こんにちは。アニメーションアーティストの南家 真紀子です。本連載では、CG業界で働くファーザー&マザーへのインタビューを通して、いまどき家族の課題と解決策を探っていきます。第5回に登場いただくのは、スクウェア・エニックス白石 渉さんです。この連載がスタートしたとき、白石さんが関心をもってツイートしてくださったことに今も感謝しています。「ワーキングファーザーはここにいます(ぉ」とのお言葉に、いつか取材させていただきたいと思っていました。今回も前後篇に分けてお届けします。ぜひお付き合いください。

第5回:子育て後半戦(後篇)はこちらでご覧いただけます。

※本記事は、取材時(2021年12月)に伺った情報を基に執筆しています。

記事の目次

    今回ご登場いただく、ワーキングファーザー

    <プロフィール>
    白石渉(スクウェア・エニックス/アニメーター)
    山口県出身。専門学校在学中の1999年より、都内のCGプロダクションにてキャリアをスタート。卒業後、アニメ業界でCGデザイナーとして数々の作品に携わり、2006年よりスクウェア・エニックスにてプリレンダーのアニメーターとしてゲーム開発に従事。2017年以降は主にカットシーンのアニメーションを担当。近年はレイアウトや演出にも携わる。家庭内では家族の食事を担当、結婚してから17年間、料理を続けている!

    [代表作品]『KINGDOM HEARTS III』Lead Cutscene Animator、『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』Cinematic Animation Supervisor、『FINAL FANTASY XIV: A Realm Reborn』Cinematic Animation Supervisor

    <家族構成>
    妻・子ども(中学1年生)、共働き
    妻は在宅勤務ではなく、職場に通勤しています。

    <最近のお子さんの様子>
    中学校への進学後の生活にだいぶ慣れてきましたが、緊急事態宣言が解除されて以降、生徒会や部活など、今まで控えられていた活動が急に忙しくなって少しお疲れモードです。ストレス解消にゲームやスマホで友達と交流したりしています。

    トピック1:三者面談

    南家 真紀子(以下、南家):白石さんは子育て歴がとても長いので、要点を絞ってお話を伺いたいと思います。白石さんの娘さんは、私の息子と同じ中学1年生。本当は一晩中子育てについてお話したいところですが……(笑)。まずマインドマップの中からトピックを選んで、白石さんの子育ての「旬」をお聞きしたいです。

    取材のアイスブレイクを兼ねて白石さんに取り組んでいただいた「Good & New」のワーク。直近の24時間に起きた「良いこと(Good)」と「新しいこと(New)」を、1分の制限時間内に書き出していただきました。「Good & New」だけにフォーカスするので、ポジティブ思考になれますし、あまり意識していなかった小さくて身近な「Good & New」を発見できます。自分の意識がどこに向いているかの可視化と客観視にもつながる、面白いワークです。

    南家:白石さんの「Good & New」のなかから、一番印象に残っている出来事をお話いただけますか?

    白石 渉さん(以下、白石):「三者面談」ですね。娘は生徒会に入っていて、その活動などの影響で帰宅時間は午後6時くらいです。けっこう忙しくしていることに対する先生からの評価を聞けました。先生と娘の間で「大変そうに見えるけど大丈夫?」「大変だけど、やれないことはないです」といった会話があって、娘の状況を理解する良い機会になりました。

    南家:私も明日息子の三者面談に行ってきます。学期末の三者面談は、思春期の子どもの状況を観察する良い機会ですね。一方で、「給食」のトピックもあるのが面白いです。

    白石:中学校に入ってから、娘の給食に対しての評価がすごく低いんですよ。「給食どう?」と聞くと「いやあ……あんまりかな……」という答えが返ってくる。小学校では保護者が給食を試食する機会がありましたが、中学校ではその機会がなく、本当のところはわからない。様々な国籍の人が住んでいる地域ということもあり、食文化の観点から国際交流を深めようということで、各国の郷土料理が給食として出されます。それ自体はとても素晴らしい取り組みですが、実際食べている娘は「美味しくない」と言うわけです。「わかった。それは先生に言った方が良いよ!」ということで、三者面談で伝えました。そしたら、先生も美味しくないと思っていることがわかりました。

    南家:えー!(笑)

    白石:「実はわれわれ職員も、食べ終わった後の職員室で、今日の給食はちょっとどうなのか……っていう話をすることがあります」と先生が語ったことでハッキリしましたよ。大人たちがそう思うんだから、この給食には改善すべき課題があるって。娘の意見に耳を傾けた方が良いとわかったわけです。だから「給食を改善すべきじゃないですか」ということもガッツリお話してきました。三者面談では主に成績の話をするべきかもしれませんが、「給食が美味しくない」って、学校生活の中では結構クリティカルな課題ですよね。なので、そこがはっきりわかったことが私の「Good & New」です! いやー本当に話せて良かった。

    南家:最近の白石さんの子育ての様子がよくわかるエピソードですね!

    トピック2:受験クエスト

    南家:続いて、もう少し深掘りしたお話を聞くために、「マインドマップ」の中からトピックを選びましょう。どのトピックも気になりますが、まずは子育てエリアにフォーカスしてお話を伺いたいです。

    白石さんに取り組んでいただいた「マインドマップ」ワーク。テーマは「白石さんのワーク&ファミリー」。このようにひとつのテーマを決め、5分の制限時間内で思いつくトピックを思いつくままに書き出していきます。「まとめよう」「整理しよう」という意識は不要。美しいマップをつくる必要はありません。思いついたトピックから連想して別のトピックを書き出し、連想を広げ、枝を増やしていきます。結果的に、そこにはオリジナリティ溢れるツリー構造が生まれます。このワークには、混沌としていたり、ぼんやりしていたりする目の前の状況や自分の考えを見える化する効果があります。

    自分だけでなくパートナーとマインドマップをつくり内容をシェアすると、相手の思考を理解しやすくなります。子育ての中で、産後ケア事業に取り組んでいるマドレボニータというNPO法人からマインドマップのつくり方を教わりました。出産後の女性には、フィジカルなケアに加え、混沌とした思考を言語化するコミュニケーションスキルも必要だと教わり、目からウロコが落ちる思いでした。

    白石:現在娘は中学生ですから、次の大きなフェーズは「高校進学」です。その後の「大学、専門学校などへの進学」「就職」も視野に入れ、娘のこの先をイメージしていく時期にきています。その過程で「受験」や「スキルアップ」についても考えていく必要があります。「ワーキングペアレンツ」というと、出産前後や子どもが小さい頃をイメージする人が多いかもしれませんが、その次のフェーズも大事だと思うんですよ。私たちが親になったのは13年前ですから、時が経ちました。だから、子育てに加えて、親の介護に直面したりもするんですよね。

    南家:その通りですね。手取り足取り毎日の世話をして……という「子育て前半戦」は終わりました。今は、子どもの独り立ちに向けて、背中を押しつつ伴走する「子育て後半戦」に突入しています。娘さんの高校進学について、どのように考えていますか?

    白石:娘の進学を考える上で、東京都の教育委員会の方針が興味深いんですよ。いわゆる「育成ゲーム」のステータスの振り分けだと「得意分野を強化すれば良いじゃん」って思いがちですよね。私たちの学生時代を思い出しても、数学だけよくできるとか、理科が得意とか、歴史が好きで高得点がとれるとか、そういう子たちがいましたよね。でも、それではダメらしいんです。中学校に入学したときに、担任の先生から「体育、音楽、美術、技術家庭も含めて、全部満遍なくやってください」と言われました。そして高校進学に際しては、内申点(*)が重要視されるそうです。

    *内申点:内申書(中学校の教職員が生徒の学習や学校生活について記載し、生徒が受験する高校に提出する文書)に記載された評価を基に算出された数値のこと。9教科の成績のほか、提出物や生活態度、課外活動にいたるまでの総合的な評価が点数として算出されます。

    南家:この方針、いろいろ興味深いですよね。

    白石:ほんとですよね。入学直後、新入生の保護者が体育館に集められ、各教科の先生から内申点の取り方を説明されました。例えば、「体育では、実技とペーパーテストを重視します」「技術家庭は、提出物の質で評価します」といった感じです。「内申点の取り方はお伝えしましたから、点数を落とさないようにがんばってください」という意図で、何が評価に直結するのか種明かしをしたんです。ようはゲームの開始前に、“攻略ポイント” を教えてくれたわけですね。

    さらに、娘が通っている学習塾の先生から「内申点」や「偏差値」がどういうしくみで成り立っているのか、そのメカニズムを教えてもらいました。「数学の成績だけ良くて、体育はダメといったケースは推薦受験の際に影響が出る」、「東京都内と他県の高校では、評価基準がちがう」といった話も聞けました。テストの点数が良くても、忘れ物が多い、提出物を出さないといった理由で通知表の数字を下げられ、内申点も低くなってしまうケースがかなりあるそうです。

