フォトリアルなCGI/VFXによるソリューション提案を精力的に行うアクセンチュア ソングが、不動産分野でのデジタルツイン制作体制強化のため、採用を強化中だ。アクセンチュア ソングがデジタルツインに着目する理由から、マイルストーンとなった東急不動産のデジタルツイン制作事例、社内の労働環境まで、CGI/VFXチームのコアメンバー3名から話を聞いた。
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cgworld.jp/jobs/30616.html
募集職種
①3DCGアーティスト(ジェネラリスト)
②リアルタイムソフトウェアデベロッパー
複数のクリエイティブブランドが
統合して生まれたアクセンチュア ソング
アクセンチュアは世界49ヶ国で展開する総合コンサルティング企業。あらゆる業界における経験と専門スキルから、多角的に顧客課題のソリューションを提供している。
そしてアクセンチュア ソングは、アクセンチュアを構成する5つの組織のひとつ。デジタル・クリエイティブ・コンテンツ・CGI/VGXなど様々な領域のブランドを「アクセンチュアソング」として統合し、お客様の価値を最大化することを目的に組織されている。
なかでも、CGI/VFX分野で新たな体験価値を生み出しつつビジネス価値を向上させる専門家集団の仕事を今回は深掘りしたい。
営業ツールとして活用するためマンション物件をデジタルツイン化
アクセンチュアは2022年より、東急不動産と戦略的パートナーシップを締結し、東急不動産の新築分譲マンションブランド「BRANZ(ブランズ)」の物件について、高精細なCGI技術でデジタルツイン化を進めている。
従来のモデルルームを超える体験を得られることに加え、住まいのライフサイクル全体を通じた新しい共創型の事業開発として推進していくことを目指した事業であり、これまでの標準的なモデルルームの建設、運営および撤去による環境負荷を低減することでサステナビリティの貢献にもつながるという点でも注目されている。
このプロジェクトの詳細は昨年開催されたUNREAL FEST WEST ’22でも紹介され、話題を呼んだ。
本協働の背景にあったのは、COVID-19の影響により住宅展示場やマンションギャラリーへの来訪者が減少したことであった。COVID-19の流行の前後で約40%も来訪者が減少しており(アクセンチュア調べ)、代替手段の模索が急務となった。そこでアクセンチュア ソングのCGI/VFXチームは、Unreal Engineの表現力を活かしたデジタルツインを提案し、オンライン商談における物件のウォークスルーや、VRコンテンツ(バーチャルモデルルーム体験)として活用されていった。
アクセンチュア ソングではこのデジタルツインに大きな可能性を感じている。現在は住宅販売用途で利用されているが、今後は商業施設やオフィス、都市開発やリゾート開発といった事業領域の拡張、さらにはブランドやマーケティングといったバリューチェーンの拡張まで可能性が広がっているためだ。CGI/VFXチームのアソシエイト・ディレクターLee, SunJin氏は「デジタルツインはメタバースの基礎とも言える技術です。アクセンチュアは、デジタルツイン活用のフェーズが進んだ近い将来において、トップランナーとしてビジネス変革を主導していきます」と意気込みを見せた。
なお、アクセンチュア ソングが手がける案件は自動車業界におけるHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)開発支援やビジュアライゼーション、通信業界やファッション業界向けのメタバースコンテンツの提案や制作など、多くの産業、企業にわたり、CGIやVFXの技術力をベースとして、さまざまな業界向けのビジネスソリューションサービス提供に取り組んでいる。
ゲーム開発のノウハウを活かし軽量化&高クオリティを実現
「不動産営業の担当者がビジネスノートPCを持って顧客先に伺い、顧客はWebブラウザで高品質なCGIによるバーチャルモデルルームのウォークスルーを体験する」。このソリューションの実現に向け、アクセンチュア ソングのCGI/VFXチームはUnreal EngineとPixel Streamingの利用を選択。マシンパワーに限りがあるビジネスノートPCでも、ビジュアルクオリティを保ちながら詳細な室内の内覧ができる、優れたデジタルツイン体験コンテンツを生み出すことに成功した。
本プロジェクトは映像業界出身の濵村 豊氏とゲーム業界出身の堀井陽介氏が中心となって制作が進められ、特にゲーム開発のノウハウが活かされている。
堀井氏は「Pixel Streamingのためのチームのワークフローを構築しました。クラウドで稼働する計算資源は即ち運用コストであるため、チームが目指すビジュアルクオリティとの両立が課題です。計算資源あたりのビジュアルクオリティを最大化すべく、アセットのリダクションを推進する一方、アーティストの表現や作業効率を犠牲にしないよう配慮しました。トレードオフの中で妥協しない表現を実現する事は、CGに関わるエンジニアとして腕の見せどころと考えています」
「開発インフラからサービス環境まで、全てはクラウド上に構築されています。アクセンチュアには様々なタレントを持ったチームがあり、クラウドの活用において大抵のことは社内で完結できます。オンラインサービスですので、ユーザー認証、フロントエンドのデザイン、疎通確認など開発は多岐にわたります。今回のようなサービスを開発できたのは、このようなチーム横断で課題を解決できる体制が活用できたことにもあります。」
