Substance 3Dを駆使して差をつける! 学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」上位入賞者座談会【アンケート回答で書籍プレゼント】
CGWORLDが主催する学生向けCGトライアル「WHO'S NEXT?」。2023年第2弾の審査結果が11月に発表されたことを受け、入賞者のなかから、Substance 3D製品を使用する3名に集まってもらい、座談会と作品の解説をしてもらった。
受賞者たちが「各種コンテストの中で最もハイレベル」と話すこのトライアル。実際に上位に入った若きアーティストたちは、Substance 3D Painter(以下、Substance Painter)をどのように使いこなして3DCG静止画を仕上げていったのか?
キャリアも出身もスタイルも異なるからこその多角的な視点で行なわれ、まだあまり知られていないTIPSや創作ヒントも数多く披露された。現在CGを勉強中の方はもちろん、Substance Painterをこれから使ってみたい方や教育機関関係者も必見の座談会となった。
コンテストを通して成長していくー受賞者3名による座談会
「WHO'S NEXT?」に掛ける思い
CGWORLD(以下、CGW):みなさん、よろしくお願いします。まずは自己紹介からお願いできますか?
金武康平氏(以下、金武):トライデントコンピュータ専門学校で、主に3DCGを学んでいます。元々ゲームが好きだったことからCGに興味を持ち、専門学校に入学してから制作を始めました。ゲーム業界でCGモデラーになることを目指して勉強を続けております。
金武倖平さん
トライデントコンピュータ専門学校2年
大学2年生の時にゲーム好きが高じてCGデザイナーを目指し、大学を中退し専門学校に入学。
ゲーム業界のキャラクターモデラー志望。クリーチャーや動物をつくるのが好き。
Twitter:twitter.com/moyomotter
川上健太氏(以下、川上):吉田学園情報ビジネス専門学校に通っています。僕は高校1年生の頃から2Dでイラストを描くことが趣味で、風景画のパースを正しくするためにBlenderでモデルをつくるところから3Dを触り始めました。それをきっかけにどんどん3DCGにハマっていきました。ゲーム業界の背景モデラーを目指しています。
川上健太さん
吉田学園情報ビジネス専門学校2年
趣味で描いていた風景画のパースを参考にするために3DCGをはじめた。
オカルトが好き。現在Houdiniを勉強中で、いつか大規模でファンタジックな町をCGでつくるのが目標。
和久田瑞希氏(以下、和久田):京都外国語大学 国際貢献学部グローバルサイエンス学科に所属しております。大学では全くCGはやっていないのですが、SNSでフィギュアなどのモデルを投稿している方を見て興味を持ち、大学入学後に趣味として始めました。最初の2年くらいはMayaでモデリングを少しやっている程度だったのですが、昨年ごろからコンテストに出す作品を制作しようと思い、Substance 3D Painterを本格的に始めました。キャラクターモデラーを志望しています。
和久田瑞希さん
京都外国語大学国際貢献学部グローバルスタディーズ学科 3年
趣味で3DCGをはじめ、CGコンテスト応募をきっかけに本格的に勉強を始める。
現在はセル調のキャラクターモデリングを勉強中。
Twitter : twitter.com/1108hero0709
CGW:皆さんは「WHO'S NEXT?」への応募は今回が初めてですか?
金武:今回で3回目です。1回目はまったく手応えがなく、2回目で16位。今回はかなり試行錯誤をして出したので、最初のときからクオリティは大きく上がった実感が自分でもありました。
CGW:結果は2位。生配信の結果発表では最後のほうまで名前が挙がらなかったのでドキドキされましたよね 今回の「WHO'S NEXT?」への応募に際して何か意識されたことはありますか?
金武:前回、前々回のコンテスト結果と審査員の方々の講評を見て、どういった作品が上位に来ているのか、どういったところが見られているのかを分析しました。やっぱりストーリー性や見た人がどう思うかといったところまで考えられていると上位に来やすいのかなと思ったので、そこは意識しましたね。
川上:僕の場合はコンテストに出したのが今回が初めてなんです。学校の先生に、「出してみたら?」と勧められて、そのときちょうどつくっていた作品で応募しました。
CGW:それでいきなりの3位。スゴいですね!
和久田:私はWHO’S NEXT?は今回で2回目で、2023年の第一弾から挑戦しています。
CGW:コンテストは制作のモチベーションに繋がりますか?
