画にプラス要素を。
画には法則があります。

それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。

そして願わくば貴方の人生に+画を。
今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。

【ダイジェスト】vol.015:雲 / 「隠消」で想像力を引き出す

【+画 ONLINE】vol.015:雲 / 「隠消」で想像力を引き出す

たまには「常識」について考えてみる

2月前後は「1年で最も寒い」とされている季節です。
カレンダーに雪のマークが描かれている12月や1月の方が寒いように思われがちですが、これが「メディアイメージと現実のちがい」なのでしょうか。しかしこの「寒い」という感覚は、もしかすると地域によって異なるのかもしれない、と上京してきた当時に思いました。

東京には様々な地域から人が集まるので、「常識」について考えさせられる場面が多々ありました。考えてみると、夏休みも冬休みも地域によって微妙にちがいがあるし、季節の感じ方はそれぞれなのかもしれませんね。

さて2月といえば、節分やバレンタインデーなどがあるため「食べ物の月」のイメージもありますが、ハートが温まるバレンタインデーなどはあながち寒い季節にぴったりなのかも。

そういえば、毎年この時期になると小学校の先生が「バレンタインデーはお菓子メーカーの戦略なので、皆さん買わないように」と全校放送で夢のないことを話していたなということを思い出しました。まあ私はチョコレートをもらえなかったので、お菓子メーカーさんに貢献していませんが。
こういう思い出はなぜか記憶に残っているんですよね。
幼少といえど、子供と接する態度や言葉遣いは本当に気を付けなければいけません。

幼少の話のついでですが、小さい子供と接する機会があったら、少しでも画を描かせてあげておくと、将来ちょっとした自信につながるかもしれません。

画は練習すればするほど上手くなります。
幼少期に少しでもやっておくと「画がちょっと描ける」という自信が付くので、
将来、画を描くことが楽しくなるかもしれません。
いきなり「画創」をやる必要はありませんが(笑)。

Design

モデルなどをルックで見せるとき、影なども見せたいのでモデルの下に床を置いたりします。しかし、奥に切れ目や地平線が見えるとそちらに視線が奪われてしまい、せっかくの画の魅力が半減してしまいます。

こういったところは、少々面倒でもしっかりと補強しておくと印象がまったく変わります。

人間は想像力の動物なので、隠してあるところは自然と想像してしまいます。
この円柱の向こうには、きっとティーポットのつながりが……

しかし実際には、このような破壊的な画になっているかもしれません。
ということで、この性質を逆手にとってみましょう。
失敗したところや間違ったところを隠しておけば、見る側が自ずと補正してくれます。

例えば、このように中途半場に作って挫折したモデルも……

このように切って使えば、反対側もちゃんと作られているように見えます。
これを応用するといろいろできるわけです。

何もない1枚画があって、

このような雲の素材がある場合、

隠して混ぜると想像で全部雲に見える、といった効果を狙うこともできます。

「創ったものは全部見せたい!」というのがクリエイターの本音ですが、「隠すこと」によってクオリティが上がることもあります。もっと言うと「見せないこと」。画創の法則「仕上の法則:隠消」です。

XRには「隠消現実感」という用語がありますが、DR(Diminished Reality)と言われる「現実世界からモノを消す技術」ですね。

例えば普段のスナップショットやインスタなど、撮影した後に「あ、ゴミが写ってた」とか「この看板がじゃまだな」とか。「バレ消し」というのもありますが、撮った後に施す技術ですね。このあたりも「隠消」の1つと言えます。

ちなみに「仕上げの法則」のコンセプトは、「もうあと一歩先に行く」。
作品を制作した後のクオリティアップポイントの重要性を実感するはずです。これをするかしないかで、より良い作品になるか/ならないかの決め手の1つとなります。

