サイバーエージェントグループの若手クリエイターが検証! Endeavor MR8400がもたらす圧倒的作業効率とは
学生時代から自主制作を続け、現在はサイバーエージェントグループの第一線で活躍する若手クリエイター2名がエプソンダイレクトのEndeavor MR8400を検証。実際に業務で用いるPCと比較した際の使用感やスペック面でのアドバンテージ、コンパクトな筐体デザインに対する評価など、幅広くお話を伺った。
CGを学ぶ学生から第一線のプロへ。学習方法や制作意識の違い
CGWORLD(以下、CGW):入社前からCG制作を行なっていたとのことですが、学生時代の活動について教えてください。
本間翔大(以下、本間):主にZbrushなどを用いて、フォトリアリスティックな画作りを自主制作として行なっていました。ダークファンタジー風の一枚絵をレンダリングすることが多かったです。
篠原千佳(以下、篠原):私は多摩美術大学に通っており、大学3年生までは3DCGに触れていませんでした。CGWORLD主催の学生コンテスト「WHO'S NEXT?」で美大生がCG制作で活躍しているのを見たことがきっかけで勉強を始め、趣味として漫画など既存IPのキャラクターの3Dモデル化などを行なっていました。
CGW:現役のプロとして活躍するお二人ですが、当時はどのように3DCGを学習したのでしょうか。効率的な方法があれば教えてください。
本間:勉強ばかりだと続かないので、CGと向き合う時間の半分を勉強、半分を「作りたいものを楽しく作る」という時間に充てていました。学習方法はほとんどYouTubeで、海外クリエイターがモデリングしている作業風景を見ながらツールの使い方を学んでいました。平日1,2時間ほど、途中で動画を止めながら学習を続けていましたね。
篠原:私の場合は、大学とは別にCG系スクールに通って学びました。3Dモデルは自己評価が難しかったので、一緒に学んでいる方や先生に作品を見ていただいて、意見交換をしながら少しずつ成長していきました。
CGW:その当時の制作環境について教えてください。
本間:2011年頃に購入したノートPCで作業をしていました。今にして思えばレンダリングも非常に遅かったのですが、当時は他の選択肢を知らなかったので「そういうものか」と思っていました。Zbrushも40万ポリゴン程度で動かなくなって、もはやZbrush使っている意味がないのではないかと……。結局、就職活動のポートフォリオ制作まではノートPCだけでやりましたね。絵がすぐに出てこない、というのは大きなストレスではありました。
篠原:Macbook Pro(2019)を使っていました。これでMayaを動かしていたので、環境としてはそれほど良いものではなかったと思っています。卒業制作は油絵なので完全アナログでしたが、就職活動用のポートフォリオは全てMacbookで行なっていました。Zbrushだと、Zリメッシャーを使った瞬間に固まっていましたね。モデル単体のレンダリングも30分以上掛かっていたと思います。
CGW:サイバーエージェントに入社した理由や、学生の頃との制作意識の違いなどを教えてください。
本間:3Dモデラー職は、一般的には3Dモデルを作って納品する仕事ですが、サイバーエージェントではより広域に渡る仕事に挑戦できると感じました。それこそ、こういったインタビューを受けることも私にとっては挑戦ですね。学生時代は見た目のいい一枚のレンダリング画像を出力することだけを重視していましたが、先輩方を見ているとデータ量の厳しいスマートフォンアプリで「劣化させず、格好良く魅せる」ことがすごく上手い方が多いです。プラットフォームなどを踏まえてデータ作成を行う点が大きな差だと思います。
篠原:ファンコミュニティが好きでしたので、その源流、一次創作側に入りたいと思ったのが一番の理由ですね。私が制作した作品を見てファンの方が盛り上がってくれるのを見るのがモチベーションに繋がっています。働き始めて感じたのは、他セクションとの協業が本当に重要だということ。セクション間のデータのやり取りやコミュニケーションが円滑になるように意識して働いています。
コンパクト&ハイスペックなEndeavor MR8400を検証
CGW:今回、Endeavor MR8400のCPU/GPUスペック違いの2機種をお試しいただきました。本機はコンパクトな筐体ながら第12世代インテル Coreプロセッサーを搭載し、ハイエンドなCG制作まで可能なPCですが、まずは全体的な使用感や筐体への感想をお聞かせください。
本間:私が使用したのはインテル® Core™ i7-12700K プロセッサー(12コア(8P+4E)/3.6GHz)、NVIDIA GeForce RTX 3070 8GB、メモリ32GBモデルですが、会社で使用するPCよりもワンランク上のスペックで非常に快適でした。私はいかに作業中に手が止まらないかを重要視しています。CG作業は細かいラグやロード時間の連続ですが、Endeavor MR8400ではストレスなく作業が続けられました。直接的に作業時間が短縮される嬉しさより、手が止まらずに集中力が持続する部分に良さを感じました。
篠原:筐体サイズでいうと、今は世間的にもリモートワークが一般化しているため、設置スペースを大きく取らないのは純粋に良いことだと思います。個人的には、筐体カラーがホワイトなのが気に入りました。業務用PCというとブラックや、最近は光る機種も多いと思いますが、私はホワイトの方が家具にも馴染みやすいなと思いました。
本間:デザインは好みの部分ですが、オフィスでも白いデスクを使うことが多いと思うので、その点は目立たず馴染みやすいかも知れません。個人的には一般的なゲーミングPCのように光るデザインは少し気が散る印象がありましたので、コンパクトかつ落ち着いた見た目のEndeavor MR8400は気に入っています。
CGW:静音性も優れているので、場所を問わず活用できそうですね。検証内容について教えてください。
篠原:MayaとAfter Effectsで検証を行いました。Mayaでは自主制作の3Dモデル(30万ポリゴン)をArnoldで4Kレンダリングした時間を計測しましたが、インテル® Core™ i9-12900K搭載の検証機では約8秒、弊社使用のインテル® Core™ i9-11900K搭載機では約14秒と、CPUとしては1世代の差ではありつつ高速な結果が得られました。このほか、UV自動化など数秒掛かるような処理も体感ベースで非常に速くなりました。数秒待つのも惜しいくらい、次の作業に取り掛かりたいときもあるので、全体的なスムーズさに驚きました。
After Effectsでは30秒尺の動画(フルHD)をAdobe Media Encoderでエンコードした結果と、シークの際の挙動をチェックしました。仕事の上でも「カットシーンに耐えうるPC」というのは必須条件です。検証機はNVIDIA GeForce RTX 3090、業務用PCはNVIDIA Quadro RTX 4000といずれも高水準のGPUですが、エンコード時間はともに2秒程度。違いがあったのはシーク時の挙動で、Endeavor MR8400では一切ラグや引っ掛かりを感じませんでした。
CGW:4Kや8Kかつ長尺の映像素材であれば、処理性能だけでなくVRAMの差で挙動が大きく変わるかも知れませんね。続いて、ミドルモデルでの検証結果をお願いします。
本間:Substance Painterでの検証を行いました。実際の業務と同じように操作をした時、真っ先に感じたのはベイクの速さです。業務で使用するPCもインテル® Core™ i9-11900K、NVIDIA GeForce RTX 3060というスペックで、これまで特に問題なく作業をしていましたが、Endeavor MR8400ではベイクの平均時間が2倍近く高速化しました。また、4Kテクスチャでの作業やマテリアルの割り当てなども非常にスムーズでした。
CGW:マテリアル割り当てなどはCPU領域かと思いますが、こちらも作業効率に直結する部分かと思います。
本間:1回あたり1秒あるかないかの細かい時間ですが、作業を繰り返す中で微妙な待ち時間が何度も発生するのはストレスに繋がります。その点、検証機はレイヤーの表示/非表示やパラメータ調整の待ち時間、そういった細かい部分のスピードアップが著しく、これらが積み重なってスムーズな挙動になっていると感じました。
CGW:最後に、お二人の目線でEndeavor MR8400に関する総評を語ってください。
篠原:仕事としてCG制作を行う人だけでなく、例えば就職活動中の学生など、なかなか制作時間が取れない人は作業効率が良くないと作品数が増えていきません。今回の検証では実際の業務と同じレベルの作業を行いましたが、普段の業務PCよりEndeavor MR8400の方が圧倒的に作業効率化に繋がっていました。
本間:確かに、学生時代にEndeavorシリーズを知っていたら良かったなと思いました。細かい待ち時間で集中力が落ちてしまったり、レンダリングで一晩待たされたりするよりも、最初から頑張ってハイスペックのものを購入したほうが間違いなくアウトプットが良くなると思います。CGをやる以上、PC選定は直接的にクオリティに影響する部分なので、最初から妥協しないほうが良いと感じました。
Endeavor MR8400
▼ MR8400(篠原氏 検証PC構成)
- CPU
インテル(R) Core(TM) i9-12900K プロセッサー(16コア(8P+8E)/3.2GHz)
- GPU
NVIDIA(R) GeForce RTX(TM) 3090 24GB
- メモリ
64.0GB(32.0GB×2) PC4-3200 DDR4 SDRAM
- ストレージ
1TB M.2 SSD PCI Express x4対応/ 1TB SSD シリアルATA 600MB/s対応
▼ MR8400(本間氏 検証PC構成)
- CPU
インテル(R) Core(TM) i7-12700K プロセッサー(12コア(8P+4E)/3.6GHz)
- GPU
NVIDIA(R) GeForce RTX(TM) 3070 8GB LHR
- メモリ
32.0GB(16.0GB×2) PC4-3200 DDR4 SDRAM
- ストレージ
1TB M.2 SSD PCI Express x4対応+1TB SSD シリアルATA 600MB/s対応
TEXT _神山大輝(NINE GATES STUDIO)
INTERVIEW & EDIT _池田大樹(CGWORLD)