金武:やっぱりひとりでつくっているよりも熱が入りますね。特に「WHO'S NEXT?」はレベルが高く、挑戦したい気持ちがほかのコンテストよりも強いですね。賞品よりも自分の実力を試したくなるというか。
和久田:私も同じですね。本格的に作品をつくろうと思ったのもコンテストがきっかけでしたし、コンテストがなかったら成長もできなかったと思うので、CGを続けられていなかったんじゃないかと思います。いろんな方に見てもらって講評してもらうことでどんどん成長していくって感じですね。
川上:やはり自分と同じ学生の作品を数多く見ることは刺激になりますし、プロのクリエイターの方から直接アドバイスやヒントを頂けるので学びになります。コンテストに参加してよかったなと思っています。
タイムラプス動画やAdobe公式Tipsで技術を習得
CGW:皆さん学校でも勉強されているとは思いますが、CGの自主学習・制作時間は1日あたりどのくらいでしょうか?
和久田:私はいまは大学が冬休みなので、休憩時間以外はほぼ全て3DCGに触れています。平均すると6〜7時間くらい、多いときは10時間くらいだと思います。
金武:僕も就活期間以外は、制作しているときは10時間とか触っていたと思います。
川上:僕もチュートリアル動画を流しながら作業して、6~7時間かそれ以上という感じです。
CGW:チュートリアル動画の話題が挙がりましたが、みなさんはどのような形で技術を習得したり、情報を得ているのでしょうか?
金武:学校の授業で学ぶことももちろんありますが、他にも参考書だったり、YouTubeの「HigaCGチャンネル」のチュートリアル動画を見たりして勉強しています。
川上:僕もチュートリアル動画を見て、タイムラプスの映像をスロー再生してひとつひとつ確認をして技術を学んでいます。動画だと検索しても出てこない情報や技術を学べるので便利に利用させてもらっています。
和久田:私もそうですね。ネットで逐一調べたり、Substance Painterであれば、Adobeが公式で出しているTips動画を観ています。基礎の基礎から教えてくれるので、始めた最初のときは見るだけで理解度が全然違いましたね。
金武:あとは日本語で検索しても出てこない場合は、検索して英語のサイトを見て、翻訳をかけながら読んでいます。
コンテスト応募作のクオリティアップのために必須のSubstance Painter
CGW:皆さんの場合、工程としてはどこに一番時間をかけていますか?
川上:僕はモデリングに一番時間がかかってるんじゃないかなと思います。今回の作品はキャラクターでしたが、背景メインの作品の場合はその造形工程に一番時間をかけています。
金武:やっぱりモデリング、場合によってはスカルプトに時間がかかりますね。テクスチャは、むしろすごく楽しんでできるので、あっという間に過ぎる作業みたいな感覚です。
和久田:私もたぶん、モデリングですね。テクスチャリングはSubstance Painterがあれば、ある程度のレベルのものはサッとつくれるので。でももしSubstance Painterがなかったらモデリングと同じくらい時間がかかっていたと思います。
CGW:皆さんがSubstance Painterをご自身の作品に採り入れようと思ったきっかけを教えてください。
金武:僕の場合は、CGを学び始めて調べていたときに、CG業界のプロの皆さんが「テクスチャ制作はSubstance Painterが一般的」と言っていたのがきっかけです。一般的に普及していますし、実際に触ったところ便利な機能も揃っていたので使おうと思いました。
川上:僕の場合は、学校がライセンス契約をしていて最初からPCに入っていたんです。メイキングやチュートリアル動画を見ているうちに気になって使おうと思ったら、すでにインストールされていたのですぐに使い始めました。
和久田:私はSubstance Painterという名前すら最初は知らなくて、テクスチャを作ろうと思った時に2Dでつくる方法しか分からなかったんです。知ってからも新しいソフトを使うのにはどうしても抵抗があってしばらく迷っていたのですが、コンテストに作品を出そうと思ったときにクオリティアップのために使わないといけないな、と思って導入し、今は手放せない存在になりました(笑)。
CGW:Substance Painterを取り入れて良かったことは何ですか?
和久田:直感的に使えるところですね。チュートリアル動画を15分くらい見ただけで、スマートマテリアルを使ってリアルなテクスチャを出せるようになったり、とても使いやすく、すぐに活用ができました。
金武:テクスチャ作業にかける時間が圧倒的に時短になりましたね。UVに書き込むタイプではなく、3D空間上で直接書き込むことができたりその場で質感も設定できるので、クオリティも高めやすいです。
川上:僕はSubstance Painterだけでなく、Substance 3D Designerでオリジナルのマテリアルをつくったりもしています。以前お寺のモデルをつくる際に、檜皮葺という素材を重ねて段差があるような屋根をマテリアルでつくる必要があり、Substance 3D DesignerでHeightの調整を行なって制作しました。
3名の受賞作の制作手法を紐解く!
