コンセプトアーティスト埜々原氏が描く断崖の町で、雲海と共に生きる『断崖のカルム』ほっこり”だけじゃない”崖の町探索アドベンチャーゲームに使用されたツールや建築物へのこだわりを聞く。

記事の目次

    ゲーム開発環境のオープン化や販路の整備によって切り開かれた、個人・小規模チームでゲームをつくって配信する「インディーゲーム開発者」という生き方。本連載は、日本でインディーゲーム開発者として活躍する人々を紹介し、どのようにしてゲームをつくり、どうしてゲームという表現を選んだのかを聞くシリーズである。今回は探索アドベンチャーゲームを開発する埜々原氏に来てもらった。

    埜々原氏は、異業種からゲーム業界に転職したのち、現在はフリーランスのコンセプトアーティストとして活躍。一方で、コンセプトアートの個展を開くといった活動も行いつつ、「DOUKUTSU PENGUIN CLUB」として、ゲーム『断崖のカルム』を開発している。多方面で活躍している同氏に、本作の生活感あふれる街並みや建築物へのこだわりについて、どのようなツールを使い表現しているのかも含め聞いた。

    異業種からゲーム業界へ。自分が本当に描きたいものを描くインディーゲーム開発

    ――今日はよろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。

    「DOUKUTSU PENGUIN CLUB」の埜々原と申します。フリーランスのコンセプトアーティストやゲーム制作者として活動しています。

    ――現在開発中の『断崖のカルム』は、私を含めてデザイナー2名、エンジニア1名がコアメンバーで、開発パートナーとして楽曲担当者の1人、合計4人で制作しています。

    本作は「ほっこりだけじゃない探索アドベンチャー」と銘打っています。タイトルの「カルム」は街の名前なんですが、街の崖の下には有毒な雲海が広がっていて……という設定です。町の探索や雲海の探索、NPCとの交流などを行って物語が進んでいくADVとなります。

    埜々原氏

    『断崖のカルム』

    ジャンル   : 崖の街探索アドベンチャー

    プレイ人数 : 1人

    予定プラットフォーム : Steam, Nintendo Switch

    配信予定日 : 未定

    ――コアメンバー3人でパートナーがお一人とお聞きしましたが、いつぐらいから開発を始めたのでしょうか。

    開発が始まったのは2021年の10月からです。自分が言い出しっぺで、私ともう一人のデザイナーと一緒に二人で世界観を作ったりして進めていきました。そして、ある程度構想が固まってきてプロトタイプを作ろうとなってから、元同僚のエンジニアに声をかけました。だいたい2021年の12月頃から3人体制になりました。

    ――お仕事としてフリーのコンセプトアーティストとして活動されていますが、どうしてインディーゲーム開発を始めたのでしょうか?

    元々コンセプトアーティストになった理由と少し関連があります。自分は他の産業で働いていたのですが、その仕事が向いていなくてあまり面白くない、と感じていました。仕事のストレスがたまることもあるなかで、自分が行ってみたいところやワクワクするような架空の場所をビジュアルで具現化したいという思いから絵を描き始めたんです。

    当時はpixivで背景を描いて投稿している人を見て、そこから刺激を受けて自分も投稿したりしました。そこから、ついには仕事を辞めてそのモチベーションのままゲーム会社に転職しました。

    ところがゲーム会社に行っても、自分の本当に描きたいものはなかなか描く機会がありませんでした。仕事は楽しくなりましたが、ゲーム会社に入ったところで自分が表現したいことがいつでも好きなようにできるわけではないんです。その後フリーランスになったのですが、引き受けていたあるプロジェクトが中断になってしまって…じゃあ、構想していたゲームを今つくろうと思いました。

    ――異業種から転職されたのですね。そのころから、自分の描いた世界をゲームとして形にしたいと思っていたのでしょうか。

    そうですね、頭の片隅には当時からありました、いつかできたらいいな、みたいな感じで。小さい頃からスクウェア・エニックスのゲームが好きで、『聖剣伝説』をスーファミの頃にやりこんだりして、それがPlayStationになって……『FFX』とかも好きでずっとやっていて、ゲームに夢をもらっていたんですね

    また、絵本や児童文学が好きで、たとえば『エルトラクエスト』などのファンタジーな世界が好きで。自分のクリエイティビティを発揮するならゲームだと思っていました。前の仕事を辞めてから、最初はグラフィックデザインを学ぶために専門学校にも入りなおしたりしました。

    でも、やっぱりデザインよりゲームの方を仕事にしたいと感じて、ゲーム業界に入りました。

    ビューポートがキレイだとやる気が出る

    ――ゲーム会社に入ったのは、ゲームをつくりたいからなのでしょうか?

