CGWORLDとアフタヌーンがコラボレーションした初のCGコンテスト「3DCGクリエイターコンテスト」が開催された。コンテストのテーマは、マンガ 『ダーウィン事変』。(※試し読みページはこちら)
お題は、「人間よりはるかに高いIQと身体能力を持つヒューマンジー(半分ヒトで半分チンパンジーの生き物)のチャーリーが、驚くべき場所で目撃されました。さて、その場所とは?CG画像1枚で表現してください」。
このコンテストの注目すべき点は、マンガをテーマにしたCGコンテストであることと、審査員のラインナップ。『ダーウィン事変』作者のうめざわしゅん氏、『ダーウィン事変』編集者の寺山晃司氏、SAFEHOUSE/背景モデリングSVの鈴木卓矢氏、CGWORLD編集部、講談社メタバースラボ、そして特別審査員・お笑い芸人のティモンディ前田裕太氏の、計4名と2団体が審査を行った。
本記事では優秀作品と入選作品を一挙紹介する。
■作品応募条件・審査方法について
審査基準
01:「チャーリー」の特性を生かした自由なエンタメ性
02:3DCG技術を駆使した優れた作品であるかどうか
参加対象
プロ・アマ問わずどなたでも
審査方法
作品審査は、CGWORLD編集部、講談社メタバースラボ、講談社アフタヌーン編集部、審査員にて行います。審査基準にそって採点を行い、最優秀賞1名、優秀賞3名を選出します。
■最優秀賞・優秀賞 クリエイター向けPC「DAIV FXシリーズ」(マウスコンピューター)
DAIV-FXシリーズ
新しいDAIVはクリエイターの思いを叶えるために生まれたクリエイティブPCです。数多くのクリエイターの声を反映し実現した、抜群のスピード・安定感と洗練されたデザイン。シームレスな制作環境を提供し、さまざまなクリエイションをサポートします。まるで身体の一部のような直感的な創造体験を、このDAIVとともにお楽しみください。
最優秀賞:1名 DAIV FX-I9G60
優秀賞:1名 DAIV FX-I7G80
優秀賞:2名 DAIV FX-I7G7T
■審査員
■結果発表
最優秀賞
『precious memories』 坂口 翔弥さん
●作品解説
チャーリー一家の「日常」で目撃された驚くべき行動と場所を大切で尊い思い出の一つとして写真風に表現しました。この一枚を見て幸せなチャーリー達の「日常」をさらに想像し、温かい気持ちになれるように作成しました。
●使用ツール
Blender, Photoshop, Lightroom
●審査員講評
うめざわしゅん氏
子ども時代のスナップショットという日常的な題材で作り込んだ画が素晴らしいです。フィルムのザラついたエフェクトが効果的で思い出が浮かんできそうなシチュエーションもGood!
寺山晃司氏
このザリザリとした画面加工が、雰囲気を出していてとても良いですね!洗濯機に入って遊ぶのは危険なので、チャーリーの真似はしないようにして欲しいですね(笑)。
講談社メタバースラボ
「驚くべき場所」が、現時点で存在する場所ではなく、時間をさかのぼった写真でのアプローチに感動しました!タイトルも素敵で、見る人によって想像されるチャーリーとの思い出が変わりそうなところも、素晴らしいと思いました。洗剤や洗濯機の作り込みも素晴らしく、細部に至るこだわりに、メタバースチームでは驚きの声があがっていました。
優秀賞(3作品)
『お風呂あがりはソイミルク』 武井 誠司さん
●作品解説
まさか日本の銭湯にチャーリーが? 本来、雨や水辺で濡れる事を苦手とするチンパンジーですが半分ヒトの「ヒューマンジー」なら暑いお風呂もなんのその! フィジカル的特徴というより内面的、本能的な部分に着目し日本の銭湯でチャーリーを目撃したら面白いのでは? というコンセプトで制作しました。舞台は都会の洗練されたスパやスーパー銭湯ではなく地方の小さな古き良き昭和銭湯感を出したく薄暗さ、年季の入り方などを演出しました。また、漫画作品を連想させる看板や小物を所々にちりばめました。ちなみにお風呂上がりはフルーツ牛乳ではなくソイミルクです! よろしくお願い致します。
●使用ツール
Blender, Photoshop
●審査員講評
前田裕太氏
舞台の設定と、それを忠実に再現できる手腕に感動しました。ただ、自分の作りたいものに加えて『ダーウィン事変』の作品の雰囲気も散りばめる本作へのリスペクトと遊び心もある、こんなクリエイターさんがいるんだ、いつかお仕事でご一緒したいな、と感じる作品でした。
うめざわしゅん氏
細部まで作り込まれていて構図のおさまりもいいですね。鏡に映りこんだチャーリーにホッコリします!
講談社メタバースラボ
鏡への映り込みなどや、広告に遊びがあって非常におもしろく、また銭湯の汚れ具合から女湯・男湯の背景などがとてもこだわられていて、何回見ても新しい発見がありワクワクしました。湯船につかっているチャーリーもかわいく、みんながファンになると思います。他の作品もぜひ見てみたいと感じました!
