CG衣装のハイレベルなモデリングやアニメーションを実現にする「Marvelous Designer」。PCには一定以上の性能が求められることになるが、どんな構成が最適なのか。Marvelous DesignerでのCG制作から専門書の執筆までを手がける 藤堂++氏に、「パソコン工房」で知られるユニットコム提案のPCを検証してもらった。

TEXT_近藤寿成(スプール) EDIT_池田大樹(CGWORLD)



▲パソコン工房CG・映像制作者向けブランド「CG・MOVIE GARAGE」販売サイト。本企画で藤堂++氏が監修したCG×ファッション制作・衣装デザイン向けPCが紹介されている。各ラインナップともに、目的に合わせて余分な構成は省き高いコストパフォーマンスを実現している。今後さらなるラインナップが登場予定だ >>>製品紹介ページはこちら

クロス・シミュレーションの速度はCPUのクロック周波数とコア数に依存

パソコン工房スタッフ:Marvelous Designerで利用するPCを購入する際には、どのような点を重視していますか?

藤堂++氏(以下、藤堂):1番は「CPU」です。 Marvelous DesignerはCPUのマルチスレッドにも対応するので、純粋なクロック周波数の性能とともに、コア数にも優れたハイエンドモデルのCPUを選んでいます。ただし、Marvelous Designerはそれ単体で作業が完結するソフトではなく、その前後の行程で別のCGソフトをいくつか使用します。例えば、私も利用する3DCGソフト「Blender」はGPUを利用したリアルタイムレンダリングに対応するので、GPUもないがしろにはできませんし、メモリも可能であれば32GBは欲しいところです。

パソコン工房スタッフ:今回は10コアCPUを採用したリーズナブルな「スタンダードモデル」と、藤堂++氏の現行機と同じ12コアCPUを搭載するハイエンド仕様の「アドバンスモデル」の2つを用意しました。実際に使ってみた感想はどうだったでしょうか?

藤堂:Marvelous Designerではまず、衣装を着せる3Dアバターの体形を考慮して型紙から衣装を作成。続けて、作った衣装をアバターに着せてクロス・シミュレーションを実行することで、生地のフィット感などをチェックします。さらにそこから、型紙を修正してまたクロス・シミュレーションで確認するという工程を何度も繰り返すため、CPUの性能は作業効率に直接影響します。その点において、両モデルは既存機を上回る快適さを実感しました。

▲Marvelous Designer衣装制作工程のムービー(4倍速)。シミュレーション進捗を表す「プログレスバー」に注目してもらいたい。衣装が細かくなる後半になればなるほど、プログレスバーの表示時間が長くなっているのがわかるだろう。

またスタンダードモデルは、Marvelous Designerの特性が影響しているとはいえ、検証でアドバンスモデルを超える結果を出したことは驚きでした。これが16万円台で購入できるというのは、本当に「時代は変わった」と痛感します(笑)。ただし、だからといってアドバンスモデルが物足りないというわけではありません。先ほども述べたように、別のCGソフトでも同じPCを併用するのであれば、より高性能なCPUやGPUを搭載する意義は十分にあるからです。

パソコン工房スタッフ:そのほか、何か気になった点などはありましたか?

藤堂:データの転送速度などもまったく問題ないですが、強いて挙げるとすれば「ストレージの容量」でしょうか。というのも、例えばMarvelous Designerは衣装を着せたアバターを動かしてアニメーションさせることも可能なのですが、CPUに大きな負荷がかかるとともに、そのデータ容量が1GB近くになるケースもあるからです。サーバを持つ企業などに勤めていれば問題はないですが、外付けのストレージやNASなどを持たない個人では、500GBだけだと少し心もとないかもしれません。個人的には、1TB?2TBのSSDを追加するのがベターだと思います。

パソコン工房スタッフ:今回のモデルはどんな人にお勧めできそうですか?

藤堂:これからMarvelous Designerを使ってみたいと考えている人にとって、スタンダードモデルは性能的にも価格的にも満足できるはずです。また、すでに使っている人でも十分活用できると思うので、多くのユーザーにお勧めできます。一方で、Marvelous Designerだけでなく前後の行程で利用する別のCGソフトでの快適さも求めるのであれば、スタンダードモデルを選びつつGPUをアップグレードするか、あるいは思い切ってアドバンスモデルを選ぶというのもありでしょう。