    いえ、そういうわけでもなかったですね。10年前くらいだと(デザイナーの)自分がまだゲームを作れるとは思っていなかったので。仕事でUnityも使ったりはしていたのですが、まずはゲーム会社に入ってみようと思いました。

    ――働く中で今の開発メンバーと出会ったり、Unityなどのツールを学んだり、引き受けていたプロジェクトの頓挫などが重なったわけですね。

    そうですね。携わっていた案件がとん挫して少し時間ができたのでじゃあ、今やるか。という気持ちでした。

    Webのチュートリアル動画を中心にBlenderを習得、アドオンも有効活用

    ――自分でゲーム開発ができる!と思い立った、最大の理由はなんでしょう

    私はコンセプトアーティストだったので、それまで2Dしか触ってきませんでした。ただ、絵づくりが上手いゲーム会社はいっぱいあるし、自分の場合はキャラより背景や世界観を含めてつくることが得意だったので、そういったゲームをつくるとなると3DCGが必要になるよねと考えたんです。

    当時はBlenderがVer2.8になって、レンダリングエンジンにEeveeに追加されて、Viewportの見栄えが良くなったりした頃で、趣味で1年くらい触っていくなかで「これ、もしかしたらゲームつくれるんじゃないか」と思ったんですよね。

    ――趣味で1年Blenderを使われたとのことですが、独学だったのでしょうか

    はい、そうです。Blenderはバージョンの移り変わりが早くて、書籍を買おうとしても情報がすぐに古くなってしまったりするので、私の場合はYouTubeでチュートリアル動画を50本くらい見て、大枠をつかんでいきました。

    • アセットはたくさんあるのでCapsule無いと詰む
    • アセットは手書き感にこだわっています

    ――Blenderのバージョンはいくつでしょうか

    2.93のLTSです。いま新しいのはVer.3系ですが、周辺アドオンがVer.3に対応しているかわからないことや、使う中では安定しているので現状のままにしています。でも、Ver.3以降ではジオメトリノードの機能があるので、興味があるんですが使えない。いずれ移行して触りたいなとは思っています。本作の開発は2.93で進めると思います。

    Blenderを学び始めたきっかけは、「Ver.2.8がいい」という評判を聞いたので触っていたことや、無料という点が個人開発にはありがたい、ということで使っていますね。

    ――埜々原さんの周りにはBlenderを使っている人はいたのでしょうか

    私の場合は、あまり周囲に3DCGをやっている人がいなかったんですよ。たまたま、コンセプトアートの界隈で、フォトバッシュの文脈で、簡単なモデルを3DCGで組んでレンダリングしたりするとき、補助として使うにはBlender2.8が便利だという話を小耳に挟んだことがきっかけではありました。ただ、教えあうような環境でもなかったので、自分で独学していきました。

    ウォークモード。町に降り立ったかのような感覚で楽しい

    ――キャラクターモデリングを担当している方は別というお話でしたが、その方も最初からモデラーだったのでしょうか。

    実はその担当者というのは私の妻でして、全然別の仕事をしていました。自分が2社目に入社したゲーム会社で総務をしていたのですが当時はシナリオの手伝いなどもしていました。それもあってか、転職先ではシナリオライターとして活躍していました。

    妻はキャラクター同士が街や村で交流するゲームとかが好きで、それは『カルム』にも通じるものがあったので、ゲームを一緒に作ろうと話した時点から同じく独学でモデリングをはじめました。最初は簡単なモデルを使ってもらったりして、そこからリギング、モーションもできるようになっていきました。

    アセットは手書き感にこだわっている
    主人公Tポーズ

    ――それはすごいですね。成長が早い。メインキャラは誰が作っているのでしょう

    主人公は私ですが、2体いるプレイアブルキャラのうちもう一体の方は妻が担当しています。

    ――まったくの未経験からそこまで成長されたのはすごいですね。開発に話を戻しますが、開発の中で多用した機能はありましたか

    本作ではゲームエンジンUnityを使用しています。その中においても、PBR(Physical Based Rendering)みたいなリッチな手法を使うよりは、ほぼポリゴンに手書きテクスチャを貼っただけという昔ながらの手法でやっています。Blenderのアドオンやプラグインでいうと、「Auto Rig Pro」という有料のリグアドオンを最近使うようになりました。

