サイバーエージェントグループが切り拓くショールーム、イベント、映像DXの最新事例〜CGWORLD デザインビズカンファレンス 2022夏レポート
2022年7月8日(金)、「CGWORLD デザインビズカンファレンス 2022 夏」が開催された。本イベントは、建築、製造、アパレルなど、各業界の最新のデザインビズが学べるオンラインカンファレンスイベントで、多数の企業や技術者たちが登壇した。今回はその中から、株式会社CyberHuman Productionsと株式会社CA Future Eventによる「ショールーム・イベント・広告・マーケティングが変わる!? DX最新事例と未来」の講演内容をお届けする。
イベント概要
CGWORLDデザインビズカンファレンス2022夏
開催日:2022年7月8日(金)
時間:13:00~18:30
場所:オンライン配信
参加費:無料 ※事前登録制
cgworld.jp/special/cgwviz2022/summer/
7/27-28開催の完全招待制イベント「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」でも発表!
本講演の詳細資料ダウンロードはこちら
https://forms.gle/K7bRZgC58x6umvCF9
コンテンツの作り方を変えるハイテクスタジオ
今回登壇したのは、CyberHuman Productions新規事業開発室室長 / プロデューサーの岡村圭太朗氏と、CA Future Event代表取締役の藤井厚史氏。
岡村氏は2006年にサイバーエージェントに入社し、15年ほどWeb、ムービー、イベントなど様々なコンテンツのプロデュースを担当した後、2020年からCyberHuman Productionsに参画した。
CyberHuman Productionsはサイバーエージェントグループの中でも、3DCGやAIを用いた広告などのコンテンツ制作に特化した会社だ。
2013年ごろからアドテクが重要視されるようになりはじめ、その時期からAIに関する研究開発を進めてきた。
同社では、映像制作のためのスタジオ機能として「バーチャル撮影システム」「LEDスタジオ」「フォトグラメトリースキャン」「モーションキャプチャ」の4つが整備されており、撮影から制作まで全て自社で完結できるようになっている。
製品×空間が自由に表現できるソリューション
次に、3DCGによってビジネスはどう変わるのか、同社の立場からその考えが語られた。
例えば、商品の場合、これまでは製造しないと消費者に見せることができなかった。一方で、バーチャルであれば、製造前の商品でも展示・撮影することができ、商談機会の増加や仕入れ・生産計画の改善に役立てることができる。
もうひとつは、商品を展示・撮影する際のバリエーションの自由度にある。リアルな商品展示・撮影では、用意する商品のバリエーションに限界があったが、バーチャルであればカラーバリエーションや商品同士の組み合わせの自由度が高く、表現の多様性や効果の高い表現の追求に役立つ。
これらのバーチャルのメリットを実現したサービスが、同社の「バーチャルスタジオ撮影」だ。このサービスにより、3DCGだけで商品の展示・撮影を行うことが可能となる。
講演では、ハウスメーカーの家具展示を例に、実際に3DCGを使って展示物の作成、撮影が行われる工程が紹介された。
「実物の商品を撮影する場合、ハウススタジオやセットを借りなければなりませんが、バーチャルだとその場で様々なアセット類をレイアウトし直すだけで、効率的に撮影ができます」(岡村氏)。
他にも、バーチャル展示・撮影はリアルに比べてロケーションに縛られないという利点もある。どんな場所でも自由に撮影することができるので、ロケ時間の短縮やコスト改善、提案力や表現力の向上が期待できる。
さらに、店舗やショールームの開発をバーチャルで行うことで、土地代や建物の開発費用を削減することができる。これは同社の「バーチャルショールーム」というサービスで実現しており、画像と共に実際の取り組みが紹介された。
紹介されたバーチャルショールームでは、ボタンを押すだけで部屋の色が変化し、空間のバランスを確認することが可能だ。
また、ロート製薬の「Obagi」というコスメブランドの事例では、バーチャル空間で商品の閲覧や購入が可能なバーチャルサロンを開設。バーチャルサロン上にゲストを招いたトークショーも開催されている。
「参加型」のしくみがオンラインイベント成功のカギ
続いて、CA Future Event代表の藤井氏から、同社が取り組むイベントDXについて解説が行われた。
「コロナ禍でイベントのオンライン化が進んでいますが、とは言えリアルイベントの方が人々にもたらす影響は強いと思います。その中で弊社が機能開発やプロデュースを進めているのが、リアルに近い演出や表現が可能なオンラインイベントです」(藤井氏)。
同社では、社内外問わず、イベントにあわせてバーチャルステージを制作してきた。社内ではすでに新入社員向けのバーチャル入社式が開かれるなど、バーチャル空間を最大限に活用したイベントが複数開催されている。
「イベントとウェビナーの最大のちがいは、バーチャル空間上で行われる演出だと考えています。オープニングセレモニーや表彰など、イベントのプレゼンテーションにあわせてどう表現を変えていくかを意識しています」(藤井氏)。
また、同社が手がけるイベントはユーザーが参加できるしくみを積極的に採り入れている。例えば、昨年オンラインで開催されたサンリオのイベントでは、リアルタイムでTwitter投票を行うなど、インタラクティブな演出がなされた。
2022年の同イベントは、コロナが落ち着いてきたこともあり、リアルとオンラインのハイブリッド形式で行われた。ハイブリッドであっても、リアルイベントに足を運べない参加者向けに特別なコンテンツを用意するなど、参加型イベントの形式は保持している。
これらのイベントは、どうユーザーに認知を得ていくかが課題となるが、インタラクティブなイベントはプロモーション効果も大きいという。
藤井氏は2021年にオンラインで行われたサンリオのイベントについて、「Twitterなどと連携し、自然に発話を促すしくみをつくることで、メディア掲載も増え、プロモーション効果を最大化することができました」とふり返る。
オンラインイベントはコストパフォーマンスにも優れている。同社では、一度制作したバーチャルステージは開発資産として蓄積しているため、2回目以降使用する際のコストの効率化にも寄与しているという。
例えば、Z HOLDINGSでは、メディア向けと社内向けでバーチャルステージのデザインを変更しているが、ステージ自体は共通のものだ。
最後に藤井氏は、今後の同社の取り組みについて語り、講演を終了した。
「昨今はメタバースという言葉が叫ばれていますが、弊社でもメタバースに関連した社内イベントをひとつ考えています。元々利用していたステージを使って、そこにメタバース空間を加え、セッションの前後にもユーザーが会話やリアクションで楽しめる空間をつくっていきたいと考えています」。
TEXT_江連良介 / Ryosuke Edure
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura