モーショングラフィックスに特化したスタジオとして様々な作品を手がけるマウンテンスタジオによる連載。3Dモーショングラフィックスを活用したビジュアル制作について、感性を刺激するためのアイデアを毎回紹介していきます。

記事の目次
    第1回はこちら

    「INSYDIUM Fused」を使って制作する

    モーショングラフィックスとは何か、ゲームの一場面でもなく映画の1カットでもない動くグラフィックスである、という事は前回お伝えしました。

    今回もマウンテンスタジオの誌面広告で制作したビジュアルを基に、広告などで用いられる動画表現ではなく、アート表現としてのモーショングラフィックスを解説していきたいと思います。

    前回もお伝えした通り、娯楽コンテンツが感情を刺激するものであるのに対して、モーショングラフィックスは脳の中の原始的な部位を刺激するものであり、感性を刺激するビジュアルこそがモーショングラフィックスらしさだと考えています。

    今回は具体的な表現というよりは、“何だか解らないけど気持ち悪いような綺麗なような不思議なビジュアル”を目指して制作しました。こちらを解説するにあたり、あえてCinema 4DのプラグインであるINSYDIUM Fusedを使って制作していきます。INSYDIUM Fusedの中のX-Particleを使われてる方は沢山いらっしゃると思いますが、今回使ったのはTaiaoMeshToolsというツールです。

    Taiaoは植物を生成、アニメーション化するためのプラグインで、簡単に使えて役に立つので非常に重宝しています。MeshToolsは逆にあまり使う場面がなかったので、今回あえて使ってみました。モチーフとしては“植物なのか昆虫なのか良くわからない、気味は悪いが綺麗な物体”を目指して制作しました。

    ビジュアルのコンセプトはこのくらいにして早速、具体的な制作の解説をしていきたいと思います。

    01:Taiaoで草・花を生成する

    まずはINSYDIUM Fusedの中のTaiaoを使ってみます。[toGrass]機能では図のように簡単に草を生やす事が出来ます。

    生やしたいオブジェクトを[object]に入れてマテリアルを割り当てるだけでなんとなく良い感じの草を生成してくれます。

    今回はレンダラもINSYDIUM Fusedの中のCycles 4Dを使います。マテリアルタブから[Principled BSDF]の色だけを変えることで先の画像のように立派な草になります。ちなみにCycles 4DはBlenderのCyclesがベースですが、Cycles 4Dは各設定項目にアニメーションキーが打てるのが画期的で、とても便利です。

    今回完成作品には花は咲かせませんが、ついでに花のつくり方もやってみましょう。

    まずは[toPlant]機能から、[Trunk]に[Flower]を割り当てます。

    そして[Flower]に[Petal]、[Stemen]、[Materials]をそれぞれ設定します。

    マテリアルは花びらの色にバリエーションつけたいので、図のように[Object Info]の[Random]に[Color Ramp]で色をつけてみます。

    すると、花びらの色にバリエーションができました!

    またまたついでに葉っぱも生やしてみたいと思います。下図のように[Leaf]にそれぞれ設定していきます。

    マテリアルには下図のように[Texture Coorinato]に[image Texture]を使って透過、バンプそれぞれを設定します。

    葉っぱを生やすことができました。

    たいぶ寄り道をしましたが、ここから、今回のビジュアルのメインである毛虫をつくるにあたって毛のように見える草を設定していきます。[toGrass]で細い草を選択し、[Color Rump]でピンク系に設定します。

    するとこのようになりました。毛虫っぽくなってきましたね。

    02:Mesh Toolsで複雑な形状をつくる

    次にMesh Toolsを使って、さらに複雑な形状をつくっていきましょう。まず[mtInset]を図のように5回くらい重ねた上に[mtFractal]をのせて全体の形状をつくります。

    [mtInset]の設定を少しづつ変化させる事で、理想の形状をつくっていきます。

    1番上と2番目にある[mtFractal]を設定して全体の形状を調整していきます。

    完成

    Taiaoの[toGrass]と「Mesh Tools」だけで完成しました。

    マウンテンスタジオ

    1995年にデザイン事務所として発足し、1997年に法人化。現在はモーショングラフィックスを主軸としつつ、3DCGアニメーションや映像制作、Webデザインなども手がける。現在のスタッフ数は17名。

    https://mountain-st.com/
    X(Twitter):@studio_mountain

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