『レトロゲームセンターにて』 金武 倖平さん
●作品解説
昔ながらのゲームセンターでチャーリーがゲーム筐体を2個使いで遊んでいる様子です。実際のゲームセンターから、店内の雰囲気や筐体の特徴を研究して制作しました。また、使用感が出るようなテクスチャも意識しました。
●使用ツール
Maya, Zbrush, Substance 3D Painter, Photoshop
●審査員講評
鈴木卓矢氏
まず評価したいのはシンプルにCGが良くできています。街のゲームセンター感がすごく良く再現できていると思います。肝心のヒューマンジーに関していうとパッと見はただゲームをしているヒューマンジーですが二台同時にゲームをしているという状況が見えてきてふつうの人にはできないことをヒューマンジーが難なくやっているという設定がわかるのがいいですね。
講談社メタバースラボ
ゲームの筐体を二個使って遊んでいるチャーリーの器用さが興味深く、またそれがヒューマンジーの特性につながっているという部分にメタバースチームでは感嘆の声があがっていました!全体のアメリカンテイストな雰囲気と、細部までこだわられた筐体や机の上のアイテムのバランスも素晴らしく、他の作品もぜひ拝見したいと感じました。
『The other side of the door』 鈴木 海土さん
●作品解説
ある寂れたアパートの一室、インターフォンが鳴りドアスコープを覗くと、チャーリーが立っていた。チャーリーがただ立っているだけで緊張感や存在感が伝わるような構図にこだわりました。覗いている人の立場によって印象が変わるような雰囲気にしました。
●使用ツール
Blender, Krita
●審査員講評
寺山晃司氏
これは怖いですね!雰囲気がとてもよく出ていると思います。さりげなくALAのロゴを入れていただいたり、遊び心もあって良いですね!
CGWORLD編集部
緊迫感のある作品でした。ドアスコープ越しに見た、無表情だけども瞳孔はしっかり見開いているチャーリーの表情が恐ろしすぎます。このあと、めちゃくちゃしばかれそうだなと、個人的には感じてしまいました。コンテストの募集テーマとして、「チャーリーが発見された場所」という言葉が設定されていましたが、チャーリーを発見したというよりも、むしろ、チャーリーに発見されたという設定が秀逸でした。リアルに寄せすぎず、フィギュアの世界っぽい雰囲気で統一したのも、うまいなと思いました。
入選(7作品)
『手にしたいもの』 入澤 伸弦さん
●作品解説
目指したのは、人間でもチンパンジーでもヒューマンジーでもなくチャーリーの人柄です。 チャーリーしか行けないところ。チャーリーの興味欲を満たす事。少し大人になったチャーリーが人以外に興味の対象が向いている事をコンセプトに作っています。
●使用ツール
Blender
●審査員講評
うめざわしゅん氏
チャーリーのフォルムはとにかく描くのが難しくて未だに正解を模索中なのですが、この作品は顔と身体のバランスが本当に良くて参考にしたいくらいです。背景も綺麗!
『チャーリーとの遭遇』 斎藤 開我さん
●作品解説
チャーリーは新しい概念として大きな渦の中心に巻き込まれていますが、そこから大きく飛び出して宇宙から人類を俯瞰していたら面白いと思い作成しました。こだわりとしてはISSの内部をできる限り再現したことです。
●使用ツール
Maya, Zbrush,Photoshop, Substance 3D Painter
●審査員講評
鈴木卓矢氏
この作品はシンプルにCGのクオリティーの高さに目を引きました。一瞬で状況を理解できるようなリアリティーがCGで表現されていて、そのCGの緻密さがよりヒューマンジーの存在をリアルに引き立たせているので、キャラクターの存在を背景のクオリティーで表現されている良い作品だと思いました。特に宇宙ならではの無重力の浮遊感の表現がとても素晴らしいと思います。
『conflict』 山田 瑞来さん
●作品解説
人間同士の争いを見た時、彼は何を思うのだろうと考えながら作りました。
●使用ツール
Houdini, Nuke, SpeedTree, Megascan, Photoshop
●審査員講評
鈴木卓矢氏
この作品が僕はいちばん好きな作品で、テーマとしては人間の争いを見たヒューマンジーがなにを思うかというテーマなのですが、ヒューマンジーをちゃんと見せずに逆光の中でシルエットしか見せないという見せ方がとてもミステリアスで人を超えた存在であるヒューマンジーが人にとって善なのか悪なのか、人を愚かだと思っているのか、人を救わなければというヒロイックな存在なのか、見る意図がいろいろこのあとのストーリーを想像してしまうような一枚で、静止画のストーリーテリングの表現として絵の中の情報以上に人の想像によって情報の上乗せができているとても高い表現だと思います。
『“Japanese Apple...?”』 和久田 瑞希さん
●作品解説
「りんごが好きなアメリカ生まれのチャーリーが日本でりんご飴を発見した」というシーンです。チャーリーはアメリカ出身で少し前まで外に出られなかったとのこと。彼はきっと、りんご飴を見たら「日本のりんごは一体どうなっているんだ!」と驚くはずです。
●使用ツール
