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原作者の井上雄彦氏が監督と脚本を務めることが新たに明らかになり、世界中が沸き立つ映画『SLAM DUNK(タイトル未定)』。2022年秋の公開に向け、現在制作を進める東映アニメーションダンデライオンアニメーションスタジオがスタッフを募集中だ。制作における両社協業内容や作品の特徴、スタジオの様子と求める人材像について聞いた。

TEXT_日詰明嘉
PHOTO_弘田 充
EDIT_藤井紀明(CGWORLD)

映画『SLAM DUNK(タイトル未定)』ティザー
8月に公開された本作のティザームービー第1弾は、井上雄彦監督を中心に現時点で参加している制作スタッフの名前と役職が掲示され話題を呼んだ。各職種のプロフェッショナルが結集して制作に臨む決意の表れだ
© I.T.PLANNING,INC.
© 2022 SLAM DUNK Film Partners

両社15年来のタッグを強化して臨む映画『SLAM DUNK(タイトル未定)』

CGWORLD(以下、CGW):東映アニメーションさんとダンデライオンアニメーションスタジオ(以下、ダンデライオン)さんは、これまでも様々な作品制作を通じて協業をされてきました。その歩みをふり返っていただけますか?

西川和宏氏(以下、西川):約15年前、会社を設立して間もない頃は東映アニメーションさんの社内で座席を貸していただいていたんです。当時は制作上の確認事項もすぐに対面で行い、非常に近い関係で作品づくりを行なっていました。ただ、弊社の規模が大きくなり石神井に移転したところ、どうしても距離感が生じてしまったんです。

  • 西川和宏/Kazuhiro Nishikawa
    ダンデライオンアニメーションスタジオ
    代表取締役 アニメーションプロデューサー

佐藤直樹氏(以下、佐藤):それを解消しようとしたのがオンライン会議で、われわれは『ポッピンQ』(2016年公開)の制作の頃から行なっていました。ダンデライオンさん側に立ってもらったディレクターが東映アニメーションのCGディレクターの中沢(大樹氏)と親しい間柄で、スタジオは離れていてもディレクター同士だけは直接オンライン打ち合わせをして進めていました。

  • 佐藤直樹/Naoki Sato
    東映アニメーション
    CG製作室長

西谷浩人氏(以下、西谷):あの頃は東映アニメーションさんの作業環境でリギングを勉強させてもらっていましたね。

  • 西谷浩人/Hiroto Nishitani
    ダンデライオンアニメーションスタジオ
    R&D リギングスーパーバイザー

牧野 快氏(以下、牧野):東映アニメーションとダンデライオンさんのリグシステムは開発経緯的にも兄弟みたいなものなんです。ただ、ツールや作り方がそれぞれ独自の進化を遂げていたので、当時は前もって共通する要件を共有するということはできず、案件ごとにいずれかのスタイルに合わせていくというかたちで制作をしていました。

  • 牧野 快/Kai Makino
    東映アニメーション
    アニメーションテクニカルディレクター

西川:2016年に社屋を現在の大泉に移転してからは、関係性も再び近くなりましたね。お互いの会議室に行きやすくなって、作品を手伝うだけでなく、レンダーマシンをちょっと貸してもらうといったことまで(笑)

CGW:そして2018年8月に両社は資本業務提携を締結されました。これによってパイプラインやリグなどのインフラ整備なども共同で開発されるようになったそうですね。

佐藤:はい。東映アニメーションでは2015年頃からShotGridを導入し、改良を進めてきました。今回のプロジェクトでは、ダンデライオンさんとこれまでの技術的なノウハウを共有することによって時間的にだいぶショートカットすることができました。

西谷:弊社では「AnimStroke」というツールを新規開発しました。これはディズニーの『紙ひこうき』(2012年)のように、CGで動いているキャラクターに作画で線や塗りを描き足すためのツールです。

■AnimStroke

▲CGで動きのあるモデルに対してペイントを行うプラグイン。パースや立体の変化に追従してペイントの動画中割りが作成される

牧野:これはCGソフトというよりもデジタル作画に近いかたちのソフトで、自分も触らせていただき、レビューとフィードバックをさせていただきました。

西谷:ほかにも東映アニメーションさんからフィードバックをいただいたツールとしては「AnimShape」や「SoftMod」があります。前者は作監修正が入ったときに、モデル単位でシルエットを変えられる機能で、ダンデライオンの中では主流のツールになっています。後者は事前にリグを入れるのではなく、後からコントローラを作成できるツールです。

