記事の目次

    Framestoreで活動中の今川真史氏が解説する本誌の連載と連動して、メイキング動画とコラムをお届けする。

    TEXT_今川真史 / Masashi Imagawa(Framestore
    EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada(CGWORLD)

    立体感が要求された煙の表現

    こんにちは。今月から連載が再開となりました! またよろしくお願いします。

    休載をいただいた昨年11月頃から、MPCモントリオールで働き始めました。今月の作品では、煙とレーザーのコンポジットについて紹介しています。

    MPCに移って最初に参加したのは映画『シャザム!』という作品でした。主人公が変身する際に煙が巻き上がるのですが、仕事ではその煙の中で胸のエンブレムが光る感じの表現を主に担当しています。

    煙はエフェクトの人がつくる場合と、コンポジターが実写の煙を合成する場合がありますが、僕の担当したショットは全て実写素材で表現するという方法でした。そこで今回は、僕が仕事でスーパーバイザーからもらったフィードバックなどを活かして、復習もかねて作品を制作してみました。

    スーパーバイザーが注意していたところは「手前の煙」です。「煙の中で何か光ると、手前の煙は影として黒く映る感じを表現してほしい」と言われました。もちろん2Dの実写素材を使うので3Dの情報はなく、3Dのライトも使えません。

    次に言われたのは「グローの立体感」です。「サーチライトなどが回転するときのボリュームレイも表現してほしい」と言われました。さらに背景のディフューザーに求められたのは煙で霞んでいる感じです。とにかく立体感が要求されました。

    ひたすら表現方法を模索して、何とかショットを完成させることができました。最初につくったショットを監督が気に入ってくださったらしく、そこからずっと変身の煙まわりのショットしか来なくなって、プロジェクト後半はチーム内でのあだ名が「スモークマスター」になってしまいました。

    ひとつのショットができてしまえば楽ですが、最初はやはりキツかったです。まだ僕は経験が浅いので、手探りで制作してはリテイクを繰り返し、最初はゴールも見えなかったので、毎日クビにならないかドキドキしながら仕事をしていました。今回の作例には、この『シャザム!』での仕事を通して得た表現方法を詰め込んだので、ぜひ見ていただけたらなと思います。

    Home coming from Masashi Imagawa on Vimeo.

    Profile.


    • 今川真史/Masashi Imagawa(MPC Film)
      Framestore/コンポジター

      京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。大学1年次に受けた授業をきっかけに、ほぼ独学で3DCGを学ぶ。自主制作作品『THE SEABED』でKLab Creative Fes'17動画部門グランプリ受賞
      www.artstation.com/masashivfx321



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