    それまでは自分でリグを組んでいたのですが、全キャラリグを組もうとなるとちょっと大変だろうと思ったので、試しに導入しましたが、便利だと思います。おそらく本採用して使っていくと思います。

    あとは、「Capsule」ってアドオンをすごく使っています。Blenderのデフォルトのバッチ書き出しは若干使い勝手が悪く、ゲーム開発においては一度にアセットを大量に使うので、データとして書きだす時に不便なんですよね。

    「Capsule」は、ひとつのプロジェクトファイルから、オブジェクト単位でFBXデータを出力できます。それぞれ、そのオブジェクトの原点や書き出し先のフォルダなども個別に指定できるのでゲーム開発にはとても便利ですね。

    主人公ダッシュ

    それから、「Texel Density Checker 」も使って効率化をしています。他のツールにも機能としてついているかもしれませんが、「1センチ当たり何ピクセル詰め込むか?」を測るもので、密度を自動で合わせてくれるんです。顔のテクスチャみたいにピクセルを多く使うところに値を指定すれば、UVを自動で指定値に調整してくれます。

    他ですと、UV Toolkit ツールキットやTexToolを使っています。このゲームはUV配置は手動でやっているので、そこを効率化してますね。

    後は、Auto ReloadというBlenderアドオンですね。これも便利です。BlenderとPhotoshopを同時に使っているとき、Photoshop側のデータ更新に応じてBlender側のテクスチャを自動で更新してくれるんですが、これは便利ですね。便利すぎるので知り合いの開発者さんにもオススメしたくらいです。

    ――Blender以外のツールは何を使っているのでしょう。

    テクスチャ制作などにPhotoshopとIllustratorを使っています。最近のゲーム開発環境では、テクスチャのサイズが圧縮形式のATSCで使用する「2のべき乗」でなくてもよくなりましたが、安心感が欲しくて2のべき乗にしないといけないって思ってしまう習慣がなかなか抜けなくて……。

    ゲーム開発の視点からですと、テクスチャサイズはなるべく少なくしたいので、壁のデータをつくる時などはタイルを少なくしたいですよね。本作では「ハーフティンバー」という建築様式にならった建物が登場しますが、木の軸から軸の間の壁を組み合わせ可能にすることで、バリエーションを無限に作れるようにうまく設定しています。

    インディーゲームクリエイターとしての生活や『カルム』のPR、受けた支援

    ――ゲームのビジュアル面のこだわりについて、教えてください

    この作品のビジュアル面としては、生活感や手書き感を大事にしています。もともと自分が描いたイラストに #萌え建築とハッシュタグをつけて投稿したり、それをまとめて「ヲかシな建築」という同人誌を発行していたのですが、これをゲームにしてほしいって意見をファンの方からもらったりして、いつかやりたいなと思っていました。『カルム』はこのテイストに習って作っていて、背景にもすべて線画も入っていたり、手描き感を大切にしています。

    ――インディーゲームでは、イラストレータさんの作品にファンの方が「この世界に行きたい」とか「歩きまわりたい」って応援の言葉をもらったことがきっかけでゲーム化する、という動きがよく見られます。似た境遇の方で興味のある方はいますか

    あまり多くはないのですが、『黄昏ニ眠ル街』nocrasさんでしょうか。ゲーム業界出身と聞いていまして、近いものを感じますね。背景制作をやっている人が個人ゲーム開発者に転向したケースの先駆者なんじゃないかなと思います。もう一人は『狐ト蛙ノ旅 アダシノ島のコトロ鬼』のリアスさんですね。やはり同じような境遇の方には親近感が湧いてしまいますし、売れてくれー!と思いますね。

    • 町から見える雲海の時間推移_朝
    • 町から見える雲海の時間推移_夕
    • 町から見える雲海の時間推移_夜

    ――ゲーム開発ならではの難しさは何だと思いますか?

