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デル・テクノロジーズが主催し、CGWORLDの企画・運営で2021年春に開催された3DCGコンテスト「ステイホームVFX」。趣向を凝らした魅力的な応募作品が集まるなか、岩崎航輔氏が制作した『RE:mote work』がプロフェッショナル部門の最優秀賞を獲得した。今回は、その岩崎氏にコンテスト参加の経緯などを聞くとともに、賞品として贈呈されたデル・テクノロジーズの「Dell Precision 5760」の実力を検証してもらった。

TEXT_近藤寿成(スプール)
EDIT_池田大樹(CGWORLD)

Personal Project Reel 2021 Kosuke Iwasaki from Kosuke Iwasaki on Vimeo.

▲岩崎氏最新のデモリール

コンテストが学習のモチベーションに。
終了後もさらなるスキルアップを続ける

▲最優秀賞を受賞した『RE:mote work』のブラッシュアップ版

ILM Vancouverに所属し、2Dジェネラリストとして活躍する岩崎航輔氏。プロの現場で働く現役のCGデザイナーとなるだけに、当然ながらCGに関する高い技術力や実績をすでに持っているわけが、今回のコンテストに参加したきっかけは「新たなCG技術の習得」にあった。

そもそも、ILMのような大きい企業や同系列のスタジオでは基本的にパイプラインがきっちりしているのだが、岩崎氏は「そういったパイプラインから外れて臨機応変に対応する特殊なチームに所属している」とのこと。そのため、本来は2Dワークやコンポジットがメインとなる立場でありながら、最近では3Dも含めた幅広い業務をこなすことが増えており、「3Dのジェネラリストやエンバイラメントの部署をサポートするため、3Dジェネラリストとマットペインターの中間のような業務を多く手掛けている」(岩崎氏)。例えば、3Dレンダーが壊れてしまったようなケースでは、納期に間に合わせるため、サンプルが足りていない炎のエフェクトなどを「手書きで1フレームずつ描いていく」(岩崎氏)こともあったそうだ。

これに加えて、今年の3月頃には会社から「これから3Dの仕事が増え始める予定なので、3Dの基礎を覚えてくれ」とのお達しもあったとのこと。このような背景から、岩崎氏は今回のコンテストを「絶好の好機」と捉え、これまでに少しだけ触れたことがあったBlenderを本格的に勉強することを決意し、学びながら応募作品の制作に取り組んだという経緯がある。

さらに、今回の賞品の1つだったデル・テクノロジーズの「Precision 5760 ワークステーション」が「勉強のモチベーションを上げる大きな要因の1つだった」と振り返る岩崎氏。そのとき使っていた自分のPCは2017年に購入したもので、(後から作品作りのためにGeForce RTX 3070を追加するものの)当時はとてもハイスペックと言えるほどの性能ではなかったことから、少なからず「賞品に目がくらんだ部分はあったかも(笑)」と本音も語ってくれた。

もっとも、会社から単純に「やれ」と言われても、自分の時間をわざわざ割いて勉強するというのは、前向きになれる何らかの理由がないとなかなか難しいものだ。それだけに、学習のモチベーションを上げる意味でコンテストは「とても良いきっかけだった」と岩崎氏は考える。

さらに、今回のチャレンジを通じて「3DCGの制作工程」をひと通り学ぶことができたことから、「得たものが多く、いまの仕事にも非常に役立っている」と付け加える。実際、Blenderの技術だけでなく、例えば「これまでは2Dのコンポジターとして受け身になっていたが、逆に3Dアーティストとしてパスを出す側の視点や発想も勉強できた」と岩崎氏は説明する。

なお、岩崎氏はコンテスト終了した現在も、さらなるスキルアップを目指したBlenderでの作品制作を続けている。例えば、今回の受賞作品『RE:mote work』ではコロニーから外に出たシーンの地面でマットペイントを使用するなど、一部で2D素材も使っていたことから、新作ではほぼすべてをBlenderで制作することにチャレンジ。一方で、好きな映画の1シーンをCGやペイントオーバーで作り直す「フィルムスタディ」にも取り組んでおり、2Dでは気づきにくい「ライティングの勉強などにも役立てている」(岩崎氏)。

