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「顔のVFX」についての情報は未だに少ない。俳優を映像の中で老化させたり・若返らせたりすることは珍しくなくなったものの、監督やプロデューサーが知りたい情報が外に出ることは滅多になかった。今年2月のインタビューに大きな反響があったというDigicに、フェイシャルVFXの最新事情と、スタッフの採用強化について聞いた。
INTERVIEW_CGWORLD編集部
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
■求人情報はこちら
cgworld.jp/jobs/30466.html
募集職種
・フェイシャルVFX
・CGクリエイター
・レタッチャー
主演俳優が決まる前から参加することが増えてきた
CGWORLD編集部(以下、CGW):前回のインタビューは反響が大きかったようですね。
清水敬太氏(以下、清水):映像部のフェイシャルVFXアーティスト、清水と申します。前回の記事の公開後、プロデューサーと監督からの問い合わせが想像以上に増えたことにも驚きましたが、それ以上に、記事を読んでいただいたことで、最初から深い相談をしていただけるようになったことが一番の収穫でした。あの記事が出る前は「何から相談すればいいのか困った」と言われたことがありました。皆さんが問い合わせ段階で困っていたところに、この記事を読むことで「フェイシャルVFX」の全体像を把握することができ、その先に進みやすくなったのかなと思います。
清水:もう1つの変化は、問い合わせをいただいた後に正式な依頼へ発展していくながれが増えたことです。これも、初期の話し合いの密度が高まったため、監督とプロデューサーがフェイシャルVFXを正式採用しやすくなったのではないかと思います。
担当する案件が増えたことで、当初計画していた採用人数ではとても足りなくなってしまいました。今回、さらなるスタッフの増員に踏み切った背景には、映像事業部の売上が前年比の倍以上となったこと、機材面への投資も進み、さらなるサービス拡大の時期に入ったことがあります。
CGW:そのような変化は、監督とプロデューサーにとって最初のハードルが下がったためだと思いますが、プリプロダクションと撮影、そしてポストプロダクション工程で変化はありましたか?
清水:以前から、企画が立ち上がってすぐ、我々にお声がけいただくことが多く、監督とプロデューサーと進め方の大枠を話し合った後、主演俳優にフェイシャルVFXの採用に賛同していただくことが、最初の山場となっていました。主演の所属事務所や関係各位にフェイシャルVFXについて説明するための資料を、制作会社さんの方で作られていましたが、前回のインタビュー記事が出たことで、その負担も減ったと仰っていました。
私たちの仕事は、人の顔に関わるため、最初から最後まで厳重なセキュリティが求められます。前線で担当にあたるフェイシャルVFXアドバイザーは、10年以上「顔」専門で対応にあたってきた者であるなど、顔の取り扱いに慎重なスタッフのみで構成しているのも、我々の特徴です。そのため、我々の活動に関する情報は、俳優と監督、プロデューサー、プロダクションマネージャー、VFXスーパーバイザーのみに限定されることが多いのです。このように業界内でも情報が出回ることがないため、いざフェイシャルVFXを起用しようとする際には関係者へ説明する負担が大きかったと思います。
最近では、主演が決まる前からご相談いただくことが増えました。キャスティング段階で、候補に上がっている人たちの顔を老化させて検討材料にするためです。私たちはお話をいただくのが早ければ早いほど、提案が多くできるのでありがたい状況になってきました。
私たちの技術は、本番で撮影された俳優の顔の筋肉と、肌表面の微細な変化を活かして、老化/若返らせることが最大の特徴です。この方法はメリットが多く、繊細な演技であっても損なわれることがなく、俳優の方に安心していただけます。そして、演出する監督にも喜んでいただいています。
今の技術をさらに向上させる取り組みは続いています。私たちの開発ポリシーは、監督・プロデューサー・俳優が求めているものを最優先することです。CGとVFXの作り手としては、全てデジタルで生み出したい欲望はありますが、フルCGにこだわりすぎないように気をつけています。さらには、我々だけの技術に固執せずに他社様をオススメすることもあります。
もうひとつの開発ポリシーには、「撮影現場の柔軟性を奪うような技術にしない」というものがあります。プリビズや絵コンテが作られることもあれば、絵コンテが作られないケースもあります。我々としては絵コンテを基に計画を立てられる方が助かるのですが、絵コンテがない場合でも対応できるように開発を続けてきました。絵コンテが作られたとしても、撮影本番で構図やカメラワークが変わることはあるので、私たちの柔軟性のある技術が喜ばれています。
俳優を老化させる/若返らせる方法はいくつかあります。現在は、いくつかの方法の組み合わせが良い結果を生んでいます。最近では、フェイシャルVFXと特殊メイクの組み合わせによって、10代の子供を80歳へ老化させることに成功しました。
デジタルの手法が生まれる前から、俳優の顔を変えてきた「特殊メイク」は、監督に根強い人気があります。しかし、特殊メイクの「時間」に頭を抱えてきたスタッフの方も多かったと思います。
フェイシャルVFXを前提とした特殊メイクであれば、全てメイクで仕上げるよりも時間を短くできますし、仕上がりも良くなります。今までVFXと特殊メイクの両方を深く理解して、最適な連携を実現できる人が業界に少ないのが課題でしたが、様々な交流と実験を通して、私たちが担当できる体制が整いました。
CGW:監督が「VFXのみ」と「VFXと特殊メイクの組み合わせ」のどちらで行くか迷われたときに、どのようなアドバイスをされますか?
清水:俳優の現在の顔の形状から大幅に変えずに、年齢差の変化が10~30歳くらいの「老化/若返り」であれば、VFXのみで自然な結果を作り出すことが可能です。先月、10代の子供を80歳の老人に変えた際は、顔の形状を大きく変える必要があったので「VFXと特殊メイク」という方法を採用しました。
覚えておくと役に立つことと言えば「特殊メイクは、足すことはできても顔を削ることはできない」点。そして、「フェイシャルVFXでは、痩せ細らせる表現ができ、白目や瞳を変えることもできる」点などがあります。
1つの映像作品の中で、俳優が様々な年齢を演じることがあります。そのときは、私たちがそれぞれの年齢での最適な手法をお伝えしています。
現場で発生した問題を解決するため実験を重ねた
CGW:俳優を「老化/若返らせる」ことが決まった後、いくつか問題が発生したと伺いました。その問題についてと、それを解決するための取り組みについて詳しく教えてもらえますか。
清水:監督とプロデューサーが、俳優の老化・若返りが必要になった際は、「特殊メイクでいくか? デジタル処理にするか?」をまずは検討されることが多いです。
特殊メイクを起用したことがある監督の方が多いこともあり、まずは特殊メイクを検討されることが多いようです。特殊メイクにはいくつかの利点があり、その中でも撮影時に仕上がりを確認できる点と、俳優が役になりきる際の助けになってくれる点などのメリットがあります。
数年前までは、特殊メイクだけで「老人の顔/若者の顔」を完成させようとする作品が多く、デジタル処理は違和感や不要物を消さなければならなくなったら依頼するということが多かったです。
日本では、撮影本番を想定したメイクテスト撮影を行うことがほぼなく、特殊メイクチームに与えられる時間も少ないなど、アーティストに対して厳しい条件となっています。このような状況で、特殊メイクだけで「老化や若返り」を作るのは無理があると感じていました。実際、特殊メイクだけで完結しようとしたけれど、私たちに修正の相談がきたことが何度かありました。
昨年から、新型コロナウイルス感染症対策の影響もあり、フェイシャルVFXのみで「老化・若返り」を希望する方が増えました。プロダクションマネージャーの話では、特殊メイクのための型取りや、撮影本番のメイクなど、長い時間「密」になりやすい状況は、今は避けたいと言っていました。
私たちは、特殊メイクを付けていない状態でも、俳優を老化させたり若返らせたりすることができます。しかし、先ほどお話しした「特殊メイクのメリット」はとても貴重で、採用しないのは非常にもったいないと考えてきました。
「特殊メイクチームと我々VFXチームが高いレベルで連携することで、特殊メイクの時間を短縮しつつ、最終的な仕上がりも今まで以上のものにできないだろうか?」と考え始めたのは昨年の終わり頃でした。
実際の案件で実験はできないので、自分たちで費用を出して取り組むことにしました。この取り組みは3ヶ月かけて行いました。数多くの実験を行なったおかげで新しい開発へ繋がり、既に映画やCMでこの技術が採用されるまでになっています。
今回紹介する、この取り組みは、プロダクションマネージャーやVFXスーパーバイザーだけではなく、特殊メイクの方や現在CGやVFXに関わる方にも有益な情報だと思います。
今までお話ししてきた「特殊メイクと、フェイシャルVFXのメリット・デメリット」を整理すると、以下の表になります。
●特殊メイク
- メリット
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・俳優が、老人役や若者役になりきる際の助けとなる
・撮影時に、変化した顔を確認できる
・撮影時の環境光が、顔にどのような影響を与えていたのか等、
様々な情報が取得でき、VFX工程で活かすことができる
- デメリット
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・旧来からの「型取り」は、俳優・タレントに負担を強いる
(3Dスキャナと3Dプリンタを使う方法もあるが、特殊メイクチームが満足する性能には現状なっていない)