    やはり、絵を描いて終わりじゃないというのは大変だと感じますね。コンセプトアートは絵を描けば基本的にはそこで完了なのですが、ゲームとして動くモデルにできるのはどうすればいいのか、とかどう描けばいいのかを考えるのが大変です。

    ゲームのモデルの場合は、一回作っちゃったけど、レベルデザイン(ゲームとしての面白さを作っていく作業)をやり始めるとここにはしごが欲しくなって修正が必要になるとか、これからそういうのがどんどん増えてくるんじゃないかって思っていて……。楽しいものをマップにちりばめたいと後から考えて、追加や修正もいるんじゃないかと思っています。

    ――作業量が多いことも違いのひとつですよね

    そうですね。他に絵描き兼ゲーム制作者として思うことは、ゲームはかかる作業時間のわりにアウトプットを見せづらい点があるということです。見せたいけど、見せすぎるとプレイしてくれる人の楽しみが減ってしまう。そこは今までと違うなと。

    ある程度ゲームができてこないと出せないところがあったりして、(WebサイトやSNSでの)進捗感を出すのが難しいんですよね。それを解消するために最近は、ゲームで発生した予期しないバグやエラーの中から選りすぐりのものをチラ見せしたりして、見てくださっている方に少しでも制作過程を一緒に楽しんでもらうにはどうしたらいいのかを考えたりしています。

    まだアップロードしていないですけど、水車を回そうとしたら軸の設定を間違えてあらぬ方向に水車がが回ったりとか(笑)

    ――ゲーム会社を勤務したあと、インディーでのゲーム開発に転向して大変だったことはなんでしょうか?

    インディーになってからのいい面としては、ユーザーとの距離がすごく近いので沢山反応がもらえるのは嬉しいですね。。会社だといいレビューはあまり耳まで届いてこない割に、悪いのは(修正のための指示)チケットがいっぱい来たりするんですよね。

    その一方で、絵の場合はアップロードしてもフィードバックはあまりこないんですが、ゲームはいっぱいフィードバックが来るんですよ。その中には、これから直そうって思っている点もあったりして……残念ながら、結構ストレスになることもあります。私の場合、ゲーム開発についてはまだまだ(絵に比べて)全分野でプロフェッショナルではないので、ゲームを待ってくれている人からは指摘したい箇所が多いのかなと思いました。

    あとは、私自身の生活を成り立たせる必要もあるので、開発期間が長くなりすぎないようにすることも大切だと思います。

    ――自分の作品としての納得も大事ですが、ゲームの場合は多くの人に遊んでもらう努力も必要ですね。それらは、どうやって身に着けていったのでしょうか?

    インディーとしての活動については、iGi indie Game incubatorという育成プログラムを昨年受けました。これは、半年間でパブリッシャーのやりとりやマーケティング、シナリオの作り方や、予告動画の作り方などを勉強したり、ゲームデザインのイロハなどを学んだりできるものです。私は二期生で、毎年5チームだけですが無料で受けられます。受かっていなかったら、インディーゲーム開発についてもっと不安が多かったと思います。同じゲーム業界でも、大手のゲーム会社のやり方とインディーゲーム開発はノウハウがまったく違うためです。

    ――現在、制作中の生活はどのように成り立たせているのでしょう

    私は引き続きフリーのコンセプトアートとして活動しています。チームのエンジニアさんは週5で企業に勤めながら、『カルム』もやってもらっています。

    描きたいものを描く―「萌え建築」と『カルム』の共通性。お気に入りの一冊の話も

    ――『カルム』の世界観についてですが、埜々原さんは「萌え建築」を描いておられます。この両者の関係をおしえていただけないでしょうか。

    「萌え建築」を始めたきっかけとして、まず「建築萌え」というものがあります。MAEDAXさんという背景塾をされている方がいて、「背景萌え」って書籍も出されているんですけど、この建築のここがいいとか、グレーチングの溝から生える苔がいいとかガードレールの錆がとか……。

    そういった建築物に対する自分の萌えを詰め込んで絵を描き、勝手に「萌え建築」と言って投稿してるというイメージです。『カルム』はこの「萌え建築」のテイストを出していると思います。

    ――建築の好きな点を教えてください。

    パッと思いつくのだと「トラス構造」とか好きですね。よくこんな構造で作ったなとか、よくここに家を建てたな、と感じられるものが好きですね。他にも橋脚にぶちぶちと並んで大量に打ち込まれたリベットとか、限られた空間を無理やりに使っているとか、道の上に二階部分が張り出してる建物とか。

