NFTアートがもたらす恩恵とクリエイティブの新様式とは? デジタルファッションデザイナーのメタカワイが語るワークフローと環境構築
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近年、その落札価格などで大きな注目を集めている「NFTアート」。NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とデジタルコンテンツを結び付けることで唯一性を保証している点が特徴の1つとなっており、その市場規模は急速な拡大を見せている。
そのNFTアートの世界にいち早く挑戦し、一定の実績を確立するとともに新たなプロジェクトを始動したのが、デジタルファッションデザイナーのメタカワイ氏だ。今回は同氏に、NFTアートを始めたきっかけや制作フローなどを伺うとともに、マウスコンピューターのクリエイター向けデスクトップPC「DAIV」シリーズの実力やその使い勝手などを語ってもらった。
CGだからこそ表現できる“新しいカワイイ”がコンセプト
CGWORLD(以下、CGW):まずは、CG制作を始めたきっかけを教えてください。
メタカワイ氏(以下、メタカワイ):CGに興味をもったのは、ミクスチャーバンド「KING GNU」を率いる常田大希氏が主宰する音楽チーム「millennium parade」のMVを観たのがきっかけです。フルCGで制作されたMVに感化され、自分も「頭の中の妄想をCGで具現化したい」という欲求にかられました。そこから、同チームのメンバーでMVを担当するmesoism氏(=神戸雄平氏)に憧れて、約1年前からCG制作を始めました。
CGW:たったの1年で、ここまでクリエイティブなCG技術を身に着けたというのはちょっと驚きです。どうやってそんな短期間で習得したのでしょうか。
メタカワイ:スキルシェアサービス「MENTA」を利用し、家庭教師のような感じでプロのCGクリエイターから個人指導をしてもらったのは大きかったと思います。自分の場合、知識ゼロの状態では参考書を読んでも理解しづらいですし、モチベーションも上がらないと思ったので、最初の2ヵ月程度はスタートダッシュのイメージで利用しました。そうやってまずは基礎的な技術をしっかり身に着け、CG制作が楽しくなったら、その後はYouTubeなどを見て勉強するようになりました。
CGW:NFTアートは何がきっかけで始められたのでしょうか。
メタカワイ:NFTアートは、デジタルファッションブランド「RTFKT」(アーティファクト)がきっかけです。RTFKTのプロジェクトを見て「NFTという形式を使って、デジタルファッションアイテムを売買できる」ということを知りました。
さらに、RTFKTからは3DCGのキャラクターで展開する「アバターのプロジェクト」についても学びました。RTFKTでは「Clone-X」というアバターのプロジェクトを手掛けているのですが、それを見て「自分も作ってみたい」という気持ちが強くなりました。いま取り組んでいるアバターシリーズ「DROPS」の制作にもつながっています。
メタカワイ氏
オリジナルのデジタルファッションブランド「META KAWAII」を展開するデジタルファッションデザイナー。NFTアートに積極的に取り組んでおり、現在は3DCGのアバターシリーズ「DROPS」の制作に取り組んでいる。
https://metakawaii.jp/
Twitter:@meta_kawai
CGW:制作されているキャラクターやアイテムはどれも魅力的ですが、デザインで意識している点を教えてください。
メタカワイ:一貫して意識しているのは、「meta kawaii」というコンセプトです。例えば、頭にメロンが乗っているようなヘッドアイテムは現実世界だとあり得ませんが、CGであればまったく問題ありません。このように、現実世界のリミットを外して“CGだからこそ表現できるもっと新しいカワイイ”を追求していくのが、meta kawaiiなのです。
CGW:まさにメタバースを意識したコンセプトだと感じます。では、NFTアートとして3DCGのアイテムを展開するにあたり、ビジネス的なポイントは何だと考えますか?
メタカワイ:ポイントは2つあると思います。1つは「メタバース」です。昨今はメタバースがバズワードになっていますが、そのメタバース内で着用できるファッションアイテムは、現状ではまだ多くありません。そういった背景を考えると、デジタルファッションアイテムを展開していくことはチャンスがあるのではないかと考えています。
もう1つは、Web 3.0などの文脈でもよく語られる「分散型」です。例えば、これまでのファッションブランドは、デザイナーだけが服をデザインしていました。しかし、NFTアートの場合は作品の購入者とのつながり(あるいはコミュニティ)がとても密接になるため、購入者がデジタルファッションブランドのデザインに参加することも十分にあり得ると思っています。なぜなら、NFTアートの性質上、自分が購入した作品のブランドが盛り上がればその作品の価値も上がっていく、つまり「一緒のブランドを盛り上げていくことが、そのまま購入者のインセンティブにつながる」という構図が成り立つからです。この点はNFTアートならではの新しい勝機というか、ユニークな点だと思っています。
CGW:NFTアートがクリエイターに与える恩恵はありますか?
メタカワイ:こちらも2つあると思います。1つ目は、やはり「報酬」でしょう。NFTのお陰で今までよりもずっと作品が評価されやすくなり、お金も集まるようになったわけですから、クリエイターの追い風になるのは間違いないと思います。
2つ目は1つ目ともリンクしますが、「世界中から資金を集められる」という点です。例えば、現実の世界でファッションブランドを立ち上げるためには、どうしても投資家などから資金を調達する必要があるでしょう。
しかし、NFTアートの仕組みを活用すれば、自分の作品をNFTアートとして販売することで、大きな資金を調達することも不可能ではありません。その意味では、クリエイターが「大きな目標を掲げやすくなった」とも感じています。実際に自分も、現在進めているプロジェクトで資金を集めた暁には、現実世界でのファッションブランド展開にも取り組みを広げていきたいと考えています。
PCは基本的にすべての性能を重視、中でも出し惜しみしないのはGPU
CGW:「DROPS」などの作品は、どのようなワークフローで制作しているのでしょうか。
メタカワイ:まずはリファレンスを集めてデザインの方向性や完成形などを固めていきます。それが済んだら、Cinema 4DでのモデリングやMarvelous Designerでのデジタルファッション制作などに取り掛かるとともに、Photoshopやillustratorでテクスチャを作成。最後にそれらをCinema 4Dに集約して最終的な調整を加え、すべてが完了したらCinema 4D上でRedshiftを使ってレンダリングする流れです。なお、今回のDROPS シリーズは制作量が膨大だったこともあり、モデリング部分は他のクリエイターさんに手伝っていただいたりもしました。
CGW:メインで利用するアプリは?
メタカワイ:メインはCinema 4DとMarvelous Designerですね。また、レンダリングの処理にはかなり大きな負荷がかかるうえに、処理しなければならないデータ数も多いことから、Cinema 4Dの機能の中では、ネットワーク上の複数PCを使ってレンダリング処理を行う「Team Render」と、設定した複数のプロジェクトを順次レンダリングしていく「レンダーキュー」を頻繁に活用しています。
CGW:Team Renderでレンダリングをすると、どれぐらいの違いが出るのでしょうか。
メタカワイ:例えば、1024×1024サイズでフレームレートが176fpsとなるMP4形式の作品の場合、単体のPCではかなり高性能でも1時間前後はかかってしまうでしょう。しかし、現在利用している環境では約10台のPCを使ったネットワーク環境を構築しており、その環境であれば10分程度で完了できます。また、現在のプロジェクトでは3000アイテム程度を手掛けており、100~200作品のレンダリング処理をまとめて実行するため、作業の効率化においてはレンダーキューが不可欠というわけです。
CGW:1時間前後かかるレンダリングというのは確かにかなりの負荷です。それを踏まえて、PCの構成で重視している点は何でしょうか?
メタカワイ:どこかが低スペックだとそこがボトルネックになる可能性があるので、基本的にはすべてのパーツを重視している感じです。ただ、あえて挙げるとすれば、やはり「GPU」。レンダリング時間に直結するので、そこは出し惜しみしません。
新型DAIVならスムーズな作業が可能、使い勝手やデザインにも好感が持てる
CGW:今回、現行モデルのデスクトップPC「DAIV Z7-3060Ti」と旧型の「DAIV Z9」で比較検証してもらいました。実際に使ってみた感想は?
メタカワイ:前出のMP4形式の作品をそれぞれのPCでレンダリングしたところ、処理時間はDAIV Z7-3060Tiが60分、DAIV Z9が90分となりました。DAIV Z7-3060Tiは最新世代のCPU「インテル Core i7-12700F プロセッサー」やGPU「GeForce RTX 3060 Ti」を、DAIV Z9は古い世代のCPU「インテル Core i9-9900K プロセッサー」やGPU「GeForce RTX 2070 SUPER」を搭載していますが、GPUの性能を考えれば妥当な結果だと思います。
メタカワイ:また、自分は最終調整などの作業時は、プレビュー表示のようにリアルタイムレンダリングしながら作業ができるRedshiftの「Interactive Rendering」を利用するのですが、DAIV Z7-3060Tiだとカク付くことなくスムーズに作業できました。これであれば、現在の作業にも十分利用できると思います。一方、DAIV Z9ではカク付く印象が多かったので、ここでもGPUの性能差が出たと感じました。
CGW:性能以外で気づいたこと、あるいは気に入った点などはありましたか?
メタカワイ:Team Renderで両方のPCを1ヵ月ほど利用するテストも試みたのですが、どちらも止まることなく安定して動作し続けてくれました。普段使っている他社のPCは不具合で落ちることもあるので、マウスコンピューターのPCは動作時の「信頼性」や「安心感」が高いと感じました。
デザイン面では、取っ手やキャスターが付いている点にとても惹かれました。とにかく持ち運びや移動が楽だったので、今後の展開としてイベント会場などにPCを持ち出す必要が出た際には、とても心強いと感じます。
また、自分はシンプルなデザインが好きなので、LEDライトで光る一般的なゲーミングPCなどはちょっと苦手だったりします。その点、マウスコンピューターのPCは黒を基調としたシンプルなデザインなので、非常に好感が持てました。そういった点も含めると、DAIV Z7-3060Tiは「性能面でも使い勝手の面でも満足できるモデル」だと感じました。
検証した「DAIV Z7-3060Ti」と旧型「DAIV Z9」の機材構成とポイント
DAIV Z7-3060Tiは、インテルの最新の第12世代CPU「インテル Core i7-12700F プロセッサー」とミドルクラスのGPU「GeForce RTX 3060 Ti」を採用したデスクトップPC。メモリは32GB、ストレージはNVMe接続1TB SSD+2TB HDDのデュアル構成を搭載し、700W電源や無線LAN、Bluetoothなども備えるなど、全体としての高い性能に加えて機能性も兼ね備える優れたモデルだ。
一方、比較用に用意した2020年モデルのDAIV Z9は、インテルの第9世代CPUとしては最上位の「インテル Core i9-9900K プロセッサー」や、1世代前のモデルながらも高い性能を有するGPU「GeForce RTX 2070 SUPER」を搭載。メモリも32GBと申し分なく、当時としては非常に高性能であり、現状で十分活用できるクラスのモデルとなる。
DAIV Z7-3060Ti
- 価格
29万9800円(税込)
- CPU
インテル Core i7-12700F プロセッサー(12コア【Pコア 8、Eコア 4】 / 20スレッド / Pコア 2.10GHz、Eコア 1.60GHz / TB時最大4.90GHz【Pコア 4.80GHz、Eコア 3.60GHz】 / 25MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3060 Ti
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
NVMe接続1TB SSD+2TB HDD
- OS
Windows 11 Home 64bit
- 無線
IEEE 802.11ax/ac/a/b/g/n + Bluetooth 5内蔵
- 電源
700W【80PLUS BRONZE】
DAIV Z9(2020年モデル)
- 価格
22万円台(販売当時)
- CPU
インテル Core i9-9900K プロセッサー(8コア / 16スレッド / 3.60GHz / TB時最大5.00GHz / 16MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 2070 SUPER
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
NVMe接続1TB SSD
- OS
Windows 10 Pro 64bit
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6833-1041(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6833-1010(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)