■AnimShape

▲アニメーターがモデリングをするようにシルエットを変えるショット内スカルプトツール。作画監督による表情修正を正確に反映することができるため、必須のツールだ

松井一樹氏(以下、松井):「AnimShape」はダンデライオン独自のフローになっていたのですが、今回のプロジェクトを通して両社にとって良いかたちでノウハウや情報の共有ができればと思っています。

  • 松井一樹/Kazuki Matsui
    ダンデライオンアニメーションスタジオ
    アニメーションスーパーバイザー

CGW:ダンデライオンさんはツール開発がきめ細やかですが、それは意図的なものでしょうか?

松井:ニッチなツールを欲しがるアニメーターが多いんですかね(笑)。案件特性に合わせて細かく作ろうとすると面白みのあるツールが出来上がるというイメージです。

西谷:ダンデライオンがこれまで関わってきた作品には男性アイドルジャンルも多いのでそれに合うツールがやっぱり多くなるのかなと。

CGW:またHARBORを繋いで2社間を高速化・レンダリングリソースの共有もしているとのこと。

山下浩輔氏(以下、山下):はい。両社の社屋は徒歩数分なのでHDDを歩いて持っていける距離なのですが、書き出し・読み出しの時間コストは製作期間全体で考えると無視できません。東映アニメーションは以前から撮影会社と専用線を引いておりまして、昨年ダンデライオンさんとHARBORの回線を引いてしまいました。ただ、直結するとネットワーク関連のトラブルが発生したときにお互いの業務に影響が出てしまいますので、同期を取るサーバを立てるというかたちにしています。

  • 山下浩輔/Kousuke Yamashita
    東映アニメーション
    システムアドミニストレーター

人的交流も豊かな両社で進められた技術協力

CGW:両社では定期的に技術交流会も行われていると伺いました。

佐藤:各社でつくり方や仕様が異なり、いざ制作インしたときにその擦り合せから始めるのではスピード感を出せません。そのため、マニュアルや仕様書を共有して意見交換を行なっています。完全に全てを一致させる目的ではなく、お互いにとって良いものにしていくための勉強会です。

西川:ダンデライオンは案件によってプロジェクトの中身(ワークフローなど)が変わることが多かったり人数規模も少ないので、これまでマニュアル化に重きを置いてなかったんです。やはり大規模案件や長期作品を手がけている東映アニメーションさんの方がそのあたり進んでいますので勉強になります。われわれも採り入れながら強化していければと思います。

CGW:技術共有において課題だと感じられたことは何でしょうか?

佐藤:ShotGridでいえば、単にそのアプリを使うだけではなく、ディレクトリ構造の考え方まで立ち戻って考える必要があります。文化や好みのちがいもありますし、これまで使い慣れた環境から変わるので、急激に進めるのは難しいですね。

西谷:最近は東映アニメーションさん作品への参加も多いので、ダンデライオンではディレクトリ構造だけでなく、ファイルのネーミングルールも東映アニメーション仕様に合わせていこうと進めています。

CGW:両社の技術でお互いが優れていると思うところを教えてください。

中沢大樹氏(以下、中沢):先ほどの「AnimStroke」や「AnimShape」といったツールは東映アニメーションにはなかったので、今回の作品を含め作画的なルックをCGに求める際に有効なアプローチだなと思いました。

  • 中沢大樹/Taiki Nakazawa
    東映アニメーション
    CGディレクター

西谷:『プリキュア』シリーズなどで、弊社のスタッフが東映アニメーションのワークフローを経験すると、そこで良いなと思った考え方を持ち帰ってくるんです。今回のプロジェクトで使うパイプラインツールはその雛形です。今後の作品でも使用することができるよう、さらに進んだツールも開発しています。

中沢:松井さんたちが東映アニメーションにこられて作業されていたので説明しやすかったですし、逆に東映アニメーションのツールをリクエストされたこともありましたね。

松井:出向したことによって現場の話がとてもイメージがしやすくなりました。自分が東映アニメーションに入って感じたのがパブリッシュまわりのツールのワークフローのスムーズさ。これが組織的な生産力のバックボーンになっているのだと強く感じました。