    入学できる高校を内申点によって分類したリストもいただきました。「この高校に入りたいなら、内申点はこれくらい必要」といったことが、そのリストを見ればわかるわけです。つまり、将来どんな仕事をやりたいかを中学生の段階で具体的にイメージして、行きたい高校を見定めて、必要な内申点を獲得しておく必要があるということです。一連の説明を聞いているうちに「これはゲームの攻略法と一緒じゃん」って思いました。メカニズムがわかったら、後はこの「受験クエスト」を攻略していくだけですから。

    トピック3:娘の自立を願う

    南家:受験クエストの攻略は、何から始めましたか?

    白石:まずは将来のビジョンを明確にする必要があるんですが、娘に「大人になったら何がしたい?」って聞いてみたら「勉強はそんなに好きじゃないし、何がしたいって言われても……。アニメや動画を見て、ゲームをして、家で1日中過ごしていたいなー」と言うんです。「おお、これは良くないぞ」と思いましたね(笑)。その後、娘としっかり話をして「デザインやアート系に興味がある」ということが聞けたので、高校やその先は芸術・美術系を検討しており、2021年の5月からは美術予備校に通わせています。今は週1回の半日コースですが、2年生からは全日コースに通い、受験対策をしていく予定です。芸術・美術系の高校は数が少ないので、倍率が高くなるんです。受験ではデッサン、着彩、平面構成などの実技試験も出されるので、それらのスキルアップも必須となります。

    南家:マインドマップに書かれていた「受験」や「スキルアップ」という言葉の重さがわかりました。受験クエストの攻略に向けて、既に動き出しているんですね。娘さんの様子はいかがですか?

    白石:三者面談のときに、娘の各テストの点数を平均点と比較したグラフをいただきました。それを娘に見せながら「希望の高校に入学するためには、グラフのこの辺まで点数を上げないとね」といった話をしたところ、「なんでそんなに現実的なことばっかり言うの? お父さんとそんな話をしたいんじゃない」って言うんです。「いやいや待て待て、今のうちに考えて行動しておかないと、絶対苦労するよ!」と思うんですけどね。実際のところ、娘とはそんな感じです(笑)。

    私としては、娘1人の力でお金を稼いで、自立した生活ができる状態になってほしいだけで、ものすごく良い学校に行ってほしいわけではないんです。とはいえ昨今の日本では、自分1人で生活するだけでも相当大変です。若い世代ほど大変なんですよ。私は仕事を始めて20年以上経っていますが、CG業界に限って見ても、20年前とは様子がまったくちがうと感じています。今後、どんなテクノロジーが出現し、どんなスキルが必要とされるかは予測しきれないからこそ、まずは基礎的なスキルを身に付けて、先々の受験や就職に備えてほしいとねばり強く伝えています。

    南家:娘さん的には、まだピンと来ない心境なんでしょうね。でも白石さんのお気持ちはよくわかります。

    白石:もう少し娘が理解できるようになったら、給料、税金、生活費など、経済に関する知識もしっかり教えるつもりです。これらは生きていくために必要な知識ですが、学校だけで学べるとは思えないので、親が教えなければいけません。私が子どもの頃、親がどれだけ稼いで、どれだけ使っていたか、学ぶ機会なんて全然なかったんですよね。でも、自分の家庭のお金のながれを学んでおけば、いざ独立して生活するとなったときに、必ず役立つと思うんです。家計を見て、どんな状態なのか理解したり、判断したりする感覚を養ってほしいと思っています。本人は嫌がると思いますけどね……(笑)。

    南家:家計の学習は、何歳頃から始めることを目標にしていますか?

    白石:アルバイトにも興味をもっているので、中学3年生までには教えたいですね。アルバイトを始める前に、家計を例にお金の動きやしくみについて学んでおいた方が良いと思います。アルバイトをすれば礼儀作法も身に付くでしょうし、社会経験の第一歩として、良い機会だとも思います。

    南家:娘さんの独り立ちという目標に向かって、具体的な手立てを検討されていますね。ほかにビジョンはありますか?

