまずいなと。

他にゲーム業界の知人に、新型コロナウイルスの陽性反応が出たこともありました。その方が入院にいたるまでの過程や症状について事細かくSNSに投稿してくれたんですよ。それをみて、驚かされたこともきっかけのひとつですね。

CGW:軽症でも、こんなに苦しいんだと。

佐々木:本当にそうですよね。それもあって危機意識が増していって。クライアントにミーティングのついでに話題に上げつつ、備え始めていました。その一方でゲーム業界で「あそこが感染した」、「あそこがクローズした」といった噂話が耳に入ってきて......。3月31日(火)に「これはもう無理だな」と判断をして、そこから一気に動いて、オフィスのクローズは4月3日(金)でした。

笹原:弊社も似ていますね。たまたま在宅勤務をするスタッフがいて。それをテストケースとして、リモートワークの準備というか、検証をしていたんです。そんな中、3月の三連休明けのころから、スタッフがざわつきはじめて。「会社としてはどうするんですか?」、「外出したくないんですけど」など、問い合わせが増えてきました。

佐々木:そうなんですよね。

笹原:ちょうど4月末締切のプロジェクトがあり、仕事を抱えて忙しいスタッフもいました。そのため休日出勤の話もありましたが、目に見えて社内がざわざわしていました。会社として、ある程度の指針を出さないと、安心して働けないという状況だったので、3月28日(土)~29日(日)は完全オフにしました。そこから急にテレワークを進めようみたいな感じになりましたね。

実際、1日でも早く在宅で働ける環境をつくらなくちゃということで、4月のあたまに一気にもっていった感じがありますね。意識が高いスタッフが何人かいて、リモートデスクトップ用のソフトを検証してくれていたおかげで、短期間で移行できました。

対談はZoomを通して行われた。笹原氏(左上)、佐々木氏(左下)、筆者(右上)

在宅勤務はストレス? 快適? 好対照な両社

CGW:アニマさんではブログで「以前から家庭や交通(住んでいる場所が遠方)の事情で能力や意欲のあるアーティストが働く機会を逃してしまうことはアーティスト/企業双方にとって"もったいない"と考えていました」と書かれていましたね。

笹原:これから子育てや介護などで、在宅で働きたいという人が増えてくるだろうと、漠然と思っていました。そういう意味では、今回のことは良い機会でもありましたね。

CGW:経営者ならではの責任感や、プレッシャーはありませんか?

笹原:責任感はよくわからないですが、見えない不安はあって、ストレスに感じますね。マイナス要素でも、わかっていれば対応できるんですが。わからないものに対しては凄く不安を感じるので。

CGW:互いのテレワークの環境づくりが好対照ですよね。ヒストリアさんはVPNを接続して自宅で直接作業をされているのに対して、アニマさんではリモートデスクトップを利用し、会社のPCにログインして作業をされています。リモートデスクトップ環境で本当にCG制作が進められるのか疑問に感じられる人も多いと思いますが、実際はどうですか?

アニマにおけるリモートデスクトップ環境での働き方

①自宅のPCにインストール&設定していたParsecを開き、Connectを選択した状態

②会社にある自分のPC画面が開いた状態

笹原:今回の対談にあたって現場の方から、スタッフの意見をまとめてもらったんですが、それを見る限りあんまりストレスがないみたいですね。生産性は確かに落ちているんですが、出社しなくて良くなって逆に嬉しいとか。通勤時間だけで何時間もかかるスタッフもいるので、時間がもったいないという声もありました。総じて、通勤時間がなくなって良かったというスタッフが多かったですね。

CGW:ヒストリアさんはどうですか?

佐々木:うちはコミュニケーションの取りづらさについて、ストレスに感じているスタッフが多いようですね。受託開発といっても、弊社は取りまとめ役として、上流工程の割合が高いんです。そこから切り出せるものを協力会社に発注するというスタイルでやっているため、密なコミュニケーションが必要なところが社内に残っていて。そのためリーダークラスの負荷が急増していますね。

仕事の進め方についても、リーダーがチームのモニタを見ながら、問題をパッと拾って話しかけるとか。お互いに作業の合間をぬって、口頭で情報共有を済ませるとか。仕事で詰まっているスタッフがいたら、他のプロジェクトで似たような経験をしたスタッフを連れてきて、そこで情報共有をさせるとか。そういったコミュニケーションベースのやり方をしてきたので、テレワークだとなかなか厳しいですね。

CGW:そういった仕事のやり方は、ゲーム業界あるあるですよね。逆にCGスタジオに取材に行くと、ちがう文化を感じることがあります。スタジオの中が薄暗くて、みんなあまり喋らなくて、歩き回っている人がいないみたいな。

そんなふうに仕事ぶりがちがうこともあって、アニマさんではテレワークの方が仕事がしやすい的なことがあるんでしょうか?

笹原:ある程度情報が固まったものを渡さないと、作業する側が迷っちゃうんですよね。迷うと効率が悪くなるので、迷わずにつくってもらうことが大切です。そのためには作業をする前に、ある程度完成像が見えていなきゃいけない。そうした傾向がCGアニメーション制作では多いのかもしれないですね。だからコミュニケーションも、チェックのときには必要ですが、そこまで多くはない。それよりも作業をする時間にあてた方が、効率がいいのかなっていう気はします。

ただ、そうはいっても、ちょっと気になったことが気軽に聞けないっていうのが、ストレスとして出てきているので。1~2週間程度だと問題がなくても、それ以上の期間になると、別の問題がやっぱり出てくるんじゃないかなと思いますね。今のパフォーマンスが今後も維持できるかわかりませんし、引き続き様子を見ないといけないのかなって感じですね。

佐々木:実際、弊社ではこの2週間でオフィスにいた頃のコミュニケーション貯金が尽きた感覚がありますね。それまで指示していた作業が、ぶわーっと全部終わってきて、ここからが本番みたいな。また、最初の頃は「テレワークでもこれだけできる」みたいな、ポジティブな雰囲気があって、自分も救われたところがありました。ただ、これも次第にテレワーク疲れみたいなものが出てきていて。

テレワークに移行したアニマ社内の様子

ウォーターフォールとアジャイル、それぞれの進め方のちがい

CGW:先ほどヒストリアさんではZoomとSlackを使用されているという話がありましたが、アニマさんではどのようなコミュニケーションツールを使われていますか?