また、今回の受賞作品は「十分に納得できるほどの出来栄えではなかった」(岩崎氏)ことから、新たな素材を加えるなどのさらなるブラッシュアップを実施。今回はそのブラッシュアップの作業工程に即したテストを行い、賞品として贈呈されたモバイルワークステーション「Dell Precision 5760」の実力や使い勝手をチェックしてもらった。

検証ハードウェアについて

今回は、賞品のモバイルワークステーション「Dell Precision 5760」(検証機)と、岩崎氏が自宅で使用しているデスクトップPC(現行機)を用意。ベンチマークソフトや『RE:mote work』のブラッシュアップ作業を想定したテストで検証した。

Dell Precision 5760は、性能やセキュリティに関する機能が強化されたワークステーション向けCPU「インテル Xeon W-11855M プロセッサー」を採用し、GPUにも高性能な「NVIDIAR RTX A3000 Laptop」を搭載。薄型・軽量の筐体と優れたパフォーマンスを併せ持った17インチのモバイルワークステーションである。ゲーミングノートPCとは一線を画すスタイリッシュかつシックな筐体デザインも魅力的で、岩崎氏は「これならカフェなどでも洗練された印象でスマートに利用できる」と好印象だった。

岩崎氏のデスクトップPCは、VFXに本腰を入れようと決意した2017年初頭に約30万円で購入したBTOモデル。CPUには6コア12スレッドの「インテル Core i7-8700K プロセッサー」を搭載し、メモリは32GB、ストレージはSSD+HDDのデュアル構成を採用。GPUは当初「NVIDIA Quadro P1000」を搭載していたが、現在はコンテストへの作品応募にあたって「NVIDIA RTX 3070」にアップグレードしたため、4年前のモデルながらグラフィックス性能は格段に高くなっている。

Dell Precision 5760

OS:Windows 10 Pro for Workstations(Windows 11 Pro ライセンスを含む)日本語
CPU:インテル Xeon W-11855M プロセッサー(6コア / 12スレッド / 3.2GHz /ターボブースト利用時4.9GHz / キャッシュ18MB)
GPU:NVIDIA RTX A3000 Laptop 6GB VRAM
メモリ:16GB
ストレージ:512GB(M.2 SSD、NVMe対応)
ディスプレイ:17型WLED FHD+(1920×1200, 60Hz, Anti-Glare)
本体重量:約2.13kg

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岩崎氏の現行機(デスクトップPC)

価格:約30万円(GPU換装前の価格)
CPU:インテル Core i7-8700K プロセッサー(6コア / 12スレッド / 3.7GHz /ターボブースト利用時4.7GHz / キャッシュ12MB)
GPU:GeForce RTX 3070 8GB VRAM(換装前はNVIDIA Quadro P1000)
メモリ:32GB
ストレージ:256GB SSD+3TB HDD

CASE 01:CPUとGPUのパフォーマンス検証

まず、CPUの基本性能を評価すべくベンチマークソフト「Cinebench R23」を使用。マルチコアの性能を計測したところ、検証機は「8572pts」、現行機は「8187pts」となった。それぞれのCPUがともに6コア12スレッドで、クロック周波数はむしろ現行機のCore i7-8700Kの方が上なのだが、結果として検証機が勝利したことについて、岩崎氏は「これは素直に、CPUの世代による性能差でしょう」と分析した。

さらに、Blenderの公式ベンチマークソフト「Blender Benchmark」でGPUの性能を計測。その情報をシェアするポータルサイト「Blender Open Data」で評価を確認したところ、検証機は全体の上位「20%」、現行機は上位「8%」にランクインする結果となった。さすがに現行機のRTX 3070には及ばなかったものの、検証機のRTX A3000の結果は「GeForce RTX 2070 Superと同レベル(=GeForce RTX 3060より上)」(岩崎氏)となるため、かなり高めの性能と言えるものだ。

