画にプラス要素を。

画には法則があります。

それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。

そして願わくば貴方の人生に+画を。

今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。

記事の目次
    【ダイジェスト】vol.019:Dragontree /「自然観察」からヒントを見出す
    【+画 ONLINE】vol.019:Dragontree /「自然観察」からヒントを見出す

    「ちょっとしたこと」で人生をしあわせにする

    「どんなものを創れば良いのか?」
    実は、いただく質問の中で最も多い質問です。

    私がデザインするもののほとんどは「身の回りのもの」からヒントを得ています。かと言って、絶句するほど特殊な環境で生活しているわけではなく、ごく一般的な生活だと思います。

    もし師がいるならば、それは山、そして川、海、空、また動物。
    ……これ、何のセリフでしたっけ?(笑)

    自然は、地球は私たちにはるかに多くの恵みを与えてくれます。
    それは生きていくための物質だけではなく、生活の、そしてデザインのヒントになるようなこともあるのです。

    こんなに素晴らしい地球に生きているのですから、たまにはゆっくり自然に身をゆだねてみてはいかがでしょうか。きっと平和な世界が待っているはずです。

    「画創の法則」は、CGで、世界で一番になるための技術ではありません。CGのみならず、私たちの生活は「ちょっとしたこと」で幸福にすることができるんですよね。花を飾ってみたり、部屋のレイアウトを変えてみたり、髪型をイメージチェンジしたり……。生活そしてこれからの人生の全てに潤いを与えることができる「人類の知恵」です。

    毎年、この時期は世の中を考え、龍にちなんだ縁起物を創作しています。
    昨年は「龍珠」でした。

    そして以前作成した「龍扇」は非常にご利益があり、とても暑い日に願いを込めて作ったところ、翌日から涼しくなりました。考えてみると「画」というものはコミュニケーションツールの元祖であり、これが人ならざるものとつながっていても何らおかしくはないですね。言葉がわからなくても、画であれば通じることがあります。

    龍木を求めて〜 画創の法則「観察の法則」「自然観察」

    今回は自然の力を借りて、画創の法則「観察」「自然観察」。

    以前、「観察眼」についてお話したことがありました。「観察眼」をネットで調べてみると心理学をはじめ何やらすごいものが出てきますが、そっちの意味ではなく「絵心(えごころ)」としての観察ですね。

    画創の法則では観察することに対しても注視しています。これは創作活動の考え方になりますが、そもそも「技術があるから何かを創ろう」ではなく「何かを創りたいから技術があるべき」ではないでしょうか。CGに置き換えてみると、


    「すごい」、「感動した」、「こんなもの作ってみたい」

    ↓↓↓

    「どんな作り方があるだろう。絵画? 彫刻?」
    「CGというものもある」

    ↓↓↓

    「CGだと最もイメージに近いものが創れそうだ」


    ……となるはずですね。言ってみれば、手描きが良ければ手描きで作れば良いわけで、わざわざCGで作る必要はないわけです。

    つまり「何を創りたいのか」。
    その一言に尽きるんですよね。

    Design

    日本には木にまつわる伝承は多く、ご神体のように祀られていることもあり、木に根付いた文化であることを深く考えさせられます。

    ちょっと調べてみても「木のイメージ」はとてもすごい。私も自然の木に魅せられて木を探訪することにしました。とはいえ、最初は忙しさもありネット検索。素敵な木を探すも、疑問に思うのは……、

    なぜ木に見えるのか?

    ちょっと木の幹をトレースしてみましょう。ただの直線もクネクネさせるとそれっぽく見えますが、この段階ではまだ何だかわかりません。

    そこで「柔らかい線」で枝もトレース。

    ただの線も、使い方次第で固くも柔らかくも自然にも見えてきます。「曲がり方の癖」、「枝分かれ」に木たる本質があるようです。

    ネット検索するもなかなか良い素材に出会えず、いつしか足はリアルな森の中へ向かい……。最近のマイブーム「iPhoneでのScanSketch」にいそしみます。

    そういえば、学生時代はスケッチブック片手にいろいろなところに出かけていました。それがスマホで3D撮影をするなんて、当時からすると想像もできなかったことですね。

    いくつかのScanを取り込み実際のモデルを確認。iPhoneの小さい画面では良い感じに見えても、大きくしたりディテールを考えると物足りない。

    これなども、どこか「龍の頭」のようで良かったのですが……、ちょっとイメージがちがうかなと。

    そんな探索の日々が続き、気付けばさらに遠方へ。そこで出会ったのは樹齢300年の杉の木でした。すでに枝葉はほとんどなくここにあること自体が不思議な木ですが、さすが300年。私の何倍もの年月を生きてきた歴史を感じます。そんな御神木をiPhoneでScan。