POINT1:CG×ファッション制作・衣装デザイン向けPCラインナップ

Marvelous Designerの使い勝手はCPUの影響が大きから、今回は「CPU性能」を最も重要なポイントに設定しつつ、全体的なバランスの高さにも配慮した「スタンダードモデル」と「アドバンスモデル」の2種類を構成した。スタンダードモデルでは、CPU性能に加えて「コストパフォーマンス」も重視し、CPUにはクロック周波数に優れた10コアのCore i9を選定する一方で、GPUには性能と価格のバランスに優れた「GeForce GTX 1660 SUPER」を採用。Marvelous Designerに必要十分の性能を備えつつ、非常にリーズナブルな価格を実現している。アドバンスモデルは、藤堂++氏の既存機のスペックを元に、現時点での同クラスを目指した「ハイエンド仕様」で構成。
12コアの高性能CPUを選定するとともに、最上位クラスの最新GPU「GeForce RTX 3070」を搭載する。また、藤堂++氏はPC選定のこだわりとして「メイン以外のパーツに目を光らせています」とのこと。なぜなら、CPUやGPUの性能はもちろん必要だが、それ以外のパーツの品質が影響して故障が多くなると、せっかく新調したPCの買い替えを考えないといけないからだ。この要望にも応えるべく、両モデルではマザーボードに信頼性の高さで定評のあるASUS製を、アドバンスモデルはPCケースなどにおいて、より品質の高い製品を採用している。

スタンダードモデル \166,980(税抜)
  • OS
  • Windows 10 Home 64ビット
  • CPU
  • インテル Core i9-10900K
    プロセッサー(3.7-5.3GHz/10 コア/20 スレッド/20MBキャッシュ/TDP 125W)
  • CPUクーラー
  • 水冷クーラー
  • メインメモリ
  • DDR4-2666 16GB× 2(デュアルチャンネル/計32GB)
  • SSD
  • 500GB NVMe SSD
  • VGA
  • GeForce GTX 1660 SUPER 6GB GDDR6
  • チップセット
  • インテル Z490 Express チップセット[ASUS PRIME Z490-A]
  • ケース
  • ミドルタワーATX ケース
    IN-WIN EA040[フロントUSB3.0]ブラック
  • 電源
  • 700W[80PLUS Bronze認証]/ATX 電源


アドバンスモデル \264,980(税抜)
  • OS
  • Windows 10 Pro 64ビット
  • CPU
  • インテル Core i9-10920X Xシリーズ・プロセッサー(3.5-4.6GHz/12コア/24スレッド/ 19.25MBキャッシュ/TDP 165W)
  • CPUクーラー
  • 水冷クーラー
  • メインメモリ
  • DDR4-2666 8GB×4(クアッドチャンネル/計32GB)
  • SSD
  • 500GB NVMe SSD
  • VGA
  • GeForce RTX 3070 8GB GDDR6
  • チップセット
  • インテル X299 Express[ASUS PRIME X299-A II]
  • ケース
  • ミドルタワーATXケースMasterCase MC500
  • 電源
  • 800W[80PLUS TITANIUM認証]/ ATX電源

※価格および各パーツのスペックは2020年12月時点の情報です。予告なく変更される場合があります。
製品購入はこちらから > www.pc-koubou.jp/cmg

POINT2:スタンダードモデルとアドバンスモデルのパフォーマンス検証

▲Marvelous Designerアニメーション制作時のシミュレーション(等速)

今回の検証は、スタンダードモデルとアドバンスモデルに加えて、藤堂++氏が2年前に約38万円で購入したハイエンド仕様の現行機(CPU:AMD Ryzen Threadripper 1920X[3.5-4.0GHz/12コア/24スレッド ]/ メモリー:32GB[クアッドチャンネル]/GPU:GeForce GTX 1070 Ti)の3台で実施した。

まず、Marvelous Designerのアニメーションに要する時間を計測。負荷の低いシンプルな衣装をマルチスレッドとシングルスレッドで処理した場合と、複雑な衣装をマルチスレッドで処理した場合の3パターンを実施したところ、スタンダードモデルがアドバンスモデルを上回るパフォーマンスを見せ、すべてで最速だった。

一方で、CPUの性能を評価する「Cinebench(R23)」を見てみると、Multi Coreは12コアでクロック周波数の最大値も高めのCPUを搭載するアドバンスモデルが、Single Coreはクロック周波数の最大値が最も高いCPUを搭載するスタンダードモデルがトップスコアを出したが、これはスペック通りの結果といえる。 これを踏まえて藤堂++氏は、「Marvelous Designerの処理は、CPUのコア数も大事ですが、クロック周波数の高さも、より大きな影響を受けるということでしょう」と分析した。また、Marvelous Designerの場合(330MBのプロジェクトファイルを開くまでの時間)は同性能のストレージを搭載するスタンダードモデルとアドバンスモデルに差はなかった。一方、PCの起動時間で大きな差が出た理由については、「起動時のメモリー認識に要する時間はチャンネル数が影響します。それが結果に現れたのでしょう」(パソコン工房スタッフ)と補足した。

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