・メイク時間が長くなる場合があり、俳優と撮影現場の負担が大きい
・メイクの種類によっては、違和感のある顔になってしまう
●フェイシャルVFX
- メリット
-
・俳優の負担がない(顔が動かしやすい)
・俳優の表情と演技そのものを活かすことができる
・撮影現場の負担がない
・特殊メイクではできない「痩せ細る」表現が可能
- デメリット
-
・費用が高額になってしまう場合がある
・作業期間が長くなる場合がある
・専門チームによる適切な準備や進め方が必須となる
・新しい技術ゆえ、関係者へ説明する負担が大きい
清水:特殊メイクとVFX作業、どちらの時間も費用も抑えること、そして、最終的な仕上がりを今まで以上に良くするためには、3つの検証が必要だとわかりました。1つ目は「顔に貼られた特殊メイクそれぞれのパーツが、俳優の演技にどのような影響を与えるかの検証」。2つ目は「顔の部位ごとに、VFXと特殊メイクのどちらが担当した方が良いのかの検証」。3つ目は「特殊メイクが崩れた際の対応についての検証」になります。
3つ目の「特殊メイクが崩れる」について補足しますと、特殊メイクの接着剤は、俳優やタレントの肌が傷まないように作られています。汗や皮脂などによって、メイクが徐々に動いてしまうのは仕方のないことです。長丁場の撮影では、メイクを着けたばかりの顔と、撮影終わりの顔では変わってしまうことがあります。そのメイクの変化に対して、VFX側で修正できるものとできないものを洗い出そうと考えました。
今回の取り組みのおかげで、監督に「VFXのみ」で老化/若返りを行なった場合と、「VFXと特殊メイク」を組み合わせた場合の実例を見てもらいながら話し合える環境を作ることができました。
「VFXと特殊メイク」で老化を作り出した映像がこちらです。
Aging VFX + Special Make up【4K 】 from Digic:デジック on Vimeo.
清水:もう1つの映像は、顔ではなく「手」に対して実験を行なったものです。手も映像に映ることが多く、手の「老化/若返り」の依頼も多いためです。
Special Make-up:HAND【4K 】 from Digic:デジック on Vimeo.
清水:今回、新しいメンバーが活躍しています。そのうちの1人である遠藤は、入社4ヶ月目になります。わずか4ヶ月で、映画やCMなど様々な案件を手がけるまでに成長しています。ここからは、遠藤が詳しく説明します。
VFX+特殊メイク連携の最適解、そのワークフローとは
CGW:Digicと特殊メイクチームの「役割分担」について、詳しく教えていただけますか。
遠藤彩加氏(以下、遠藤):映像部の遠藤です。今回、40代後半の女性を健康的な90歳の顔へ変えることを目指し、特殊メイクチームには「頭髪、目周り、頬、法令線」を担当していただきました。撮影後に、私たちVFXチームが「老人の皮膚と毛穴、老化した目など」を加え、老衰して痩せた表現をするために「筋肉の垂れ下がり、目周りの陥没、頬の痩け」を加えていきました。
▲【左】特殊メイクなし、VFXなしの状態/【右】特殊メイクをした状態で撮影し、AgingVFXを加えた状態の顔
遠藤:加齢によって隆起した法令線や、目周りのシワは、他のシワと比べても立体的な造形となるため、動くことでの形の変化や、陰影の変化が複雑になるパーツです。これらを特殊メイクが担うメリットは大きいことがわかりました。
今回の実験は、特殊メイクが顔の筋肉に与える影響を分析することもテーマだったので、特殊メイクで覆う面積は広めにしていただいています。
▲特殊メイクチームの作業場【左】と撮影場所【右】をできるだけ近い場所に設置し、特殊メイクチームと、フェイシャルVFXアーティストが話し合いながら、様々な試行錯誤ができる環境で制作が行われた
▲【左上】型取り/【右上】彫刻/【左下】特殊メイクの装着/【右下】エアブラシによる着色、カツラの装着
カツラは、本人の頭に合わせたものを作ることはしませんでした。サイズが合っていないカツラを着けて、VFXで不具合を修正できるかも検証しました。結果としては、本人の頭に合わせたカツラを用意して、丁寧に着けてもらう方が、仕上がりの面でも、費用対効果の面でも優れていることがわかりました。作業途中でこの結果が見えたので、カツラの不具合はあえてそのままにしています。
