記事の目次

    AnimationCafeにて活動中の今川真史氏が解説する本誌の連載と連動して、メイキング動画とコラムをお届けする。

    TEXT_今川真史 / Masashi Imagawa(AnimationCafe
    EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada(CGWORLD)

    実際に現地へ行って、感じたものを画に落とし込む

    今回の作品は「工業地帯」です。僕は写真が趣味で、暇なときはYouTubeで外国の方が日本に観光に来て写真を撮る、いわゆる旅動画をよく見ます。普段生活している東京ですが、日本人目線ではなく、外国の人目線で旅している動画は、新鮮な発見があって好きです。そんな中で見つけたのが、京浜工業地帯のナイトクルーズでした。今年、京都から東京に移り住んでから特に観光などはしていなかったし、良い写真を撮れそうだなと思い、予約しました。

    ナイトクルーズで撮影した工場地帯の写真①

    工業地帯の夜景のイメージはキラキラしていて綺麗な印象でした。ネットで調べてもキラキラした画像が出てきます。しかし実際に行ってみるとちがいました。映画『ブレードランナー2049』(2017)の世界のような、ズーンと重い空気を感じたのです。夜遅くの最終便だったからかもしれませんが、思っていたより工場自体に明かりはなく、工場の後ろに強い光があり、霧やガスの煙が光を拡散し、ふんわり空気が光っていて、工場のシルエットが浮かんでいました。雨と霧の世界でネオンが光り、主人公の影、シルエットで演出する、まさに「ブレードランナーの世界」を思い出しました。

    ナイトクルーズで撮影した工場地帯の写真②

    そこで今回の作品の工場は、シルエットで演出する方法で制作しています。やはり実際に行って、感じてみると、ネットで画像を検索するのとはまったくちがうことに、改めて気づきました。

    ナイトクルーズで撮影した工場地帯の写真③

    ほかに気づいたことは、カメラについてです。ネットで見る工場夜景の写真は露光撮影で撮られているので、明るくノイズが少ないのですが、ナイトクルーズで船から撮る場合、船が揺れているため、ある程度シャッタースピードを上げないと手ブレが発生してしまいました。望遠レンズを使っていたのでなおさらです。手ブレ抑制のためにシャッタースピード上げると暗くなるので、ISO感度を上げました。結果、ノイズが目立ってしまったので、今度は70-200mm F2.8のレンズを購入して挑戦したいと思います。後は、レンズに潮風と海水がかかってカビが発生してしまったので、これから撮りに行かれる方はご注意ください(笑)。

    ナイトクルーズで撮影した工場地帯の写真④

    これからも時間をつくって地球のいろいろな場所を旅したいです。

    Industrial area from Masashi Imagawa on Vimeo.

    Profile.


    • 今川真史/Masashi Imagawa(AnimationCafe)
      AnimationCafe VFX/ゼネラリスト

      京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。大学1年次に受けた授業をきっかけに、ほぼ独学で3DCGを学ぶ。自主制作作品『THE SEABED』でKLab Creative Fes'17動画部門グランプリ受賞
      www.artstation.com/masashivfx321



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