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    TVアニメ、実写映画、ゲームなどを幅広く手がける株式会社コロビト代表・大島夏雄氏によるCG雑学コラム。第8回は前回に引き続き、似ているようで実はちがう動物たちを紹介する。

    TEXT&ILLUSTRATION_大島夏雄 / Natsuo Oshima(コロビト
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

    <1>ジュゴンとマナティのちがい

    こんにちは、株式会社コロビトの大島夏雄です。第8回となる今回は、前回に引き続き「動物のちがいのはなし」についてお話ししようと思います。

    まずは、ジュゴンとマナティのちがいから。ジュゴンは脊椎動物門-哺乳綱-海牛目-ジュゴン科-ジュゴン属、マナティは脊椎動物門-哺乳綱-海牛目-マナティ科-マナティ属です。この〜科や〜属といった「分類階級」については、前回お話ししましたね。

    ジュゴンは人魚伝説の由来と言われていますが、最近では、ヨーロッパで初めてジュゴンを見た人が、古くから伝わっていた人魚伝説と結び付けたのではという説もあります。この2種はどちらも海牛目に属し、見た目がとても良く似ていますが、ちがいはあるのでしょうか。

    まずは、生息場所。ジュゴンは海に、マナティは海だけでなく、河川や河口の淡水にも住んでいます。また、食べているものもちがいます。マナティは海面の水草やいろいろなものを食べますが、ジュゴンは海底のアマモという海藻しか食べません。そのため、ジュゴンは口がマナティよりも下向きについています。

    見た目で一番のちがいは尾びれです。ジュゴンの尾びれはクジラやイルカに似た三角形をしています。それに比べマナティは丸い形をしています。

    <2>オオワシとオオタカのちがい

    次に、空を舞う大型鳥類の2大巨頭、オオワシとオオタカです。オオワシは脊椎動物門-鳥綱-タカ目-タカ科-オジロワシ属、オオタカは脊椎動物門-鳥綱-タカ目-タカ科-ハイタカ属です。鷹も鷲も同じタカ科です。そのちがいはクジラとイルカと同様、「大きさ」で区別されています。タカ科の中で比較的大きいものが鷲と分類されているようです。

    日本にも生息している一番大きな鷲、オオワシの翼開長(翼の両翼端を結ぶ距離)は220cm以上もあります。一方、オオタカの翼開長は100cm以上とオオワシの半分くらいです。ただ、例外もあり、鷲よりも大きな鷹がいたりとはっきり何cm以上が鷲、といった決まりはないようです。

    見た目のちがいとしては尾の形がちがいます。鷲は両足に対して平行に伸びていますが、鷹は扇形をしています。また、鷹のお腹や翼の下には鷹斑(タカフ)と呼ばれる模様が入っているものが多いです。これにも例外があり、全ての鷹に鷹斑があるわけではありません。

    <3>ズワイガニとタラバガニのちがい

    続いては、ズワイガニとタラバガニです。ズワイガニは軟甲綱-十脚目(エビ目)-カニ下目-ケセンガニ科-ズワイガニ属、タラバガニは軟甲綱-十脚目(エビ目)-異尾下目(ヤドカリ下目) タラバガニ科-タラバガニ属。「今日は奮発してカニを食べよう!」というときタラバガニを豪快に刺身やしゃぶしゃぶでいただいたりしますよね。でもタラバガニは、実はヤドカリの仲間なんです!

    タラバガニは一般的にはカニの一種と思われているくらいカニに似ていますよね。これも、前回お話した「収斂進化」の一例です。でも、カニ料理屋さんでタラバガニを食べるときは「これはヤドカリの一種なんだよ」とは言わずカニだ!と思って食べた方が個人的には良いと思います。

    ぱっと見、タラバガニの足は、はさみが2本、足が6本の計8本に見えます。タラバガニもズワイガニと同じ「十脚目」なのに、8本しかないのはおかしいですね。実は、タラバガニには甲羅の中を掃除するとても小さな足が2本あるのです。この足はエラの中にあり、外側から見ることはできません。また、タラバガニはカニではないので前方にも歩くことができます。

    <4>タコとイカのちがい

    軟体動物の代表格、タコとイカはどうでしょう。タコは軟体動物門-頭足綱-八腕形上目、イカは軟体動物門-頭足綱 -十腕形上目です。タコとイカの一番のちがいは、もちろん足の数ですよね。タコは8本、イカは10本。でも例外があり、ヤツデイカというイカは名前の通り足が8本なのです。

    この足に付いている吸盤のしくみが、実はタコとイカで異なります。タコの吸盤は吸い付きますが、イカの吸盤にはトゲトゲがあり、物を引っかけるようにできています。ちなみにタコのオスとメスは吸盤で見分けることができます。オスは吸盤が大きく、バラバラです。それに比べメスの吸盤は小ぶりで綺麗に並んでいます。

    <5>鳥とコウモリの羽のちがい

    コウモリは空を自由に飛ぶことができる唯一の哺乳類です。鳥類の羽は羽毛で覆われています。それに対してコウモリは「飛膜」と呼ばれる膜が指と指の間に張られています。この羽のなかの骨の構造も鳥とコウモリで大きくちがいます。コウモリには人間と同じで5本の指がありますが、鳥類の指の骨は3本です。これは恐竜の指の骨と同じです。


    前回に引き続き「動物のちがいのはなし」をしましたがいかがでしたでしょうか?違う種類なのに生息場所や進化の過程で似ている動物はたくさんいます。Zbrushで架空の生物を制作するのは楽しいですよね。例えばドラゴンもモデリングする際、羽の骨は何本はいっているのかな、とか何を食べるのか。足は獲物をとらえるのに適しているのか、それとも歩くことが得意なのかなど考えてモデリングするのも面白いのではないでしょうか。

    次回は「人間工学のはなし」ということで、人間工学とはどのようなものかについておはなししたいと思います。それでは次回もよろしくお願いします。

    参考文献

    書籍
    「世界動物大図鑑 ANIMAL」(ネコ・パブリッシング)
    「カワハタ先生の動物の不思議どこがおなじでどこがちがうの?」(川幡智佳 著、実務教育出版)
    「進化の法則は北極のサメが知っていた」(渡辺佑基 著、河出書房新社)
    「子どもには聞かせられない動物のひみつ」(ルーシー・クック 著、小林玲子 訳、青土社)
    「鳥の形態図鑑」(赤 勘兵衛 著、偕成社)

    Profile.

    大島夏雄/Natsuo Oshima(コロビト)
    株式会社コロビト 代表取締役、リードモデラー
    奈良県出身。多摩美術大学(絵画学科 油画専攻)を卒業後、数社のCG制作会社に所属しモデリングチーフを務める。その後、フリーとなり2009年7月2日に株式会社コロビトを設立。ゲーム、映画、アニメ、CMなど様々なジャンルの仕事を手がける
    colobito.com