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    新年が始まりましたね。今年はモリモリ更新していきますよ! そんな 2012 年最初の吉トロ奮闘記は、小宮 CG ディレクターが颯爽と登場。誰もが1度は疑問を抱いたに違いない、「ファイル形式選び」について検証してみました。「Best of ファイル形式」に選ばれるのは、一体どの形式か!? 早速見ていきましょう。

    現場でもバラバラな拡張子

    10 年前と比べて PC の処理能力は格段に上がり、気付けば手頃な値段で買える時代になっていた。思い返せば、当時使用していたマシンは CPU が 700MHZ、メモリは 128MB という代物。メガからギガへとマシンスペックは上がったが、それに比例して作業が楽になったかと言われれば、そんなことはない。悲しいかな、作業量は横ばいである。

    さて今回は、マシンスペックが上がった今でも悩みのタネになっている「データサイズ」と「転送スピード」について話をさせていただきたい。というのも、アニメ業界の片隅で CG 制作をしている身として、昔から気になっていることがあった。それはファイル形式の問題である。

    コンポジター(アニメ業界では撮影と呼ぶ)にレンダリングした CG 素材を渡す場合、大抵の場合はシーケンスデータ(連番画像)での納品になるのだが、そのファイル形式は人によってバラバラなのだ。よく見かけるのは「tga」「tiff」「png」の3つで、特に「tga」は昔からアニメーション業界で根強い人気があるらしく、至る所で目にする。

    これは何故なのか? どういう基準でそのファイル形式にしたのか? 業界で統一したりはしないのだろうか? と、考えれば考えるほど色々な疑問が沸いて出てくる。もちろん、画質や扱える色深度などが判断基準になっているのは間違いない。しかし今回は少し視点を変えて、この3つのファイル形式を「処理スピードとデータ容量がどのくらいコストになるのか」という基準で見ていきたい。

    さくっと検証用にテスト動画を作成し、ファイル形式を比較してみた。



    H.264 デコーダ、1,280 × 720、約 1,670 万色

    次ページへ続く)

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    ドキドキ? の検証スタート!

    動画も作成したところで、早速検証を始めましょうか。今回はアニメーション業界で良く使われる「tga」「tiff」「png」の3つのファイル形式を比較してみました。データサイズに関しては、圧縮/非圧縮の場合でも比較。果たして結果はどうなるか? 今宵(?)最適な拡張子が遂に決まる!!?

    ■検証1 レンダリングにかかる時間の比較

    レンダリング時間の比較

    tga:1分 51 秒、tiff:2分、png:2分 35 秒

    「png」は、保存や展開に時間がかかると聞いた通り、やはり少し遅かった。作業スピードが求められる場面において、処理が遅くなるのは難点といえる。

    ■検証2 データサイズの比較

    データサイズの比較

    tiff(LZW 圧縮):27.6MB、png(※):57.2MB、
    tga(RLE 圧縮):249MB、tga(※):263MB、tiff(※):263MB ※圧縮なし

    「png」はかなりデータ量が抑えられている。「tga」は圧縮あり、なしに関わらず他の形式に比べてデータ量が大きくなることが分かった。また「tiff」は圧縮すればかなりデータ量を抑えられる。HDD も安くなったとはいえ、できるだけコストは減らしておきたいところだ。



    ■結果 Best of ファイル形式は......

    この結果をまとめてみると、
    ・tga:データ量では、他のファイル形式に比べてコストがかかる。
    ・png:データ量は抑えられるが、処理がやや遅くなる印象。
    ・tiff:圧縮するとデータ量のコストを抑えられる。

    なーんだ、じゃあ「tiff」で良いじゃん! と思ってしまうのだが、ここで更なる問題が......。「tiff」を調べてみると「しかしあまりにも自由度の高い表現が可能なので、完全な互換性を保つことが難しくなっている(Wikipedia)」という記述が!! な、何てこった。「tiff」には互換性を検証するコストがかかってしまうのか。うーむ。このファイル形式のモヤモヤはまだまだ続きそうである。

    みなさんはこのモヤモヤ、どうしてますか......?

    TEXT_小宮智彦(CG ディレクター)
    吉祥寺トロン公式サイト