誇張表現とカートゥーンブラー表現のアルゴリズムの提案
アニメーション作品には、様々な動きの誇張表現が用いられています。その動きはリアルなそれとは異なる場合もありますが、動きの魅力を際立たせ、見る人に動きをわかりやすく伝える効果があります。1995年には、入力した原画を基に、誇張表現を適用した動画を自動生成するモーションフィルタという手法[15]を提案しました。2000年代以降は、モーションキャプチャのデータからキーフレームを抽出し、その動きを誇張する手法[16][17]も提案しました。加えて、既存のアニメーション作品における動きを分析・体系化し、誇張表現のアルゴリズムとして提案しました。誇張表現は国外でも研究されるようになり、2006年にはJue Wang氏(ワシントン大学)らがThe Cartoon Animation Filterを発表しました。
[15]佐藤修一, 近藤邦雄, 佐藤 尚, 島田 静雄, 金子 満, "アニメーション制作におけるキャラクタの動作強調手法 Motion Filter", テレビジョン学会誌, Vol. 49,No. 10, pp. 1280-1287, 1995
[16]Yoshiyuki Koie, Toshihiro Konma, Kunio Kondo, "Motion Emphasis Filter for Making Mental Motion of 3D Characters", ACM SIGGRAPH2004 Sketches, 2004.8
[17]Kei Tateno, Kunio Kondo, Toshihiro Konma "Motion Stylization using a Timing Control Method, SIGGRAPH2006 Posters, 2006
▲【A】モーションキャプチャを基にしたアニメーション/【B】アニメーション[A]に誇張表現のアルゴリズムを適用した結果/【C】モーションキャプチャを基にしたアニメーション/【D】アニメーション[C]に誇張表現とカートゥーンブラー表現のアルゴリズムを適用した結果
セル画アニメや漫画では、動きの軌跡やスピードの変化を表現する際に、様々なブラー表現が用いられます。2003年には、前述の誇張表現と同様に、既存作品におけるブラー表現も分析・体系化し、カートゥーンブラー表現のアルゴリズム[18]として提案しました。その後も研究を続けていく中で[19]、カートゥーンブラー、アニメブラーといった用語が世間にも浸透していきました。2016年には、Unityを利用してリアルタイムにブラー表現を生成する手法も提案しました。
[18]Yuya Kawagishi, Kazuhide Hatsuyama, Kunio Kondo, "Cartoon Blur: Non-Photorealistic Motion Blur", Proceedings of Computer Graphics International 2003, pp. 276-281, 2003.6
[19]Shoichi Obayashi, Kunio Kondo, Toshihiro Konma, Kenichi Iwamoto, "Non-Photorealistic Motion Blur for 3D Animation" ACM SIGGRAPH2005 Sketches, 2005.8
▲入力した原画データに、カートゥーンブラー表現のアルゴリズムを適用した結果
キャラクターの考案とデザインそれらの効率的な運用手法の提案
2007年から開始したコンテンツ制作支援技術の研究は、シナリオライティング、キャラクターメイキング、演出からなる3分野に分けられます。東京工科大学 大学院 メディアサイエンス専攻では、この3分野について研究した博士を3名輩出できました。
以降では、キャラクターメイキングについて特筆します。キャラクターメイキングとは、性格が設定されており、ストーリーを伝えることができるキャラクターの考案とデザイン、およびそれらを効率的に運用する手法の総称です。本研究は、プロデューサーとデザイナーのコミュニケーションギャップを防ぎ、両者間でのデザイン意図の伝達を支援し、円滑なキャラクターメイキングを促進することを目的としています。
これまでに、DREAMというキャラクターメイキングプロセス[20]、キャラクターメイキングのためのリテラル資料制作手法、キャラクター情報を集めるデジタルスクラップブック、キャラクターのデザイン原案をつくるコラージュシステム、顔や体形などのデザイン原案制作手法、シルエットを利用したキャラクターデザイン、3Dパーツを利用したデザインシミュレーションシステム[21]、配色シミュレーションシステム[22]などを提案してきました。
[20]Takahiro Tsuchida, Ryuta Motegi, Naoki Okamoto, Koji Mikami, Kunio Kondo Mitsuru Kaneko, "Character Development Support Tool for DREAM Process", International Journal of ADADA, Vol. 16, pp. 4-12, 2013.4
[21]Motegi Ryuta, Tsuji Shota, Kanematsu Yoshihisa, Mikami Koji, Kondo Kunio, "Robot Character Design Simulation System Using 3D Parts Models", International journal of ADADA, Vol. 21, No. 2, pp. 81-86, 2017.11
[22]Ryuta Motegi, Yoshihisa Kanematsu, Naoya Tsuruta, Koji Mikami, Kunio Kondo, "Color Scheme Simulation for the Design of Character Groups", Journal for Geometry and Graphics, Vol. 21, No. 2, pp. 253-262, 2017.12
例えばロボットのキャラクターメイキングの研究では、3ds Max上でパーツの組み替えや変形のシミュレーションができるシステムを提案しました。本システムを用いると、ロボット形状のデザイン原案を10分程度で制作できます。本研究で提案したデザイン支援プロセスは様々なコンテンツ制作で活用できるため、制作の高品質化、効率化に貢献し得ると期待しています。
▲ロボットのキャラクターメイキングの研究。【A】既存のセル画アニメ作品に登場するロボットを構成するパーツのパターン化を行い、75種類に分類した表/【B】表[A]で分類した肩部パーツの3Dモデルの一部。ここでは3種類のパーツを4方向から表示した結果を示しています/【C】同じく、足部パーツの3Dモデルの一部
▲本システムを用いて、3ds Max上でパーツの組み換えや変形のシミュレーションを行なっています
info.
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