ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は、ペリカンやフラミンゴの資料を参考に、彫刻作品のような「鳥」を造形していきます。
TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.)
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)
静謐な印象の「鳥」を造形
今回は、少し物静かで落ち着いた印象の作品がつくりたくなり、「鳥」を題材にシックな雰囲気で制作してみました。ペリカンやフラミンゴの資料を見ながら、彫刻風の荒々しい雰囲気を残しつつ造形していきます。
主要な制作アプリケーション
・ZBrush 2021
・KeyShot 8
・Maya 2020
・Substance Painter 2020.2.0
・MARI 4
STEP 01:顔の造形
今回も顔の造形から進めていきます。特に複雑な形状ではないので、スムーズに作成できると思いますが、くちばしと顔のバランスは意識しながら進めていきましょう。
▲【1】顔の造形を進めていきます
▲【2】ディテールを加えながら、顔の雰囲気を出していきます
▲【3】目や頬の位置を意識して、前から見てもちゃんと立体感が出ているようにします
STEP 02:身体の造形
身体の造形を進めていきます。パーツを足していくイメージで、身体→翼の順番で作成していきます。全体的にシンメトリーで作成し、ある程度造形が進んだ段階で崩します。個人的な感覚では、最後にシンメトリーを崩すより、ある程度の段階で崩した方がねらったポーズを付けやすいからです。
▲【1】首から身体へと作成していきます
▲【2】翼を追加
▲【3】足と台座を作成します
STEP 03:ポーズを付けて、全体の造形を進める
足と翼のポーズを付けていきます。両方の翼を広げるのではなく、片方の翼は開ききらない状態にして、画づくりのバランスを調整していきます。足のポーズに関しても、躍動感を出すために曲げてみました。身体や顔はそこまで崩す必要がないように思います。
▲【1】調整段階ではメッシュの粗さを気にせず、大胆に動かしていきましょう
▲【2】翼を調整します
▲【3】どれくらい広げるかを探っていきます。翼にも関節や骨があることを意識しましょう
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STEP 04:全体の造形を仕上げる
まずは粗い造形でディテールを探っていきます。定まってきたら、徐々に細かいニュアンスを足していくのですが、今回のようなシンプルな造形の場合は、全体にディテールを入れすぎてしまうと、どこを見て良いかわからなくなってしまいます。ディテールを入れるところと入れないところをしっかりと意識しましょう。
▲【1】ざっくりとディテールを入れていきます
▲【2】羽根の雰囲気を加えます
▲【3】全体的にディテールはシャープに
▲【4】顔のディテールを詰めます
▲【5】顔や翼の付け根にしっかりとディテールを残していきます
▲【6】横からも確認
▲【7】最後にアルファで細かい質感を追加していきます
▲【8】造形は完成です
▲【9】KeyShotで雰囲気を確認します
STEP 05:レンダリング
ZBrushでの造形が終わったら、MayaでUVの整理を行い、MARIでベーステクスチャを作成します。その後、Substance Painterでテクスチャを調整して、Irayでレンダリングします。テクスチャをMARIのUDIM形式で作成しても、簡単にSubstance Painterに読み込むことができます。ということで、MARIで高解像度のテクスチャを作成し、Substance Painterで微調整するというながれで進めました。また、個人的にはArnoldでレンダリングする方が好きなのですが、今回はIrayで行いました。
▲【1】ZBrushでリダクションしたモデルをUV MasterでUV作成し、MayaでUDIM形式に整理します。コンセプトモデルなので、そこまでデータにシビアにならなくて大丈夫です
▲【2】MARIで写真素材からベーステクスチャを作成していきます
▲【3】Substance Painterでテクスチャを仕上げていきます
▲【4】レンダリングして完成です
完成
今回は、ちょっと物静かな雰囲気の作品にしてみました。やはり動物のモチーフは、シンプルなものでも造形を楽しむ要素が多いですね。
Profile.
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岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp