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若干24歳にして、HIPHOPシーンを代表する数々のアーティストのMVを撮影してきた若手映像作家Spikey John氏。高校時代、友人を撮影する遊びの延長から、次々に映像案件をこなしてきた彼は、この先にどこを目指していくのか。直感的な独自のセンスと経験に基づく映像制作のコツと、同氏のクリエイティブを支える編集マシン選定の基準、さらには、AMD Ryzen 9 4900HS搭載したハイパフォーマンスモバイル機「ROG Zephyrus G14 GA401IV」の実力についても伺った。

TEXT_神山大輝 PHOTO_弘田 充 EDIT_池田大樹(CGWORLD)

Information

  • AMD(Advanced Micro Devices)

    50年以上の歴史を持つアメリカの半導体製造会社。「Athlon」や「Ryzen」シリーズなどを展開するCPUとともに、「Radeon」シリーズによるGPUの両方を開発する。さらに、CPUとGPUを1つに統合したAPUなども手掛けている。
    https://www.amd.com/ja


▲デジタルアーティストの創作活動を支援するAMDのPV。 Spikey John氏MV制作において重視している考え方や今後の目標について語っていただいた


きっかけはiPhoneの動画編集アプリから

CGWORLD:映像制作を志したきっかけを教えて下さい。

Spikey John:一番最初に触ったのは、簡単なカット編集だけが可能なiPhone用の動画編集アプリでした。単純なカット編集が出来るだけでしたが、それで友人を撮影して遊ぶ、ということをやっていました。当時はスケートボードをやっていて、最初は友人が滑る姿ばかり撮っていたと思います。これが高校2年生の頃で、その後iPhoneのカメラがGoProに進化して...とにかく遊びの延長でずっと撮影を続けていました。

CGWORLD:いつ頃から本格的な撮影を始めたのですか?

Spikey John:本格的かどうかは分かりませんけど、はじめて一眼で撮ったのは大学1年生の頃ですね。パナソニックのGH3というカメラを使っていて、地元の友人が組んだバンドのMVを撮影をしていました。鳥取県まで行って、秘境みたいなところで撮ったんですよ(笑)

CGWORLD:大学はデジタルハリウッド大学に進学されていると聞いていますが、そちらではどういったことを学ばれましたか?

Spikey John:実は2年目から大学には行かなくなってしまったんです。僕の場合、映像制作をここまで続けられたのは、とにかくなんでもありの自由な環境に身を置いていたからだと思っています。最初から「映像はこう作るんだ」と人に言われていたら、続いていなかったかも知れない。
スケートボードを撮影している時は、脚本も作らないし、外に出て撮ったものをただ繋げてストーリーを考えていて...こういう自由なクリエイティブから映像制作の世界に入れたことは自分の中でも大きくて。
それでも、大学で友人たちや先生方との繋がりを持てたのは、価値があったと感じています。それこそ髙野さん(※)には良くして頂きましたし、今の撮影の仲間も当時の友人です。

※Spikey John氏が所属する事務所「合同会社GROUNDRIDDIM BOXの代表」の代表。デジタルハリウッド大学では准教授を務める)

▲取材が行われたGROUNDRIDDIMのスタジオ

CGWORLD:その後、お仕事として映像制作を行うようになった経緯などはありますか?

Spikey John:上京したてのころは東京に友人もいなかったのですが、BAD HOPのマネージャー(村越廉一氏)のアシスタント業務から徐々にアーティストと繋がっていって。その時はまだ駆け出しだったアーティストが、3年経つとすごく有名になっていって、そこからの流れで自分にも仕事が来るようになりました。この頃友人のように接していた距離の近いアーティストたちがみんなが上がって行ったので、それに乗っかっていった感じはしますね。

CGWORLD:現在は主にMVが中心かと思いますが、お仕事についてチームの人員構成や制作環境について教えて下さい。

Spikey John:予算に応じてチームや人員は変化しますが、最低でも5名以上で動いています。カメラマンと自分は固定で、あとは車両部なども含めてクリエイティブ以外で働いてくれる人が3人ほど。カメラ、照明、カメアシ、プロデューサーなど...この辺りは本当に案件によりけりですね。

制作ペースは、多い月は5,6本制作することもあります。少ないときは2本程度ですね。理想を言えば月1本ペースで、じっくりクリエイティブに時間を掛けてクオリティを高めたいという想いはあります。自分の中でクオリティのラインは持っていますが、同時に何本もやっているとクオリティを高めるのがどうしても難しくなるので...。いまはMVの案件がほとんどですが、たまにファッション系のCMなどもありますね。

CGWORLD:MVはHIPHOPカルチャーをメインとした制作を行っているかと思いますが、もともと音楽ジャンルとしてお好きだったのでしょうか?

Spikey John:これも高専時代の話ですが、当時見ていたスケートボードの動画ではHIPHOPが使われていることが多かったんですね。NITRO MICROPHONE UNDERGROUNDBUDDHA BRANDなど、自分から見ると少し上の世代の音楽が多かったんですが、TSUTAYAで借りたりインターネットで調べていろいろ聴いたりしていました。当時はUSラップのほうが好みでしたが、日本語ラップに詳しい友人もいて、割と自発的になんでも聴いていましたね。良い音楽からインスピレーションをもらうことが多いので、今はやはりMV撮影が多いですね。

CGWORLD:HIPHOPミュージックは渋谷や新宿など都心部のカルチャーを想起させるものも多いですが、地元に密着したグループも多いと思います。どういった点に魅力を感じていますか?