なお、本プロジェクトの進行では苦労もあったという。「建築業界ではBIMデータの利活用が進められつつありますが、実際の現場では竣工まで細かな設計の変更が行われるため、2D図面での管理が一般的です。今回のプロジェクトにおいてもBIMデータではなく2D図面データが支給され、いちからモデリングする必要がありました。一口にマンションといっても部屋の間取り、ドアなどの建具、大型キッチンからコンセント・スイッチのような小さな住宅設備まで多種細かくあり、デジタルツインの特性上アップに耐えられるように図面通りに細かくモデリングしていきました。さらに、間取りや住宅設備の設計の変更が行われるたびに修正が発生しそれに対応していくのが大変でしたね。」と濵村氏は語った。
チェックバックの方法についても、スムーズな進行のためにあらかじめルールを設けていたという。Microsoft teams上でチェック画像をまとめたパワーポイントのデータを関係者全員と共有、チェックバックは書式をそろえてひとつのパワーポイントに直接記入していただく、といった工夫により、複数のデータを確認する手間を軽減した。「実際のマンション建設には様々な職種の方がデジタルツインをチェックします。一定のルールを設けないともらったチェックバック内容を理解できず、追加質問が発生するなどコミュニケーションのコストがかかってしまっていました。今後はPixel StreamingやftrackなどのCG制作現場のみでしか活用できていなかったものをデジタルツイン制作にかかわるすべての方に対象を広げ、より効率的に制作状況やチェックバックをもらえるよう改善したいです。」と濵村氏は振り返った。
新しい試みなだけに課題も多かったとのことだが、多様な分野からアクセンチュア ソングに参画したクリエイターたちがもつノウハウがあればこそ実現できたことは間違いない。これからもアクセンチュア ソングを基点に多業種に3DCGの技術が広く利用されていくだろう。
Unreal Engine 5のパイプライン開発とプロシージャル活用が急務
CGWORLD(以下、CGW):ではここからは社内で働くクリエイターの方々にお話を伺います。まずは自己紹介をお願いします。
Lee, SunJin氏(以下、Lee):アソシエイト・ディレクターのLeeと申します。私はアメリカやニュージ―ランドなど海外のCGI/VFX制作プロダクションで多くの著名なアーティストやエンジニアとともにCGI/VFXの制作に携わってきました。8年ほど前にアクセンチュア ソングに参画し、現在は日本のCGI/VFXチームの責任者を務めています。
Lee, SunJin氏
Associate Director
アクセンチュア ソング CGI/VFXチーム
濵村 豊氏(以下、濵村):クリエイティブプロダクション マネジャーの濵村です。CGスーパーバイザー、CGプロデューサー的立場を兼任しています。以前はTVCMなどCGを使ったビジュアル制作をメインにやっていました。さらに前だとゲーム開発に携わっていたこともあります。
濵村 豊氏
Creative Production Manager
アクセンチュア ソング CGI/VFXチーム
堀井陽介氏(以下、堀井):堀井と申します。2021年からアクセンチュアに参画しまして、建築や自動車分野でのリアルタイムCGI制作に携わっています。ゲーム業界出身で、入社前はUnreal EngineやCRYENGINEを長年使用し、インゲームシネマティクスやシェーダー等の3DCGに関わる開発を担当してきました。
堀井陽介氏
アクセンチュア ソング CGI/VFXチーム
CGW:3DCGアーティスト・リアルタイムソフトウェアデベロッパーを募集されているということですが、どういった背景からでしょうか?
Lee :私たちは、今回ご紹介した東急不動産様のプロジェクトのように、最新のCGテクノロジーを用いてクライアントの様々な課題の解決につながるような高品質なCGコンテンツをつくっていくことが求められています。今後は新しいパイプラインの構築やHoudiniのようなプロシージャルモデリングの活用も積極的に推し進めていきたいと考えています。そのためには主にゲーム開発のノウハウを持つテクニカルアーティストをはじめ、積極的にチャレンジしてくれる人材が必要になってきます。同時に、デジタルツインにはビジュアルクオリティも求められますので、デザインの経験がある3DCGアーティストの方もぜひ参画いただきたいと思います。
濵村:先ほどのマンションのデジタルツインに関して言っても、ビジュアル面においてはアーティストのスキルに依存しているところがあります。現状は部屋数がそれほど多くないのでモデリング、修正に対応できているのですが、さらに物件数が増えてきた場合やより柔軟に設計変更に対応できるようにするにはパイプラインやプロシージャルの活用による半自動化は欠かすことはできないと感じています。
堀井:アクセンチュアソングに入って改めて感じるのは、Unreal Engineに精通したテクニカルアーティストやエンジニア、3DCGアーティストが一体となってツールやライブラリ開発をしていく必要があるということです。限られた予算、期間のなかで、より高いクオリティをもつコンテンツを制作しクライアントの課題解決を図っていくためには、エンジニアとアーティストが一体となって考え、アイディアを出し合う場面が多々ありますね。
Lee:ちなみに、堀井さんはUnreal Engineの経験を武器に、アクセンチュアソングへ中途で入社されたのですよね。
堀井:はい。もともとはずっと国内外のゲーム業界に身を置いていました。近年、高度化したゲームの技術が業界を超えて活用される事例が増えていますよね。そんな中、アクセンチュアソングでもUnreal Engineを使用していることを知り、ここであればリアルタイムCGに代表されるゲームの技術を世の中のために広く活用できるのではないかという思いに至り、入社を決意しました。
世の中を便利にしていくことに"ワクワクできる"人に向いている
CGW:アクセンチュア ソングではどういった人材を求めていますか?