中沢:大きいぶんフットワークが鈍くなりがちなので、パイプラインに載せるときにディレクトリやネーミングルールがデザイナーの負担にならないようなしくみづくりに気をつけています。

西川:これまでの人的交流や技術開発してきたことの延長でさらに積み上げができたり、新たに「AnimStroke」も開発できたりと、非常に良いタイミングでプロジェクトに臨めました。両社の培ってきたノウハウを結集し効果的に制作できていることが、作品制作の質の高さにつながっているのだと思います。

今後制作をしていくタイトルについても、また別のスタッフ同士が新しい交流や開発を行っていくことを期待しています。

■2社間の技術交流を経た協業作品

東映アニメーションの『プリキュアシリーズ』や『ポッピンQ』では本作のCGディレクター・中沢大樹氏ほかダンデライオンからも多くのスタッフが参加。ダンデライオンは『アイドリッシュセブン』のキャラクターたちが配信者となる番組『RabbiTube』も制作している

©東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016

©アイドリッシュセブン

両社それぞれのカラーと求める人材の特徴とは?

CGW:今回のプロジェクトの制作体制はどのように構築されましたか?

西川:企画の初期から2社で協力して制作することを前提としていたので、それぞれの強みを活かしたチーム体制を構築しました。東映アニメーションさんからはCGディレクターとして中沢さんが立ち、CGマネジメントは小倉さんが統括し、モデリング、リグ、アニメーション、ショット等の各SVや作画等のマネジメントはダンデライオン側から立てています。大勢を投入して短期に集中するのではなく、人数を絞りじっくり制作していく体制です。

牧野:これは作品性が大きく関わってきます。バスケットボールのプレイの芝居付けをするには上手いアニメーターであっても一朝一夕にはいきませんので。

小倉裕太氏(以下、小倉):われわれもプロの方にバスケの指導を受け、体育館で練習と試合をして実感をつかみました。牧野さんはバスケ経験者なのですが、プレイヤーだからこそわかるリアリティを担保してくれるので助かります。

  • 小倉裕太/Yuta Ogura
    東映アニメーション
    CGプロデューサー

牧野:演出陣も、そうしたリアリティを最初の頃から重視していましたね。かなり細かなところまで見ていただいています。

CGW:今回のプロジェクトでのこだわりや挑戦について教えてください。

中沢:東映アニメーション作品ではディフォルメされたキャラクターデザインが多いですが、リアリティのあるキャラクターの場合は、眼球の大きさやシワなどの造形、また表情の作り方といったフェイシャル面で、これまでの作品とは求められるものが異なります。さらにプレイなどのアニメーションでもリアリティを追求しています。監督が求めるものを、アニメーション作品としての表現方法で提案すること、それがわれわれの新たな挑戦ですね。

牧野:私自身もそうですし、スタッフの多くがまさに当時原作を読んでいた『SLAM DUNK』世代なんです。そうした思いをできるだけ込めていきたいと思っています。技術的な立場の挑戦で言うと、ShotGridでチェックやデータ共有をするための大規模な補助ツールをダンデライオンさんに作っていただきました。その際に、東映アニメーションで従来使っていたときにはできなかった機能を盛り込んでいただいています。そのあたりダンデライオンさんはフットワーク軽く動いていただけてとても助かりましたし、東映アニメーション側にも今後フィードバックしていければと思います。

西谷:今回のプロジェクトでは規模感的にも時間をかけ、後々も発展性のあるものを作っています。本作ではリアリティのある動きが求められるので、リグでは人体工学的な筋肉表現を特に重視しています。

松井:顔の表現については、本作では東映アニメーションさんのフェイシャルリグとハイブリッドなので、これまでの「AnimShape」の限界を超えた表現が可能になりました。服の動きにしてもアニメーターが使いやすいような組み込みをしたりと、これまでにないチャレンジを行い、原作の印象的なシーンのイメージに近づけるようにしています。

小倉:プロデューサー側としては、いかに現場がつくりやすい環境を整えるかが重要です。監督が納得できる作品に仕上げて完成に漕ぎ着けられるようマネジメントしていきます。

