記事の目次

    Framestoreで活動中の今川真史氏が解説する本誌の連載と連動して、メイキング動画とコラムをお届けする。

    TEXT_今川真史 / Masashi Imagawa(Framestore
    EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

    細部の色やディテールに気付ける観察力

    今月は、今までつくってきた「Another planetシリーズ」の4ショット目で、惑星に到着した宇宙船が基地に向かって飛んでいるショットです。

    今回もツールはBlenderとNUKEで制作しました。最近、少しずつですがBlenderにも慣れてきました。

    一方で、最近レンダリングした後のCGのクオリティに悩んでいます。会社の仕事ではライティングデパートメントから上がってくるCGをコンポジットするのですが、もちろん会社ではモデリング、テクスチャ、ルックデヴ、アニメーション、ライティングと、全ての工程をスペシャリストが担当していて、凄く質の良い素材が上がってきます。当然ですが、僕ひとりがつくる素材がそのクオリティまで届くはずもなく、毎日仕事から帰って制作をするときに、スタート地点がちがいすぎて、会社で得たテクニックなどが自主制作で活かせていない感じがします。

    もちろん80%の素材をコンポジットで100%にもっていくのも重要なのですが、会社ではスタートが100%で、スーパーバイザーの指摘などをもらいながら長い時間をかけて120%までもっていく感じがします。全ての仕事がそういうわけではないですが。時間をかけて120%までもっていける環境は、とても贅沢な時間だと感じています。

    たまに空いた時間に、他の人のショットを見て修正点を自分で考え、その人のショットのデイリーに参加してスーパーバイザーの意見と自分の予想した修正点とを比較して、自分の観察力や目を鍛える練習をしています。観察力がないと、いくら技術があってもどこを修正したらいいのかわからなくなってしまいます。コンポジットでより良い画づくりをするためには技術も大事ですが、細部の色やディテールに気付ける観察力が一番大事だと感じます。

    自主制作でもできるだけ会社での仕事に近いコンポジットができるように、素材の質を上げるため、他のデパートメントの友人とコラボして作品を制作していきたいと考えています。この前、元MPCモントリオールのエフェクトアーティストShota(Kimura)君と合同で自主制作したのですが、上手くまとまって、良い作品ができたので、また何かつくれたらなと思います。

    Lightning Storm from Masashi Imagawa on Vimeo.

    まだまだ映画のクオリティには到底およんでいないので、お互いに仕事を通して成長し、仕事で得たテクニックを自主制作に落とし込んで作品をつくっていきたいです。

    モントリオールはもうすっかり秋が終わり、冬に近づいてきています。モントリオールに来てから2度目の冬ですが、頑張って生き延びます(笑)。

    Another planet - c04 from Masashi Imagawa on Vimeo.

    Profile.


    • 今川真史/Masashi Imagawa
      Framestore/コンポジター

      京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科卒業。大学1年次に受けた授業をきっかけに、ほぼ独学で3DCGを学ぶ。自主制作作品『THE SEABED』でKLab Creative Fes'17動画部門グランプリ受賞。MPC モントリオールを経て、現在はFramestoreに在籍
      www.artstation.com/masashivfx321



    • 月刊CGWORLD + digital video vol.254(2019年10月号)
      第1特集:映画『天気の子』
      第2特集:デザインビジュアライゼーションの今
      定価:1,512 円(税込)
      判型:A4ワイド
      総ページ数:144
      発売日:2019年9月10日