あけましておめでとうございます! 毎年恒例の年賀状メイキングです。今年の干支は亥。そして今年の連載のテーマは「Generalist Style」。近年、多種多様になってきたCG制作方法をゼネラリストならではの視点で解説させていただきたいと思います。ゼネラリスト的な制作スタイルには3ds Maxがとても向いています。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 246(2019年1月号)からの転載記事になります
TEXT_KAI(GARYU)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
Method 1:リアリティを求めて
▲今回は連載「画竜点睛」の100回記念です。この連載を始めてからずっと、リアリティのある作品をつくり続けてきました。筆者の考えるリアリティはただ実写のようなものではなく、見る人の心に届くリアリティのある作品です。そのためセオリー通りのつくり方はせず、毎回ちがうアプローチを考え、様々な試みもしてきました。しかしながら、まだまだ道は遠く、さらなる研鑽が必要と勉強に励む日々です。ちなみに今回は連載100回目ですが、前連載(「必殺テクスチャ・イリュージョン」、および「Texture Illusion」/2000~2007)の分も合わせると182回目の連載掲載になります。おかげさまで、合計200回ももうすぐです。
Method 2:進化するアプローチ
▲ソフトの進化により、今までバラバラだった制作アプローチが、同時進行できるようになってきました。これはゼネラリストには良い環境です。
▲資料集めに加え、昨今取り組んでいるのはフォトグラメトリー用の写真撮影をしながらの散策です。
▲以前はスケッチブックにアイデアなどを描いていましたが、現在では直接3DCGソフトでラフスケッチを行うこともあります。
Method 3:制作の準備
▲撮りためた写真をPhotoScanでモデル化。ノートPCでもできるので、手持ちでその場でのスキャン確認もできるお手軽さです。
▲さらにテクスチャも一連のソフトで分解し、要素ごとのテクスチャに。これも半自動でできてしまいます。
▲こうして作成したアセットや購入したもの、以前制作したものを大量にシーンに並べてみると、あたかも採取した木材をアトリエにならべて思考するアーティストの気分になりますね。
Method 4:制作の時間
▲ひとつひとつパーツを組み合わせていきます、こうした作業はアナログでつくっていくのとたいして変わらないかもしれません。
▲V-Ray IPRを活用することで、ビューポートでリアルタイムレンダリングの表示が可能に。質感やライティングを行いながら配置、レイアウトができて、本当に目の前で組み上げているようです。
▲もともとのアセットに質感は付いているので、レンダリングするとそれなりに綺麗な木の質感が出ます。
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Method 5:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成
Method 5:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成
▲身体や床に散らばった破片の配置は、エフェクトの概念からMassFXで行いました。エフェクトやアニメーション用途とされるツールからシーンを作成するヒントをつかめるのは、ゼネラリストらしい発想だと思います。
▲衝突用のコリジョンモデル。重いと固まるのでZBrushの力を借りて最低限の形にしました。ちょっとした作業も他ソフトとの連携が大事です。
▲アニメーションに使用する植物生成プラグインで蔦を背中に這わせます。盆栽のような雰囲気が出てきますね。
▲顔の部分に目がいくように、アクセントになる模様を工芸品のようにフリーハンドで作成。
▲完成したモデルです。
Method 6:レンダリングと画としての魅力
▲実際のアート作品を組み上げた後のように、VRayCameraを配置して撮影。ISOや被写界深度などの設定もしています。
▲ひと通りできましたが、レンダリングは少し悩みました。そのままでも良かったのですが、ただ木を組んだだけのように見えてしまいます。
▲そこで全ての木のマテリアル、テクスチャをペイントし直し、様々なHDRでテストをしました。このあたりの創意工夫が同じようなレンダリングになりがちな3DCGに変化を与えるポイントでしょう。
Method 7:画づくり
▲After Effects(以下、AE)に読み込みました。自然な質感を活かすために、あえてレンダリングで被写界深度やブルーム、グレア効果も付けています。
▲現実的なコンポジットでは本当に薄く、ほんのりとフレアや反射の強弱を味付けします。
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▲カラコレもV-Ray Frame Bufferで同時に済ませています。効果はLUTを使い、AEで合成。イメージを変えることなく、仕上げができます。
[[SplitPage]]連載アーティストの皆さまからのコメント
今回は連載100回を記念してCGWORLD、およびCGWORLD.jpで連載をしている5名のアーティストの皆さまにお祝いのコメントをいただきました。
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「Houdini Cook Book」連載
ディレクター/Houdiniアーティスト
秋元純一(トランジスタ・スタジオ)
連載100回、おめでとうございます。思い返せば学生の頃からKAIさんの連載のクオリティに憧れていて、「Houdini Cook Book」の連載が始まる際には、絶対に作例をつくるフォーマットにしたいと、当時の編集長に話したことを思い出します。今となっては、その大変さを、身をもって感じております。「画龍点睛」は現在の連載のながれをつくった、正に源流だと思います。これからもお体を大切に、末永く続けていただいて、後輩たちの目標でいてください。ありがとうございました。
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「アニメーションスタイル」連載
ディレクター
森江康太(MORIE Inc.)
