WOWによるCinema 4D、Blender、After Effectsでの検証結果は予想を超えたものに。短い納期でもクオリティが追求できる、サイコム「Lepton Motion Pro Z790/D5」
3DCGをベースに映像制作や空間演出を手がけるWOWが、スタイリッシュかつハイスペックな映像制作マシンとして注目を集めるサイコム「Lepton Motion Pro Z790/D5」(以下、Lepton Motion Pro)をレビュー。PCスペックや仕様に明るく、多数のツールを使いこなすCGディレクター、デザイナーの大賀頌太氏に、実際の現場ユースを想定した具体的な検証を実施してもらった。
サイコム製PCはプライベートでも愛用
昨年25周年を迎えたWOWは、CMやコンセプト映像などの広告領域から空間を彩るインスタレーション映像演出、メーカーと共同で開発するユーザーインターフェイスデザインなど多岐にわたるジャンルを手がけるビジュアルデザインスタジオだ。同社でCGディレクターとして活躍する大賀氏は、モーショングラフィックス制作や4Kをゆうに超える超高解像度の映像制作を得意とし、Cinema 4DやAfter EffectsだけでなくUnreal Engineを用いたリアルタイム映像制作にも知見をもつ。
そんな大賀氏が業務で使用するPC(以下、大賀氏PC)は、AMD Ryzen Threadripper 3970X(32コア)、NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti、メモリ128GBという3年前に購入したプロ向けのモンスターマシン。しかし、実はプライベートで使用するPCは、今回検証に用いたLepton Motion Proと同じくサイコム製だという。「幅広い構成が選べる点も良いですが、何より配線が本当にキレイなのが気に入っています。私自身PCを自分で換装することもありますが、エアフローへの干渉を防ぐ配線やケーブルの隠し方などが本当に勉強になっています」(大賀氏)。
今回の検証機となるLepton Motion Proのファーストインプレッションも、そのときの好印象のまま。配線の仕上がりがイメージ通り丁寧であるのはもちろん、電源が上部に配置されている点にも着目。「側面がガラスパネルで中が見えるのが格好いいですし、デスクの上に置いて使いたいと思う人も多いと思います。Lepton Motion Proは上部に電源があるために床面のほこりを吸いにくく、何より上部パネルが取り外し可能なのでエアダスターによるメンテナンスがしやすいのがポイントです」(大賀氏)。また、CPUクーラーもNoctua NH-U125 chromax.blackにアップグレードされており、高負荷な状態で使用しても静音性が保たれているという。
第13世代(Raptor Lake)インテル CPUのポテンシャルを遺憾なく発揮
今回はCinema 4DやBlenderなどツールごとに5通りの検証を行なっている。検証機はインテル Core i9-13900K、GeForce RTX 4070 Ti、メモリ128GBとハイエンドな構成で、特にスペック向上の目覚ましい第13世代(Raptor Lake)インテル CPUを搭載している点が特徴。これを遺憾なく発揮したのが、After Effectsによる高解像度を想定した検証だ。
検証では4Kを横に3枚並べたサイネージ映像をAfter Effectsでプレビューし、作業の快適性とレンダリング速度を確認。この規模の映像になるとプレビューが困難なケースさえあるが、Core i9-13900Kは36MBのL3キャッシュをもち、128GBのM.2 SSDの恩恵もあってか普段より2倍近い速度でプレビューができている。
また、レンダリング速度も41分8秒から15分7秒と大幅に短縮。コア数だけで見ればRyzen Threadripper 3970Xが多いものの、計算速度は大きく差を付けたかたちとなる。「GPUは世代によって差が見えやすいですが、CPUは検証の機会が少なかったので大きな衝撃を受けました。たった3年でここまで大きな差になるとは思っていませんでした」(大賀氏)。
圧倒的な有意差を示したRedshiftによるレンダリング検証
一方のGPU検証については、Cinema 4DでのクロスシミュレーションとRedshiftでのレンダリング速度を検証。クロスシミュレーション速度はVRAM容量に比例するため、1GBの差でGeForce RTX 4070 Tiを搭載したLepton Motion Proがわずかに優位な結果が得られた。
これと比較して大きな有意差を示したのがRedshiftによるレンダリングで、9分22秒だったレンダリング時間が4分44秒まで短縮。レンダリングが重くなりがちなサブサーフェス・スキャタリング(SSS)を多用しても問題なく、短い納期でもクオリティが追求できるようになるとの期待感も示された。
また、フルCGでの映像制作が多い大賀氏が普段から業務で用いるBlenderでの作業でも高速性を実感。約30万のオブジェクトを配置したエンバイロンメントシーンのレンダリング検証では、大賀氏PCが1分21秒だったのに対し、0分34秒と大幅に短縮された。ビューポート上も大賀氏PCでは4fps程度しか出ておらずリアルタイムに操作するのは困難だったものの、Lepton Motion Proでは8~12fpsと快適性が大きく向上。
また「おまけ」と称して行われた画像生成AIのStable Diffusionで同プロンプトを入力した際の画像生成のスピード検証も、VRAM容量の差から20%ほど短縮されている。
衝撃的な変化──「2、3年前のPCでも買い替える価値はある」