    見事な「自然の造形」です。これは手で作ろうとしてもなかなか難しそうですね。

    そして見事なS字! 「画創の法則 S字」です。

    力のながれの方向も、表皮の動きから手に取るようにわかります。

    ここに龍を同居させようといろいろと検証してみるも、なかなか思ったようにいかず苦戦。

    そういうときはながれに逆らわずに……と、なんだか何かの格闘技みたいな感じですが。これはちょっと上手くいきそう。

    ピタッときました! まるで龍が休むための形のよう。まさに、

    Every block of stone has a statue inside it and it is the task of the sculptor to discover it.


    どんな石の塊も内部に彫像を秘めている。 それを発見するのが彫刻家の仕事だ


    ーミケランジェロ

    夏目漱石の幻想小説『夢十夜』でも、「運慶は、木の中に埋まっている仁王を掘り出しているだけだ」というセリフが出てきましたね。これは、CGにも当てはまることではないでしょうか。もしかすると、すでにPCの中には全ての可能性が眠っていて私たちはそれを掘り起こすだけ……だとすると、案外納得するかもしれません。

    Lighting&Composite

    ライティングやシーンなどは、今回は少し工夫しています。詳しく見てみたい方は、ぜひオンラインチュートリアルをご覧ください。

    今回はあまり変えてませんが、こちらがレンダリングしたままの画像。

    そしてカラコレ&コンポジットです。CGのライティングはちょっと軽くなりがちなので、渋めのカラコレに仕上げました。

    今回のようにレイアウトやポーズなどに迷ったときは、身の回りにあるもの&ことがヒントになることが多々あります。

    私も煮詰まったときは、散歩をしたりアイデアを求めてさまよったり、何も自分の中だけで解決しようとせずとも、世の中には偉大な師がいつも私たちを見守っていてくれています。

    CGにはいつも夢があります。
    全ての望む方が素敵なCGに触れられるよう、オンラインで活動の幅を広げております。オンラインセミナーやオンライン教材を用意しているほか、講演なども承っておりますのでお気軽にご連絡ください。



    本来の画をつくる楽しさをいつまでも忘れずに。

    チュートリアル収録内容

    <画創の法則>

    観察の法則
    自然観察
    ・S
    力の流れ



    <実際の制作過程メイキング>

    モデリングからコンポジットまで

    使用ソフト:3ds Max、After Effects

    長年、セミナーや授業でお話してきた生な感じをぜひ体感いただけたら嬉しいです。ムービーの解説ではさらに詳しく内容をご説明しております。

    【ダイジェスト】vol.019:Dragontree /「自然観察」からヒントを見出す
    【+画 ONLINE】vol.019:Dragontree /「自然観察」からヒントを見出す

    3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)

    CGに初めて触れる方や新人教育用の教材「CGオペレーション基礎講座」として、基礎固めに効果を発揮しています。3ds Maxの機能をひとつずつ詳細に解説。豊富な作例から楽しく機能を学んでいただけます。
    online.dhw.co.jp/course/3dcg

    3ds Max『画龍点睛オンライン』講座

    文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。
    tutorials.cgworld.jp

    早野海兵/Kaihei Hayano

    画龍 / Garyu
    ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
    #3dsMax, #adobe aftereffects, #zbrush, #substancepainter

    <代表作>
    ゲーム『鬼武者』シリーズ
    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
    『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
    著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
    連載「+画」、「画龍点睛」

    早野海兵公式サイト:kaihei.net
    画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
    Twitter:@Kai_ryu_Kai

    TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano@Kai_ryu_Kai
    EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE