モーショングラフィックスに特化したスタジオとして様々な作品を手がけるマウンテンスタジオによる新連載がスタート! 3Dモーショングラフィックスを活用したビジュアル制作について、感性を刺激するためのアイデアを毎回紹介していきます。

[PR]

記事の目次

    モーショングラフィックスとは?

    こんにちは、マウンテンスタジオの宮本です。本連載では、3Dモーショングラフィックスを使ったビジュアル制作について解説していきます。

    まず「モーショングラフィックス」とは何でしょうか? ゲームの一場面でもなく映画の1カットでもない、動くグラフィックスです。

    広告などで用いられる映像表現としての活用は、要素を削ぎ落とし、シンプルでわかりやすいビジュアルを躍動感ある動きによって一瞬にして人の目を惹き、情報を伝える。つまり静止画では伝え切れない情報をわかりやすく効果的に伝えられる手法として広く活用されています。

    ですが、今回はあくまでも表現方法としてのモーショングラフィックスを考えてみたいと思います。

    例えば、「老婆を背負った若い男」というビジュアルがあるとします。それは見る人をどこか「暖かい気持ち」や「悲しい気持ち」にさせるかもしれません。つまり、それは脳の中を直接刺激するビジュアルなんだと思います。

    娯楽コンテンツが感情を刺激するものであるのに対して、モーショングラフィックスは脳の中の原始的な部位を刺激する。感性を刺激するビジュアルが、モーショングラフィックスらしさだと思えます。

    ということを踏まえて、今回は「金魚」の作例を解説したいと思います。

    映像表現なのに静止画としても成立する、というのもモーショングラフィックス(以下、モグラ)らしさなので、今回の「金魚」では、花のように見える美しさを意識して、背景はあえてグレーベースにしてみました。

    下記画像のように背景に「花」をあしらったパターンと比べるとどうでしょう。グレーベースのほうがモグラっぽいと私は思います。広告活用としての視点で見ても、情報が整理されてモグラらしさが出ているかもしれません。

    01:ジオメトリーノードで花びらを作成する

    ここからは、具体的な制作方法について紹介していきます。

    今回はBlenderを使用していますが、Blenderのチュートリアルは世の中に溢れているので、技術的な解説を細かくするよりも要点を説明したいと思います。

    「金魚」の特徴は尾ヒレ、背ヒレ、胸ヒレが花のように綺麗で大きいことです。今回はこのヒレをジオメトリーノードで作成しています。このジオメトリーノードを他のオブジェクトに適用すると、何でも花のようになるのがとても便利です。

    下記が完成イメージです。

    まずは、球体の好きな場所の辺を押し出して、さらに押し出した辺を下記のように[頂点グループ][petal]として登録し、さらに押し出した部分以外の本体を[body]として登録します。

    次にジオメトリーノード画面に入り、ノード画面内の右端のつまみを引っ張り出して[グループ]タブ→[入力]に[body]と[petal]を[+]ボタンを使って追加します。

    両方ともタイプを[Boolean]にし、名前にそれぞれ[body][petal]と入力します。そして[プロパティ]エリアのレンチマークから[モディファイアー]設定に入り、[Geometry Nodes]以下にも下記のように[body][petal]を設定します。

    そうすると、下記のように[グループ入力]に[body][petal]の項目が増えます。これにより、各項目ごとに変形やマテリアルをあてることが可能になります。

    次に、下記のようにベースになる形状には入力グループ[body]、花びらになる部分には入力グループ[petal]を選択し、[位置設定]ノードの[オフセット]で変形加工を施します。

    [積和算]ノードは[Shift]キー+[A]]検索の[加算]の中にあります。ここで細かい変形を行い、その後ろに[スケール]ノードを追加して全体の大きさを調整します。

    花びらの形ができたら、ノイズを使って下記のように[位置設定]をさらに追加して、より花びららしい形状にします。

    ここでも新たに[グループ入力]を追加して[petal]を選択し、[ノイズテクスチャ][積和算][減算]で加工します。この場合の[減算]も[Shift]キー+[A] 検索の[加算]の中で選択できます。

    大まかには以上の設定により花びらのような加工ができますが、よりリアルな形状にするために、変形前と変形後の形状をそれぞれ[属性キャプチャ]し、花びらの付け根部分と先の部分でノイズ具合を変えるような処理をすると、より味が出ます。

    ジオメトリーノードの全体像は下記のようになります。参考にしてください。

    上記のジオメトリーノードで完成した花びらが下記です。

    02:花びらを金魚に移植する

    そして花びらのジオメトリーノードを金魚に移植するために、金魚の胴体モデルのヒレの部分に、花びらと同じように[petal]、胴体の部分に[body]の頂点グループを登録します。

    金魚のモデルの準備ができたら、花びらのジオメトリーノード[flower]を割り当てます。花びらと同様に[body][petal]の設定を忘れずに。

    そして、ヒレの形状を下記のように調整したら完成です。

    完成

    マウンテンスタジオ

    1995年にデザイン事務所として発足し、1997年に法人化。現在はモーショングラフィックスを主軸としつつ、3DCGアニメーションや映像制作、Webデザインなども手がける。現在のスタッフ数は17名。

    https://mountain-st.com/
    X(Twitter):@studio_mountain

    関連記事
    モーショングラフィックス制作に特化したマウンテンスタジオ、映像を魅力的に見せるための"平面での画づくり"へのこだわりに迫る!

    TEXT_宮本清春(マウンテンスタジオ)