ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は、日本神話に登場する八岐大蛇と須佐之男命の戦いをモチーフに、迫力ある造形をつくっていきます。
日本神話をモチーフに洋風の要素も採り入れてアレンジ
少しの期間休載していましたが、今回は久しぶりの作品づくりということで、第一印象として迫力のあるものを造形したいと考えました。そこで思いついたモチーフが、日本神話に登場する「八岐大蛇(やまたのおろち)」です。
八岐大蛇(やまたのおろち)
『古事記』『日本書紀』に記されている大蛇。出雲国簸川 (ひのかわ。斐伊川 ) の上流にすみ,八つの頭,八つの尾,そして真赤な目をもつと伝わる。スサノオノミコト (素戔嗚尊)に退治され,尾から出た天叢雲剣 (あめのむらくものつるぎ。草薙剣 ) はアマテラスオオミカミ (天照大神)に献上された。八つの支流をもつ河川の神格化と解する説もある。
出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
八岐大蛇が須佐之男命(すさのおのみこと)と対峙している印象に加え、筆者の好きなドラゴンなどの洋風の印象も採り入れた作品にしようと構想しました。
主要な制作アプリケーション
・ZBrush 2022
・Substance 3D Painter
・Adobe Photoshop
・Maya Arnold
STEP 01:八岐大蛇の頭部の印象を固める
八岐大蛇は蛇がベースなので、重要な頭部のイメージをまずつくりこんでいきます。
STEP 02:ポリペイントを交えながら造形を進める
頭部がある程度できてきたら、ポリペイントで簡単に色を付けていきます。部分的な質感の描き分けをわかりやすくする目的なので、色味もざっくりで問題ありません。
STEP 03:リトポやUV展開をして仕上げる
ZBrushのZRemesherやUVマスターを使用して、リトポやUV展開を行なっていきます。コンセプトモデルなのでスピード感のあるやり方で進めていきます。
STEP 04:須佐之男命を作成する
続いて、八岐大蛇と対峙する須佐之男命を制作します。最終的に小さく表示されるためあまり細部が見えないことと、後ほどPhotoshopで上から加筆するので、大まかなボリュームやシルエットにフォーカスして造形していきます。
STEP 05:Substance 3D Painterでテクスチャを作成する
ZBrushのポリペイントで作成したテクスチャを、Substance 3D Painterで最終的に仕上げていきます。ラフネスや細かな溝のディテールなどの作成がメインになります。
STEP 06:構図を決め、レンダリングする
八岐大蛇の頭部を8頭分複製し、Mayaで最終的なレイアウトを制作していきます。レンダリングしては構図を調整しつつ、自分の中で気持ちのいい構図になるように進めていきます。構図が決まったらレンダリングし、Photoshopでレタッチして仕上げます。
完成
八岐大蛇と須佐之男命を、黒と白の対比にすることで、視認性を高めました。また、洋風なイメージなので、須佐之男命も白髪にし、自分の思う西洋のテイストに近づけていきました。なかなか迫力ある1枚になったのではないでしょうか。
今回はゼロから作って大体3日くらいでしたが、最初から完成のイメージをしっかり頭に描いているかそうでないかでスピードは大きく変わると思います。イメージをしっかりもつことは非常に重要ですね。
岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。株式会社Villard代表取締役。
国内外の造形に関わる仕事をメインに活動しており、カプコンフィギュアビルダー クリエイターズモデル『モンスターハンター』シリーズのフィギュア原型や『バイオハザード:インフィニット ダークネス』『ELDEN RING』を始め、『シャザム!〜神々の怒り〜』『65/シックスティ・ファイブ』などにも参加している。ジャンルを問わず映像やゲーム、CMなどの主にクリーチャーのコンセプトアート、モデル作成などを多数手がける。
www.artstation.com/artist/yuzuki
www.villard.co.jp
TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)