「まぶた」は皮膚が薄く、よく動き、形の変化も大きいパーツです。特殊メイクでもVFXでも扱いの難しいパーツになります。この部分の最適な役割分担については、目指す老化を踏まえつつ、目元に寄る映像なのか、引き画の映像なのかで分担を変える必要があるとわかりました。
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遠藤彩加/Ayaka Endo
フェイシャルVFXアーティスト
Digic
CGW:撮影後のVFX作業のながれについて教えて下さい。
遠藤:私たちが老化や若返りの作業に取り組む際に大切にしていることは、ディレクターやプロデューサーが望む顔を深く考えるだけでなく、顔を変えられる俳優の想いや、完成した映像を観た人がどんな印象を受けるのかについても慎重に考えてから作業を行うことです。
今回老化作業を行なったシーンは、演技をしていないオフショットで、親しい人にしか見せない表情を選びました。激しい表情よりも作業の難易度は上がりますが、フェイシャルVFXが元の表情を活かせる技術であることを理解していただける映像になると考えました。
作業に入る前に、顔の解析作業を行います。撮影された映像と、モデルさんの御両親のお顔の資料、ご本人の映像資料から、どのように老けていくかの予兆を見つけていきます。データだけを頼りに老化させれば良いわけではなく、監督やストーリーが求める「顔」にするためにフェイシャルVFXアーティストの知識と技能が必要になってきます。
目指す顔が定まってきたら、監督とプロデューサーに見せるための画像を作っていきます。OKが出た後は、顔の動きや、顔表面の細かい起伏などのトラッキング作業へ入ります。社内ツールだけでなく、PFTrackなども使うことがあります。数年前から作り集めてきた「顔のパーツライブラリ」の中から、目指す形に近いものを選び、加工していきます。
全てのパーツが揃い、組み上げ作業とアニメーション作業が終わった後、フェイシャルVFXアーティストが全員揃い、厳しいチェックが行われます。
顔の寄り画で、重要なシーンから先に取り組み、社内チェックでOKが出たものから、監督に見ていただくことが多いです。監督からOKが出たら残りの数十カットの作業へ進み、全カットを通したときの整合性などをチェックして、社内チェックでOKが出るまでブラッシュアップを重ねます。最後にフェイシャルVFXアドバイザーのOKが出たら、監督に最終チェックをしていただき、完了となります。
CGW:今回の老化VFX作業で苦労した点について教えてください。
遠藤:苦労した点は、本物らしさと不気味さのバランスです。顔に生々しい表現を加えていくと、どうしても不気味さが立ってきます。自然さやリアリティを感じてもらうためには生き物の生々しさの表現を使いたいのですが、汚らしさや嫌悪感を抱かせてしまう顔になってしまいます。意図してそれを表現するなら問題ないのですが、私たちに依頼される案件の多くは、健康的な老人、幸せな老人の顔です。悲壮感の漂う老人の顔ではなく、歳をとっても美しさや自信が表れた顔にすることは、毎回難しいと感じています。
今回の実験では、特殊メイクチームに目の下のシワを担当していただきました。我々の顔全体の計画の未熟さから、目の下のシワ表現については多くの反省点が残りました。
他に苦労した点としては、力を込めて顔を歪ませたシーンへの老化は予想以上に大変でした。実際の高齢者がここまで顔を歪めた資料はかなり少ないだろうと考えて、80歳以上の方数名を撮影したりもしました。
特殊メイクがない状態でも、ここまで顔が歪んだ状態の老化は難易度が高いのですが、特殊メイクが付いた状態だと、メイクが浮き上がったり破れたりして、その対応が必要でした。
フェイシャルVFXアーティストに聞く、仕事の面白さと将来性
CGW:ここからは、Digicで働くことについて伺いたいと思います。お2人は、Digicに入社してどのくらいですか?