検証全体を通じて、予想を超えた性能差を見せたLepton Motion Pro。大賀氏はここ2、3年の技術革新に触れながら、本機について「日本国内のほぼ全てのクリエイターやエディターにとって十分なスペックだと感じました。実作業の面ではベンチマーク以上の差が出ると思った方がよく、2、3年前のPCを使っているという人でも買い替える価値はある、そう感じるくらいの衝撃的な変化がありました。しかも、2、3年前であれば100万円を超えるモンスタースペックのPCからの大幅な性能向上が、半額以下で手に入るというコストパフォーマンスの点でもとても魅力です」と高く評価。
ツールを問わず情報量の多さが求められる昨今の制作環境において、レンダリング速度だけでなくビューの軽さや快適性、何より安定性を兼ね揃えたサイコムPCがもたらすストレスフリーな制作環境が品質に与える影響は大きいはずだ。
Lepton Motion Pro Z790/D5
- CPU
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インテル® Core™ i9-13900K(3.00GHz/24コア/32スレッド)
- GPU
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NVIDIA GeForce RTX 4070 Ti
- メモリ
-
128GB
最新情報はこちら
www.sycom.co.jp/custom/model?no=000914
大賀氏が業務で使用するPC
- CPU
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AMD Ryzen Threadripper 3970X(32コア)
- GPU
-
NVIDIA GeForce RTX 2080 Ti
- メモリ
-
128GB
TOPIC 1 Cinema 4D:クロスシミュレーション速度に関する検証
大賀氏が普段から使用するCinema 4Dのクロスシミュレーション速度に関する検証では、GeForce RTX 2080 Ti(11GB GDDR6)搭載の大賀氏PCで5分10秒、GeForce RTX 4070 Ti(GDDR6X 12GB)搭載のLepton Motion Proで5分ちょうどと、極端に大きな差は見られなかった。検証シーンは分割数の多い複数のクロスの衝突。基本的にはVRAM容量と速度が比例するため、1GBの差がそのまま結果に現れたかたちになる。
TOPIC 2 Cinema 4D + Redshift:レンダリング検証
Cinema 4DでのRedshiftレンダリング検証では、大賀氏PCが9分22秒、Lepton Motion Proが4分44秒と大きな速度差が見られた。SSSを使用したシーンデータは繊細な質感表現が可能な一方で重くなりがちだが、NVIDIA Ada Lovelace アーキテクチャで構成された第4世代のGeForce RTX 4070 Tiであれば2000番台フラッグシップと比較して2倍以上の高速化が見込める。
TOPIC 3 Blender:ビューポート負荷の確認およびレンダリング速度の比較
Blenderではビューポート負荷の確認およびレンダリング速度の比較を行なった。シーンは約30万のオブジェクトで構成されており、従来機ではリアルタイムプレビュー時に約4fps程度しか出ていなかった。一方、Lepton Motion Proでは8~12fpsとプレビューが高速化し、作業能率が大幅アップ。レンダリング速度も1分21秒から0分34秒と2.5倍以上高速化しており、改めて第4世代の高いパフォーマンスを示す結果となった。
TOPIC 4 After Effects:高解像度での作業検証
After Effectsでは、デジタルサイネージを想定した4K×3枚(11,520×2,160)という高解像度での作業検証を行なった。After Effectsは取り扱う映像の解像度が高くなると途端に重くなる傾向にあり、特殊なサイズを扱う場合はリアルタイムプレビューが難しい場合も多い。Lepton Motion Proではレイヤーごとの負荷が1/2~1/3と小さく、プレビューも体感ベースで2倍以上の高速化、さらにレンダリング速度は41分8秒から15分7秒と大幅に短縮されている。カタログスペックでは従来機がコア数、クロック数ともに優れているが、実際の結果はIPC(Instruction per Clock)に優れる第13世代インテル Core プロセッサーが大きくリードしたかたちになる。
TOPIC 5 Stable Diffusion:ローカル環境でのスピード比較
Stable Diffusionをローカル環境で使用した際のスピード比較では、同じPrompt、Seed値での出力において大賀氏PCが18秒、Lepton Motion Proが14秒と順当な結果を示した。速度はVRAM容量に比例しており、「何度もトライアンドエラーを繰り返して良い絵が出るのを待つ」というAI画像生成においては1枚ごとのわずかな差も“塵も積もれば山となる”で効いてくる。
ワウ株式会社/WOW inc.
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株式会社サイコム
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TEXT_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_園田省吾 / Shogo Sonoda(AIRE Design)