Lee:私たちの仕事は、デジタルツインを含めて、CGIの活用先としてこれから成長が期待できる他業種の顧客に対してソリューションを提案することです。ただ単にコンテンツをつくっていれば良いわけではなく、日々学んでいかなくてはなりません。ですから、挑戦していきたいという人にとっては、とてもエキサイティングな場所になるはずです。
濵村:最近だとAIやクラウドなど、技術的な進歩やデザイントレンドなど様々な領域にアンテナを張って学んだり、試したりしていく力が求められる部分があります。それらの技術やアイデアとUnreal Engineの技術を組み合わせることで新しいソリューションが生まれてくるのだと思います。
堀井:想像力や地頭力が求められると思います。ただハイクオリティなものをつくるだけではなくて、顧客の課題解決まで考えてものづくりをしているからです。また、人の役に立つことや、世の中を便利にしていくことにワクワクできる人にも向いていると思います。
CGW:働く環境としてはいかがですか?
堀井:ひとつのプロジェクトのなかで、自分とは全く異なる知見や経験をもった人と一緒に仕事をするため、いろいろと勉強になることが多いです。オフィスも他のチームとコラボレーションしやすいように設計されております。リモートワークもできますので、働きやすい環境と言えると思います。
濵村:社内にはコンサルタントやエンジニア、CGアーティストなど様々なバックボーンを持った方がいるので様々な価値観に触れることができますね。残業や休日出勤に関してもしっかりと管理されていて、プライベートの時間も確保できていていると思います。ワークライフバランスを重視される方にも良い環境と思います。
Lee:今、コロナはだいぶ落ち着いてきましたが、リモートとオフィスを使い分けられるようにしてあって、戻れる人は戻るというスタンスで仕事をしてもらっています。オフィスのレイアウトとしては、CGI/VFXチームの隣にデザインチームがあって、お互いにコミュニケーションを取りやすい形になっています。会社としてのKPIは、オフィスを使うことだけでなく、ひとりひとりの作業効率も併せて考えているので、上手くバランスを取ってやっていこうということになっています。
CGW:グローバルカンパニーですが、社内でのコミュニケーションで英語は使いますか?
濵村:そうですね。CGI/VFXチームは前身がドイツのMackevisionということもあり外国籍の方も多数いて、チーム内でも英語のコミュニケーションはあります。また、社内向けのカンファレンスや教育の映像でも英語が多いです。ただ、英語力云々よりも日本人以外のスタッフと関わる機会が多いと、価値観の違いから発見が多くて楽しいですよ。
Lee:英語力としては即戦力レベルを求めているわけではありません。英語に対してアレルギーさえなければ、入社してからでも十分コミュニケーションがとれるようになると考えています。
デジタルツインのその先へ
CGW:ありがとうございます。最後に、デジタルツインのその先の未来に期待していることを教えてください。
堀井:これからもっとゲームエンジンが業界を越えて使われるようになり、他業種とのシナジーを生み出していくと思います。Unreal Engine 5の登場で、特にフォトリアルなCGの需要は高まっていくでしょうね。
濵村:ハードウェアの進化でHMDなどのハードウェアデバイスなしでXRコンテンツが見られるようになったら面白そうですね。だいぶ飛躍しますが、そういう世界で何ができるかどんなコンテンツがつくれるんだろうと考えるのは面白そうです。
Lee:今、あらゆる業種でDXがキーになっていて、しかも非常に流れが速いです。アクセンチュア ソングのCGI/VFXチームとしては、まずは開拓の余地が広く残されているゲームエンジンを活用したリアルタイムビジュアライゼーションの分野で、私たちの価値を発揮していきたいですね。そしてそれを起点に、さらに拡張可能なコンテンツを展開することで業界をリードしていきます。その先は、時代の流れに合わせながらメタバースのようなより大規模なコンテンツを通じて変革する社会の中で成長を続けていくつもりです。
CGW:ありがとうございました。
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cgworld.jp/jobs/30616.html
募集職種
①3DCGアーティスト(ジェネラリスト)
②リアルタイムソフトウェアデベロッパー
TEXT _kagaya(ハリんち)
PHOTO_弘田 充
EDIT_柳田晴香