清水:Digicに入社して7年目になります。入社する前は、アパレルブランドのオフィシャルサイトに載せる画像のレタッチを担当していました。
遠藤:私は今年の5月に入社しました。現在までに、映画とドラマ案件が2本、CM案件2本を担当しました。元々Webデザイナー志望で、高校は情報処理科に、その後はデジタルハリウッド大学、大学院へと進みました。高校・大学時代に色々な分野を経験したなかで自分にとって一番楽しいと思えたのがレタッチでした。それで、夜間に大学院に通い、日中に芸能系メディアのレタッチャーとして働いていました。
CGW:現在、新メンバーの採用に力を入れていると伺いました。「フェイシャルVFXアーティスト」の将来性について、どのように考えていますか?
遠藤:入社して驚いたのが、フェイシャルVFXチームが、監督やプロデューサーから非常に頼られ、大切な存在として接してもらえることです。「主役の顔」に携わる責任は大きいですが、その対価も大きいため、やり甲斐は想像以上でした。企画が立ち上がって間もない時期から参加して、完成までの様々な意思決定に関わることの多いCGチームは少ないと思います。今後、4K8Kと映像が高精細になり、大画面に主役の顔がアップで表示されることがますます増えていくことを考えると、フェイシャルVFXを選んで良かったと思っています。今は知る人の少ない職種なので希少価値が高いのもいいです。
CGW:フェイシャルVFXアーティストになるためには、事前の訓練や準備などは必要ですか?
清水:「フェイシャルVFX」を教えてくれる書籍も学校もなく、入社前の訓練は難しいと思いますので、意気込みだけで大丈夫です。それでも「入社前に練習したい」という人は、実写映像への合成や背景の不要物消去を行なってみたり、プラグインを使わずに動く顔に対して肌を綺麗にしてみるといった訓練がオススメです。Digicでは、静止画レタッチャーから映像の勉強をしてフェイシャルVFXアーティストに転身する人もいます。まずは、グラフィック案件のレタッチャーや3DCGアーティストとして入社して、ゆくゆくは映像の仕事に関わるというキャリア形成もいいと思います。
フェイシャルVFXを手がけてきたという人の数は、他の職種と比べて圧倒的に少ないので、採用時に「顔への作業経験の有無」は重視していません。その代わり、私たちは未経験者の教育に力を入れています。Digicにしかない勉強用の資料が多く揃っているので、真剣に取り組めば短期間で先輩たちと共同作業ができるようになります。
CGW:どのような人に、応募していただきたいですか?
清水:フェイシャルVFXに魅力を感じてくれた人、実写映像の加工や合成を手がけてきた人、デジタルヒューマン制作に携わってきた人などです。顔のデッサンが得意な方や、ZBrushで人物を作るのが好きな方も歓迎しています。Digicに来ないと手に入らない情報が多いので、まずは応募して詳しい話を聞いてみることからスタートしてもいいと思います。
遠藤:学ぶことを楽しめる方、発想力や問題解決能力のある方、プラス思考で物事に取り組める方と一緒に働きたいです。
CGW:お二人がDigicに入社を決めた理由を教えて下さい。
清水:広告業界に以前より興味があったことと、2D3Dを手がけているという点に魅力を感じて応募しました。
遠藤:顔のレタッチが好きで、そろそろ映像制作の経験もしてみたいなと思っていたところに「顔に特化したVFX」を扱っている会社があると知り応募しました。
CGW:Digic入社前と入社後の印象の違いはありましたか?
清水:自動車メーカーの仕事を多く手がけている会社ということで、ルールに厳しく怖い会社なんじゃないかと想像していましたが、社員の希望を柔軟に採り入れてくれて、新しく入ったスタッフも積極的にアイデアを言いやすい会社であると感じました。
遠藤:フェイシャルVFXは、静止画レタッチの延長線上にある作業なのかと思っていましたが、扱う技術も、勉強しなければならない領域の広さも違いました。最初はついていけるのか心配でしたが、先輩が丁寧に教えてくれるので助かっています。
CGW:どのようなキャリアの人が活躍していますか?