    知恵を使って少しでも生活を良くしようとした努力の跡が見えるのが好きですね。見た目というよりは、その努力の結果が見えるのが楽しいなと思うんですよね。こういった感覚は『カルム』にもめちゃくちゃ取り入れていますね。

    • 構造的な正しさはともかくトラス構造風01
    • 構造的な正しさはともかくトラス構造風02

    ――これまでの来歴をきいてまして、異業種から専門学校、ゲーム業界、フリーランスと進まれましたが、建築の知識はどこから得たのでしょうか?

    実は、どこからも得てなくて……自分ではそんなに詳しいと思ってなくて。元々、機械工学の高専を出て、材料工学とか力学を学んでいたので、力学的な基礎知識はなんとなくありました。梁とかを見るとこういうことなんだろうなって想像したりしています。

    ゲームでは「それっぽさ」がでていればいいので……実際の建築というよりは空想ですね。『カルム』の世界では成り立つんです。この木は強度が高いんですみたいな(笑)

    建築様式については書籍でいっぱい調べていて、『カルム』にも取り入れたりしています。

    ――これまでに影響を受けたものや本はありますか

    私は『木のヨーロッパ』(彰国社)がとても好きです。これがヤバすぎてですね、めちゃくちゃいいんですよ。さっきも話したんですけど、工夫が見えるのが好きというか、私は民家が好きで、その地の人がその地の物を使って建てるのが好きなんです。

    そういうのを特集している本ってめったにないんですが、この本はまさに民家にフォーカスして、いろんなヨーロッパの地域を片っ端から集めてくれています。少し高かったんですけど買っちゃいました。最高です(笑顔)本屋を5か所くらい回って探して買いました。

    ――参考になりましたとかじゃなく「最高です!」っていうのがいいですね。その中でも特によかったものを教えてください。

    ヨーロッパの民家だと、私はハーフティンバー様式が好きで、各国で模様が違ったり、筋交いが違うとか、その入れ方や名前も違ったりして、ハマると沼ですね。好きな建築というよりは、好きな場所や街でメモをして、自分の中でリストにしています。

    「世界の萌える街メモ」って私は呼んでいるんですけど。メモの中には行ってみたい街も沢山書いています。フランスとアイルランドには旅行に行ったことがあるんですけど、まだ訪れていない場所ばかりなので、時間があれば片っ端から行きたいです。

    それと、私は長野出身で諏訪湖のあたりに住んでいたのですが、自然が豊かで共存している感じが良いんですよね。ああいう景観が残ってほしいなと思っていたり、それに加えてゲーム『聖剣伝説』や『FFIX』の世界観に衝撃を受けたりして、そういう建築について調べたりしてどんどんハマっていくうちに『木のヨーロッパ』にたどり着きました。

    ――メモは無限に増えそうですね。

    そうですね、Webを検索していると無限に増えますね。『カルム』の開発でも、ちょっと味付けをするときに見返したりして参考にしています。

    ――今後の話ですが、自分自身がゲーム開発者として今後どういった活動をしていきたいと思っていますか?

    『カルム』を作った後も次回作を作って、インディーゲームとコンセプトアートで継続的に生活を成り立たせられたらいいなと思っています。それから、CGWORLD.jpのTwitterで取りあげていただいたように背景絵の個展を開いたり、イラストレーターとしての活動も充実させていきたいなと思っています。

    ――『カルム』は今後どういった予定があるのでしょう

    BitSummitなどには出展しましたが、今年は基本的に開発に集中しようとメンバーで決めていました。リリースは2024年末を予定しています。

    ――この記事をご覧の皆さん、特にゲーム作りにチャレンジしたいと思っている方へコメントをいただけますか

    そうですね…。私自身の経験なんですけど、自分の世界を自分のキャラで駆け回るのは本当に楽しくて、ニヤニヤしながら作っています。ですので、もし自分が表現したい世界があるのならば、ぜひゲーム開発にもチャレンジしてほしいと思います。

    ――ありがとうございました!

    TEXT_一筆社
    INTERVIEW & EDIT_一條貴彰(株式会社ヘッドハイ
    EDIT_阿部祐司(CGWORLD)