    白石:近年のCG業界を見渡すと、人材が枯渇している印象ですよね。一方で、制作されるコンテンツの量はすごく増えています。この先、ゲームや映像、XRなどの様々な分野で、デザインやアート系の人材の需要が高まると思うんですよ。ですから娘には、デザインやアート系の力を培ってもらって、CG業界にきてほしいと思っています。娘が仕事を得るという点でも、CG業界が新しい人材を獲得するという点でも、メリットがあるんじゃないでしょうか。

    南家:求められている人材に育てる、ということですね。

    白石:そうです。例えば私の知り合いの映像プロデューサーは、お子さんに習字を学ばせているそうです。「タイトル用の字をデザインできる人は希少だから、今のうちから学んでおいてもらって、いずれ仕事を依頼しようと思ってるんだよね」と語っていました。そんなこと考えるなんて、面白いですよね(笑)。子どもが親と同じ業界に進むというのは、CG業界ではあまり聞かない印象ですが、今後はそういうケースが増えるんじゃないかなと思っています。

    南家:すでに親子でCGWORLDに掲載された事例(中村基典氏と、Kou Nakamura氏の事例があるそうですよ。現在中学1年生の世代は、あと5年ほどで社会に出てくる可能性がありますよね。かなり近い未来です。

    トピック4:デジタルとアナログ

    南家:娘さんは、3DCGソフトやデジタルツールに興味をもっていますか?

    白石:3DCGソフトはまだ使っていませんが、iPadとApple Pencilで、イラスト制作アプリのProcreateを使って絵を描いています。「CLIP STUDIO PAINTを使えるようになった方が、将来の仕事に活かせるんじゃない?」と娘に勧めていますが、娘は「そんなことより、容量が足りないからiPad Proを買って」って答えるんですよ。「インストールしているゲームを消せば良いと思うんだけど……」と言うと「それは無理」と即答されました(笑)。

    南家:反抗期でしょうか?(笑)

    白石:反抗期という感じではないですが、だいぶ考え方が大人になりましたね。娘には専用のiPadをもたせているので、わからないことがあれば、都度、自分で検索しています。おかげで、大人同士のような感覚で娘と会話できるようになってきました。ニュースもよく見ていて、世界情勢に関する知識も蓄えています。東京オリンピックの時期には、TVやネットで知った選手のバックグラウンドについて積極的に調べていました。もちろん好きなゲームやアニメの情報もせっせと調べています(笑)。

    デジタルデバイスを娘に渡すことに関して、我が家はわりと甘いです。「iPadもiPhoneもどうぞお好きに!」というスタンスなので、与えられたものを使って、自分で情報を取捨選択している様子です。

    南家:デバイスを使用する上での親子間のルールはありますか?

    白石:世間一般では「使用時間を制限した方が良い」という意見が主流なのは承知の上で、我が家では「使用時間は自分で判断してね」と伝えています。その結果、テストの点数がガクンと下がったこともありました。そのときに「これじゃダメだよね」という現実を本人が体感していました。そういう体験を通して学ぶことが大切だと思っています。大人だって、スマホをずっと触っちゃう、ネットをずっと見ちゃうといったことはあって、コントロールが難しいですよね。だからこそ、自分自身で警鐘に気付くようになってほしいんです。その願いがあるから、我が家ではあえて娘自身に判断させています。これは妻も同意見で「縛りすぎると、後で必ず反動が来るよね。あれもダメ、これもダメと厳しく縛る育児は止めよう」という話を、娘が小さい頃からしてきました。

    南家:ご自身が小さい頃はどうでしたか?

    白石:昭和の時代でしたから、それなりに制限はありましたね。例えば「ゲームやアニメに熱中したら、勉強が疎かになる」という考え方の大人が多かったです。でも、そんな意見に屈せずゲームをして、アニメを見続けた結果、私の場合は今の仕事につながっています。だからこそ娘の場合も、興味があるんだったら、ゲームでもアニメでも納得いくまで吸収して、CG業界にきたら良いと思っているんです。

    南家:美術予備校で学ぶアナログの基礎的なスキルについてはどう思いますか?

    白石:娘が学んでいる内容は興味深いですよ。例えば、デッサンでは最初にモチーフの配置を決めるそうです。モチーフのどの部分を、どんな構図で表現するかということから決めていくんです。「いいじゃん! そうだよ、それが大事なんだよ!」って思いますね。一方で、モチーフが既に置かれていて、どの位置から描くかを決める場合もあるそうです。「ほかの受講生に良い席を取られたから、バランスをとるのが難しかったんだよねー」と言っていたこともありました。そういうのも含めて、良い経験をしていると思います。

    南家:私も美術大学の受験時代にそういうトレーニングを山ほどやってきたので、娘さんの状況がよくわかります。基礎的なスキルの習得は本当に大切です。デジタルツールを使う上でも、構図を決めるスキルや、対象のどんな要素を抽出して、どう表現するかを決めるスキルは確実に必要です。今学んでいることは、必ず娘さんの力になると思います!