西川:これまでの制作過程を通してチームとして出来上がって来ており、監督との信頼関係が築けてきていることが、作品にとってしっかりとした土台となっています。ひき続き監督を中心に丁寧に制作していけるよう、しっかりとサポートをして走りきりたいと考えています。

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両スタジオとも"ファン"+α姿勢を歓迎

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両スタジオとも"ファン"+α姿勢を歓迎

CGW:それぞれ応募者に求める人物像を教えてください。

西川:弊社は比較的中規模な作品をこれまで手がけてきたので、規模が大きかったり長期間の作品を組織的につくる方法は東映アニメーションさんの方が長けているなと感じます。なので、応募される方は個人の裁量を出していきたいのであればダンデライオンで、大きな組織の中でつくりたいのであれば東映アニメーションさんで働くのが向いているのではないかと思います。

牧野:私は一時期ダンデライオンさんに籍を置いていたのですが、社内全体にチーム感があってお互いをよく知っているという印象ですね。

中沢:開発については今回のツールも含め、現場の意見を吸い上げて作ってくれているものが多いですね。そこからも社風を感じます。

西谷:フットワーク軽く動けるのはダンデライオンの良さでもあります。例えばそのひとつに社内求人制度があります。これは土日に余裕のある人が個人の裁量に基づいて社内の別案件に応募し、手当をもらうという制度です。

西川:私としてはCGに関する設備投資や開発費の豊かさは東映アニメーションさんはかなりしっかりされていると思います。さらに、『プリキュア』シリーズなど、長きにわたりつくり続けてノウハウの積み上げができるシリーズをもっていることは大きいなと思います。

佐藤:近年、東映アニメーションでは組織的な制作体制を推し進め、分業が進むことでアーティストのスキルを育成してきました。その中で気づいたのは、スペシャリストの集まりだけではプロジェクトの起ち上げの準備がなかなか上手く進まないということ。自分の武器がある人こそ、その前後の工程のことを理解して連携をとる必要があります。リガーであればアニメーションのことがある程度わかるといった意味で、ゼネラリストを求めています。東映アニメーションというと外部からは分業のイメージをもたれるかもしれませんが、われわれが今求めるのはそうした人材です。

CGW:現状、リモートワークの状況はいかがでしょうか?

佐藤:9月現在ですと、東映アニメーションでは協力スタッフを含めた製作現場で見ると6~7割がリモートワークです。

西谷:ダンデライオンでは7~8割です。家だと仕事が捗らない人は出社して行うような体制です。リモートですとどうしてもコミュニケーション面が難しくなるので、バーチャルオフィスを導入してそこで仕事以外の会話もできるような環境を整えたりもしています。

佐藤:今後、コロナ禍が去ったとしても、リモートワークをなくすことは考えておりません。というのも、以前は都内に勤務することが環境的に難しかった方に新たに入っていただいて、すでに力を発揮していただけているので、弊社としては多様性のある働き方を推進していきたいと考えています。

CGW:応募者の側に立って、どのようなタイプがそれぞれの会社に向いていると思いますか?

佐藤:東映アニメーションがこれまで手がけてきた人気シリーズに関わりたい方はもちろん、新規作品には企画の起ち上げから関わることができます。決められた仕様のなかでつくっているだけではなく、アイデアやデザインなど主張できる環境ですので、やりがいのある現場です。チャレンジする意気込みのある方を待っています。

西谷:ダンデライオンでもこれまでの弊社作品が好きな方を歓迎します。加えて言えば、今求めているのは自身のキャリアパスを考えられる人。どのように成長していきたいかを考えられる人は、クリエイティブの伸びも早いですね。Wantedlyの採用ページで社内スタッフインタビューも掲載していますのでご覧いただければと思います。

CGW:映画『SLAM DUNK(タイトル未定)』事務局への応募もあるそうですね。

西川:本作に携わることを前提に応募していただき、相談の上で両社どちらかの現場に入っていただきます。

中沢:絵が描けるCGアニメーターがいると助かりますね。これからの作業ではイメージを画に落とし込んで表情づくりができるとゴールが近くなります。

西川:「AnimStroke」や「AnimShape」を使って整えていく作業の中で、画力は有利に働きます。使いこなしていただいて、映画『SLAM DUNK(タイトル未定)』を無事にファンの皆さんにお披露目できるよう、ご協力をお願いします。

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