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第10回:表紙のレイアウトを改善する

第10回:表紙のレイアウトを改善する

Case05:小見山 沙彩さん

Before
センターに置いたアイテムとその余白に対して、タイトルが大き過ぎでしたね。先の飯島さんと同様にロゴ化する意図は感じられるものの、その強さがかえって息苦しさを募らせている感もあります。「P」が小文字のため、名前との間が広くなってしまったのも気になります。


After
名前の可読性が良くなかったので、タイトルに似合うフォント選びからスタートしました。ちょっと細かったかもしれませんが、ここは趣味もありますのでまぁ適当に。

単純に「P」を大文字にしてみたところ、原案の雰囲気が出なかったので小文字のままにしました。そのぶん名前の上下を挟むケイ線を注意深く配置しましょう。タイトルのフォントサイズを小さくするとともに、ケイ線の左右のはみ出し部分も含めてきっちりセンター揃えにしました。なおかつ左端をタチキリにすることで、アイテムより前方に位置している感を強めるようにしています。

センターに置いたアイテムは、左下に約3ミリずつ移動しました。完全なセンターは避けスマートフォンの画面側をわずかに広くとることでヌケ感が良くなるかな......というおまじない的な操作です。さらに右上のカドに適当な要素を置くことで、外側のフレーム感を強調し、奥行きを意識させるよう配慮しました。これも同じくおまじないのようなものですが、いかがだったでしょうか。

Case06:三井 柚佳さん

Before
まず画面の奥行きを考えましょう。左上から右下へと対角線に配置するのは基本的セオリーではありますが、絵柄がそれを許さない場合があります。今回はまさにそれ。文字はオブジェクトより確実に前方にある......2Dではありますがその意識で配置することが重要です。3Dモデリングはできてもシーン配置は苦手なのではないか......そう思わせてしまうのは損ですね。


After
単純に一番距離のとれる空間に文字を移動しただけです。

結果として左上が寂しくなるのも確かなので、場所を食わないワンポイント要素(マーク的な/イラスト的な)を追加しても良いかもしれません。そこから発展して『わたしがモデリングした自動車です』を超えたアピールを、表紙に盛り込めるよう工夫してみるのはいかがでしょう。大事にしたいのは、閲覧者はもちろん、自分の作品にもサービスするような気持ちだと思います。

Case07:坂見 こずえさん

Before
作品そのものより世界観こそ伝えたい......という気持ちが伝わるアイデアは良かったのですが、中央の円や周囲の枠の方が目立ってしまった印象です。本来の主役であるはずの、名前やタイトルが完全に背景に溶け込んでしまっています。さらにその円が、画面に対して微妙にセンターを外しているのも気になります。ある種の悪目立ちではないかと思います。


After
中面に良いロゴがあったので......これを使わない手はないだろうと思いました。

背景は雰囲気を醸成するのみならず、単なる飾りでもありません。主役となる要素を引き立たせるように意識的に配置することが重要です。元PDFが編集不能だったのでレタッチで文字類を消しています。作業がちと荒いですがこちらも勘弁してください。

レイアウトとしてもっとできることはあると思いますが、ひとまずここまで。デザインコンセプトにまで踏み込んでしまうのは今回の趣旨から外れてしまうので、あくまで参考例として受け取ってもらえれば幸いです。

次回予告

いささか駆け足でしたが、これにて全員分のコメント終了です。次回はポートフォリオの中面です。今回のように全員総まくりは難しいとは思います。またおそらく細かいツッコミになってしまうと思いますが、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。



今回は以上です。次回もぜひお付き合いください。
(第11回の公開は、2018年12月以降を予定しております)

プロフィール

  • 斎藤直樹(グラフィックデザイナー)
    株式会社コンセント

    神奈川県横浜市生まれ。1987年東京造形大学造形学部デザイン科I類卒。広告企画制作会社、イベント企画運営会社を経て、1991年株式会社ヘルベチカ(現コンセント)入社。HUMAN STUDIES(電通総研)、日経クリック、日経パソコン(日経BP社)などの制作に関わる。東洋美術学校ではグラフィックデザインの実習を担当。

Information

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    ポートフォリオアイデア帳

    発売日:2016年2月3日
    著者:中路真紀、尾形美幸
    定価:2,000円+税
    ISBN:978-4-86246-293-0
    総ページ数:128ページ
    サイズ:B5判


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