笹原:ZoomとRocket.Chatを使っていますね。ただ、チームによって運用がちがっていて。アセットなどを制作するチームでは、黙々と仕事をしたいスタッフが多いので、比較的コミュニケーションが少なめですね。他のチームでは、ずっとZoomをつないで、映像をながしながらやっているところもあります。チームごとに仕事内容がちがうので、それぞれで良い方法を模索してもらっている感じです。

CGW:必要に応じてチーム長が笹原さんとミーティングをしたり、報告を上げたりって感じですか?

笹原:いえ、それもあまりないですね。スタッフのパフォーマンスが出るのが一番重要だと思ってるので、現場が中心になって動いています。僕は彼らが決めた内容を傍で聞いて、全体の舵取りに集中しています。もう数日テレワークを早めてみましょうとか。そういうことしか言わないですね。

佐々木:それは組織として素晴らしいですね。

CGW:佐々木さんはまだ、プレイングマネージャーですよね。

佐々木:そうなんですよね。もっと現場に権限を委譲していかなきゃいけないんだけど、まだ道半ばでして。とりあえず、コミュニケーション面での対策として、みんなには「全体の歩みを遅くしろ」と言っているんですけれども。

CGW:ブログでは「午前中にやっていたミーティングを夕方も実施するようになった」と書かれていましたね。

佐々木:そうですね。ちょっと話が前後しますが、ゲームとCGアニメーションは作業の進め方が対極だと思います。ポリゴン・ピクチュアズさんや、マーザ・アニメーションプラネットさん、SOLA DIGITAL ARTSさんと映像制作やVRコンテンツで協業させていただいた中で、そのことを実感しました。CG制作は文字通りウォーターフォールで、それが理に適っているんですよね。最初に絵コンテを決めて、そこから一気に量産にもっていくという。

これに対してゲームでは、ちょっとつくって手触りを確認して、またちょっとつくってというくり返しで開発が始まって。そんなふうにしながら、量産期に向けてウォーターフォールで進められるように整えていくといった感じで。

ただ、そうはいってもプログラムとグラフィック、プログラムと企画といったところで日々トラブルが起き続けるので、密にコミュニケーションを取りながらひとつずつ解決していかざるを得ない。そんなふうにアジャイル型のようなかたちで進めていくのがゲーム開発では多いと思います。そういうところのちがいが大きいかなと感じていて。

CGW:なるほど。

佐々木:そのためテレワークに移行する上でも、コミュニケーションが薄くなることで、リーダー側のマネジメントに対するコストが膨れることが予想されました。そうなると現場がチェック待ちになって、手もち無沙汰になるじゃないですか。リーダー側からすれば、メンバーの手が空くことが怖いので、とりあえず現場に精査が甘いタスクを投げてしまう。もしくは、本来先に手を着けるべき自分のタスクより、他の人の手を埋めるための準備タスクを優先せざるを得なくなってしまう。

ただ、そうなると自分で自分の首を絞めちゃうんですよね。自分が本来先にやるべきタスクが後回しになるので、タスクが積み上がり、決めるべき順番で物事を決めていないため、リテイクが多くなってしまう。最悪の場合、現場が崩壊しかねません。

それでは意味がないので、ひとつひとつの作業をちゃんとやろうと。その結果、現場で手が空くのは仕方がないと。非常事態なんで、それにあわせたやり方にしようと指示を出しました。

テレワークに移行したヒストリアの社内

笹原:話を聞いていて、やっぱりうちは完全にウォーターフォールというか。上から下にものがながれていくのでこういう状況に強いのかなって、改めて思いました。

佐々木:ウォーターフォール型は、各々でやることがはっきりしていますからね。

笹原:そんなふうにしないと効率良く結果が出ないので。それぞれの精度が上がれば上がるほど、打ち合わせの回数も減りますしね。ただ、CGアニメーションでアジャイル型のモノづくりもやりたいよねって話も出ていたんです。やり方としては難しいけれど、そっちの方が良いんじゃないかって話もありました。ただ、今は努めてウォーターフォール型で良かったのかなっていう。

CGW:ゲーム業界でも完璧な仕様が切れれば、ウォーターフォール型でも問題ないんでしょうが、なかなか難しいですよね。

佐々木:そこまで先を見通せないですし、チームの全体で共有できなければ意味がないですからね。自分もディレクションをしていて、経験上・理屈上はこの仕様で大丈夫だと思っていても、チームで共通意識をもつために最初の部分を実装してから次の話をしよう、と判断することも多いです。

また、それにより見えてなかった問題点があぶりだされることも、日常的にあります。そのため多少効率が悪くても、少しずつビルドを重ねていくことが重要です。ゲームジャンルや、そのジャンルへの造詣の深さによって、どこまで刻むかは変わりますが。

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Profileプロフィール

佐々木 瞬/Shun Sasaki

佐々木 瞬/Shun Sasaki

株式会社ヒストリア 代表取締役
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笹原晋也/Shinya Sasahara

笹原晋也/Shinya Sasahara

株式会社アニマ 代表取締役
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