学生時代、CGWORLDを手に取ると真っ先にKAIさんの連載をチェックし、その洗練されたデザイン、独創的なアイデア、美しいライティングと構図で彩られた作品にいつも圧倒されました。後年、その作品の魅力の源泉はKAIさんの超人的な仕事量に裏打ちされていることを知り、一朝一夕では、到底真似できないと痛感したのを覚えています。偉大なクリエイターは多作だと言われますが、連載100回目という偉業に、今なお圧倒され、畏敬の念を抱かざるを得ません。連載100回目、本当におめでとうございます!
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「Phenomenal Things」連載
デジタルアーティスト
森田悠揮
100回目の連載おめでとうございます! 100回連載することの大変さは僕以外にも連載を抱えているアーティストなら誰しもが理解できると思いますが、とんでもないクオリティの作品をブレることなくつくり続けてきている事実、「見習わなければ!」という気持ちです。僕の連載のきっかけをつくってくれたのもKAIさんで、そのことはずっと感謝しています。KAIさんが背中を押してくれたおかげで、今とても楽しく連載作品をつくれています。本当にありがとうございます。そしておめでとうございます!
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「世界大諸説史」連載
コンセプトアーティスト
沢田匡広
KAIさん、連載100回記念おめでとうございます。学生の頃から拝見していた「画龍点睛」と同じ雑誌内で連載をしていることが、不思議な気分であると同時に大変光栄です。 僕自身連載を始めて間もないので、毎回試行錯誤をくり返している段階ですが、KAIさんが当初から保ち続けている作品のクオリティはもちろんのこと、「100回記念」という言葉に隠された労力にただただ圧倒されます。改めておめでとうございます!
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「NEO ACT」連載
コンポジター
今川真史
連載100回目おめでとうございます! KAIさんには「KLab Creative Fes'17」や大学での特別講義など、自分が学生のころからお世話になっていました。ツールも自分と同じ3ds Maxで、3DCGに初めて興味をもったときからKAIさんの連載を毎月読み、参考にさせていただいています。KAIさんの作品は3DCGというデジタルな手法を用いながらも、日本の伝統工芸のような繊細さと美しさがあって、毎月感動しています。今後いっそうのご活躍をお祈りいたしております!
連載100回記念スペシャル
これまでの連載をふり返って
連載を再開した当初、2010年ごろの日本は不景気で、さらに震災や経済的なショックもたて続けに起こり、いわゆるエンターテインメントや広告業界はとても厳しい時期を迎えていました。それはCG業界も同じで、しばらくは名だたるアーティストや明るい話題も出てきませんでした。そういった中、連載を始めたのはもう一度「3DCGは楽しいんだ」「3DCGと一緒に生きるということはこんなに素晴らしいんだ」ということを伝えたいと思ったのが一番の理由です。
私の連載とは関係ないとは思いますが、それからの日本の景気はアベノミクスに入り、オリンピックが決まり、CG業界も活気をとり戻してきました。素晴らしい作品をつくる若手がどんどん名乗りをあげ、海外に進出するアーティストもたくさん出ています。そういった素晴らしいアーティストの方々とたまに食事やイベントで交流をもち、お互いに作品の話や3DCGの話に花が咲くと、時間がたつのも忘れて本当に嬉しい気持ちになります。
もう十分おじさんの部類に入っていますが、これからも自分の作品はもとより、CG業界を支える若いアーティストの力になれたら嬉しいです。最後になりますが、多忙な中、今回のために暖かいメッセージを贈っていただいた5名のアーティストの皆さま、CGWORLD編集部の方々に感謝の気持ちを、この場をお借りして御礼申し上げます。これからもCG業界に幸があることを。
KAI
[Information]
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3ds MAX 画龍点睛
『NEXTWORK2019Ver.』
デジタルハリウッドの「CGヒーローズ」が2019年1月から再びスタート。今回は3ds Max 2019ならではの新機能の詳解と、ソフトウェアを連携させてより効率的にクオリティを高める知識を学びます。詳しくはオフィシャルWebサイトをご覧ください。
school.dhw.co.jp/p/cgheroes/#max
[プロフィール]
KAI
株式会社画龍 アートディレクター
www.ga-ryu.co.jp
www.kaihei.net
Twitter:@Kai_ryu_Kai