Cinebench R23のベンチマーク



  • 検証機:8572pts



  • 現行機:8187pts

Blender Open Dataの順位



  • 検証機:20%



  • 現行機:8%

CASE 02:EmberGenとCyclesにおけるレンダリング時間とEeveeでのレンダリングスピード

次に、応募作品の『RE:mote work』のブラッシュアップを目的を想定した3つの検証を実施した。1つ目は、流体シミュレーションツール「EmberGen」の最新版テストビルド(0.75 beta)を使用し、コロニーから外に出たシーンに砂嵐を追加するためのリアルタイムレンダリングに要した時間を計測した。その結果、検証機は「9分22秒」、現行機は「8分27秒」となり、約1分ほどの差が付いた。ボリュームが巨大でGPUに大きな負荷がかかることから、検証前に岩崎氏は「検証機ではさすがに厳しいか」と予想したが、現行機とともに「ほぼリアルタイムでプレビューもレンダリングもこなした」ことから、RTX A3000の処理能力の高さに感心していた。

▲EmberGenによるリアルタイムレンダリング時間
検証機:9分22秒、現行機:8分27秒

2つ目は、ハイポリゴンのドローン(1機で61万ポリゴン)を2基追加するために、CyclesでGPU+CPUレンダリングを実行した際の時間を計測。検証機で「37分」、現行機で「38分」と大きな差がつかないばかりか、むしろ検証機が勝利したことに岩崎氏は驚きを隠せなかったそうだ。この結果に対して岩崎氏は、レンダリングで「GPUとCPUの両パワーを必要とした」ことに加えて「デノイザーの影響」に着目。今回はCPUベースの「インテル Open Image Denoise」を使用したことから、「よりCPUの性能差が結果に反映されたのではないか」と推測した。

▲CyclesでのGPU+CPUレンダリング時間
検証機:37分、現行機:38分

3つ目は、タンクの車輪から吹き上がる砂煙をEmberGenでシミュレーションした後、Blenderへインポートしてライティングとホールドアウトをかけた状態でEeveeによるレンダリングを実施。1時間でレンダリングできたフレーム数を比較したところ、検証機は「41フレーム」、現行機は「79フレーム」と約2倍の差が付く結果となった。岩崎氏によれば「EeveeはVRAMの容量が大きく影響する」ため、それが原因でここまでの差が出たと分析した。また、このテストでは処理が非常に重くなってしまったのだが、その理由として「ライトの設置数」を指摘。「Eeveeはライトの数が増えるほど負荷が大きくなる。今回は8個もライトを置いてしまったため、ここまで処理が重くなってしまった」と補足した。

Eeveeによるレンダリングのスピード
検証機:41フレーム、現行機:79フレーム

検証を終えて
リモートワークのあり方を大きく変える高性能マシン

今回の検証を通じて、Dell Precision 5760が現行機のデスクトップPCに肉薄できるほどの優れた性能を備えていることがわかった。さらに、スリムかつ軽量なノートPCタイプの筐体であることを踏まえれば、そんなハイパフォーマンスのPCを気軽に持ち運べる利便性の高さは大きなメリットとなるはずだ。

岩崎氏いわく、コロナ禍によるリモートワークもあり、自宅の同じ場所で何時間も作業をすることには「日々、少なくないストレスを感じている」そうだ。そこで最近は、気分転換のためにソファなどでくつろぎならDell Precision 5760で作業することもあるとのこと。さらに、外への持ち出しも十分可能なことから、カフェで仕事したりドローイングをしたりと、その可能性は一層広がっている。

さらに、メモリ容量が気になるのであれば、最大64Gまで選択いただくことも可能。そういった点も踏まえ、「現時点でも、サブ機にするのはもったいないぐらいの高性能。どうやって活用しようか、いい意味で迷ってしまう」と、岩崎氏は満足げに語った。