Spikey John:そうですね...地方都市や郊外の方が、"地元"という感じが強いんですよ。東京は、ここにずっと住んでいた人じゃないたくさんの人が外から来ていたりして...でも逆に、"地元"だと親戚も家族も友人もいるわけじゃないですか。それぞれの地元を背負うというのもHIPHOPのひとつの側面ではああって、そういう意味でも地方がアツいというのは言えると思います。例えば、自分がMVを撮らせてもらってる「舐達麻」は、地元の熊谷を歌い続けてるじゃないですか。 ▲100MILLIONS (REMIX) / 舐達麻(prod.GREEN ASSASSIN DOLLAR)

東京のシーンも出てきますけど、最終的には熊谷に帰るという意識で撮影をしていたんです。このMVでは、夜の都会、昼の熊谷という構成で、ふたつの世界観を描いています。結局、熊谷のシーンはほとんど使わなかったり、ロケ地も当日「こっちの方が良いよね」で変わったりしたりしましたけど。

CGWORLD:ロケ地や構成など、撮影計画は普段どこまで立てていますか?また、ご自身の映像制作で、こだわりを持っていらっしゃる部分はどこですか?

Spikey John:それも案件次第ですが、自分の中に「映像として世に出せるゴール」が明確にあるので、そこのクオリティは最低でも出せるようにはしています。どういった場合でも、撮っている段階で、頭の中でどう編集するかは考えている。スピーディな編集と仰って頂いていますけど、僕にとっては普通なことです。あとはもう、当日の撮れ高次第でどんどん面白くなっていく感じです。こだわっているのは色味で、ほぼ無意識でやっていますが「色味はこれでしょ」というのは毎回自分の中で見えています。

CGWORLD:アマチュアとプロの映像制作の一番の違いはどこでしょうか?

Spikey John"無駄なことをしない"のがプロっぽいです。アマチュアは無駄にカメラを動かしたりとか、(撮影や編集の段階で)オーバーにやりがちな場合が多いです。普通に良いカメラを使うなら、まずは三脚で綺麗に撮って、そこで見栄えする構図が切れるか。出来なくてもクロップを入れるとか、とにかく何度も撮って「どうやったらプロっぽくなるか?」を考え続けて、編集しながら研究を続けるしかないと思います。

CGWORLD:ここからは実制作についてお伺いしていきます。使用しているのはPremiereと伺っていますが、これは何年ほど使っていますか?

Spikey John:Premiere自体は4,5年ですね。カメラは普段はSony FX9を使っていて、編集マシンはMacbookProのフルスペックモデルを使っています。スペック的には、オフライン編集であればそこまで求められませんので、シンプルに使えるものを選んでいます。

CGWORLD:基本的に、ノートPCで作業することが多いのでしょうか。

Spikey John:そこもこだわりはなくて。以前はiMacを使っていて、その前はノートで、繰り返しで使っていますね。あまり出先で作業をすることはなくて、編集作業は自宅だったり事務所だったりで集中してやることが多いんです。撮影の合間に編集をしようと思ってホテルにPCを持ち込んでも、結局やらないことが多いんですよ。

CGWORLD:今回、実際に使って頂いたAMD CPU搭載のROG Zephyrus G14 GA401IVですが、ファーストインプレッションはいかがでしたでしょうか。

Spikey John:基本PCは編集マシンとしてしか見ないのですが、これはとにかく何でもできるPCだなと感じました。これ一台でゲームもできますし、みたいな話も事務所でしましたね。

背面のLEDも良いし、デザインもかわいいので向上心が出るというか。PCがイケてるとやる気が出るんですよ。あとは編集時の話ですが、もともとMacの液晶に慣れていることもあって、他社メーカーのノートPCの液晶画面にはあまり良い印象がなかったんです。ただ、G14は色味も好みだったので、かなりやり易さを感じましたね。

CGWORLD:実際に作業をしてみて、動作はいかがでしたか。

Spikey John:全く問題ありません。デスクトップPCでもきついような、例えばrawファイルの編集などは難しいかも知れませんが、一般的なオフラインであれば全く問題ないですね。個人的に良かったと思うのはSSDの速度で、データ転送に全くストレスがありませんでした。あとは値段ですね、Macに比べてWindowsのノートPCは同じスペックでもずいぶん安く買えるので、これから映像やる学生の方などはコストパフォーマンス的な意味でも、こういった機種を購入してスタートするのが良いとは思います。完全にクリエイター向けのマシンだと思いますし、このPCスペックに文句があるならクリエイターじゃないというくらいの快適性だとは思いますよ。

CGWORLD:ありがとうございました。最後に、Spikeyさんの今後の展望について教えて下さい。

Spikey John:自分はいろいろなタイミングで映像制作を続けてきました。計画的には考えていないものの、そういう"流れ"になったら映画などもやってみたいと思っています。今はNETFLIXなどの配信媒体に興味があります。もともと自分は映像制作や映画の知識などは全くなく、何も知らない状態だったのですが、先日クリストファー・ノーラン作品を見て「これは凄い!」となりまして。それまでは映画って誰かの人生を後追いするストーリーがダラダラと流れるようなイメージを持っていたのですが、ノーラン監督の作品は細部まで計算され尽くされているのがすごいなと。別にNETFLIXにこだわるわけではないですが、いつかはこういった作品を自分でも作ってみたいなとは思っています。