Maya, Arnold, Substance 3D Painter, Substance 3D Sampler, Procreate
●審査員講評
CGWORLD編集部
映画のワンシーンのようなコマの切り取り方や、安寧を感じるような配色、ライティングが素敵です。フォーカスされた、チャーリーの優しい表情も良いですよね。新しい発見に触れた知的な喜びを感じます。波乱の多い世界の中で人間と動物のピュアな心の交流が描かれているように感じました。
『露天風呂』 山本 晴之祐さん
●作品解説
こだわったのは、温かそうな雰囲気にした事と、タオルが自然な形になるようにクロスシミュレーションを使った事です。全体的にあまりリアルになりすぎないようにしました。
●使用ツール
Blender, Photoshop
●審査員講評
前田裕太氏
個人的にとても好きです。人間よりも遥かに高度な知性を持ったチャーリーも、野猿のような動物性を残していて、精神的、肉体的な緊張状態などを温泉で癒やしたい、という欲求があるのかな、と連想させる作品でした。結局、どれだけ高度な知性を持っても、温かいお湯にはかなわないのかな、と楽しい気持ちにさせてもらいました。
『チャーリーの夏祭り体験記』 川島 明子さん
●作品解説
チャーリーがお祭りの屋台にひっそりと出店したらと想像して制作しました。彼はバナナにチョコをかけないだろうと思いBlenderのshaderで表現したバナナにこだわりました。
●使用ツール
Blender, Substance Designer
●審査員講評
前田裕太氏
好きな作品でした。いくら人類よりも知性の優れた生き物でも、ここまでお客さんが集まらない屋台というのは珍しい。これだけ商品を置いているのに。商売というものは知性のみでは足りない何かがあるのか、と想像してしまいます。商品が全然売れていない屋台の店主がチャーリーだったら、お題の通り驚くだろうな、と思いました。
『荒れ果てた渋谷に現るチャーリー』 伊谷 烈さん
●作品解説
今回チャーリーが驚くべき場所で目撃されるということで渋谷を舞台にしました。制作したCGの世界観では数百年モノ時間チャーリーが見つからず最後に目撃されたのは日本。その中でも一番インパクトや画的に印象に残るのは渋谷の町だと感じ、荒れ果てた渋谷に突如現したチャーリーという設定で制作させていただきました。
●使用ツール
Blender, Substance 3D Painter, RivomUV, Photoshop, AfterEffects
●審査員講評
鈴木卓矢氏
この作品は背景のモデリングをとても頑張っていて作るのが大変だったろうなと努力賞をあげたいですね。ビルの看板にあるヒューマンジーの指名手配書がこの世界観を説明する重要な要素になっていてこれがあることによってヒューマンジーの存在がよりストーリーを際立たせていると思います。いまもしヒューマンジーが存在しているとしてこれから未来にヒューマンジーを中心にどんなことが起こるのかわくわくするような作品になっていると思います。
■審査員総評
『ダーウィン事変』作者 うめざわしゅん氏
たくさんのご応募ありがとうございました。私は3DCGに関してはまったくの門外漢ですがどの作品も楽しく見させていただきました。状況設定のアイデアや構図、チャーリーの描き方などそれぞれに良いところがあって審査は迷いました。ぜんぶ良かったので点数は好みです!みなさんの今後の活躍を願ってます!
『ダーウィン事変』編集者 寺山晃司氏
数多くの作品をご投稿いただき、本当にありがとうございます!審査員という立場上、持ち点は振り分けさせていただきましたが、どれも力作で、担当編集としてとても嬉しかったです。応募理由として「3DCGを仕事にしたい」という方も多く、もしこのコンテストが、そうしたクリエイターの方々の助力になったのであれば、これ以上の喜びはありません。本当にありがとうございました!
SAFEHOUSE/背景モデリングSV 鈴木卓矢氏
いままで色々なコンテストの審査員をやらせてもらいましたが、この『ダーウィン事変』をテーマとしたコンテストはCGという技術の他にもクリエイターの想像力や表現力を試されるおもしろいコンテストとなりました。
全ての応募作品にヒューマンジーという主役をどのように見せるのか、驚きやおもしろさのエッセンスをどう加えていくのかが垣間見ることができました。
テーマにある「驚くべき場所で」という一文がクリエイターたちを大いに悩ませたのではないでしょうか?
入賞している作品はそれが上手く静止画として表現できていたと思います。
【特別審査員】
お笑い芸人「ティモンディ」 前田裕太氏
みなさんクオリティの高い作品で、審査する立場ながら原作ファンとして大変楽しませていただきました。みなさん本当にすごかったです。お疲れさまでした。今回のお題に対してどういうアプローチでクリエイターのみなさんが作品に仕上げてくるのか、この企画が始まってから作品を目にするまでワクワクしていました。実際出揃うと、みなさまのさまざまな色が出ていて、日本のクリエイターの未来は明るいなと身勝手ながらそう感じ、そして圧倒される次第でした。みなさまのさらなる活躍、活動を楽しみにしております。