遠藤:カメラマンから3DCGアーティストやレタッチャーになった人や、プログラミングやVRなどを手がけている人、VFXスーパーバイザーとして活躍してきた人、映像編集を手がけてきた人など、様々な人がいます。
CGW:Digicで関われる業務内容について教えて下さい。
清水:私たちが担当している「顔のVFX」業務以外にも、自動車ビジュアルの3DCG制作や、レタッチ、コンポジット作業などがあります。映像と静止画の両方に関わることができるのもDigicの特徴です。
CGW:今後挑戦していきたい作品や表現、技術などはありますか?
清水:特殊メイクチームの皆さんに喜んでもらえる技術開発は続けていきたいと思っております。旧来の型取りに代わる、3Dスキャンでの型取りに関して、いくつかアイデアがあるので、それにも取り組んでいきます。3Dスキャナにも関係するのですが、デジタルヒューマンの進化にも注目しています。その中でもMetaHumanには可能性を感じています。私自身のスキルについて言えば、実写のもつリアルな表現を突き詰めたいと思います。
遠藤:先輩アーティストたちは、『スカルプターのための美術解剖学』や様々な研究書を読んで顔に関する見識を深めていたり、最新の映像技術に常にアンテナを張っていたりと、自己研磨を欠かさないので、私も見習いたいと思っています。私のスキルでは、まだまだ応用がきかずもどかしく感じることが多々ありますが、色んなタイプの仕事をこなして表現の幅を広げていきたいです。
CGW:Digicの社風や、部署編成、1日の動きなど教えて下さい。
清水:社員一人一人の発言を尊重してくれる会社で、色んなアイデアを出しやすく、それが新規事業へ発展することもあります。出社時間と退社時間を自分で決めることができます。ルールが少なく自由度が高いですが、チームでプロジェクトを進めている人がほとんどなので、連帯感を大切にした責任感の強い人が多いです。
そして、メンバーとのコミュニケーションを大切にした、優しい人が多いのも特徴だと思います。CG部と映像部、プロデュース部、管理部の4つの部署しかないシンプルな組織です。
昨年からテレワークを積極的に行なっていて、7割近くが自宅で作業をしています。とはいえ、映像部は新しいメンバーが多いこともあり、今は直接会うことを大切にしています。
私の場合は、通勤時間を避けて出社して、フェイシャルVFX作業が終わったカットから品質チェックを行い、フィードバックを急いで返します。昼食の後は、新しい技術の共有会や、新メンバーの教育を行います。その後、プロジェクトの進捗状況を確認したり、新しいアイデアを実行したり、作業を手伝ったりして19時から20時くらいには帰宅しています。
遠藤:無駄に怖い人はいないので、ストレスがほぼなく、仕事に集中できる環境です。私が所属している映像部は新規事業部でもあるので、サービスの土台づくりやアーティストの作業環境づくりから関われるのが面白いです。私も通勤時間を避けて出社して、先輩からのレクチャーを受けた後に、フェイシャルVFX作業に参加しています。クライアントワークが一段落したら、社内のプロジェクトを動かしたり、新技術のリサーチをしたりして1日が終わります。私も19時前後には帰宅しています。
Digicが目指すフェイシャルVFXの今後
CGW:これからの活動について教えて下さい。
清水:顔にまつわる依頼は、若返りや老化だけではありません。禿メイクだったり、顔が徐々に変化していく表現だったり、開発すべきことは多くあります。クオリティ向上と作業の効率化も現状に満足していません。
新しく入ったメンバーの成長が早いので、教育内容をさらに見直して、フェイシャルVFXアーティストの数をどんどん増やしていきたいと思っています。
内部の取り組みだけではなく、特殊メイクアーティストの方々や、デジタルヒューマンチームの方たちとの協業も広げていきたいと思っています。我々の技術だけに固執しないことがポリシーなので、これからも新しいチームとの繋がりを最優先にしていきたいと思っています。
CGW:ありがとうございました。
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募集職種
・フェイシャルVFX
・CGクリエイター
・レタッチャー