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お題その30:「とても怖い」

お題その30:「とても怖い」

Sony Pictures Imageworksのアニメーターであり、オンラインスクールAnimationAidの講師も務める若杉 遼氏がTwitter上でお題に沿ったポーズ画を募集する「エイド宿題」。本連載では、その企画で集まった作品をピックアップし、若杉氏がドローオーバーによる添削とそのポイントを解説する。

TEXT_若杉 遼 / Ryo Wakasugi(Sony​ Pictures​ Imageworks
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



今回のお題

こんにちは、海外でCGアニメーターをやっている若杉(@ryowaks)です。今回は、「とても怖い」というテーマでポーズの添削をさせていただきます。

「とても怖い」というお題のポーズでは、2人のキャラクターの「対比」と「コントラスト」を意識してつくると、全体的なバランスが良くなります。また、キャラクターが2人いると、「どこに観客の目線を誘導するか」を考えて構図をつくらなければ、見づらいだけではなく意図が伝わりづらいポーズになってしまいます。特に、2人とも少し特殊なポーズをしているので、その点も含めてさらに見やすいポーズを意識すると良いかなと思い添削しました。

添削前のポーズは、アイデアを含めてとても良くできていました。面白いアイデアだったので、このアイデアをより伝わりやすくするための「簡単なコツ」に焦点を当てて解説していきます。


作品01:「とても怖い」

投稿作品


先ほども触れたとおり、このポーズの場合はキャラクターが2人いるので、見やすさを意識してバランスを取るとさらに良くなると思いました。特に、シルエットやネガティブスペースを上手く使うと、見やすく・わかりやすい構図になるはずです。キャラクターが2人いる時点で画面内の情報が多くなるため、複雑なデザインになりがちなので注意しましょう。

Point 1:ネガティブスペースと構図

「構図をつくる」という観点からネガティブスペースを考えてみます。ネガティブスペースは、「1つのポーズのシルエット」だけで考えるのではなく、「全体の構図」としてポーズを見るときにも使える考え方です。この「すき間(ネガティブスペース)」を有効活用することで、観客に見てほしい部分を明示するといった感覚です。添削前のポーズでは、キャラクター同士の間隔がとても近くすき間がほとんどないので、キャラクターのシルエットが重なり合い、ごちゃごちゃとした「ひとつの塊」のような印象になってしまっています。

こういう場合は、2人のキャラクターのすき間(ネガティブスペース)をもう少し空けてみます。そうすることで、各キャラクターをしっかりと区別して、「パッと見」でのキャラクターの差別化と印象のちがい、対比を表現しやすくなります。

構図のつくり方におけるネガティブスペースの取り方については、例えば、キャラクターを配置するときに頭の上の部分を少し空けておいたり、キャラクターの視線の先の方を少し空けておいたりといった技法もよく使われます。これらも、全ては観客に対して「どの部分に視線を誘導するか」、「どの部分を見てほしいか」に依るものです。


Point 2:ネガティブスペースとシルエット

しっかりと観客の視線を意識して構図がつくれたら、今度は各キャラクターのポーズのシルエットを直してみます。男の子は「腕を前に出したポーズ」をしているのですが、2人のキャラクターの間を空けることで、さらに腕のシルエットを強調したポーズになったと思います。さらにその腕を「矢印」のように使い、観客の視線を男の子から、女の子へと誘導することができるようになりました。

シルエットを綺麗に取るポーズというのは、考え方としては簡単なのでつくろうと思えば簡単につくれます。ただし自然なポーズを維持した上で、しっかりとシルエットを意識したポーズをつくるのは、意外と難しかったりします。今回のように、腕や足を前に出しているポーズの場合は、比較的簡単に「シルエットが綺麗なポーズ」がつくれるので、押さえておきたいポイントです。


Point 3:指のポーズのデザイン

指のポーズはかなり表現力が豊かで、キャラクターの性格や状況、考えていることなど、様々な表現をするときにとても便利です。しかし、表現力が豊かな分、逆に複雑になってしまい良いデザインに収まらず、意図が伝わらないという結果になることも多々あります。女の子の指のポーズはそこまで悪いポーズではないのですが、必要以上に複雑になり過ぎていて、少し見づらいデザインになってしまっているように感じました。

しっかりと意図を伝えなければならないので、シンプルにただ形を単純化すれば良いわけではありません。しかし、特に複雑にする必要がない場合は、指の形をつくるときに「全体的な指の形」のデザインを抽象化してイメージすると良いでしょう。指の形を抽象化するときに使いやすく参考になるデザインがいくつかあるのですが、今回はこのポーズのように、「手を広げたポーズ」で使いやすい考え方を2つ紹介します。


Point 3:指のポーズのデザイン①手袋

手袋の中でも、「ミトン(親指以外の指の部分が1つになっている手袋)」ってありますよね。それぞれの指を別々に考えてしまうと、どうしてもデザインが複雑になり過ぎる傾向があるので、親指以外の指を一体化して考えるというアイデアです。特に、リラックスしているときなど、手と指、全体的な印象をつくりたいときなどに有効です。


Point 3:指のポーズのデザイン②扇

2つ目に参考になるのが「扇」です。形をシンプルにするという点では、手袋と似た考え方です。ただし、扇の場合はそれぞれの指先に「点」があったとして、それぞれの点と点を結んでいった線を綺麗につくるというイメージです。指を扇のそれぞれの棒のようにイメージすることで、指先から見える綺麗なアーチを意識することができ、結果的にシンプルなデザインに落とし込むことができます。


添削前のポーズ


添削ノート


添削後のポーズ

今回はキャラクターが2人ということで、単に意図したポーズをつくれば良い、というわけではなく、「どうすれば見やすくなるか」を意識しなければならなかったので、かなり難易度が高いポーズでした。しかし、元々のアイデアが面白く、個々で見ると各キャラクターのポーズも良くできていたと思います。

「どうすれば見やすくなるか」に関してですが、「見やすさ」を考える際には、逆に見せない部分、つまりネガティブスペースの取り方がカギになるということが今回の解説で理解していただけたら幸いです。ネガティブスペースは、1つのポーズのシルエットの中だけでなく、このように構図を考える際にもとても役に立ちます。アニメーターの仕事は動きをつくるだけではなく、最終的に「フレームの中にどのように収めるか」という「最後の画づくり」まで考えなければなりませんからね。

今回の添削はこんな感じです。最後まで読んでいただきありがとうございました。 最後に、いつも#エイド宿題 に参加してくださってありがとうございます!皆さん、本当に素晴らしいポーズをつくってくださるので、僕も勉強させていただいています。 ぜひまた今後も#エイド宿題に参加してくださると嬉しいです!


「エイド宿題」とは?

「エイド宿題」はTwitterで始めたクリエイターの皆さんへ向けた新しい企画です。オンラインスクールAnimationAidのクラス内で出している「ポーズをつくる」という課題を、Twitterでみんなでやってみようというとってもシンプルな企画です。

●参加方法とやり方

・毎週月曜日にTwitter(@ryowaks)でその週のお題を発表するので、そのお題に沿ったポーズをつくってみましょう。
・CGでつくった、もしくは絵で描いたポーズにハッシュタグ(#エイド宿題)をつけてTwitterに上げましょう。
・ぜひハッシュタグで検索して、他の人がつくったポーズも見てみましょう。

●参考

・エイド宿題とは?
https://ryowaks.com/what-is-aidshukudai/

・エイド宿題 これまでのお題
https://ryowaks.com/category/aidshukudai/

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