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4K/8K時代を迎えて、なお進化が止まらない3DCG技術。フォトリアルな3DCGの人物が登場する広告クリエイティブは、最先端の3DCG技術ならではの分野だ。そこでは、まだまだハイエンドな機材が必要なのだという。旭エレクトロニクスが制作したモンスターマシンの実力を、CyberHuman Productions 桐島ローランド氏に検証してもらった。
TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)
PHOTO_弘田 充 / Hirota Mitsuru
<1>3DCG×AIテクノロジーで広告業界に革命を起こす
3DCGによる表現の可能性は何をもたらすのか。広告業界でいち早くこの命題に取り組んでいる企業に、CyberHuman Productionsがある。フォトリアルな3DCGの人物を登場させ、AIと組み合わせることで、広告クリエイティブに革命を起こすことを目的に、研究開発を進めていく。この社名はそのために用意されている。同社でテクニカルアドバイザーを務める桐島ローランド氏は「静止画ならかなりのレベルに達しており、動画についても時間の問題ではないか」と自信のほどをのぞかせた。
その言動は卓越した技術力に裏打ちされている。1990年代から写真家/マルチクリエイターとして活躍するかたわら、フォトグラメトリーの可能性をいち早く見抜き、2014年に日本初のフォトグラメトリー専用スタジオ AVATTAを設立。クオリティについても他社を近づけず、トップランナーであり続けた。また、デジタルガジェットについて語り尽くすストリーミング番組「アイドルGEEKERS」でもコメンテーターを務めるなど、デジタル世代のクリエイターを地で行く人物だと言えるだろう。
同社がメインで使用するレンダラがArnoldであるのも、ハリウッドの大作映画で使用されるなど、性能と安定性と実績のバランスがとれているからだ。人体、特に目や若い女性の肌をフォトリアルに表現するには、Arnoldが一番だという。「皮膚内部の光の拡散反射まで表現するには、他のレンダラでは難しいところがあります」。ただし、ネックになるのがレンダラに要する時間だ。同社が求めるクオリティを追求すると、フルHDの静止画でも10~30分はかかるという。
<2>ハードウェアにソフトウェアが追いついていない現状
それでは、現在考えられる最上級マシンを使えば、レンダリング時間をどこまで短縮できるだろうか。旭エレクトロニクスが試験制作したワークステーションを用いて技術検証してもらった。CPUに24コア/48スレッドのXeon Gold 6226を2基、GPUにGeForce RTX 2080 Ti TURBO 11Gを搭載したグラフィックカードを4枚搭載。そのほかメモリを192GB、ストレージにはSSD DC S3510を1.2TB搭載するなど、パーツ単価の合計だけでも300万円に迫る代物だ。
もっとも結果は意外なものになった。Arnoldによる静止画レンダリング時間の比較では、CPUにCore i9-7980EX(18コア/36スレッド)を搭載した同社の主力機の方が、若干スコアが上回ったのだ。桐島氏が理由として挙げたのがクロック周波数のちがいで、Core i9は最大4.20GHzで、Xeonは最大3.70GHz。CPUレンダラであるArnoldでは、クロック周波数がレンダリング時間に大きな影響を与える。Core i9マシンの価格は約80万円で、コストパフォーマンスの差は歴然だろう。
一方、ArnoldではGPUレンダリングの対応も進めている。そこで検証機とArnold 6で、静止画レンダリングの時間を計測してもらった。ここではCPUベースで39分かかったものが、GPUベースでは18分で終了。しかしGPUレンダリングではノイズが目立ち、除去の手間もかかるという結果になった。CPUレンダリングでもノイズは見られたが、より軽微で、除去の手間もそれほどかからない。そのため、あえてGPUレンダリングを使用するメリットに乏しいという結果になった。
もっとも、レンダラやDCCツールのGPU対応は世界的な流れだ。ただし、桐島氏によると、どれも「時間は短縮できるがクオリティに課題があり、同社のワークフローに乗りにくい」のだという。「Redshiftは透明感のある皮膚の表現で一段劣り、炎・水流・煙などのボリュームレンダリングも不得手」「Octaneは複雑なレンダリングが不得手で、ディスプレイメントマップが限定的」などだ。Mayaや3ds MaxでもGPU対応が進んでいるものの、GPUシミュレーションに非対応など、機能の制約がある。
「ただし、ソフトウェア側の問題はいずれ解消されます。そうなったら、ぜひ今回検証したようなモンスターPCをぜひ使用してみたいですね」と桐島氏は補足した。この件に限らず、3DCGの制作環境は総合力の勝負だ。ハードウェア・ソフトウェア・インフラなど、どれかひとつの要素が劣るだけで容易にボトルネックになる。その一方で、様々な技術革新が現在も進行中だ。ソフトウェア側の対応が追いついた頃、さらにハードウェア側が先に進んでいるといったこともあり得る。
中でも桐島氏が期待を寄せるのが、クラウド上でのレンダリングだ。今日では試験的な段階に留まっているが、本分野での技術革新が進めば、CG制作のワークフローが大きく変化することは確実だ。桐島氏は環境に対する意識が世界的に高まる中、3DCG制作も無縁ではいられないという。「シェアリングエコノミーやサブスクリプションの波は、機材面でも影響を及ぼすのではないでしょうか。ハイエンドPCの価値が数年で激減し、ゴミになる現状は、そろそろ終わりにしたいですよね」
<3>プロだからこそ機材選びにはコストをかけたい
もっとも、そうした未来が到来するには、まだ何段階ものステップが必要だ。そのためには適切なタイミングでの機材投資が求められる。桐島氏は重要な点として「確かな技術力と信頼性を兼ね備えた、プロによる選定」を上げた。今回機材協力を担った旭エレクトロニクスはそのひとつだ。Intel、マイクロソフト、Gigabyteなどの国内代理店を務め、法人向けから個人向けまで幅広く対応している。桐島氏が長年、PCの発注を行なっている企業でもある。
「特に重要なのがマザーボードとメモリの相性問題です。最初は問題なくても、使用しているうちに不具合が発生することもあります。こうした素人にはわかりにくい問題でも、しっかりと相談に乗っていただけます。価格だけを求めると失敗することを、自分も何台も自作する中で学びました」。特にハイエンドなマシンやニッチな用途のパーツほど、市場の流通量が少なく、個人で情報を集めるのも限界がある。今回のようなモンスターPCでも安心してオーダーできるのは、同社ならではの強みだろう。
一方でギークを自称する桐島氏だからこそ得たノウハウもある。最もハイエンドなパーツより、一段下のレベルの製品をねらうこと。理由は簡単で、安定性とコストパフォーマンスに勝るからだ。またCPUとGPUであれば、GPUに比重をかけること(GPUパワーはレンダリング以外でも様々な面で必要になる)。安定性を考えれば、GeForceよりもQuadroに軍配が上がること。レンダリング用途ならクロック周波数が重要だが、スキャン用途ならCPUのコア数が重要であること、などだ。
いずれにせよ3DCG制作において、機材投資には「時間をお金で解決する」側面があるのは否めない。一時的にコストがかかっても、長い目で見ればぐっと安くつく。そうした正しいコスト感覚を、どのように身に付けるかが重要だ。もちろん、答えは各社によって異なるものの、そこで避けたいことがひとつある。「価格面だけを追求した結果、落とし穴に陥る」ことだ。そのためには機材のプロに相談するのが一番。クリエイティブのプロだからこそ、信頼できるパートナーを選びたいところだろう。
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イーアリーナ株式会社(旭エレクトロニクス株式会社関連システム請負)
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