この鶏の画はかなり昔の作品です。当時はまだ「ファー表現」の技術がなく、なんとなく生やしてみましたが……、見るに耐えないですね。

とはいえ「ファーの感じ」は残したかったので、周囲を極端に暗くして一部見えるように。そして、頭部の皮膚に視線が行くようにしています。

こちらもレンダリングしてみたところ、背景が思ったより写ってしまっているにも関わらず、床のオブジェクトが足りませんでした(汗)。

そこで被写界深度で手前に焦点を当て、後ろをボカすことで曖昧にしています。

こちらもレンダリングしてから気付きましたが、明らかに真ん中に隙間があり失敗。

もう、こういうのは時間がないときには切り貼り。
なかったことにしてしまいましょう。

これは「消す技術」の応用で、どちらかと言えば「画角の法則」に近いトリミングの技術です。せっかく創ったものを切り取るのは非常に忍びないですけどね。

このようにざっと全体を見渡せる画は分かりやすいですが、説明的で図鑑のような印象があります。

例えばこのように一部分だけ切り取ることで、グッとメッセージ性や魅力をアップすることができます。

大切なのは「良い画にするために、あらゆる手段を考えてみよう」ということです。
特に仕事ではなく、自主制作ポートフォリオなどの場合はルールなど一切ありません。
良い画になるのであれば、切ろうが隠そうが本人の自由です。

さて、今回のお題(?)はこの地図です。これをどのように隠していきましょうか。

クオリティアップと言ってもいくつかあります。1つは、仕事の場合はアートディレクターなどが見本を示し、ひたすらそれに近づけていく方法です。もう1つは、「お任せ」などの場合、自分の思うがままに画をパワーアップさせていき、後から調整してもらうという方法です。圧倒的に後者の方が楽しいですよね。
後者の場合は、「これはちょっとやりすぎ!」と言われることが誉め言葉だったりします。ディレクターの心の広さも大切な要素ですね。

へい!
途中経過はムービーで。

Composite

今回は白っぽいものが多かったので、レンダリングは暗めに設定しています。白飛びはあとで調整することに。「あれ、茶色?」といった部分はこれからカラコレしていきます。

そもそもなぜ茶色かというと「深みのある色を下に敷いておきたかった」といった狙いもあります。よく、白い画を描くときに下にちがう色の下地を塗っておいたりしますよね。そんな感じです。

いくつかレイヤーを足して、細々としたところをくっきりとさせていきます。

そして、ドーン!

カラコレによっては、このように煙っぽい加工も可能です。というわけで「原形が全然残ってないじゃん……」的な隠し方でしたが、いかがでしたでしょうか。

ところで、「五感を表す表現」についてですが、人間は五感で感じるので、冬であれば寒かったり目の前に雪が見えたり、風の音があったり。これらを表現するとなると、文章であれば「冬の○○」とか「極寒の○○」とか。直接的な表現で感じますね。
音楽であれば「ひゅ〜」とか木枯らしの音とかでしょうか。画の場合は、もうストレートに雪とか氷とか。

これらは人間の経験から生じているものなので、宇宙人からすると「何言ってるの?」となって通じない可能性もあります。表現と五感は切っても切れない「地球の常識」なんですね。つまり「地球を表現すること」がアートにつながるということなんです。



CGにはいつも夢があります。

全ての望む方が素敵なCGに触れられるよう、オンラインで活動の幅を広げております。オンラインセミナーやオンライン教材を用意しているほか、講演なども承っておりますのでお気軽にご連絡ください。

本来の画をつくる楽しさをいつまでも忘れずに。

【チュートリアル収録内容】

<画創の法則>
仕上の法則:隠消

<実際の制作過程メイキング>
モデリングからコンポジットまで
使用ソフト:3ds Max、After Effects
長年、セミナーや授業でお話してきた生な感じをぜひ体感いただけたら嬉しいです。ムービーの解説ではさらに詳しく内容をご説明しております。

【ダイジェスト】vol.015:雲 / 「隠消」で想像力を引き出す
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online.dhw.co.jp/course/3dcg

Profile

早野海兵/Kaihei Hayano

画龍 / Garyu
ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
#3dsMax, #adobe aftereffects, #zbrush, #substancepainter

<代表作>
ゲーム『鬼武者』シリーズ
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
連載「+画」、「画龍点睛」

早野海兵公式サイト:kaihei.net
画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
Twitter:@Kai_ryu_Kai