■『愛犬との休日』-金武さん作品解説
Substance PainterとXGenを使った犬の毛の表現
金武:休日にペットのゴールデンレトリバーとくつろいでいるシーンをコンセプトに、犬の可愛らしさを出そうと描きました。制作期間は約1ヶ月です。CGでいかに犬の毛を本物らしく見せられるかにこだわりました。毛自体はMayaのXGenでつくり、Substance Painterを使って3D上で毛のテクスチャを描くことでリアルに見せていきました。
和久田:Substance Painterでつくった犬の毛のテクスチャをベースにXGenで毛を乗せていったということですか?
金武:そうですね。Substance Painter上でつくったテクスチャをXGenに入れることで、XGenの毛の色に反映されるかたちですね。
金武:犬の毛を実際に見てみると、全体をみると茶色くても中側の部分は白かったり、と決して一色ではないんですよね。それをSubstance Painterの画像投影機能を使ってわかりやすく見せるなどの工夫をしました。
金武:あと、毛に隠れて犬の体はほぼ見えないのですが、実は皮膚の感じもつくり込んでいて、ザラザラした感じを出せるようこだわっています。
CGW:この作品は犬をスマホで撮っている視点、という構図がおもしろいですよね。どのように考えられたんですか?
金武:僕自身が犬を飼っていたときの経験をもとに考えました。僕がくつろいでいると、近くに寄ってきて寝ちゃうんです。それを見ると思わず写真を撮りたくなるので、その情景を上手く表現できたらと思って描きました。まあ、実際に飼っていたのはチワワなんですけど(笑)。
CGW:チワワだったんですね(笑)
川上:犬もそうですが、スマホを持っている手の造形やシワもすごく丁寧ですよね。どこまでテクスチャでつくっているのでしょうか?
金武:シワをテクスチャとして書き込むことはしていないですね。なるべくZBrush上でリアルにつくっていって、ベイクするといった流れですね。
金武:あとは、どうやったらソファがリアルに見えるんだろうと試行錯誤しながらつくってました。置いてあるクッションはスマートマテリアル機能を使っています。毛玉もパラメータをいじると自動で生成してくれたので、とても便利でした。
■『StreetPerformance』-川上さん作品解説
こだわりの世界観とつくり込まれたキャラクター
川上:これまでキャラクターを複数配置した風景のショットをつくったことがなかったのですが、今回の応募を機に挑戦してみようと思い、少し賑やかな通りを大勢のキャラクターが歩いている構図で制作しました。また、もともとスチームパンクの世界観が好きだったのでそのイメージも取り入れて仕上げました。
川上:メインキャラクターの頭部になっているのはニキシー管です。ランプを頭にしてみたら面白いかなと思って。その下に口をつけてモデルを起こしています。
CGW:スチームパンクの世界観であっても、人体ではないパーツを使って表現されているのは珍しいし面白いですね。一番こだわったところを教えて下さい。
川上:一番はメインキャラの造形です。コートは全部Blenderのスカルプト機能で、テクスチャはすべてSubstance Painterでつくっています。このポーズの資料がなかったので、家族の革ジャンを借りて自分でポーズを取って写真を撮ってからスカルプトしました(笑)。このキャラクターが路上演奏のために使っているのがバンドネオンというアコーディオンみたいな楽器なんですけど、両方の左右どちらにも複数のボタンが付いているので、たくさんあるボタンを弾きやすいようにキャラクターの指の本数を6本にしています。
CGW:革のコートの質感はどのように表現したんですか?
川上:まずベースをつくって、その上からどんどん汚れや傷のレイヤーを重ねていきます。その際に汚れの種類や経年劣化の仕方をきちんとグループで分けることを意識しています。
和久田:襟のところに糸のほつれみたいのがあると思うのですが、これはポリゴンでつくっているんですか?
川上:はい。ポリゴンを分けて、その上からメッシュをつけています。この作品では1枚絵を綺麗にしたかったので、ハイトを使うよりも、実際にメッシュを割いてつくることを意識しました。
和久田:Substance Painterに入ってるときにはすでにポーズがついていますが、元々はTポーズからポーズをつくったりスキニングしたりして落とし込んだんですか?
川上:最初はその手順で進めていたのですが、どうしてもコートのシワや折れ目とか、このポーズ特有の革の挙動に納得がいかなかったので、はじめにポーズを固定してそれを彫刻のようにスカルプトでつくる方法に変えました。
CGW:他に何かこだわりポイントは?
川上:今回の作品では見栄え重視で、ポリゴンの数量はあまり気にせずつくったのがこれまでの作品とは違っているところだと思います。やはり一枚絵を綺麗にしたかったので、元々ポリゴンを抑えているローポリに、さらにポリゴンを割いてハイポリを上から重ねています。
CGW:動かすわけではないからレンダリング1枚勝負ということですね。
金武:テクスチャのサイズはどのくらいですか?
川上:このキャラクターはUDIMで1008まで使っています。メッシュも抑えていて、元々データ量もすごい多かったのでここまでテクスチャを増やしても変わらないだろうと。それで多くしています。
CGW:制作期間はどのくらいでしたか?
川上:たぶん200時間かかっていないくらいですね。背景に関しては何回もリテイクして、最初の構想のものとは全く違う完成形になっています。
■『あれはあの絵本の・・・』-和久田さん作品解説
Substance 3D Samplerも使用し徹底的に制作効率をUP
和久田:作品の概要は、「男の子が夜中にトイレに行こうとしたら怖いおばけがいて、実はその幽霊はその子が寝る前に読んでいた絵本の中にいたもの。この血は? お父さんお母さんは……?」というものです。こだわったポイントはおばけを出すこと。皆さんがされていない変なアイディアで勝負しようかなと。あとは構図ですね。そもそも、構図を一番最初に決めてそれから逆算してこのストーリーを思いつきました。
CGW:ストーリーよりも先に構図を決めるんですね。
和久田:はい。前回のコンテストではつくりたいものが先行してしまい、構図に悩んで作業がギリギリになってしまったので、今回は先に構図を決めるところから始めました。
金武:ストーリー性もあって、構図もとても良いですね。アイデア出しにおいて、何か参考にしたものがあるんですか?
和久田:Instagramで映画の名シーンの画面構成を解説するアカウントがあって、それを参考にしています。
CGW:Substance 3D Sampler も一部で使われているそうですが、どの部分ですか?
和久田:本当に小さな部分なのですが、パジャマの刺繍です。「Embroidery」という機能で簡単につくることができるんです。正直、Samplerはまだそこまで使いこなせていないんですが、Adobe公式YouTubeにあるやり方を真似てつくってみました。本当にすぐできるので便利です。
和久田:このように画像をドラッグ&ドロップするだけで刺繍データに変換してくれます。
CGW:これは面白いですし、すぐに採り入れられそうでいいですね。
和久田:今回の作品は制作期間が2週間ぐらいしかなかったので、必要なものを限られた時間でつくることを意識しました。以前制作したモデルを引っ張り出してきたり、新しくつくるものをなるべく少なくしたりして作業を効率化していました。
和久田:たとえばこのおばけの顔や手は過去につくったものですね。実は、手は男の子のものも、同じモデルを変形させて使っているんです。
和久田:こういった小物は今回新たに制作しました。
CGW:これはSubstance Painterでステッチを入れている?
和久田:そうですね。これもSubstance Painterのスゴいところで、簡単にラインをなぞるだけでつくれるんです。
CGW:こういう小物って毎回全部素材も違うし、クオリティを出そうと思ったら大きさにかかわらず作業量を割く必要があるので、そこを時短できるのは助かりますね。
和久田:そうなんです。一枚絵にしたらほんの少ししか映らないものなのに、制作にはすごく時間がかかるものも多くて。限られた時間でつくるコンテストでは、いかに低コストでリッチにできるかが大事になってきますのでそこはかなり意識していますね。
CGW:みなさん、貴重なお話ありがとうございました。最後に、それぞれ今後やってみたいことや目標について教えてください。
金武:今は主に静止画のCG作品をつくっているのですが、将来的には映像作品やゲーム作品など、さまざまな方と組んで作品づくりをしたいと思っています。やっぱり家庭用ゲームが好きでCGをやり始めたので、フォトリアルな方向でゲーム業界を目指しています。
川上:僕はUnreal Engineなどを使って、何かひとつのワールドをつくってみたいなと思っています。町ほどではないけれども、地区を丸々自分1人でつくってみるのが今のところの目標ですね。4月から背景モデラーとして就職が決まっているのですが、これまでフォトリアル作品は結構つくってきたので、今後はセルシェーディングの表現も勉強していきたいですね。
和久田:私の直近の目標としては、「WHO'S NEXT?」のコンテストの上位入賞です。後2回チャレンジできるので、すでに次回に向けて作品の構想を練っています! 長期的にはセルルックに興味を持っていて、そちらの方面で就職できたらと考えています。
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2024年2月29日~2024年3月31日(日)23:59
アンケート対象:
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・通学中でなくても、クリエイティブ分野における就業経験のない方(アルバイトは除く)
・教育機関に従事する教職員の方
TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_柳田晴香 / Haruka Yanagida(CGWORLD)