    白石:私自身はデジタルツールからスタートしたので、仕事を始めた当初は美術の基礎的な知識がなかったんですよ。だからこそ、娘には先にそれを身に付けてもらった方が、近道になるんじゃないかなと思っています。

    南家:デジタルとアナログ、両方のスキルや知識があると強いですよね。

    白石:美術予備校に半年間通う中で、描くことに対する娘の感覚がだいぶ変わってきていると感じます。後は、集中力が持続するかどうかが課題です。6時間集中して描き続けるって、大変じゃないですか。それに娘が耐えられるか気になっています。来年、全日コースに通ってみてどうなるか、引き続き見守っていこうと思います。

    南家:娘さん自身の興味や関心の強さ次第でしょうか?

    白石:私は闘争心次第だと思うんですよ。例えば、同じ美術予備校に上手な人がいて「あの人には負けたくない。あの人のようになりたい、真似しよう」といった気持ちがあれば、切磋琢磨しながら伸びていく気がするんです。今のところ、娘はそういう気持ちがとても薄くて「人と争いたくない」と言うんです。でもですよ、娘が気付いていないだけで、友人が梯子を外してくるかもしれないじゃないですか。裏切りとか嫉妬とかってあるじゃないですか。親としては心配しちゃいますよ。でも「そういうケースもあるから、注意しようね」なんて話を娘にすると、また嫌がられるんですよね。「なんで現実的なことしか言わないの!」って(笑)。

    南家:難しいですよね。闘争心や競争心みたいなものって、どうやって生まれるんでしょう。

    白石:自分の学生時代は、テストの点数で順位が付いたりすると、多少なりと競争心が生まれたと思うんです。私は自分の順位が気になったし、友達がどうだったのかも気になりましたね。でも、今ってテストの順位を公表しないんですよ。娘の中学校は「順位を知りたい人には個別に伝えるので、お声がけください」というシステムで、順位をあからさまに公表しません。優劣がはっきり見えないしくみになっているんです。周りの友人の点数がどうなのか、娘はまったく意識していないらしいです。美術予備校に関しても「ほかの子たちはどんな感じ?」と聞くと、「上手い人もいるけど、自分より上の学年だから、上手くて当然だよ」という感じで、一歩引いて見ている感じです。とはいえ、この業界に進むなら、どうしても他者と比べられますよね。そこで、娘の心が負けないで、前向きにがんばれる気持ちになれたら良いんだけどな……と案じています。

    南家:この先、競争心が刺激されたり、挫折を味わったりすることもあるかもしれません。そのときに、冷静に踏ん張る力が身に付いていくと良いですね。

    白石:そうなんです。その力が、最初にお話しした「娘1人の力でお金を稼いで、自立した生活ができる」という部分につながるんです。私としては、そこを重視して子育てに取り組みたいと思っています。

    南家:応援しています!


    前篇は以上です。第5回:子育て後半戦(後篇)はこちらでご覧いただけます。

    プロフィール

    南家 真紀子

    アニメーションアーティスト

    アニメーションに関わるいろいろな仕事をしているフリーランスのアーティストで、3人の息子をもつ親でもあります。
    〈仕事内容〉企画/デザイン/アート/絵コンテ/ディレクション/手描きアニメーション。アニメーションとデザインに関わるいろいろ。
    makiko-nanke.mystrikingly.com

    あなたの仕事&育児経験を聞かせてください。インタビュー希望者募集中!

    連載「いまどきCG業界のワーク&ファミリー」では、仕事と育児の両立に取り組む、アーティスト、エンジニア、制作管理、経営者などの経験談を募集中です。 仕事と育児の両立を目指す上での試行錯誤や、それにともなうポジティブな側面とネガティブな側面について。お話をしてみたい方は、CGWORLD編集部までご連絡ください(下記のアドレス宛にメール、またはCGWORLD.jpのSNS宛にご連絡ください)。ワーキングファーザーとワーキングマザー、いずれのご応募も歓迎します!(CGWORLD編集部)

    e-mail:cgw@cgworld.jp
    Twitter:@CGWjp
    Facebook:@cgworldjp

    TEXT_南家 真紀子 / Makiko Nanke(makiko-nanke.mystrikingly.com
    EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)
    PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota